公開日 2026/03/25
【医師解説】ドーナツ枕は赤ちゃんの頭の形に効果がある?使ってはいけない理由と安全な予防法

目次
この記事の監修者

さの赤ちゃんこどもクリニック 院長
佐野 博之 先生
<経歴>
大阪大学医学部卒。大阪大学医学部附属病院入局。りんくう総合医療センター、大阪大学医学部附属病院、大阪母子医療センター、愛染橋病院、淀川キリスト教病院 小児科 主任部長/母子センター長を経て、2020年より現職。
<資格>
日本小児科学会小児科専門医・指導医
日本周産期・新生児医学会周産期(新生児)専門医・指導医
地域総合小児医療認定医、子どもの心の相談医
赤ちゃんの頭の形が気になって「ドーナツ枕を試してみようかな」と考えたことはありませんか。ECサイトや育児ブログの口コミで見かける機会も多く、購入を検討している方や、すでに使っている方も少なくないと思います。
ところが、ドーナツ枕をはじめとするベビー用の頭部整形枕については、アメリカFDAが「使用しないよう」明確に注意喚起を出しています。効果の根拠がなく、窒息リスクもあるためです。
この記事では、なぜドーナツ枕が推奨されないのか、FDAの注意喚起の内容と安全で実践できる予防法について、小児科医の監修のもと解説します。
なお、LINE公式アカウント「赤ちゃんの頭の形ガイド」では、ドーナツ枕に関する疑問や、頭のゆがみ予防に役立つ情報をまとめています。
体位変換・タミータイムの実践方法、医療機関で相談すべきタイミング、ゆがみが気になる場合の対応の選択肢など、よくあるご質問への回答を詳しくご紹介しています。情報収集の入り口としてご利用ください。
LINE公式アカウント「赤ちゃんの頭の形ガイド」を詳しく見る

ドーナツ枕に科学的な根拠はない
ドーナツ枕が頭のゆがみ予防に効果があるかどうかについては、現在のところ科学的に十分な根拠がありません。レビューサイトや口コミに「効果があった」という声があっても、それは厳密な比較研究によって証明されたものではなく、個人の経験にとどまります。
ベビー枕やドーナツ枕のメーカーは「後頭部の圧力を分散する」「頭の形状を整える」などの効果を訴求していますが、実際には安全性・有効性のいずれも科学的に検証されていません。
FDAが「使わないで」と注意喚起した理由
2022年、アメリカのFDA(食品医薬品局)は「乳児の頭部整形枕を予防または治療目的で使用しないよう」と保護者・医療従事者向けに公式の安全性に関する通知を発出しました。
FDAが注意喚起を行った根拠は2点です。
- 有効性が証明されていない:頭のゆがみ予防・治療に枕が有効であることを示す科学的根拠がない
- 安全上のリスクがある:窒息や乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが増加する可能性がある
この通知はアメリカの規制機関によるものですが、製品の流通は国境を越えます。日本市場で販売されているドーナツ枕・絶壁防止枕についても、安全性と有効性は同様に未検証とされています。
日本国内での安全性・有効性の検証状況
日本国内では、ドーナツ枕・ベビー枕の安全性や有効性について独自に検証した大規模な研究は現時点では確認されていません。
また、消費者庁も「ふかふかの柔らかい敷き布団・マットレスや枕は、うつぶせになった場合に顔が埋まり窒息するリスクがある」と注意を呼びかけています。
参照:赤ちゃん用の寝具に適しているのは、ふかふか?それとも固め?|消費者庁

ドーナツ枕が引き起こす2つのリスク
ドーナツ枕に注意が必要な理由は、効果がないというだけではありません。使用することで赤ちゃんに2つのリスクが生じる可能性が指摘されています。
リスク1:SIDS(乳幼児突然死症候群)と窒息の危険
SIDS(乳幼児突然死症候群)は、1歳以下の健康に見えていた乳児が睡眠中に予期せず突然死亡する病気のことです。日本ではおおよそ出生6,000〜7,000人に1人と推定され、生後2か月から6か月に発症が多いとされています。
SIDSの確実な予防法はまだ確立されていませんが、仰向けに寝かせることで発症リスクが大幅に減少したことが知られています。
ドーナツ枕のような柔らかい寝具が周辺にある環境は、このSIDSリスクと関連しています。赤ちゃんが枕の周りに顔を押し付けたり、枕の隙間に顔を挟んだりすることで窒息事故が発生する危険性が高まるとFDAは指摘しています。
米国小児科学会(AAP)は、乳児の睡眠環境として「枕・おもちゃ・柔らかい物・緩い寝具を使用せず、平らで傾斜のない固めの面で仰向けに寝かせること」を推奨しています。
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リスク2:絶壁防止の効果が確認されていない
ドーナツ枕が「絶壁防止」として販売されていても、実際に後頭部の扁平化を防ぐ効果は科学的に確認されていません。
頭のゆがみの主な原因は、出生後に同じ向きで寝続けることによる外力です。枕の形状で後頭部を「囲む」だけでは、頭部への圧力をコントロールすることはできません。
「枕を使えば頭の形がよくなる」という期待は理解できますが、現状ではその期待に応えるエビデンスがないまま販売が続いているのが実情です。効果がないまま使用期間が続くと、適切な予防策(体位変換・タミータイム)を実践するタイミングを逃す可能性があります。
SIDSリスクや効果の不確かさを知って、「今のお子さんの頭の形が実際に問題ないか確認したい」と感じた方は、専門の医療機関で一度評価を受けることを検討してみてください。気になる段階で相談することで、その後の対応を早めに判断できます。
枕で解決しようとする前に、まず現状を医師に見てもらうことが、安心への近道になります。
枕を使わず頭の形を守る2つの方法
ドーナツ枕に代わる方法として、科学的根拠があり、なおかつ安全に実践できる予防法が2つあります。体位変換とタミータイムです。どちらも道具を使わずに始められ、日々のケアの中で取り組めます。
体位変換:授乳・抱っこ・寝かせ方で頭の向きを均等に
体位変換とは、赤ちゃんの頭や体の向きを定期的に変えることです。同じ方向にばかり圧力がかかると、その部分が平らになっていきます。逆にいえば、均等に圧力を分散できれば頭の形を守ることができます。
具体的には、以下のような場面で左右を意識することが効果的とされています。
- 授乳するとき:左右の腕を交互に使う
- 抱っこするとき:向きを左右変えながら抱く
- 寝かせるとき:頭が向く方向を意識して左右に変える
- ベビーベッドやバウンサーの向き:毎回同じ向きにならないよう工夫する
体位変換には特別な道具は不要です。日々の育児の中で少し意識を向けるだけで実践できます。
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タミータイム:1日60分のうつぶせ遊びで後頭部への圧力を減らす
タミータイム(うつぶせ遊び)とは、赤ちゃんが起きている時間に、保護者が見守りながらうつぶせで過ごす時間のことです。うつぶせの体勢では後頭部への圧力がかからず、頭の形の変形防止に役立ちます。また、首・背中・体幹の筋肉を鍛える効果もあります。
目安の時間は1日合計60分ですが、最初から60分続ける必要はありません。1回10〜30秒の短い時間から始め、少しずつ延ばしていくのが現実的です。
注意点は2つあります。
- 必ず赤ちゃんが起きている時間に実施し、目を離さない(窒息リスクがあるため)
- うつぶせのまま寝かせない(SIDSリスクが高まるため)
授乳直後・食後は避け、機嫌がよいタイミングに行うとスムーズに取り組めます。
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予防はいつから、どのくらいやるべき?
体位変換は生後すぐから始められます。産院を退院した直後から向き癖を意識することが理想です。
タミータイムは生後0か月から始めることができますが、不安な場合は1か月健診後からスタートするのがおすすめです。
早い段階で習慣にできると、頭の形の変形を防ぎやすくなります。月齢が上がるほど頭蓋骨が固くなるため、早期からの取り組みが望ましいとされています。
体位変換やタミータイムを始めたとしても、「これが正しくできているか」「今のお子さんの頭の形が改善の範囲内かどうか」を自己判断するのは難しいことがあります。
取り組んでいても変化が感じられない場合や、どの程度のゆがみがあるのか気になる場合は、専門の医療機関で現状を確認してもらうと安心です。

医師が診療現場で見る、早期対応の重要性
体位変換やタミータイムの重要性は、実際の診療現場でも繰り返し確認されています。医師が現場で感じている課題のひとつが、「保護者への情報が届くタイミングが遅い」という点です。
予防法そのものの有効性は認められているにもかかわらず、適切な実践が始まる前に変形が進んでしまうケースが少なくありません。
1か月時点で変形が進むお子さんが多い
産院退院後のごく早い時期から、頭の形への対応が必要なケースがあります。
「当院のデータでも、1か月時点で頭の形がかなり変形してしまうお子さんがいることが分かっています。
(中略)産院退院直後から向き癖を意識した体位変換が必要ですが、出産直後のお母さんたちは授乳や睡眠不足で疲れており、そこまで気を配るのが難しいこともあります。」
生後1か月時点でも変形が進行しうるという現場の実態は、「しばらく様子を見ればいい」という対応では間に合わないケースがあることを示しています。
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月齢が上がるほど、体位変換だけでは改善が難しくなる
体位変換とタミータイムは有効な予防法ですが、月齢が進むにつれて、これだけでは改善が難しくなる場合があります。生後1〜2か月の段階で介入できれば改善が期待できる一方、3〜5か月になると重度の変形には体位変換のみでは対応しきれないケースが出てきます。
「1か月健診で向き癖が強いお子さんに対して早期の指導や介入を行うことで、改善するケースもあります。しかし、3〜5か月になると、変形が重度な場合は体位変換だけでは改善が難しくなるため、早期の予防が非常に重要だと思います。」
早期にご相談いただくことで、ヘルメット治療をせずに改善できる可能性が高まります。
「1〜2か月頃に向き癖がつきかけた時点での早めのご相談をお勧めします。早い段階でアドバイスができれば、ヘルメット治療を避けられる場合もあります」
生後3〜4か月が医師への相談の推奨タイミングとされているのも、この時期がゆがみのピークであり、かつ早期介入がまだ有効な段階にあるためです。
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頭の形が気になったら、早めに医師に相談を
ドーナツ枕に頼らずとも、体位変換とタミータイムを日々実践することが、赤ちゃんの頭の形を守る最も安全で有効な方法とされています。
ただし、すでに頭の形のゆがみが気になる段階にある場合、または体位変換を続けてもあまり改善が見られない場合は、専門の医療機関への相談をお勧めします。
生後3〜4か月頃が相談の目安とされており、この時期に状況を確認してもらうことで、その後の対応の選択肢が広がります。
赤ちゃんの頭の形について、一人で悩む必要はありません。健診のついでに小児科医に相談するだけでも、安心につながります。

よくあるご質問(Q&A)
ドーナツ枕に関して、よくあるご質問にお答えします。
Q. ドーナツ枕はいつから使える?
A. ドーナツ枕(頭部整形を目的とした枕類)は、月齢を問わず使用が推奨されていません。アメリカFDAが乳幼児の頭部整形枕全般に注意喚起を発出しており、有効性・安全性ともに証明されていないためです。月齢にかかわらず使用しないことをお勧めします。
代わりに、体位変換やタミータイムを生後すぐから始める方法があります。
Q. ドーナツ枕を使ってしまったけど、大丈夫?
A. ドーナツ枕を使用したことへの不安は多くの保護者が感じているでしょう。
まず、枕の使用をやめて安全な睡眠環境(枕・柔らかいものなしで固めの平らな面に仰向け)に切り替えることが最初のステップです。
短期間の使用で即座に重大な問題が生じるわけではありませんが、今後は体位変換やタミータイムを実践し、頭の形が気になる場合は医療機関に相談してください。
赤ちゃんを思って使用していたことかと思いますが、今から対応することが大切です。
Q. 枕なしで寝かせると頭が絶壁にならない?
A. 枕を使わなくても、体位変換を丁寧に行うことで後頭部への偏った圧力を防ぐことができます。絶壁(短頭症)の主な原因は、後頭部が長時間ずっと同じ位置を向いて寝ていることです。
枕を使う・使わないよりも、定期的に向きを変えることの方が予防として重要とされています。体位変換に加えてタミータイムを取り入れると、後頭部への圧力をさらに減らせます。
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Q. 頭のゆがみが気になったらどうすれば良い?
A. まず体位変換とタミータイムを生活の中で実践してみましょう。並行して、気になる場合は1か月健診や3か月健診のタイミングで医師に相談することをお勧めします。
ゆがみのピークは生後3か月頃とされており、生後3〜4か月が専門医療機関への相談の目安です。
早めに相談することで、体位変換の指導を受けたり、状況に応じた対応の選択肢(ヘルメット治療など)を検討したりできます。
参考:
乳幼児突然死症候群 / SIDS|e-ヘルスネット(厚生労働省)
Do Not Use Infant Head Shaping Pillows to Prevent or Treat Any Medical Condition|CNN





