公開日 2026/05/22

【医師解説】ドーナツ枕は赤ちゃんの頭の形に効果がある?ドーナツ枕の危険性と安全な予防方法

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この記事の監修者

さの赤ちゃんこどもクリニック 院長

佐野 博之 先生

<経歴>
大阪大学医学部卒。大阪大学医学部附属病院入局。りんくう総合医療センター、大阪大学医学部附属病院、大阪母子医療センター、愛染橋病院、淀川キリスト教病院 小児科 主任部長/母子センター長を経て、2020年より現職。

<資格>
日本小児科学会小児科専門医・指導医
日本周産期・新生児医学会周産期(新生児)専門医・指導医
地域総合小児医療認定医、子どもの心の相談医

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ドーナツ枕の有効性と安全性について

ドーナツ枕が頭のゆがみ予防に効果があるかどうかについては、現在のところ科学的に十分な根拠がありません。レビューサイトや口コミに「効果があった」という声があっても、それは厳密な比較研究によって証明されたものではなく、個人の経験にとどまります。

ベビー枕やドーナツ枕のメーカーは「後頭部の圧力を分散する」「頭の形状を整える」などの効果を訴求していますが、実際には安全性・有効性のいずれも科学的に検証されていません。

FDAが「使わないで」と注意喚起した理由

2022年、アメリカのFDA(食品医薬品局)は「乳児の頭部整形枕を予防または治療目的で使用しないよう」と保護者・医療従事者向けに公式の安全性に関する通知を発出しました。

FDAが注意喚起を行った根拠は2点です。

  • 有効性が証明されていない:頭のゆがみ予防・治療に枕が有効であることを示す科学的根拠がない
  • 安全上のリスクがある:窒息や乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが増加する可能性がある

この通知はアメリカの規制機関によるものですが、製品の流通は国境を越えます。日本市場で販売されているドーナツ枕・絶壁防止枕についても、安全性と有効性は同様に未検証とされています。

日本国内での安全性・有効性の検証状況

日本国内では、ドーナツ枕・ベビー枕の安全性や有効性について独自に検証した大規模な研究は現時点では確認されていません。

また、消費者庁も「ふかふかの柔らかい敷き布団・マットレスや枕は、うつぶせになった場合に顔が埋まり窒息するリスクがある」と注意を呼びかけています。

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ドーナツ枕が引き起こす2つのリスク

ドーナツ枕に注意が必要な理由は、効果がないというだけではありません。使用することで赤ちゃんに2つのリスクが生じる可能性が指摘されています。

リスク1:SIDS(乳幼児突然死症候群)と窒息の危険

SIDS(乳幼児突然死症候群)は、1歳以下の健康に見えていた乳児が睡眠中に予期せず突然死亡する病気のことです。日本ではおおよそ出生6,000〜7,000人に1人と推定され、生後2か月から6か月に発症が多いとされています。

SIDSの確実な予防法はまだ確立されていませんが、仰向けに寝かせることで発症リスクが大幅に減少したことが知られています。

ドーナツ枕のような柔らかい寝具が周辺にある環境は、このSIDSリスクと関連しています。赤ちゃんが枕の周りに顔を押し付けたり、枕の隙間に顔を挟んだりすることで窒息事故が発生する危険性が高まるとFDAは指摘しています。

米国小児科学会(AAP)は、乳児の睡眠環境として「枕・おもちゃ・柔らかい物・緩い寝具を使用せず、平らで傾斜のない固めの面で仰向けに寝かせること」を推奨しています。

リスク2:絶壁防止の効果が確認されていない

ドーナツ枕が「絶壁防止」として販売されていても、実際に後頭部の扁平化を防ぐ効果は科学的に確認されていません。

頭のゆがみの主な原因は、出生後に同じ向きで寝続けることによる外力です。枕の形状で後頭部を「囲む」だけでは、頭部への圧力をコントロールすることはできません。

「枕を使えば頭の形がよくなる」という期待は理解できますが、現状ではその期待に応えるエビデンスがないまま販売が続いているのが実情です。効果がないまま使用期間が続くと、適切な予防策(体位変換・タミータイム)を実践するタイミングを逃す可能性があります。

SIDSリスクや効果の不確かさを知って、「今のお子さんの頭の形が実際に問題ないか確認したい」と感じた方は、専門の医療機関で一度評価を受けることを検討してみてください。気になる段階で相談することで、その後の対応を早めに判断できます。

枕で解決しようとする前に、まず現状を医師に見てもらうことが、安心への近道になります。

枕を使わずできる予防法

ドーナツ枕に代わる方法として、科学的根拠があり、なおかつ安全に実践できる予防法が2つあります。体位変換とタミータイムです。どちらも道具を使わずに始められ、日々のケアの中で取り組めます。

体位変換:授乳・抱っこ・寝かせ方で頭の向きを均等に

体位変換とは、赤ちゃんの頭や体の向きを定期的に変えることです。同じ方向にばかり圧力がかかると、その部分が平らになっていきます。逆にいえば、均等に圧力を分散できれば頭の形を守ることができます。

授乳のたびに左右の向きを交互に変えたり、ベッドの向きを変えて光や音が来る方向を均等にしたりする方法です。頭の特定の部分に圧力が集中しないようにすることが目的です。生後すぐから始められます。


タミータイム:うつぶせ遊びで後頭部への圧力を減らす

タミータイム(うつぶせ遊び)とは、赤ちゃんが起きている時間に、保護者が見守りながらうつぶせで過ごす時間のことです。うつぶせの体勢では後頭部への圧力がかからず、頭の形の変形防止に役立ちます。また、首・背中・体幹の筋肉を鍛える効果もあります。

1日20分を目安に、最初は10〜30秒の短時間から始めます。睡眠中のうつぶせはSIDSリスクがあるため、必ず起きている時間に大人が見守って行います。

頭の形が気になったら、医療機関でご相談を。測定だけでも可能です

ドーナツ枕は科学的な有効性が示されておらず、FDAも使用しないよう注意喚起しています。SIDSや窒息のリスクも指摘されています。

頭の形のゆがみへの対処として医学的に推奨されているのは、体位変換とタミータイムです。どちらも道具なしに生後すぐから始められ、後頭部への圧力軽減と首・体幹の筋力発達が期待できます。取り入れる方法は信頼できる医療情報をもとに選ぶことが重要です。

頭の形のゆがみは、成長とともに自然に改善するケースもありますが、すべてが自然に整うとは限りません。気になる場合は、月齢が低いうちに医療機関で状態を確認しておくことが大切です。まずは測定だけでもお気軽にご相談ください。


ドーナツ枕に関するよくあるご質問

ドーナツ枕に関して、よくあるご質問にお答えします。

Q. ドーナツ枕はいつから使える?

A. ドーナツ枕(頭部整形を目的とした枕類)は、月齢を問わず使用が推奨されていません。アメリカFDAが乳幼児の頭部整形枕全般に注意喚起を発出しており、有効性・安全性ともに証明されていないためです。月齢にかかわらず使用しないことをお勧めします。

代わりに、体位変換やタミータイムを生後すぐから始める方法があります。

Q. ドーナツ枕を使ってしまったけど、大丈夫?

A. ドーナツ枕を使用したことへの不安は多くの保護者が感じているでしょう。

まず、枕の使用をやめて安全な睡眠環境(枕・柔らかいものなしで固めの平らな面に仰向け)に切り替えることが最初のステップです。

短期間の使用で即座に重大な問題が生じるわけではありませんが、今後は体位変換やタミータイムを実践し、頭の形が気になる場合は医療機関に相談してください。

赤ちゃんを思って使用していたことかと思いますが、今から対応することが大切です。

Q. 枕なしで寝かせると頭が絶壁にならない?

A. 枕を使わなくても、体位変換を丁寧に行うことで後頭部への偏った圧力を防ぐことができます。絶壁(短頭症)の主な原因は、後頭部が長時間ずっと同じ位置を向いて寝ていることです。

枕を使う・使わないよりも、定期的に向きを変えることの方が予防として重要とされています。体位変換に加えてタミータイムを取り入れると、後頭部への圧力をさらに減らせます。

参考: