頭の形を治療する
ヘルメット治療とは?
- What's Babyband? -
ヘルメット治療とは、向き癖などによって絶壁頭や斜頭症といった頭のかたちが変形してしまった赤ちゃんに対し、ヘルメットを装着することで頭の形状を改善する治療法です。
頭の平らになった部分にヘルメットで空間をつくり、 赤ちゃん自らの頭蓋成長を原動力として、平らな部分に成長を促します。
ヘルメットは、一人ひとりの頭蓋の形状に合わせてオーダーメイドで設計されており、1日23時間、6ヶ月前後にわたって装着を行います。

ヘルメット治療の歴史
- History -
ヘルメット治療の原理
- Principle -
ヘルメット治療は、頭に圧力をかけて形を変形させるものではありません。
あくまでも赤ちゃん自らの頭蓋成長を原動力にしています。ヘルメットを装着することで頭の平らになっている部分に空間をつくり、逆に頭が早く成長している部分には成長を待機してもらいます。その結果、頭の成長とともに平らになっていた部分にも成長が追いつき、頭の形が整うのです。
ヘルメットは赤ちゃん一人ひとりの頭の形に合わせてオーダーメイドで設計されてます。
ヘルメットの構造
- Structure -
シェル

赤ちゃん一人ひとりの頭の形に合わせて設計。ゆがみのない頭のかたちに誘導する役割を担っています。 ヘルメットシェルには、軽量化と通気性を高めるために全体に小さな通気孔が配置されており、水や中性洗剤で丸洗いが可能です。
クッション

シェルと赤ちゃんのあたまとの緩衝材としての役割があります。クッションがあることで、過度に圧力がかかることを防いだり、擦れによる肌トラブルを軽減します。シェルから簡単に取り外すことができ、ネットにいれて洗濯機で丸洗いできるので、清潔な状態を維持することができます。
ストラップ

ヘルメットをつけ外しする際に使用します。ヘルメットを適切な位置で固定し、ずれることを防ぎます。
※ 構造はヘルメットの種類により異なります。
(上記はベビーバンドの例)
ヘルメット治療の流れ
- Treatment flow -
- 1
ヘルメット治療を提供している医療機関を受診
ベビーバンドによる治療が行える医療機関はこちらをご覧ください。
- 2
頭のゆがみの重症度を判定
問診視診・各種計測等により頭のゆがみ度合いを測定し、ヘルメット治療の適応可否を診断します。
ゆがみの原因が骨の病気である頭蓋骨縫合早期癒合症の疑いがある場合は、専門病院にて精密検査を行う必要があります。
(医療機関によって異なりますが、レントゲン・CT撮影をする場合があります) - 3
ヘルメット治療の実施を決定
ヘルメット治療の詳しい説明を受け、治療するかどうかを決定します。価格はヘルメットの種類・医療機関によって異なりますが、ベビーバンドの場合は診察や検査を含め約30〜40万円となります。
月齢が3ヶ月以下の場合には、ヘルメット治療を行わずに体位変換・タミータイムによって経過観察を行うことがあります。 - 4
3Dスキャンを行い、ヘルメットを作成
ヘルメットを作成するために、頭部形状の3Dスキャンを行います。 約2週間ほどで、オーダーメイドのヘルメットが完成します。
- 5
ヘルメット装着(治療開始)
医療機関にてヘルメットを装着し、使用方法・注意点等の説明を受けます。ヘルメットは1日23時間、月齢・重症度によって異なりますが約2〜6ヶ月間装着します。
- 6
経過観察(2〜6ヶ月)
治療開始後は、 約1ヶ月毎に医療機関へ通院し、頭部・ヘルメットの状態を確認します。装着時間は専用のアプリを用いて記録することができます。
- 7
卒業
ヘルメット治療の留意点
- Attention -
納期は約2週間
医療機関で診断の後、ヘルメットを発注してから装着するまで2週間程度かかります。
赤ちゃんの頭蓋成長が治療の原動力になるため、低月齢時から治療を開始した方が治療期間も短くすみ、治療効果も出やすくなります。頭のかたちが気になったら、お早めに専門の医療機関にご相談されることをおすすめいたします。
装着は
1日23時間
1日23時間、入浴や汗を拭きとるなどの時間以外は継続して装着することを推奨しています。
装着時間が長いほど、平坦部の成長が促進されるため、治療効果は高くなります。 ただし赤ちゃんが熱をだしている、体調不良時、プールに入る、家族で記念写真を撮る、お肌の赤みで休憩などの場合には短時間外すことは問題ありません。
清潔に保つ
ヘルメットシェル、クッションを定期的に洗浄しましょう 長く手入れしない場合、臭い、皮膚の炎症、不快感などの問題が発生する可能性があります。
通院は月に1回
医療機関、また赤ちゃんの月齢や歪みの度合いによって、頻度は異なりますが、ヘルメット治療中の通院は月に1回程度が目安です。 医療機関にて 治療経過やトラブルが発生していないかを確認します。
治療期間は
2〜6ヶ月
歪みの度合い、開始時期によって異なりますが、標準的な治療期間は2〜6ヶ月となります。 低月齢で頭のゆがみ度合いが低いほど、治療期間は短くなります。
治療効果に関する研究
- Research -
高い治療効果
2015年の米国の研究にて、1,531人の赤ちゃんがヘルメット治療をおこない、1,454人(95.0%)が頭蓋矯正に成功(正常な数値に改善) ※1
重度のゆがみ自然に改善しづらい
2021年の日本の研究にて、重度の斜頭症の赤ちゃんの約7割が2ヶ月の自然経過では改善しないという研究結果 ※2
一方でヘルメット治療を行った、重度の斜頭症の赤ちゃんは、自然経過よりも2ヶ月でゆがみ度合いが約3倍改善
顔面変形の改善
2019年のフランスの研究にて、斜頭症の赤ちゃんの顔の非対称性率が95.8%(治療開始前)→ 37.6%(治療開始後)に改善 ※3
治療開始時期と
矯正効果
2013年の米国の研究にて、ヘルメット治療による斜頭症の矯正効果は、赤ちゃんの月齢が上がるにつれて低下 ※4
- 矯正効果は生後32週で生後20週未満の半分以下
- 生後32週後から矯正効果は比較的一定で推移
※1
Effectiveness of Conservative Therapy and Helmet Therapy for Positional Cranial Deformation. Steinberg et al; Plastic and Reconstructive Surgery; March 2015
※2
Noto, Takanori, et al. "Natural-Course Evaluation of Infants with Positional Severe Plagiocephaly Using a Three-Dimensional Scanner in Japan: Comparison with Those Who Received Cranial Helmet Therapy."Journal of Clinical Medicine 10.16 (2021): 3531.
※3
Felix Kunz, et al. “Head orthosis therapy in positional plagiocephaly: longitudinal 3D-investigation of long-term outcomes, compared with untreated infants and with a control group” European Journal of Orthodontics, Volume 41, Issue 1, February 2019
※4
Seruya M, Oh AK, Taylor JH, et al. Helmet treatment of deformational plagiocephaly: the relationship between age at initiation and rate of correction. Plast Reconstr Surg. 2013
治療の懸念点
に関する研究
- Concerns -
主な副作用は皮膚炎。発症率は比較的低い
2020年のフランスの論文にて、ヘルメット治療による合併症発症率が報告
- 赤み(1.6%)、擦過傷(0.6%)、皮膚アレルギー(0.1%)、骨炎(0.1%)、血腫(0.05%)、斜頸(0.05%) ※1
頭蓋成長は阻害しない
2021年の日本の研究にて、自然経過とヘルメット治療の頭囲成長を比較し、ヘルメットをしたことで成長が阻害されていないことが報告されています ※2
※1
T. Picart, et al.“Positional cranial deformation in children: A plea for the efficacy of the cranial helmet in children”Neurochirurgie,Volume 66,,2020.
※2
Noto, Takanori, et al. "Natural-Course Evaluation of Infants with Positional Severe Plagiocephaly Using a Three-Dimensional Scanner in Japan: Comparison with Those Who Received Cranial Helmet Therapy."Journal of Clinical Medicine 10.16 (2021): 3531.