公開日 2026/03/11
【医師解説】絶壁や斜頭症など赤ちゃんの頭の形のゆがみは放っておいても大丈夫?ゆがみの原因・予防・対策について

目次
この記事の監修者

日本大学医学部小児科 主任教授
森岡 一朗 先生

日本大学医学部小児科 准教授
長野 伸彦 先生
日本大学医学部附属板橋病院 専修指導医
加藤理佐 先生
「赤ちゃんの頭の形がいびつな気がするけど、このままで大丈夫かな?」と不安に感じているパパやママも多いかもしれません。赤ちゃんの頭はとても柔らかいため、寝ている向きや姿勢によって形が変わってしまうことはよくあります。
多くの場合、成長とともに頭の形は変化し、軽度であれば自然に目立たなくなっていくこともあります。
ただし、ゆがみの程度によっては自然には治りにくいケースがあることも、近年の研究データからわかってきました。
この記事では、頭の形がゆがむ原因や予防法、治療の選択肢などを幅広く解説します。
Q.仰向け寝や向きぐせによる赤ちゃんの頭の形のゆがみは、自然に治る?
赤ちゃんの頭の形が気になりはじめたとき、多くの保護者がまず考えることがあります。
「放っておいても、大丈夫?自然に治るかな?」
この問いに対して、私たちは「研究データをもとに、正直にお伝えする」姿勢を大切にしています。
研究データが示す「自然に治る」の真実
私たちは生後1か月から生後6か月にかけての頭の形の変化を追った研究を行いました。
その結果、生後3か月頃に頭のゆがみのピークを迎えますが、生後6か月頃には生後1か月頃と同程度まで改善することが明らかになりました。

一方で、もうひとつの重要な事実もあります。
生後4〜8か月頃に重度のゆがみがある場合、約3か月経過した後も約7割が重度のままでした。
つまり、ゆがみは全体として改善方向に向かいます。しかし、「自然に治ります」という一言だけでは、重度のゆがみがどの程度残るかを伝えきれてはいません。
軽度のゆがみであれば様子を見ながらケアを続けることで改善が見込まれますが、重度のゆがみは自然に改善しにくいことが、研究データから示されています。

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ゆがみの重症度は、専門医が計測で判断する
「軽度」「重度」という区分は、どのように判断されるのでしょうか。
重症度の評価には、主に3つの方法が使われています。
1つ目は視覚的な評価で、頭頂や正面から見たときの形状を専門医が確認します。
2つ目はノギスによる計測で、頭の対角線の長さの差(CA値)や比率(CVAI値)といった数値で評価します。
3つ目は3Dスキャナーによる撮影で、より正確なデータを得ることができます。
ただし、数値上は軽症であっても、視覚的な評価では重度と判断されるケースもあります。複数の方法を組み合わせた総合的な判断が必要なため、重症度の見極めは専門医にゆだねるのが確実です。
「うちの子はどのくらいのゆがみなのか」と気になる場合は、小児科や頭の形外来に相談し、専門医に計測・評価してもらうことをおすすめします。
赤ちゃんの頭の形がゆがむ理由
A.赤ちゃんの頭は脳が大きく成長できるよう、やわらかい状態になっています。
そのため、胎内の姿勢や出産時の状況、出生後の体位や向きぐせなどにより頭の形がゆがんでしまうと考えられています。
日本は、乳幼児突然死症候群の予防のためや伝統的に仰向けにする文化があるため、頭のゆがみがある赤ちゃんは多いと推測されています。
私たちの研究では、生後1か月の時点で、約7%の赤ちゃんが重度のゆがみをもっているという結果が得られています。
頭の形のゆがみの種類

頭のゆがみは大きく3つに分類されます。
斜頭症
後頭部の片側が平らになり、頭頂から見ると左右非対称に見える状態です。左右どちらかへの向きぐせが強い場合に発生しやすく、重症化すると耳の位置のずれや顔の非対称につながることがあります。
短頭症(絶壁頭)
後頭部全体が平らになり、頭の幅が左右方向に広がった状態です。仰向け寝の時間が長い場合に起こりやすく、いわゆる「絶壁頭」や「ハチ張り」は短頭症に分類されることが多いです。
長頭症
頭の左右方向への成長が抑えられ、頭が前後方向に長くなった状態です。真横に寝ることが多い場合や、早産児に多い傾向があります。頭蓋骨縫合早期癒合症の一種である矢状縫合早期癒合症と頭の形が似ているため、区別が必要な場合があります。
これらのゆがみは、生後3か月頃までに発生するケースが多いとされています。

頭の形のゆがみが残ると、どんな影響があるのか
頭の形のゆがみが残ると、整容的な影響が主に発生します。以下ではその詳細を解説します。
整容的な影響
1番は整容的な問題です。
大きくなったときに「顔に左右差がある」「帽子が脱げやすい」「ヘッドフォンの位置が合わない」「似合わない髪型がある」といったことが起こりえます。
また、耳の位置のずれや歯並びの問題があげられることもあります。
その他の影響
発達への影響については、大部分の乳幼児では問題がないと報告されています。重度のゆがみがある場合には継続的な経過観察が推奨されますが、発達の遅れを認めた場合でも、2歳以降に徐々にその差が縮まってくることが多いとされています。
気になることがあれば、健診や予防接種の受診時に専門医に相談したり、保育園・幼稚園・自治体などの周囲のサポートを活用することを検討してください。
頭の形がゆがむ前にできる予防方法
頭のゆがみを予防するには、頭を一定の向きで寝かせ続けないことが大切です。
特に生後から首がすわるまでの間は、頭蓋骨がやわらかく変形しやすい時期です。月齢の早い時期から正しい知識を身につけることで、ゆがみを予防できる可能性があります。
日常生活で取り入れられる3つの予防方法を紹介します。
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体位変換
体位変換とは、赤ちゃんの頭や体の向きを定期的に変えることです。
同じ姿勢で寝かせ続けると、特定の部位に圧力がかかり続け、頭の形がゆがむ原因となります。具体的には、授乳の際に左右交互に抱く、寝かせる向きを定期的に変える、ベッドに寝かせる際の頭の位置を変えるといった工夫が効果的です。
タオルを頭から背中にかけて入れることで、体幹ごと向きを変えることができ、赤ちゃんも頭を動かしやすくなります。
なお、うつぶせ寝はSIDSのリスクがあるため、赤ちゃんや保護者が寝ている時は必ず仰向けの姿勢にしてください。
タミータイム
タミータイムとは、赤ちゃんが起きている状態で保護者の見守りの下、うつぶせの姿勢で過ごすことです。「うつぶせ遊び」「腹ばい練習」とも呼ばれています。
欧米では後頭部の扁平化予防と運動発達の促進のために広く推奨されており、1日20分のタミータイムが目標とされています。
日本でも、特に首がすわる生後3か月頃までの期間に積極的に取り入れることで、頭のゆがみ予防につながると考えられています。
月齢ごとの目安は以下のとおりです。
月齢 | 1回あたりの目安時間 |
|---|---|
生後1〜2か月 | 10〜30秒程度 |
生後3〜4か月 | 1〜3分程度 |
生後5か月以降 | 5〜10分程度 |
最初は赤ちゃんの機嫌を見ながら短い時間から始め、少しずつ延ばしていきましょう。
実施する際の注意点は以下の3点です。
- 赤ちゃんから絶対に目を離さない
- 柔らかい布団やクッションは避け、硬めのマットの上で行う
- 眠そうになったらすぐに仰向けに戻す
授乳後や食後は嘔吐する可能性があるため、時間を空けて実施してください。
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枕を用いる
使用する枕のやわらかさや大きさ、使い方によって、得られる効果はさまざまです。
体位変換でも枕を用いる方法でも、いずれも共通して大切なのは「頭のへこんでしまった部分をできるだけ接地させないよう工夫すること」です。
ただし、赤ちゃんを縦抱きにして頭をどこにも接地させない姿勢の場合、ゆがみが悪化することはありませんが、改善することもない点を理解しておく必要があります。
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頭の形のゆがみの治療方法
予防策を実施していても、頭の形がゆがんでしまうことがあります。その場合、ゆがみの程度や赤ちゃんの月齢に応じて、適切な治療方法を選択することができます。
ヘルメット治療

体位変換や枕を用いた方法を継続していても改善が難しい場合、あるいは頭のゆがみが強い場合には、頭蓋形状矯正ヘルメットによる治療が選択肢となります。
ヘルメット治療は、頭の扁平化した部分に空間を作り、突出した部分の伸びを抑えることで矯正していく方法です。国内外の論文で治療効果が多数報告されており、重度の頭のゆがみにも対応できる治療法として認知されています。
治療開始のタイミングは生後3〜6か月が最も効果的とされていますが、診療現場では重症度と月齢を総合的に評価して対応を決定します。
「治療ありき」ではなく、軽度から中等度であれば体位変換の指導を行い経過を観察することも多くあります。重度のゆがみが認められる場合や、体位変換だけでは改善が難しいと判断された場合に、初めてヘルメット治療が提案されます。
治療の決定を急ぐ必要はありません。医療機関では、メリットやデメリット、費用などについてしっかりと説明を受けることができます。ご家族でじっくり検討し、お子さんとご家族にとって最善の選択を医師と一緒に考えていくことが大切です。

予防が最も重要
いずれにしろ、治療の前に予防することが最も重要です。
少なくとも首がすわる生後3か月頃までは、体位変換やタミータイムを積極的に取り入れることを心がけてください。仮に頭の形がゆがんでしまったとしても、早期であればあるほど対処しやすくなります。

医師に聞く:診療現場で起きていること
実際に頭の形外来を担当する医師への取材から、診療現場のリアルをお伝えします。
来院されるママパパの傾向
頭の形外来を受診される保護者のほとんどが、「受診するほどのことなのか」という迷いを抱えたまま来院されます。インターネットで情報を調べるほど不安が大きくなり、「うちの子は大丈夫なのか」と悩んだ末に予約を入れる、というパターンが多いようです。
来院時に最も多いご相談は、「ヘルメット治療をすべきか」です。重症度の数値を調べて受診される方もいますが、実際の診療では数値だけで判断するわけではありません。
「数値はあくまで目安であり、ご自身がどのように感じるかのほうが大切です」愛育こどもクリニック 脇田先生
という言葉にもあるように、保護者が気になっているかどうか自体が、ひとつの判断材料になります。
受診のタイミングも年々早まっており、以前は生後6〜7か月で来院される方が多かったのですが、近年は生後3〜4か月での相談が増えています。それだけ情報が広まり、早めに動く保護者が増えているということでもあります。
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医師から伝えていること
診療現場で繰り返し伝えられているのは、「治療は全員が対象ではない」ということです。評価の結果、体位変換の指導だけで十分なケースも多くあります。
ヘルメット治療が選択肢に上がる場合でも、すぐに決断する必要はありません。
「ヘルメット治療をしなくても改善する人には、治療は不要です。変形のピークを見極めることが大事なので、迷うケースは存分に迷っていただきたいと思っています。決断を急ぐ必要はないです。」
という言葉にもあるように、受診後もじっくり考える時間があります。
治療の選択についても、する・しない、どちらかが正解というわけではありません。
「治療を「する」「しない」、どちらも正解です。何より大切なのは、ご家族がお子さまのためにしっかり考えて出された結論であること」
という言葉が示すように、保護者が納得して選んだ道が、その家族にとっての最善です。
まず受診することで、現在の状態を客観的に把握でき、そのうえで選択肢を考えることができます。

頭の形外来の一般的な診療の流れ
複数の頭の形外来への取材から見えてきた、一般的な初診の流れをご紹介します。
予約
多くの医療機関では、頭の形外来はウェブまたは電話での事前予約制です。専門外来の診察日が週1〜2回に限られているクリニックも多いため、気になりはじめたら早めに予約することをおすすめします。
問診・視診
来院後まず問診を行い、いつ頃から気になり始めたか、向きぐせの有無などを確認します。同時に、頭蓋骨縫合早期癒合症などの病的な変形でないかを視診や超音波検査(エコー)などで確認します。
計測・撮影
ノギスによる計測や3Dスキャナーによる撮影を行います。得られた数値をもとに重症度を評価します。多くの医療機関では当日中に結果をお伝えします。
結果説明・方針の相談
計測結果と月齢をもとに、現状と選択肢を説明します。「その日に決めなくていい」というスタンスのクリニックがほとんどで、資料を持ち帰ってご家族でじっくり検討する時間があります。
迷ったら、まずは医療機関に相談を
赤ちゃんの頭の形について少しでも気になることがあれば、一度専門の医療機関に相談してみることをおすすめします。
診察を受けることで、現在の状態を客観的に知ることができ、適切な対処方法についてアドバイスを受けることができます。
治療が必要かどうかにかかわらず、後悔が残らない選択ができるよう、まずは専門医に相談して現在の状態を確認することが大切です。早期に相談することで、体位変換などの簡単な予防法で改善できる可能性も高まります。
よくある質問(Q&A)
パパ・ママから寄せられる、赤ちゃんの頭の形についてのよくある質問にお答えします。
Q. 赤ちゃんの頭のゆがみは自然に治りますか?
A. 生後3か月頃に頭のゆがみのピークを迎え、生後6か月頃には改善する傾向があります。ただし、生後4〜8か月頃に重度のゆがみがある場合は、約3か月経過した後も約7割が重度のままという研究結果があります。
「自然に治る」という一言だけでは状態を正確に伝えきれないため、気になる場合は専門医に相談することをおすすめします。
Q. 赤ちゃんの頭の形がゆがむ原因は何ですか?
A. 赤ちゃんの頭はやわらかく、胎内の姿勢や出産時の状況、出生後の体位や向きぐせなどにより頭の形がゆがんでしまうと考えられています。
日本では仰向け寝の文化が根付いているため、頭のゆがみがある赤ちゃんが多いとされています。
Q. 頭の形のゆがみにはどんな種類がありますか?
A. 大きく3種類に分類されます。斜頭症(後頭部が左右非対称)、短頭症(後頭部が平らで左右に広がる、いわゆる絶壁頭)、長頭症(頭が前後方向に長い形)です。
これらは生後3か月未満に発生するケースが多いとされています。
Q. 頭の形のゆがみが残るとどんな影響がありますか?
A. 主な問題として整容的な影響があげられます。顔の左右差、帽子が脱げやすい、ヘッドフォンの位置が合わないといったことが起こりえます。
また、耳の位置のずれや歯並びの問題があげられることもあります。発達への影響は大部分の乳幼児では問題ないと報告されています。
Q. 頭の形のゆがみを予防する方法はありますか?
A. 頭を一定の向きで寝かせ続けないことが大切です。体位変換(頭や体の向きを定期的に変える)、タミータイム(起きている状態でのうつぶせ遊び)、枕を用いる方法などが効果的です。特に生後3か月頃までの早い時期から取り入れることが推奨されます。
Q. ヘルメット治療は必ず必要ですか?
A. 「治療ありき」ではありません。軽度から中等度のゆがみであれば体位変換やタミータイムの指導を行い、経過を観察することも多くあります。
重度のゆがみが認められる場合や、体位変換だけでは改善が難しいと判断された場合に、初めてヘルメット治療が提案されます。
Q. いつ医療機関に相談すべきですか?
A. 推奨されるタイミングは生後3〜4か月頃です。この時期は頭の形の変形がピークにあたり、適切な評価と対処が可能です。
ただし、心配な場合はいつでも受診して構いません。軽症の場合でも相談窓口として活用していただくことで、早期の予防指導や隠れた病気の発見につながることがあります。
Q. 治療を受けるかどうか迷っています。
A. 治療の決定を急ぐ必要はありません。医療機関では、メリットやデメリット、費用などについてしっかりと説明を受けることができます。
ご家族でじっくり検討し、お子さんとご家族にとって最善の選択を医師と一緒に考えていくことが大切です。まずは相談だけでも構いません。
Q. どの医療機関で相談できますか?
A. 小児科や形成外科、脳神経外科などで相談できます。「頭の形外来」「頭蓋変形外来」といった専門外来を設けている医療機関もあります。
全国の提携医療機関は当サイトの医療機関一覧から検索できます。
Q. タミータイムはいつから始めればよいですか?
A. 生後すぐから始められますが、不安な場合は1か月健診後からスタートするのがおすすめです。最初は10〜30秒程度から始めて、赤ちゃんの機嫌を見ながら少しずつ時間を延ばしていきましょう。
実施中は必ず赤ちゃんから目を離さず、眠そうになったらすぐに仰向けに戻してください。
Q. 自然に治った事例はありますか?
A. あります。生後6か月頃には多くの赤ちゃんで生後1か月頃と同程度まで改善するというデータがあります。
ただし、生後4〜8か月頃に重度のゆがみがある場合は、約7割が重度のまま残るという研究結果もあります。「自然に治るかどうか」は重症度によって異なるため、気になる場合は専門医に評価してもらうのが確実です。




