絶壁頭や斜頭、
赤ちゃんの頭の形は
なぜゆがむの?
- Cranial Deformation -
頭の形のゆがみの原因の多くは、 位置的頭蓋変形症 と呼ばれる 外力による頭蓋変形です。 向き癖等によって頭の同一部位が圧迫され続けることで平らになりゆがみが生じます。 多くは後頭部の変形で、後頭部の片側が平らになる斜頭症や後頭部の全体が平らになる短頭症があります。
位置的頭蓋変形症以外に赤ちゃんの頭がゆがむ原因として、頭蓋骨縫合早期癒合症という 骨の病気があります。頭蓋骨縫合早期癒合症は、頭の骨が早期に癒合(くっつく)ことで骨の成長が阻害されて頭のゆがみが発生します。頭蓋骨縫合早期癒合症の場合、赤ちゃんの頭が歪むだけでなく、頭蓋が拡大しないことで脳の成長発達に影響が出る場合や顔面骨が変形することもあります。
ヘルメット治療の対象となるのは位置的頭蓋変形ですが、外見だけでは頭蓋骨縫合早期癒合と区別がつかない場合があります。その場合は、頭部レントゲンや頭部CT検査によって赤ちゃんの頭蓋骨縫合に癒合がないかを確認します。
病的要因による
頭のゆがみについて
- Craniosynostosis -
赤ちゃんの頭の骨は7つほどのピースに分かれていますが、
頭蓋骨縫合早期癒合症 は、この骨の一部が早期に癒合してしまう病気です。
出生児のうちの0.04〜0.1%の割合で起こるといわれています。※
※
「頭蓋骨縫合早期癒合症」一般社団法人日本形成外科学会HP、「頭蓋骨縫合早期癒合症」一般社団法人日本頭蓋顎顔面外科学会HP
一般的に赤ちゃんの脳は生後半年までに出生時の2倍、2歳までに大人の90%の大きさになるといわれています。急速な脳の成長に対応できるよう赤ちゃんの頭蓋骨は7つの骨のピースに分かれており、骨と骨の繋ぎ目の部分を縫合線と呼びます。
縫合線が通常よりも早期に癒合してしまうと、頭蓋骨の拡大が起きずに、頭が歪んだ形になります。 頭蓋骨縫合早期癒合症の程度によっては経過観察が可能な場合も多く、頭蓋骨の状態や発達度合いなどに明らかな異常がない場合には定期的に検査を行い、経過観察していきます。
しかし、頭蓋骨の形態異常が明らかである場合や、脳圧が高いことで脳に影響が出ると判断される場合は、手術を検討することになります。 手術は頭蓋骨を切離し頭蓋容積の拡大を行う開頭手術や骨延長器という装置を留置する手術があります。
外力による
頭のゆがみについて
- Positional Cranial Deformation -
外力による変形( 位置的頭蓋変形症 )は、子宮内、吸引分娩等の分娩時や出生後の影響等により起こりますが、 出生後の向き癖に起因する変形が一般的です。
頭を常に同じ位置に向けて寝ることで、接地面の成長が抑えられ、接地面以外が大きく成長し、斜頭や短頭といった頭蓋変形がおきます。 斜頸を発症している場合は、頭を別の位置に向けることが困難なため、発症しやすいとされています。
位置的頭蓋変形症の
パターン
- Symptoms -
向き癖や斜頸のある赤ちゃんによく見られ、頭頂から見ると、平行四辺形に見えます。また耳の位置の左右差がある場合があります。
絶壁と表現されることが多く、仰向け寝の時間が長い赤ちゃんによく見られます。いわゆる「ハチ張り」といわれる頭も短頭症の場合があります。
頭の前後の長さが横幅に比べて長くなっている状態です。長い時間よこ向きで寝ていた場合に発生することが多く、保育器内で横向きの姿勢をとることが多いNICUで数ヶ月過ごした赤ちゃんによく見られます。
位置的頭蓋変形症の
影響と治療法
- Treatment -
位置的頭蓋変形症の場合、基本的に脳の成長や精神発達に大きな影響を与えることはないと言われていますが、以下大きく2つの点で影響がある可能性があります。
影響 | 影響 | ||
---|---|---|---|
整容 | 将来的な整容面への影響 | ||
機能 | 頭蓋変形が顔面や耳の左右差へ影響を及ぼす場合、噛み合わせ、視力、眼鏡がかけにくい等の問題が発生する可能性※1 |
治療方法は、理学療法とヘルメット治療の2つになります。 重度のゆがみは、自然治癒が難しいという研究結果があります。※2
治療 方法 | 治療方法 | ||
---|---|---|---|
理学療法 |
体位変換 タミータイム(うつ伏せ運動) | ||
ヘルメット | 頭蓋形状にあわせたオーダーメイドのヘルメットを作製し、頭の成長に合わせて適切な状態で装着することで、頭のゆがみを改善 |
※1
「Positional Plagiocephaly」American Association of Neurological Surgeons HP
※2
Noto, Takanori, et al. "Natural-Course Evaluation of Infants with Positional Severe Plagiocephaly Using a Three-Dimensional Scanner in Japan: Comparison with Those Who Received Cranial Helmet Therapy."Journal of Clinical Medicine 10.16 (2021): 3531.
位置的頭蓋変形症の
発生率
- Incidence -
2022年の日本の研究で、 生後1ヶ月の赤ちゃんの50%は、頭の形のゆがみがあるとの報告があります。※1
生後6ヶ月で減少に転じていますが、減少は緩やかです。
※1
Miyabayashi, et al. "Cranial Shape in Infants Aged One Month Can Predict the Severity of Deformational Plagiocephaly at the Age of Six Months" Journal of Clinical Medicine 2022, 11, 1797.
位置的頭蓋変形の発生
プロセスと適切な治療
- Process -
0~1ヶ月 | 2~3ヶ月 | 4~6ヶ月 | 7ヶ月~ | |
---|---|---|---|---|
赤ちゃんの成長 | ||||
赤ちゃんの成長 | ![]() 何も 動かせない | ![]() 首振りが できる | ![]() 寝返りが できる | ![]() ハイハイが できる |
頭がゆがむプロセス | ||||
頭がゆがむプロセス | 扁平化 | 歪みが拡大 | 自然経過では大きくは改善されない* | |
適した治療方法 | ||||
適した治療方法 | 体位変換指導、タミータイム ヘルメット治療 |
月齢3ヶ月未満であれば、体位変換やタミータイムを適切に行うことで、頭のゆがみが改善することがあります。 赤ちゃんの頭の形は数ヶ月で大きく変化するため、ゆがみに気づいた場合は早めに対応することが望ましいとされています。
頭蓋変形のまとめ
- Summary -
頭蓋骨縫合早期癒合症※1 | |
---|---|
発症率 | 0.04~0.1% |
症状 |
|
治療 |
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位置的頭蓋変形症※2 | |
発症率 | 約30%(中等症以上) |
症状 |
|
治療 |
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発症率 | 症状 | 治療 | |
---|---|---|---|
頭蓋骨縫合早期癒合症1 | 0.04~0.1% |
|
|
位置的頭蓋変形症2 | 約30% ※中等症以上 |
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|
※1
「頭蓋骨縫合早期癒合症」一般社団法人日本形成外科学会HP、「小頭症」公益社団法人日本WHO協会HP、「先天水頭症」小児慢性特定疾病情報センターHP
※2
「基礎疾患のない正期産児における生後1か月時の斜頭症の羅病率」日本大学板橋病院小児科(第57回日本周産期・新生児医学会学術集会)
体位変換の方法
- Sleeping Positions -
目的
向き癖の改善により、赤ちゃんの頭にかかる圧力を左右均等にします。 寝返りができるなど、自力で圧力が除圧できるようになっている場合には、効果は限定的になります
方法
下記例のように、向きが同一方向になっているものは、バランスよくなるよう変えてください。
- 寝る際の頭と足の方向
- 抱っこする腕
- 授乳の際の方向
- 話かける方向
タミータイム
(うつ伏せ運動)の方法
- Tummy Time -
目的
タミータイム(うつ伏せ運動)により、頭、首、上半身の筋肉の発達を促進し、赤ちゃんの頭の一定箇所に圧力がかかることを防ぎます。
頻度
1日2〜4回が目安(最大15分/回程度)。1〜2分から始め、慣れてきたら少しずつ1回の時間を増します。
方法
1. 窒息を回避する
- 必ず親の監督の下、実施してください。
- うつぶせ運動は固いマットで行ってください。
2. お母さんの胸、お腹、膝の上にお子さんをうつ伏せにして始める
- 多くの赤ちゃんが最初はうつ伏せの姿勢に抵抗感を示す
3. 慣れてきたら、周りにお気に入りのおもちゃ絵本で興味をひき、うつ伏せ運動を行う