公開日 2024/09/25

【医師解説】モロー反射はいつからいつまで?激しいときの対処法3つと動きが似ている疾患を解説

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清益 功浩 先生

「モロー反射って何?」「どう対処したら良い?」「関連する病気はある?」そんな疑問を感じてはいませんか。モロー反射は、赤ちゃんが生まれつき備えている原始反射の一つで、外部からの刺激に対して手足をビクッとさせる動きのことです。

生後まもなくから4ヶ月程度の間に見られ、自然に消失していきます。この記事では、モロー反射や対処法、関連する疾患について解説します。

モロー反射とは

赤ちゃんが外部からの刺激を受けた際に反射的に両手を広げ、指を伸ばして抱きつくような動作をする原始反射の一つです。オーストリアの小児科医エルンスト・モローによって発見されたことで、「モロー反射」といわれるようになりました。

大きな音や明るい光・身体が傾いたときなどに見られる正常な反応で、赤ちゃんは手足をビクッとさせ、バンザイをするかのように両手を広げる姿勢を取るのが特徴です。また、母親から落下しそうになった際に、近くにあるものにしがみついて危険を回避するための防御的な反応ともいわれています。

目安の時期はいつからいつまで?

モロー反射時期

モロー反射は、生まれてすぐの時期から生後4ヶ月頃まで続くのが一般的です。生後4ヶ月を過ぎると自らの意思で動かすことができる随意運動が発達するので、自然に消失していきます。

一方で、子どもの発達スピードには個人差があるため、目安の時期にモロー反射が見られないこともあります。ただし、1歳を過ぎても続く場合、発達障害や脳性麻痺の可能性があるため、医師へ相談しましょう。

消失時期にも個人差があるので、過度に心配せずに赤ちゃんの成長を見守るのが重要です。

その他の6つの原始反射

原始反射

原始反射とは、赤ちゃんが生まれつき備えている反射的な運動のことです。モロー反射以外には、以下の原始反射があります。

  1. バビンスキー反射
  2. 吸てつ反射
  3. 探索反射
  4. 自動歩行(歩行反射)
  5. 把握反射
  6. 緊張性頸反射

原始反射の種類によって、消失のタイミングは異なります。

1.バビンスキー反射

バビンスキー反射は、赤ちゃんの足の裏の外側を優しく刺激した際に、足の親指が外側に曲がり、ほかの指が扇のように広がる反応のことです。バビンスキー徴候ともいわれ、生後まもなくから生後1〜2年程度続き、自然に消失します。

ほかの原始反射と異なり、バビンスキー反射には特定の役割はありません。しかし、神経系が正常に機能していることを示すサインの一つなので、赤ちゃんの足の裏をかかとからつま先まで優しく撫でて、指が広がる様子を観察してみましょう。

2.吸てつ反射

赤ちゃんの唇に何かが触れると、思わず吸い始めるのが吸てつ反射です。出生直後から生後6〜12ヶ月程度まで見られます。赤ちゃんの唇に何かが触れると舌を使って吸う動作を始め、一度くわえると自動的に吸う動作を繰り返すため、母乳やミルクを飲むために欠かせない反応です。

そのため、吸てつ反射が消えていくころ、赤ちゃんは意識的に吸う動作をコントロールできるようになります。

3.探索反射

探索反射は、赤ちゃんの唇に指や乳首が触れた際に、首を左右上下に回して触れたものを探す反応のことです。出生後まもなくから見られ、生後4〜6ヶ月頃になると自然に消失するのが特徴です。

探索反射があることによって、赤ちゃんは生まれてすぐでも母乳を飲めるようになります。筋肉の発達によって反射の強さに違いが出ることもありますが、しっかりと探索反射が見られていれば心配する必要はありません。

頭の形測定

4.自動歩行(歩行反射)

自動歩行(歩行反射)は、まだ歩けない赤ちゃんが、足の裏が床に触れた際に、歩き出すような仕草を見せる反応のことです。出生後まもなくから生後2〜3ヶ月の間に見られ、赤ちゃんを立たせたり、体を前かがみに支えながら足を床に近づけると、歩くような動作をします。生後2〜3ヶ月頃に自然に消失したあとは、本格的な歩行ができるように、身体の発育が進んでいきます。

5.把握反射

把握反射は、赤ちゃんの小さな手や足に触れた際に、握り返してくる反応のことです。把握反射は、手に現れると「手掌把握反射」、足に現れると「足底把握反射」といい、以下のような違いがあります。

手掌把握反射

手のひらに触れると指を握り返す

生後3~4ヶ月頃まで見られる

赤ちゃんが物を実際に握れるようになると消失する傾向にある

足底把握反射

足の親指の付け根を押すと足の指が内側に曲がる

生後9〜10ヶ月頃まで見られる

赤ちゃんの一人立ちや歩行の準備が整うと消失する傾向にある

把握反射は、赤ちゃんの成長を見守るうえで重要なサインの一つです。

6.緊張性頸反射

緊張性頸反射とは、身体の片側に刺激を与えた際に、反対側が無意識に反応して平衡を保つ原始反射のことです。緊張性頸反射は、対称性と非対称性の2つのタイプに分かれます。

対称性緊張性頸反射

うつぶせの赤ちゃんの頭を上げると腕が伸び、脚が屈曲する

生後3〜4ヶ月頃まで見られる

非対称性緊張性頸反射

仰向けの赤ちゃんの首を左右どちらかに向けると、向けた側の手足が伸び、反対側の手足が曲がる

生後2〜3ヶ月頃まで見られる

緊張性頸反射の消失後に、赤ちゃんは寝返りをうてるようになるとされています。

モロー反射の対処法3選

モロー反射 対処法

モロー反射は原始反射であり、無意識で出ているので、激しくても特に心配はありません。もし心配な場合は、モロー反射が激しいときに以下のような対処をすることができます。

  1. おくるみで包む
  2. 環境を整える
  3. 抱き方を工夫する

回数が多いときは、赤ちゃんは十分な睡眠を取れないことがあるので、頻度を減らす工夫をしましょう。

1.おくるみで包む

赤ちゃんを包むことは、効果的な対処法の一つです。おくるみを使って赤ちゃんの腕や足を優しく固定することで、反射的な動きが抑えられるので、安心して眠れる環境を作れます。基本的なおくるみの巻き方は以下のとおりです。

  1. おくるみをひし形に床に広げる
  2. 布の上の角を中央に向けて三角に折る
  3. 三角に折った部分に赤ちゃんの肩がくるように仰向けに寝かせる
  4. おくるみの右側を赤ちゃんの身体の上に持ってきて包む
  5. 下の角を上に折り曲げて赤ちゃんの胸の位置に入れ込む
  6. おくるみの左側を赤ちゃんに被せて包む

きつく包み過ぎるとストレスを与えてしまう可能性があります。赤ちゃんの様子を観察しながら、心地よさそうな包み方を見つけていきましょう。

2.環境を整える

モロー反射が頻繁に起こると、赤ちゃんの睡眠が妨げられることがあります。以下の点に注意しながら環境を整えていきましょう。

  • 大きな音を立てない
  • 照明を落とす
  • エアコンや扇風機の風が直接当たらないようにする
  • 窓にレースカーテンをかけて直射日光を和らげる
  • ドアをそっと閉める
  • 騒音を減らす

また、寝具の温度に気を配るのも重要です。パパやママの腕の中くらいの温かさにすることで、赤ちゃんが心地よく眠れる傾向にあります。ただし、環境を整え過ぎて、生活音や照明に神経質になり過ぎないようにしましょう。

3.抱き方を工夫する

赤ちゃんを抱くときは以下のような工夫をすることで、モロー反射による驚きを軽減できます。

  • 赤ちゃんの頭の位置が急に下がらないようにする
  • 急に高く抱き上げたり向きを変えたりしない
  • 赤ちゃんが安心できるように背中を撫でたり優しくトントン叩いたりする

突然の体勢変化がモロー反射を引き起こすため、ゆっくりと優しく抱き上げるのが重要です。また、抱っこの際に、優しくスキンシップをすることで、赤ちゃんはより安定した状態で過ごせるようになります。

モロー反射に似ていたり、モロー反射によってわかる疾患

モロー反射 疾患

以下の疾患は、モロー反射の動きに似ている、またはモロー反射そのものがうまく出ていないので注意が必要です。

  1. 点頭てんかん
  2. 腕神経叢麻痺(わんしんけいそうまひ)
  3. 核黄疸
  4. 脳性麻痺
  5. 鎖骨骨折

モロー反射が長く続く場合や、不安を感じる場合は医療機関に相談しましょう。

1.点頭てんかん

点頭てんかんは、主に1歳未満の赤ちゃんに発症する重篤なてんかんの一種です。「ウエスト症候群」ともいわれ、発作時には突然頭部に力が入り、うなずくような動きや体を折ってお辞儀をする動作、手足を縮めたり、伸ばしたりするようなことが見られます。こうした動きを5〜40秒ごとに繰り返し、1日に何回も見られます。不機嫌になったり、今までできていたことができなくなったりします。

モロー反射と動きが似ている傾向にありますが、点頭てんかんは外部の刺激に関わらず発作を繰り返すのが特徴です。また、モロー反射が外部の刺激による正常な反応であるのに対し、点頭てんかんは脳障害が原因といわれています。赤ちゃんの発作時の様子を動画で記録しておくと、病院に受診する際、医師へ相談しやすくなります。

2.腕神経叢麻痺(わんしんけいそうまひ)

腕神経叢麻痺(わんしんけいそうまひ)は、分娩時に赤ちゃんの首から手に向かう神経が損傷することで起こる症状です。母親の骨盤が狭かったり、赤ちゃんが大きめだったりする場合に発生しやすいとされています。腕神経叢麻痺があると、赤ちゃんが腕を動かせなかったり、麻痺が見られたりするのが特徴です。

また、モロー反射が左右非対称に現れることで、麻痺の兆候に気付けるケースもあるのでしっかりと観察しておきましょう。多くの場合、生後まもなく自然に回復しますが、重症度が高いと機能障害が残ることもあります。

3.核黄疸

核黄疸は、黄疸がひどく、赤ちゃんの血液中のビリルビンが高くなることが原因で、ビリルビンが脳に損傷を与えてしまう病気です。以下のような症状がある場合、核黄疸の可能性があるので、すぐにかかりつけ医に相談しましょう。

  • 元気がない
  • 筋肉の緊張が弱い
  • ミルクを飲む力が弱い
  • モロー反射が全くない・弱い

核黄疸は、脳機能や運動機能・筋力に大きな影響を与える可能性があるので、黄疸に対して早期発見と適切な治療が重要です。黄疸が進行すると治療が難しくなり、脳性麻痺につながる恐れもあります。

4.脳性麻痺

脳性麻痺は、お腹の中にいるときから、生後4週間までの間に発生した脳への損傷によって引き起こされる運動機能の障害のことです。脳に対して進行する病変ではないですが、なかなか回復しない疾患です。一般的に、重度でないと気付かれにくく、1歳前後まで原始反射が残り、運動機能の発達に遅れが見られることで判明する傾向にあります。

また、脳性麻痺には以下のような特徴があります。

  • 手足の麻痺やこわばり
  • はいはいの遅れ
  • 飲み込みや噛む力が弱い

ただし、発達には個人差があるので、過度に心配する必要はありません。

落ち着いて様子を見守り、原始反射以外にも異変がないか観察しましょう。

5.鎖骨骨折

分娩中に赤ちゃんの身体が産道に引っかかったり、首が伸びすぎたりすることで鎖骨骨折を引き起こす可能性があります。特に、吸引分娩や鉗子分娩などの緊急処置の際に起こりやすいとされています。

鎖骨骨折は自然に回復する場合がほとんどです。ただし、モロー反射が左右非対称に現れると鎖骨が折れているケースがあるので注意しましょう。状態によっては手術が必要になることもあるので、動きに違和感を覚えたら医師に相談するのがおすすめです。

モロー反射に関するよくある質問

モロー反射 よくある質問

モロー反射に関するよくある質問は以下のとおりです。

  • モロー反射と発達障害は関係がある?
  • モロー反射が弱い・ない場合はどうしたら良い?
  • モロー反射が消えない理由は?

疑問点を解消して、赤ちゃんの成長を見守りましょう。

モロー反射と発達障害は関係がある?

モロー反射が長く続くと発達障害であるというわけではありません。一般的に、生後4〜6ヶ月頃までに徐々に消失していきますが、赤ちゃんによって消失時期は異なります。

また、発達は個人差が大きいため、通常より長く続いたからといって、発達障害とは限りません。モロー反射以外の原子反射が長く続く場合は、注意が必要になりますので、日頃から赤ちゃんの動きを見ておきましょう。

モロー反射が弱い・ない場合はどうしたら良い?

モロー反射が弱いまたは見られない場合、脳性麻痺の原因となる核黄疸の可能性があります。核黄疸は、脳機能や運動機能・筋力にも影響を与えますが治療方法がありません。リハビリを実施する必要があるので、違和感を覚えたら、かかりつけ医に相談しましょう。

モロー反射が消えない理由は?

1歳を過ぎても消えない場合は、脳性麻痺の可能性があります。ただし、赤ちゃんの発達には個人差があるため、目安の時期を過ぎているからといって、神経質になる必要はありません。

モロー反射を理解して適切な対処をしましょう

生後まもなくから4ヶ月程度の間に見られる反射的な動きのことです。大きな音や明るい音などの外部からの刺激に対して、手足をビクッとさせ、バンザイのような姿勢を取ります。モロー反射が激しいと赤ちゃんは十分な睡眠を取れないことがあるため、おくるみで包んだり環境を整えたりして頻度を減らせるようにしましょう。ぜひこの記事を参考に、赤ちゃんとの過ごし方を工夫してみてください。

頭の形測定

公開日 2024/09/25

【医師解説】モロー反射はいつからいつまで?激しいときの対処法3つと動きが似ている疾患を解説

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清益 功浩 先生

「モロー反射って何?」「どう対処したら良い?」「関連する病気はある?」そんな疑問を感じてはいませんか。モロー反射は、赤ちゃんが生まれつき備えている原始反射の一つで、外部からの刺激に対して手足をビクッとさせる動きのことです。

生後まもなくから4ヶ月程度の間に見られ、自然に消失していきます。この記事では、モロー反射や対処法、関連する疾患について解説します。

モロー反射とは

赤ちゃんが外部からの刺激を受けた際に反射的に両手を広げ、指を伸ばして抱きつくような動作をする原始反射の一つです。オーストリアの小児科医エルンスト・モローによって発見されたことで、「モロー反射」といわれるようになりました。

大きな音や明るい光・身体が傾いたときなどに見られる正常な反応で、赤ちゃんは手足をビクッとさせ、バンザイをするかのように両手を広げる姿勢を取るのが特徴です。また、母親から落下しそうになった際に、近くにあるものにしがみついて危険を回避するための防御的な反応ともいわれています。

目安の時期はいつからいつまで?

モロー反射時期

モロー反射は、生まれてすぐの時期から生後4ヶ月頃まで続くのが一般的です。生後4ヶ月を過ぎると自らの意思で動かすことができる随意運動が発達するので、自然に消失していきます。

一方で、子どもの発達スピードには個人差があるため、目安の時期にモロー反射が見られないこともあります。ただし、1歳を過ぎても続く場合、発達障害や脳性麻痺の可能性があるため、医師へ相談しましょう。

消失時期にも個人差があるので、過度に心配せずに赤ちゃんの成長を見守るのが重要です。

その他の6つの原始反射

原始反射

原始反射とは、赤ちゃんが生まれつき備えている反射的な運動のことです。モロー反射以外には、以下の原始反射があります。

  1. バビンスキー反射
  2. 吸てつ反射
  3. 探索反射
  4. 自動歩行(歩行反射)
  5. 把握反射
  6. 緊張性頸反射

原始反射の種類によって、消失のタイミングは異なります。

1.バビンスキー反射

バビンスキー反射は、赤ちゃんの足の裏の外側を優しく刺激した際に、足の親指が外側に曲がり、ほかの指が扇のように広がる反応のことです。バビンスキー徴候ともいわれ、生後まもなくから生後1〜2年程度続き、自然に消失します。

ほかの原始反射と異なり、バビンスキー反射には特定の役割はありません。しかし、神経系が正常に機能していることを示すサインの一つなので、赤ちゃんの足の裏をかかとからつま先まで優しく撫でて、指が広がる様子を観察してみましょう。

2.吸てつ反射

赤ちゃんの唇に何かが触れると、思わず吸い始めるのが吸てつ反射です。出生直後から生後6〜12ヶ月程度まで見られます。赤ちゃんの唇に何かが触れると舌を使って吸う動作を始め、一度くわえると自動的に吸う動作を繰り返すため、母乳やミルクを飲むために欠かせない反応です。

そのため、吸てつ反射が消えていくころ、赤ちゃんは意識的に吸う動作をコントロールできるようになります。

3.探索反射

探索反射は、赤ちゃんの唇に指や乳首が触れた際に、首を左右上下に回して触れたものを探す反応のことです。出生後まもなくから見られ、生後4〜6ヶ月頃になると自然に消失するのが特徴です。

探索反射があることによって、赤ちゃんは生まれてすぐでも母乳を飲めるようになります。筋肉の発達によって反射の強さに違いが出ることもありますが、しっかりと探索反射が見られていれば心配する必要はありません。

頭の形測定

4.自動歩行(歩行反射)

自動歩行(歩行反射)は、まだ歩けない赤ちゃんが、足の裏が床に触れた際に、歩き出すような仕草を見せる反応のことです。出生後まもなくから生後2〜3ヶ月の間に見られ、赤ちゃんを立たせたり、体を前かがみに支えながら足を床に近づけると、歩くような動作をします。生後2〜3ヶ月頃に自然に消失したあとは、本格的な歩行ができるように、身体の発育が進んでいきます。

5.把握反射

把握反射は、赤ちゃんの小さな手や足に触れた際に、握り返してくる反応のことです。把握反射は、手に現れると「手掌把握反射」、足に現れると「足底把握反射」といい、以下のような違いがあります。

手掌把握反射

手のひらに触れると指を握り返す

生後3~4ヶ月頃まで見られる

赤ちゃんが物を実際に握れるようになると消失する傾向にある

足底把握反射

足の親指の付け根を押すと足の指が内側に曲がる

生後9〜10ヶ月頃まで見られる

赤ちゃんの一人立ちや歩行の準備が整うと消失する傾向にある

把握反射は、赤ちゃんの成長を見守るうえで重要なサインの一つです。

6.緊張性頸反射

緊張性頸反射とは、身体の片側に刺激を与えた際に、反対側が無意識に反応して平衡を保つ原始反射のことです。緊張性頸反射は、対称性と非対称性の2つのタイプに分かれます。

対称性緊張性頸反射

うつぶせの赤ちゃんの頭を上げると腕が伸び、脚が屈曲する

生後3〜4ヶ月頃まで見られる

非対称性緊張性頸反射

仰向けの赤ちゃんの首を左右どちらかに向けると、向けた側の手足が伸び、反対側の手足が曲がる

生後2〜3ヶ月頃まで見られる

緊張性頸反射の消失後に、赤ちゃんは寝返りをうてるようになるとされています。

モロー反射の対処法3選

モロー反射 対処法

モロー反射は原始反射であり、無意識で出ているので、激しくても特に心配はありません。もし心配な場合は、モロー反射が激しいときに以下のような対処をすることができます。

  1. おくるみで包む
  2. 環境を整える
  3. 抱き方を工夫する

回数が多いときは、赤ちゃんは十分な睡眠を取れないことがあるので、頻度を減らす工夫をしましょう。

1.おくるみで包む

赤ちゃんを包むことは、効果的な対処法の一つです。おくるみを使って赤ちゃんの腕や足を優しく固定することで、反射的な動きが抑えられるので、安心して眠れる環境を作れます。基本的なおくるみの巻き方は以下のとおりです。

  1. おくるみをひし形に床に広げる
  2. 布の上の角を中央に向けて三角に折る
  3. 三角に折った部分に赤ちゃんの肩がくるように仰向けに寝かせる
  4. おくるみの右側を赤ちゃんの身体の上に持ってきて包む
  5. 下の角を上に折り曲げて赤ちゃんの胸の位置に入れ込む
  6. おくるみの左側を赤ちゃんに被せて包む

きつく包み過ぎるとストレスを与えてしまう可能性があります。赤ちゃんの様子を観察しながら、心地よさそうな包み方を見つけていきましょう。

2.環境を整える

モロー反射が頻繁に起こると、赤ちゃんの睡眠が妨げられることがあります。以下の点に注意しながら環境を整えていきましょう。

  • 大きな音を立てない
  • 照明を落とす
  • エアコンや扇風機の風が直接当たらないようにする
  • 窓にレースカーテンをかけて直射日光を和らげる
  • ドアをそっと閉める
  • 騒音を減らす

また、寝具の温度に気を配るのも重要です。パパやママの腕の中くらいの温かさにすることで、赤ちゃんが心地よく眠れる傾向にあります。ただし、環境を整え過ぎて、生活音や照明に神経質になり過ぎないようにしましょう。

3.抱き方を工夫する

赤ちゃんを抱くときは以下のような工夫をすることで、モロー反射による驚きを軽減できます。

  • 赤ちゃんの頭の位置が急に下がらないようにする
  • 急に高く抱き上げたり向きを変えたりしない
  • 赤ちゃんが安心できるように背中を撫でたり優しくトントン叩いたりする

突然の体勢変化がモロー反射を引き起こすため、ゆっくりと優しく抱き上げるのが重要です。また、抱っこの際に、優しくスキンシップをすることで、赤ちゃんはより安定した状態で過ごせるようになります。

モロー反射に似ていたり、モロー反射によってわかる疾患

モロー反射 疾患

以下の疾患は、モロー反射の動きに似ている、またはモロー反射そのものがうまく出ていないので注意が必要です。

  1. 点頭てんかん
  2. 腕神経叢麻痺(わんしんけいそうまひ)
  3. 核黄疸
  4. 脳性麻痺
  5. 鎖骨骨折

モロー反射が長く続く場合や、不安を感じる場合は医療機関に相談しましょう。

1.点頭てんかん

点頭てんかんは、主に1歳未満の赤ちゃんに発症する重篤なてんかんの一種です。「ウエスト症候群」ともいわれ、発作時には突然頭部に力が入り、うなずくような動きや体を折ってお辞儀をする動作、手足を縮めたり、伸ばしたりするようなことが見られます。こうした動きを5〜40秒ごとに繰り返し、1日に何回も見られます。不機嫌になったり、今までできていたことができなくなったりします。

モロー反射と動きが似ている傾向にありますが、点頭てんかんは外部の刺激に関わらず発作を繰り返すのが特徴です。また、モロー反射が外部の刺激による正常な反応であるのに対し、点頭てんかんは脳障害が原因といわれています。赤ちゃんの発作時の様子を動画で記録しておくと、病院に受診する際、医師へ相談しやすくなります。

2.腕神経叢麻痺(わんしんけいそうまひ)

腕神経叢麻痺(わんしんけいそうまひ)は、分娩時に赤ちゃんの首から手に向かう神経が損傷することで起こる症状です。母親の骨盤が狭かったり、赤ちゃんが大きめだったりする場合に発生しやすいとされています。腕神経叢麻痺があると、赤ちゃんが腕を動かせなかったり、麻痺が見られたりするのが特徴です。

また、モロー反射が左右非対称に現れることで、麻痺の兆候に気付けるケースもあるのでしっかりと観察しておきましょう。多くの場合、生後まもなく自然に回復しますが、重症度が高いと機能障害が残ることもあります。

3.核黄疸

核黄疸は、黄疸がひどく、赤ちゃんの血液中のビリルビンが高くなることが原因で、ビリルビンが脳に損傷を与えてしまう病気です。以下のような症状がある場合、核黄疸の可能性があるので、すぐにかかりつけ医に相談しましょう。

  • 元気がない
  • 筋肉の緊張が弱い
  • ミルクを飲む力が弱い
  • モロー反射が全くない・弱い

核黄疸は、脳機能や運動機能・筋力に大きな影響を与える可能性があるので、黄疸に対して早期発見と適切な治療が重要です。黄疸が進行すると治療が難しくなり、脳性麻痺につながる恐れもあります。

4.脳性麻痺

脳性麻痺は、お腹の中にいるときから、生後4週間までの間に発生した脳への損傷によって引き起こされる運動機能の障害のことです。脳に対して進行する病変ではないですが、なかなか回復しない疾患です。一般的に、重度でないと気付かれにくく、1歳前後まで原始反射が残り、運動機能の発達に遅れが見られることで判明する傾向にあります。

また、脳性麻痺には以下のような特徴があります。

  • 手足の麻痺やこわばり
  • はいはいの遅れ
  • 飲み込みや噛む力が弱い

ただし、発達には個人差があるので、過度に心配する必要はありません。

落ち着いて様子を見守り、原始反射以外にも異変がないか観察しましょう。

5.鎖骨骨折

分娩中に赤ちゃんの身体が産道に引っかかったり、首が伸びすぎたりすることで鎖骨骨折を引き起こす可能性があります。特に、吸引分娩や鉗子分娩などの緊急処置の際に起こりやすいとされています。

鎖骨骨折は自然に回復する場合がほとんどです。ただし、モロー反射が左右非対称に現れると鎖骨が折れているケースがあるので注意しましょう。状態によっては手術が必要になることもあるので、動きに違和感を覚えたら医師に相談するのがおすすめです。

モロー反射に関するよくある質問

モロー反射 よくある質問

モロー反射に関するよくある質問は以下のとおりです。

  • モロー反射と発達障害は関係がある?
  • モロー反射が弱い・ない場合はどうしたら良い?
  • モロー反射が消えない理由は?

疑問点を解消して、赤ちゃんの成長を見守りましょう。

モロー反射と発達障害は関係がある?

モロー反射が長く続くと発達障害であるというわけではありません。一般的に、生後4〜6ヶ月頃までに徐々に消失していきますが、赤ちゃんによって消失時期は異なります。

また、発達は個人差が大きいため、通常より長く続いたからといって、発達障害とは限りません。モロー反射以外の原子反射が長く続く場合は、注意が必要になりますので、日頃から赤ちゃんの動きを見ておきましょう。

モロー反射が弱い・ない場合はどうしたら良い?

モロー反射が弱いまたは見られない場合、脳性麻痺の原因となる核黄疸の可能性があります。核黄疸は、脳機能や運動機能・筋力にも影響を与えますが治療方法がありません。リハビリを実施する必要があるので、違和感を覚えたら、かかりつけ医に相談しましょう。

モロー反射が消えない理由は?

1歳を過ぎても消えない場合は、脳性麻痺の可能性があります。ただし、赤ちゃんの発達には個人差があるため、目安の時期を過ぎているからといって、神経質になる必要はありません。

モロー反射を理解して適切な対処をしましょう

生後まもなくから4ヶ月程度の間に見られる反射的な動きのことです。大きな音や明るい音などの外部からの刺激に対して、手足をビクッとさせ、バンザイのような姿勢を取ります。モロー反射が激しいと赤ちゃんは十分な睡眠を取れないことがあるため、おくるみで包んだり環境を整えたりして頻度を減らせるようにしましょう。ぜひこの記事を参考に、赤ちゃんとの過ごし方を工夫してみてください。

頭の形測定