公開日 2025/05/14

【医師解説】赤ちゃんの大泉門とは?頭のへこみはなぜあるの?

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さの赤ちゃんこどもクリニック 院長

佐野 博之 先生

赤ちゃんの頭のへこみ、でこぼこ大丈夫?

赤ちゃんの頭をそっと触ると、柔らかくへこんでいる部分があることに気づかれた方も多いのではないでしょうか。このへこみは「大泉門(だいせんもん)」と呼ばれるもので、実は赤ちゃんならではの自然な特徴です。

生まれたての赤ちゃんの頭蓋骨は、いくつかの骨が組み合わさってできていますが、まだ完全にくっついておらず、隙間があります。そのため、頭の形が多少でこぼこしていても心配ありません。

特に目立つのが、おでこの上部にあるひし形の「大泉門」で、触るとやわらかく感じます。

「こんなにへこんでいて大丈夫なの?」「病気ではないの?」と心配になるかもしれませんが、すべての赤ちゃんにある正常な構造なので、基本的には心配いりません。

なぜ赤ちゃんの頭にへこみがあるの?

赤ちゃんの頭蓋骨には、大きく分けて7つの骨があり、その間に隙間があります。特に大きな隙間が「大泉門」で、これには重要な役割が2つあります。

大泉門の2つの重要な役割

1. 出産時の通過をスムーズにする

赤ちゃんが産道を通るとき、頭は強い圧迫を受けます。大泉門があることで、頭蓋骨がわずかに重なり合い、頭の形が変形して狭い産道をスムーズに通過できるようになります。

2. 脳の成長を妨げない

新生児の脳は急速に成長し、体重は350g~400g程度から生後8ヶ月頃には約2倍になります。大泉門があることで、頭蓋骨が脳の成長に合わせて柔軟に広がることができるのです。

また、大泉門のほかにも、後頭部に「小泉門(しょうせんもん)」と呼ばれる小さな三角形の隙間があります。これも同様に、出産時と脳の発達に役立つものですが、小泉門は一般的に生後2~3か月頃には閉じます。

大泉門

赤ちゃんの頭の形測定

大泉門の状態が変化するのは大丈夫?

大泉門は赤ちゃんの健康状態を表す大切なバロメーターとして、乳児検診でも確認される項目です。通常、大泉門は心臓の拍動に合わせてわずかに拍動していることがありますが、これは心配ありません。

ただし、以下のような場合は注意が必要です。

1.大泉門が著しくへこんでいる場合

大泉門が通常より著しくへこんでいる場合は、脱水症状のサインかもしれません。発熱や嘔吐、下痢などで体の水分が失われると、大泉門がへこむことがあります。

このような場合、他にも以下のような脱水症状がみられることがあります。

  • おむつの濡れが少ない
  • 哺乳力が弱い・哺乳量が減少
  • 元気がなくぐったりしている
  • 目がくぼんでいる
  • 口や舌が乾いている

脱水症状を起こしている場合は、すぐに水分補給を行い、症状が改善しない場合は医療機関へ相談しましょう。

また、大泉門の著しいへこみと体重増加不良が見られる場合は、栄養障害の可能性も考えられます。

2.大泉門が膨らんでいる場合

大泉門が膨らんで隆起している場合は、頭蓋内圧の上昇を示す可能性があります。泣いている時に一時的に膨らむことはありますが、常に膨らんでいる場合は、脳内出血、硬膜下血腫、髄膜炎などの脳の病気や水頭症などが疑われます。

水頭症は、脳の真ん中にある脳室内に脳脊髄液が過剰に溜まる病気で、大泉門の膨隆と頭囲の急激な拡大が特徴です。

大泉門の膨隆に加えて、嘔吐、けいれん、発熱、ぐったり感などの症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。

大泉門はいつ閉じるの?

大泉門のサイズは平均2.1cmほどで、成長とともに徐々に小さくなっていきます。個人差はありますが、以下のようなタイムラインが一般的です。

   生後9~10ヶ月頃:徐々に小さくなり始める

   1歳~1歳6ヶ月頃:多くの場合、ほとんど閉じる

   2歳頃:遅くとも2歳くらいまでには完全に閉じる

閉じる時期に著しい早さや遅れがある場合は注意が必要です。

早すぎる場合

「頭蓋骨縫合早期癒合症」の可能性があります。頭蓋骨が早期に癒合することで頭の形が変形し、脳の成長が妨げられる恐れがあります。

遅すぎる場合

2歳を過ぎても大泉門が閉じない場合は、くる病やクレチン症などの病気が考えられます。治療せずにそのままにしておくと、その後の成長発達に影響が及ぶ可能性があります。

大泉門が閉鎖するまでのケアで注意することは?

大泉門はやわらかく繊細な部分ですが、厚い膜で覆われており脳は保護されています。そのため、頭を洗ったり撫でたりする際に軽く触れる程度なら問題ありません。

ただし、以下の点に注意しましょう。

  • 大泉門を強く押したり、不必要に触ったりしないようにする
  • 赤ちゃんの頭をぶつけないよう注意する
  • 大泉門の状態に異常を感じたら、無理に確認せず医師に相談する

大泉門の変化に気づいたら、まずは落ち着いて対応を

生まれたばかりの赤ちゃんの頭のへこみを見つけると驚くかもしれませんが、大泉門は赤ちゃんが産道を通過し、その後の脳の成長を支える上で欠かせない重要な構造です。

個人差はありますが、2歳くらいまでには自然に閉じるので、あまり心配せずに見守りましょう。ただし、大泉門の状態に異変を感じたら、早めに医師に相談することをおすすめします。

参考:

Popich, Gregory A., and David W. Smith. "Fontanels: range of normal size." The Journal of Pediatrics 80.5 (1972): 749-752.

ヘルメット治療 シナぷしゅ

公開日 2025/05/14

【医師解説】赤ちゃんの大泉門とは?頭のへこみはなぜあるの?

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さの赤ちゃんこどもクリニック 院長

佐野 博之 先生

赤ちゃんの頭のへこみ、でこぼこ大丈夫?

赤ちゃんの頭をそっと触ると、柔らかくへこんでいる部分があることに気づかれた方も多いのではないでしょうか。このへこみは「大泉門(だいせんもん)」と呼ばれるもので、実は赤ちゃんならではの自然な特徴です。

生まれたての赤ちゃんの頭蓋骨は、いくつかの骨が組み合わさってできていますが、まだ完全にくっついておらず、隙間があります。そのため、頭の形が多少でこぼこしていても心配ありません。

特に目立つのが、おでこの上部にあるひし形の「大泉門」で、触るとやわらかく感じます。

「こんなにへこんでいて大丈夫なの?」「病気ではないの?」と心配になるかもしれませんが、すべての赤ちゃんにある正常な構造なので、基本的には心配いりません。

なぜ赤ちゃんの頭にへこみがあるの?

赤ちゃんの頭蓋骨には、大きく分けて7つの骨があり、その間に隙間があります。特に大きな隙間が「大泉門」で、これには重要な役割が2つあります。

大泉門の2つの重要な役割

1. 出産時の通過をスムーズにする

赤ちゃんが産道を通るとき、頭は強い圧迫を受けます。大泉門があることで、頭蓋骨がわずかに重なり合い、頭の形が変形して狭い産道をスムーズに通過できるようになります。

2. 脳の成長を妨げない

新生児の脳は急速に成長し、体重は350g~400g程度から生後8ヶ月頃には約2倍になります。大泉門があることで、頭蓋骨が脳の成長に合わせて柔軟に広がることができるのです。

また、大泉門のほかにも、後頭部に「小泉門(しょうせんもん)」と呼ばれる小さな三角形の隙間があります。これも同様に、出産時と脳の発達に役立つものですが、小泉門は一般的に生後2~3か月頃には閉じます。

大泉門

赤ちゃんの頭の形測定

大泉門の状態が変化するのは大丈夫?

大泉門は赤ちゃんの健康状態を表す大切なバロメーターとして、乳児検診でも確認される項目です。通常、大泉門は心臓の拍動に合わせてわずかに拍動していることがありますが、これは心配ありません。

ただし、以下のような場合は注意が必要です。

1.大泉門が著しくへこんでいる場合

大泉門が通常より著しくへこんでいる場合は、脱水症状のサインかもしれません。発熱や嘔吐、下痢などで体の水分が失われると、大泉門がへこむことがあります。

このような場合、他にも以下のような脱水症状がみられることがあります。

  • おむつの濡れが少ない
  • 哺乳力が弱い・哺乳量が減少
  • 元気がなくぐったりしている
  • 目がくぼんでいる
  • 口や舌が乾いている

脱水症状を起こしている場合は、すぐに水分補給を行い、症状が改善しない場合は医療機関へ相談しましょう。

また、大泉門の著しいへこみと体重増加不良が見られる場合は、栄養障害の可能性も考えられます。

2.大泉門が膨らんでいる場合

大泉門が膨らんで隆起している場合は、頭蓋内圧の上昇を示す可能性があります。泣いている時に一時的に膨らむことはありますが、常に膨らんでいる場合は、脳内出血、硬膜下血腫、髄膜炎などの脳の病気や水頭症などが疑われます。

水頭症は、脳の真ん中にある脳室内に脳脊髄液が過剰に溜まる病気で、大泉門の膨隆と頭囲の急激な拡大が特徴です。

大泉門の膨隆に加えて、嘔吐、けいれん、発熱、ぐったり感などの症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。

大泉門はいつ閉じるの?

大泉門のサイズは平均2.1cmほどで、成長とともに徐々に小さくなっていきます。個人差はありますが、以下のようなタイムラインが一般的です。

   生後9~10ヶ月頃:徐々に小さくなり始める

   1歳~1歳6ヶ月頃:多くの場合、ほとんど閉じる

   2歳頃:遅くとも2歳くらいまでには完全に閉じる

閉じる時期に著しい早さや遅れがある場合は注意が必要です。

早すぎる場合

「頭蓋骨縫合早期癒合症」の可能性があります。頭蓋骨が早期に癒合することで頭の形が変形し、脳の成長が妨げられる恐れがあります。

遅すぎる場合

2歳を過ぎても大泉門が閉じない場合は、くる病やクレチン症などの病気が考えられます。治療せずにそのままにしておくと、その後の成長発達に影響が及ぶ可能性があります。

大泉門が閉鎖するまでのケアで注意することは?

大泉門はやわらかく繊細な部分ですが、厚い膜で覆われており脳は保護されています。そのため、頭を洗ったり撫でたりする際に軽く触れる程度なら問題ありません。

ただし、以下の点に注意しましょう。

  • 大泉門を強く押したり、不必要に触ったりしないようにする
  • 赤ちゃんの頭をぶつけないよう注意する
  • 大泉門の状態に異常を感じたら、無理に確認せず医師に相談する

大泉門の変化に気づいたら、まずは落ち着いて対応を

生まれたばかりの赤ちゃんの頭のへこみを見つけると驚くかもしれませんが、大泉門は赤ちゃんが産道を通過し、その後の脳の成長を支える上で欠かせない重要な構造です。

個人差はありますが、2歳くらいまでには自然に閉じるので、あまり心配せずに見守りましょう。ただし、大泉門の状態に異変を感じたら、早めに医師に相談することをおすすめします。

参考:

Popich, Gregory A., and David W. Smith. "Fontanels: range of normal size." The Journal of Pediatrics 80.5 (1972): 749-752.

ヘルメット治療 シナぷしゅ