公開日 2024/03/25
【医師解説】赤ちゃんの寝返りはいつから?しないのはなぜ?4つの練習方法と注意点を解説
目次
清益 功浩 先生
「赤ちゃんの寝返りのタイミングはいつ?」「練習やサポートは必要?」「寝返りを始めたら気をつけた方がいいことはある?」そんなお悩みを抱えてはいませんか。一般的に、赤ちゃんの寝返りは生後5〜6ヶ月が目安といわれています。
しかし、寝返りのタイミングは個人差が大きく、目安の時期を外れていると発達に不安を感じるママやパパも多いでしょう。この記事では、寝返りの時期や練習方法、注意点について解説します。
寝返りの時期に不安を感じている人は、ぜひこの記事を参考に、安心して赤ちゃんとの時間を過ごしてみてください。
赤ちゃんの寝返りは5〜6ヶ月が目安
赤ちゃんが寝返りを始める時期の目安は、生後5〜6ヶ月程度とされています。しかし、寝返りを始める時期は個人差も大きいため、目安の時期にできなくても心配ありません。基本的に、赤ちゃんの運動機能は頭から足に向かって発達します。目や首・肩・腕が動かせるようになると、背中や腰も発達し、寝返りができるようになる仕組みです。
また、寝返りは首・肩・腰を使う動作であるので、それらを同時に動かせる脳の発達も欠かせません。赤ちゃんのなかには、寝返りをせずにずり這いやハイハイを始める子もいるため、焦らずに見守りましょう。
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赤ちゃんが寝返りを始める3つの前兆
寝返りを始める際には、どのような前兆があるのでしょうか。一般的には首がすわり、以下のような動作が始まると寝返りが近いといわれています。
- 気になるものを目で追うようになる
- 仰向けでよく動くようになる
- 自力で横向きになる
ただし、前兆があっても寝返りをしない子もいたり、突然寝返りをする子もいたりします。あくまでも目安としてとらえるとよいでしょう。
1.気になるものを目で追うようになる
興味・関心が出てくると、気になるものを目で追うようになり、自分で動きたいという欲求が芽生えます。自分で動きたいという欲求が、寝返りの動作にもつながっていくため、赤ちゃんの興味・関心を引くようなアプローチがおすすめです。また、赤ちゃんの興味・関心は、首がすわり始める時期に広がっていきます。ママやパパを目で追うようになる時期でもあるので、積極的に声をかけてみましょう。おもちゃやぬいぐるみなどの赤ちゃんの興味を引く対象を近くに置いておくのも効果的です。
2.仰向けでよく動くようになる
首がすわり、仰向けの状態で移動するようになると、背中や腰の筋肉が発達してきた証拠です。必要な筋肉が発達してきているので、寝返りの成功も近いでしょう。基本的に、生まれてすぐの赤ちゃんは、仰向けに寝かされた状態から手足を動かすぐらいです。しかし、寝返りに必要な背中や腰の発達が進むと、仰向けの状態でも動けるようになります。大人が思うよりも広範囲を移動するケースもあるため、安全には十分注意しましょう。また、赤ちゃんが動きやすいような服装や環境を整えてあげるのも重要です。
3.自力で横向きになる
身体をひねったり反らせたりするようになると、寝返りのタイミングも近いでしょう。当初は気になるものを目で追っているだけだったのが、顔や首も動かすようになり、背中や腰をひねって横向きになろうとします。しかし、赤ちゃんは身体の発達が未熟なため、大人のように上半身から寝返りをすることはできません。そのため、下半身の回転の勢いを利用して、上半身を動かす必要があります。横向きになって身体をひねる仕草をするようになったら、寝返りをしやすいように広いマットや柵付きのベッドを用意し、動きやすさと安全性を整えましょう。
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寝返りの時期は個人差が大きい
寝返りの時期の目安は生後5〜6ヶ月程度とされていますが、個人差も大きく、生後3〜10ヶ月と幅があります。厚生労働省が実施した「乳幼児身体発達調査」によると、月齢別の寝返りの割合は以下のとおりです。
月齢 | 割合 |
---|---|
2〜3ヶ月未満 | 1.1% |
3〜4ヶ月 | 14.4% |
4〜5ヶ月 | 52.7% |
5〜6ヶ月 | 86.6% |
6〜7ヶ月 | 95.8% |
7〜8ヶ月 | 99.2% |
8〜9ヶ月 | 98.0% |
一般的に、寝返りが遅くても運動機能の発達には関係ないとされています。そのため、首がすわっていれば、次第にできるようになる場合がほとんどです。また、体格によっても寝返りのタイミングは異なります。基本的に、寝返りが遅かったとしても、元気に過ごしていれば問題ありません。しかし、発達に不安を感じる人は、かかりつけの小児科医に相談しましょう。
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赤ちゃんの寝返りをサポートする4つのポイント
寝返りの前兆がみられるようになったら、以下のような適切なサポートをしましょう。
- 環境を整える
- おもちゃを使って興味を促す
- 腰や背中を支える
- 身体をひねる練習をする
基本的に、無理やり寝返りの練習をする必要はありません。あと少しでできそうなタイミングで、優しく手伝ってあげるのが重要です。
1.環境を整える
寝返りがしやすいように固めの布団やカーペットなどの広いスペースを用意するのがおすすめです。柔らかい布団は身体が埋まってしまうので、動きにくい傾向にあります。また、寝返りがしやすい動きやすい服装にすることも重要です。特に、冬場は洋服も厚着にしがちなので、伸縮性のある服やセパレートタイプの服を選ぶとよいでしょう。
2.おもちゃを使って興味を促す
寝返りの前兆動作が出てきた子は、好きなおもちゃやぬいぐるみなどを手に取ろうとして寝返りが成功することがあります。そのため、赤ちゃんの向いている方と逆側から、おもちゃを鳴らしたり名前を呼びかけたりして興味を引くのがおすすめです。
赤ちゃんにとって、興味・関心は動きたい気持ちの原動力になるため、寝返りを促す効果があります。興味・関心の範囲が広がれば、動きたいという欲求も増えていくので寝返りも成功しやすくなるでしょう。
3.腰や背中を支える
身体をひねる動作をしている際に、背中と腰を支えることで寝返りが成功する傾向にあります。ただし、背中や腰を押して寝返りを促すのではなく、支えて身体の使い方を覚えやすくするのが重要です。勢いが少し足りないくらいの状態であれば、優しく支えてあげるだけで、十分成功につながります。また、身体をひねった際に、腕が挟まっていたら優しく抜いてあげましょう。その際も、自力で腕を抜けそうか様子をみてからサポートしてあげるのがおすすめです。
4.身体をひねる練習をする
赤ちゃんの機嫌がよい時に、ひねる動作の練習をすることで、身体の使い方を覚え、寝返りが成功しやすくなります。身体をひねる練習のやり方は以下のとおりです。
- 赤ちゃんが寝返りしやすい方に顔を向ける
- 寝返りする向きと反対の足をもう一方の足の上に置く
- 足を交差させて、回転するように寝返りをさせる
- 身体の下になっている腕を優しく抜く
身体を回転させる際は、足だけでなく腕もサポートしてあげましょう。また、体重が重い子は寝返りが苦手なケースもあるため、嫌がる場合は無理に練習をする必要はありません。
赤ちゃんが寝返りを始めたら注意すべき3つのポイント
寝返りが始まると、赤ちゃんの行動範囲が広がります。以下の3つのポイントに注意して、安全面に配慮しておくのが重要です。
- 赤ちゃんの周囲に柔らかいものを置かない
- 床に小さなものを置かない
- ベビーベッドの柵はしっかり閉める
思わぬ事故を防ぐためにも、事前にしっかりと対策しましょう。
1.赤ちゃんの周囲に柔らかいものを置かない
赤ちゃんの周囲に、布やクッション、ぬいぐるみなどを置くと窒息のリスクがあります。柔らかい布団も、顔が埋もれてしまい窒息する危険性があるので、なるべく固めの布団を使用するのがよいでしょう。掛け布団を使用する際は、万が一顔にかかってしまっても払い除けられるような薄手のものを使用すると安心です。肌寒さを感じる場合は、スリーパーで体温調節しましょう。また、寝返りを始めたばかりの子は、うつ伏せの状態で顔を上げ続けられません。赤ちゃんに危険がないよう、目を離さず見守ってあげてくださいね。
2.床に小さなものを置かない
寝返りができると、床に落ちているものを拾えるようになるため、誤飲の危険性が高くなります。小銭や薬、化粧品、ボトルキャップなどの誤飲の危険性があるものは、赤ちゃんの手の届かない場所に置きましょう。特に、電池は消化器官に穴があく恐れがあるので注意が必要です。床にものを置かないだけでなく、ベッドの端や床の隅などは、大人の目が届きにくいことから、こまめに掃除をするとよいでしょう。一部の母子健康手帳では「チャイルド・マウス」が載っているので、それを参考に、誤飲の危険性があるものが落ちていないか事前に確認しておくのが重要です。トイレットペーパーやラップの芯でも代用することができます。
3.ベビーベッドの柵はしっかり閉める
寝返りを始めると、転落リスクが上がるため、ベビーベッドの柵は必ず閉めましょう。ソファーでの寝かしつけも同様に、転落の危険性があります。日中は、床にマットを敷いて寝かせておくと寝返りもしやすく、安全性も確保できるので安心です。夜間に大人のベッドに寝かせる際は、転落を防止するベッドガードを使用しましょう。また、ベビーベッドと寝具、壁の間に隙間があると、寝返りをした際に赤ちゃんが挟まれる危険もあります。ベッドと壁の隙間をタオル等でふさぐ工夫も必要です。寝返りの時期は転落事故が多くなるため、段差のある場所には特に注意しましょう。
赤ちゃんの寝返りに関するよくある質問
赤ちゃんの寝返りに関して、疑問の声が上がりやすい以下の質問について解説します。
- 生後3ヶ月より前に寝返りをしても大丈夫ですか?
- 生後10ヶ月でまだ寝返りをしないのですが大丈夫ですか?
- 赤ちゃんの寝返りの時期と病気は関係性がありますか?
基本的に、寝返りの時期が目安とずれていても、過度に心配する必要はありません。しかし、不安なことがほかにもある場合は、かかりつけの小児科医や保健センターなどの専門機関に相談しましょう。
Q.生後3ヶ月より前に寝返りをしても大丈夫ですか?
A.寝返りが早いだけでほかの発達が順調であれば、基本的に問題ありません。生後3ヶ月未満で寝返りをする子も、全体の約1.1%程度存在します。ただし、生後3ヶ月より早い時期に寝返りをした際は、普段の様子の観察が重要です。普段から身体が反っている場合は、姿勢異常や筋肉の過緊張の可能性があるため、かかりつけの小児科医に相談しましょう。
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Q.生後10ヶ月でまだ寝返りをしないのですが大丈夫ですか?
A.すべての赤ちゃんが寝返りをするわけではないため、首がしっかりとすわっており、元気に過ごしていれば、基本的には心配ありません。生後8〜9ヶ月でも寝返りができる赤ちゃんは全体の98.0%なので、約2%はできていない子がいるのも事実です。また、寝返りをせずに、ずり這いやハイハイをする子もいます。ただし、手足がだらんとし、寝返りの兆候が全くみられない場合は、かかりつけの小児科医に相談しましょう。
Q.赤ちゃんの寝返りの時期と病気は関係性がありますか?
A.基本的に、寝返りのタイミングだけで病気を心配する必要はありません。
脳や身体の発達によって寝返りができるようになるため、生後6ヶ月を過ぎても兆候がみられないと脳の障害や筋肉の病気の可能性もあります。しかし、そのようなケースでは首がすわっていない場合がほとんどです。
寝返り開始時期の前にある乳幼児健診で病気や障害が判明することが多いので、首がすわっていれば過度に心配し過ぎないようにしましょう。また、寝返りのタイミングと発達障害の相関関係は、未だ明らかになっていません。
どうしても不安な人は、健診や予防接種の際に、医師に相談してみてください。
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赤ちゃんの寝返りは優しく見守りましょう
赤ちゃんの寝返りは個人差が大きく、生後3ヶ月〜10ヶ月程度と幅広い傾向にあります。目安となる時期は生後5〜6ヶ月ですが、早くても遅くてもしっかりと首がすわっていれば過度に心配する必要はありません。寝返りをせずにずり這いやハイハイをする子もいます。しかし、生後6ヶ月を過ぎても寝返りの兆候がみられなかったり、手足がだらんとしていたりする場合は、かかりつけの小児科医や保健センターなどの専門機関に相談しましょう。
また、寝返りをするようになったら、窒息や誤飲、落下などの思わぬ事故を防ぐのも重要です。日中は段差の少ないマットレスに寝かせたり、夜間は寝返り防止グッズを使用したりと、赤ちゃんの安全対策をしっかり考えましょう。子育てに不安を感じている人はぜひこの記事を参考に、安心して赤ちゃんとの貴重な時間を楽しんでください。