公開日 2026/03/22
【医師解説】赤ちゃんの大泉門とは?位置・役割・閉じる時期と注意サインを解説

目次
この記事の監修者

さの赤ちゃんこどもクリニック 院長
佐野 博之 先生
<経歴>
大阪大学医学部卒。大阪大学医学部附属病院入局。りんくう総合医療センター、大阪大学医学部附属病院、大阪母子医療センター、愛染橋病院、淀川キリスト教病院 小児科 主任部長/母子センター長を経て、2020年より現職。
<資格>
日本小児科学会小児科専門医・指導医
日本周産期・新生児医学会周産期(新生児)専門医・指導医
地域総合小児医療認定医、子どもの心の相談医
赤ちゃんの頭に触れたとき、おでこの上あたりにやわらかくへこんだ部分に気づいて不安になる保護者は少なくありません。
「こんなにへこんでいて大丈夫なの?」「いつ閉じるの?」「いつ受診が必要?」——そうした疑問に、小児科医の解説をもとにお答えします。
大泉門はすべての赤ちゃんに備わった正常な構造ですが、「どこまでが正常で、どこから受診が必要か」の基準がわからないことが不安の原因になりがちです。
この記事では、そんな大泉門の正体や、気になったときの対処法を解説します。
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赤ちゃんの頭にある「やわらかいへこみ」の正体
赤ちゃんの頭を触ると、おでこの上あたりにやわらかくへこんだ部分があることに気づかれた方も多いのではないでしょうか。
「こんなにへこんでいて大丈夫なの?」「病気ではないの?」と心配になる気持ちは自然なことですが、このへこみは「大泉門(だいせんもん)」と呼ばれるもので、すべての赤ちゃんにある正常な構造です。
大泉門はどこにある?触って確認する方法
大泉門は、おでこの上部——前頭部と頭頂部の境界あたりにある、ひし形のやわらかいくぼみです。位置を確認するには、赤ちゃんの頭を上から見て、前後の中央よりやや前側を指先で軽くなぞってみてください。感触が変わる場所がありますが、そこが大泉門です。
平均的な大きさは約2.1cmで、指先に収まる程度です。やわらかく感じるのは、骨と骨の間が繊維状の膜(泉門膜)で覆われているためです。脳はこの膜によって保護されているので、頭を洗うときや撫でるときに軽く触れる程度では問題ありません。
出典:Popich & Smith (1972)80125-2
大泉門・小泉門の違い
頭蓋骨の隙間は大泉門だけではありません。後頭部には「小泉門(しょうせんもん)」と呼ばれる小さな三角形の隙間もあります。
位置 | 前頭部と頭頂部の境界(おでこの上部) | 後頭部と頭頂部の境界 |
形状 | ひし形 | 三角形 |
大きさ | 平均約2.1cm | 大泉門より小さい |
閉じる時期 | 1歳〜1歳6か月頃(遅くとも2歳まで) | 生後2〜3か月頃 |
小泉門は大泉門より早く閉じるため、生後数か月が過ぎると触っても感じにくくなります。「後頭部にもへこみがある」と気になった場合は、この小泉門である可能性が高く、基本的には心配いりません。
大泉門の2つの役割
大泉門は偶然できた隙間ではありません。赤ちゃんが無事に産まれ、その後の脳の発達を支えるために必要な、設計上の構造です。
産道を通るときの役割
赤ちゃんが産道を通るとき、頭は強い圧力を受けます。大泉門をはじめとする頭蓋骨の隙間があることで、骨と骨がわずかに重なり合い、頭の形を一時的に変形させながら狭い産道を通過できます。
この変形は分娩後に自然と元に戻りますが、この仕組みがなければ出産はより困難になります。大泉門は赤ちゃんがこの世に生まれてくるための構造的な準備のひとつです。
脳の成長を妨げない役割
生まれたての赤ちゃんの脳は、まだ急速な発達の途上にあります。新生児の脳の重さは約350〜400gですが、生後8か月頃には約2倍に成長するとされています。
頭蓋骨が完全に固まった状態では、脳がこれほど急速に大きくなることができません。大泉門などの隙間があることで、頭蓋骨が脳の成長に合わせて柔軟に広がる仕組みになっています。
大泉門が徐々に閉じていく時期(1歳〜2歳頃)は、ちょうど脳の急成長が一段落するタイミングでもあります。
【医師解説】赤ちゃんの成長・発達|月齢別の子育てポイントについて

大泉門はいつ閉じる?標準的な時期と受診の目安
大泉門は成長とともに自然に閉じていきます。
ただし、閉じる速さには個人差があり、「閉じるのが早い」「なかなか閉じない」どちらの場合も、原因によっては受診が必要なサインになることがあります。
閉じる時期の個人差と標準的なタイムライン
ある追跡調査では、生後24か月までの赤ちゃんを対象に大泉門の閉鎖時期を調べた結果、次のような傾向が報告されています。
- 生後9〜10か月頃:徐々に小さくなり始める
- 1歳〜1歳6か月頃:多くの場合にほとんど閉じる
- 2歳頃:遅くとも2歳くらいまでには完全に閉じる
また、CT計測による別の研究では、足月児の大泉門は月齢とともに縮小し、1歳半を過ぎる頃に閉鎖が確認されるケースが多いとされています。個人差の範囲は広く、「うちの子はまだ閉じていない」という状態が即座に異常を意味するわけではありません。
出典:Boran et al. (2018)、Pindrik et al. (2014)
早く閉じる場合(頭蓋骨縫合早期癒合症)
大泉門が生後数か月で急速に閉じた場合、「頭蓋骨縫合早期癒合症(ずがいこつほうごうそうきゆごうしょう)」の可能性が考えられます。
これは、頭蓋骨のつなぎ目(縫合)が早期に癒合してしまう疾患で、頭の形が変形し、脳の成長が妨げられる恐れがあります。
外科的な治療が必要となる場合もあるため、「閉じるのが早い」と感じる場合は小児科・小児脳神経外科に相談することをおすすめします。
【医師解説】位置的頭蓋変形症と頭蓋骨縫合早期癒合症の見分け方とは?
遅く閉じる場合(くる病・クレチン症)
2歳を過ぎても大泉門が閉じない場合は、くる病やクレチン症(先天性甲状腺機能低下症)などの疾患が考えられます。
これらは治療せずに放置すると、成長発達に影響が及ぶ可能性があるため、2歳を過ぎても閉鎖の気配がない場合は医療機関での診察を受けてください。
大泉門の閉鎖時期が気になる場合は、一人で悩まず専門の医療機関に相談することをおすすめします。早めに相談することで、正常範囲内かどうかをきちんと評価してもらえます。
大泉門のへこみ・膨らみが気になるとき
大泉門は、赤ちゃんの健康状態を映すバロメーターのひとつです。乳児健診でも必ず確認される項目で、状態によって「様子を見てよい場合」と「すぐに受診が必要な場合」が分かれます。
著しくへこんでいる場合(脱水のサイン)
大泉門が通常より著しくへこんでいる場合は、脱水症状のサインである可能性があります。発熱・嘔吐・下痢などで体内の水分が失われると、大泉門が陥没したようにへこむことがあります。
次のような症状を伴う場合は脱水が進んでいる可能性があります。
- おむつの濡れが著しく少ない
- 哺乳力が弱い・哺乳量が急に減少した
- ぐったりして元気がない
- 目がくぼんでいる
- 口や舌が乾いている
これらの症状が見られる場合は、水分補給を試みながら医療機関を受診してください。
【医師解説】赤ちゃんの脱水症状に気をつけよう|症状・予防・応急処置について
膨らんでいる・隆起している場合(要受診)
泣いているときや授乳中に大泉門が一時的にふっくらすることがありますが、これは頭蓋内圧が一時的に高まるためで、正常な反応です。
一方、安静にしているときや泣き止んだ後も常に膨らんでいる・隆起している場合は、頭蓋内圧の上昇を示している可能性があります。
脳内出血、硬膜下血腫、髄膜炎、水頭症などが疑われる状態です。特に嘔吐・けいれん・発熱・ぐったり感などの症状を伴う場合は、速やかに医療機関を受診してください。
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正常範囲内の拍動ややわらかさ
大泉門が心拍に合わせてかすかに拍動しているように感じることがありますが、これは正常な状態です。心臓の血流が頭蓋内にも伝わることで起こる現象で、心配いりません。
また、大泉門がやわらかく感じることも正常です。大泉門は丈夫な繊維状の膜で覆われており、日常的なケア(シャンプーや頭を撫でる程度)で軽く触れる範囲では問題ありません。
「触ると脳に直接触れているようで怖い」という声をよく聞きますが、脳はしっかり保護されているので安心してください。

大泉門が閉じるまでのケアと注意点
大泉門がある時期は、頭の形が形成される大切な時期でもあります。日常のケアで特別なことは必要ありませんが、次の3点を意識しておくと安心です。
- 大泉門を強く押したり、不必要に繰り返し触ったりしない(軽く触れる程度は問題なし)
- 転倒・頭のぶつけに注意する(大泉門の膜は丈夫だが、強い衝撃は避ける)
- 大泉門の状態に気になる変化を感じたら、健診を待たずに小児科に相談する
大泉門が閉じるまでの時期は、頭が柔らかく体位変換やタミータイムなどのケアが有効に働く時期でもあります。うつぶせ遊び(タミータイム)を日課に取り入れることは、後頭部への圧力軽減にもつながります。
【医師解説】タミータイム(うつぶせ遊び)とは?6つの効果と月齢別のやり方、注意点について解説
医師に聞く、大泉門についてよくある相談とアドバイス
大泉門について実際の診療現場ではどのような相談が多く、医師はどのように判断しているのでしょうか。診療の現場から見えてくることをご紹介します。
大泉門が気になって来院される保護者に多い傾向
乳児健診では「頭に変なへこみがある」「後頭部にもへこみがある」という相談が多く見られます。実際の診療現場について、佐野先生は次のように語ります。
「頭のかたちを気にされて来院される方は本当に多く、中には深刻に心配されている方も少なくありません。そういった方々の気持ちに寄り添い、不安を解消することで、より楽しく子育てができるお手伝いができているのではないかと感じています」
大泉門に限らず、頭に関する疑問は気になった時点で小児科に相談しましょう。
健診では大泉門をどのように確認しているか
乳児健診では大泉門の状態を必ず確認します。確認するのは、大きさ・形状・拍動の有無・膨隆やへこみの程度です。
生後1か月健診では出産時の変形が落ち着いているかどうか、生後3〜4か月健診では正常な発育が進んでいるかどうか、1歳〜1歳6か月健診では閉鎖の進行具合を確認します。
異常な膨隆やへこみが認められた場合は、その場で詳しい問診や追加検査に進む場合があります。
正常範囲内の大泉門であれば「経過観察」となりますが、閉鎖の早さ・遅さについても個人差を考慮しながら判断しています。
生後1か月健診 | 大泉門の大きさ・形状・拍動 |
生後3〜4か月健診 | 大泉門の状態・頭囲の成長 |
1歳〜1歳6か月健診 | 大泉門の閉鎖状況 |
【医師解説】乳児健診はいつ・なぜ受ける?目的・時期・スケジュール・チェック内容について
「受診すべきか」と迷う保護者に医師が伝えていること
「大泉門が気になるけど、健診まで待つべきか」と迷う保護者に対して、佐野先生はこう語っています。
「何より大切にしているのは、皆さんに納得して、安心して帰っていただくことです。そのために、一人一人に合わせた丁寧な説明を心がけています」
著しいへこみや常に膨らんでいる状態、発熱・嘔吐などを伴う場合はすぐに受診してください。一方、拍動・やわらかさ・軽い表面のでこぼこは正常範囲内であることが多く、次回の健診で確認する程度で問題ないケースがほとんどです。
迷ったら「念のため相談する」という選択が、ご自身の不安を解消するためにも有効です。
大泉門の状態をきっかけに、赤ちゃんの頭の形全体が気になり始める保護者も少なくありません。「これは正常の範囲なのか」と感じることがあれば、一人で悩まず専門の医療機関に相談してみてください。
大泉門への不安は、受診の目安を知ることで解消できる
赤ちゃんの頭にある大泉門は、産道を通過し、その後の急速な脳の成長を支えるために欠かせない正常な構造です。通常は1歳〜2歳頃に自然と閉じていきます。
不安の多くは「どこまでが正常で、どこから受診が必要か」の基準がわからないことから生まれます。判断の目安をまとめると次のようになります。
- 様子を見てよい: 拍動している・やわらかく感じる・表面が多少でこぼこしている
- 次の健診で確認: 閉鎖時期が少し早い・遅いかもしれないと感じる
- 早めに受診: 著しくへこんでいる(脱水が疑われる症状を伴う)・常に膨らんでいる・嘔吐やけいれんを伴う
大泉門の状態に気になる変化を感じたときは、次回の健診まで待たずに小児科に相談することをおすすめします。
よくあるご質問(Q&A)
大泉門に関して、頻繁に寄せられるご質問にお答えします。
Q. 大泉門のへこみ・でこぼこは大丈夫?
A. 大泉門はすべての赤ちゃんにある正常な構造です。触れるとやわらかく感じるのは、骨と骨の間を繊維状の膜が覆っているためで、脳はしっかり保護されています。
拍動している・多少でこぼこしているといった状態は正常範囲内です。著しくへこんでいる・常に膨らんでいる場合は医師に相談してください。
Q. なぜ赤ちゃんの頭にへこみがあるの?
A. 大泉門には2つの役割があります。出産時に産道を通過しやすくするために頭蓋骨が変形できること、そして生後の急速な脳の成長に頭蓋骨が対応できるようにすることです。
大泉門が閉じていく時期は、ちょうど脳の急成長が落ち着くタイミングと重なっています。
Q. 大泉門と小泉門の違いは?
A. 大泉門はおでこの上部にあるひし形のへこみで、1歳〜1歳6か月頃に閉じます。小泉門は後頭部にある小さな三角形の隙間で、生後2〜3か月頃と早く閉じます。
「後頭部にもへこみがある」と気になった場合は小泉門の可能性が高く、基本的には心配いりません。
Q. へこみ・膨らみはいつ受診すればいい?
A. 著しくへこんでいる場合(脱水が疑われる)や、常に膨らんでいる・隆起している場合(頭蓋内圧上昇が疑われる)は早めに受診してください。
嘔吐・けいれん・高熱を伴う場合はすぐに医療機関へ受診してください。拍動や一時的な膨らみは正常範囲内です。
Q. 大泉門はいつ閉じる?
A. 個人差はありますが、1歳〜1歳6か月頃にほとんど閉じ、遅くとも2歳頃までには完全に閉じるとされています。
2歳を過ぎても閉じない場合はくる病やクレチン症の可能性があり受診を推奨します。早期に閉じる場合は頭蓋骨縫合早期癒合症の可能性があります。
Q. 大泉門が閉じるまでのケアで注意することは?
A. 大泉門を強く押したり不必要に繰り返し触ったりしないこと、頭をぶつけないよう注意すること、状態に気になる変化があれば医師に相談することが大切です。
日常のケア(シャンプー・撫でる)で軽く触れる程度は問題ありません。
参考:





