公開日 2025/05/15

【医師解説】赤ちゃん(新生児)の向き癖で頭がゆがむ?原因や対策について

thumbnail

この記事の監修者

さの赤ちゃんこどもクリニック 院長

佐野 博之 先生

いつも同じ向きで寝ると頭の形に影響する?向き癖のリスクとは

A.一般的に、赤ちゃんは寝ているときに頭の向きを変えたり、横を向いたりすることが多いのですが、向き癖があると頭を一定の向きに寄せる癖がついてしまい、その方向にしか顔を向けなくなることがあり、斜頭症など位置的頭蓋変形症を生じることがあります。

また、首や背中の筋肉が偏って発達してしまうことがあり、長期的には姿勢や運動能力に影響を及ぼす場合があるため、早めに対処する必要があります。

もし、気になるようでしたら健診の際などに医師に相談してみるのが良いでしょう。

参考 : 

向き癖が起きる3つの主な原因

様々な原因が考えられますが、次のようなことが考えられます。

出産時や胎児期の姿勢

赤ちゃんが子宮内で長時間同じ姿勢を取っている場合、その姿勢が癖になってしまうことがあります。例えば、頭を右側に寄せたまま長時間過ごしていた場合、赤ちゃんが生まれてからも頭を右側に寄せる癖がつきやすくなります。また、出産時の吸引分娩や鉗子分娩などの影響で生じてしまうこともあります。

身体的な問題

赤ちゃんの首の筋肉が弱かったり、首を支えるための筋肉が十分に発達していない場合、特定の向きに頭を寄せることが多くなることがあります。また、胎位不良などの身体的な問題が原因になることがあります。

他にも、色々な原因がありますが、赤ちゃんの頭はとてもやわらかくできているので、大人であれば変形しないようなちょっとした外部の圧力で簡単に頭の形が変形してしまいます。

参考:

頭の形測定会

向き癖は遺伝する?遺伝的要因と環境要因の関係

向き癖やあたまの歪みに関しては、遺伝が関わっている場合とそうでない場合があります。1)の論文によると、遺伝的要因が関与することが報告されています。

しかし、現時点では具体的な遺伝子や遺伝的メカニズムについてはまだ十分に解明されていないため遺伝が原因となることはまれで、多くの場合は、遺伝以外の影響が大きいとされています。

参考:

1)Arnold, Laura T., et al. "The genetics of plagiocephaly: a review and introduction of a new hypothesis." Journal of Neurosurgery: Pediatrics, vol. 9, no. 1,(2012):1-8.

向き癖を放置すると起こる3つの影響

軽度な向き癖であれば成長に合わせて自然と改善されていくこともあります。また、生後1〜2ヶ月頃までであれば、意識して逆を向かせるなどして改善することはできます。しかし、深刻な場合は、次のようなことが起こる可能性があります。

首の発達への影響の可能性

赤ちゃんが常に同じ方向に頭を寄せるため、その方向に首の筋肉が発達し、逆に寄せない方向の筋肉が弱くなってしまうことがあります。これが続くと、首の発達に影響を与え、姿勢異常を引き起こすことがあります。

絶壁、長頭症などの頭の形への影響の可能性

頭の形に偏りが生じることがあります。例えば、常に左側に頭を寄せている場合、左側が平らになり、右側が突き出た形になることがあります。これが長期化すると、頭の形に変形が生じ、後に変形による支障が生じる場合があります。

運動能力への影響の可能性

身体の偏りが生じるため、バランス感覚や運動能力に影響を与えることがあります。これまでは、頭の向き癖やゆがみが成長発達の遅れや機能障害の原因にはならないと考えられてきましたが、近年では、頭のゆがみと運動や神経発達への関連が注目されています。

しかしながら、今のところ明確な関連性は証明されていません。

参考:

Persing, John, et al. "Prevention and management of positional skull deformities in infants." Pediatrics 112.1 (2003): 199-202.

Flannery, Ann Marie, et al. "Congress of neurological surgeons systematic review and evidence-based guidelines for the management of patients with positional plagiocephaly: executive summary." Neurosurgery 79.5 (2016): 623-624.

向き癖を改善するためにできること

向き癖を改善するには、大きく2つの方法があります。

頭部の位置を変える

常に同じ方向を向いている場合は、反対側に向かせたり、頭部の位置を変えたりすることで、頭の形が均等になるように促すことができます。物を目の前に置いたり、音や声で注意を引くことで、赤ちゃんが自発的に頭を向けるように促すことも効果的です。

タミータイム(うつ伏せ運動)

タミータイムとは赤ちゃんが起きている時に、大人が見守っているなかで、うつ伏せにして過ごさせることを言います。うつ伏せ姿勢にすると、首が座る前の赤ちゃんでも頭を持ち上げたり横に向けたりしようとします。この運動が、首から背中にかけてや肩甲骨周辺の筋肉の発達や、体を支えるためにバランスをとる感覚に良い影響を与えます。ずっと同じ姿勢でいることによる頭の変形を防ぐ効果も期待できるとされています。

タミータイム うつ伏せ運動 赤ちゃん

上記の方法を試しても改善されず、生後3ヶ月以降で、頭の形に変形をきたしている場合は、さらに変形が強くなる可能性もあるため、ヘルメット治療も選択肢として考えてもいいかもしれません。頭の形の変形を改善することにより左右への向きやすさを均等にして、向き癖の改善を狙うことも目的とします。

ヘルメット治療とは、赤ちゃんの頭の形に合わせた専用のヘルメットを装着することで、赤ちゃん自らの頭蓋成長を原動力としてヘルメットの形状に誘導する治療法です。

ヘルメットの中では頭の平らになってしまった部分には空間があるので成長が促進され、ヘルメットが接触している部分では成長を待機してもらいます。ヘルメット治療を行う場合は、かかりつけ医や専門家に相談し、リスクやメリットをよく理解してから決断することが大切です。

参考:

Steinberg, Jordan P., et al. "Effectiveness of conservative therapy and helmet therapy for positional cranial deformation." Plastic and reconstructive surgery 135.3 (2015): 833-842.

Collett, Brenton R., Gray, Kristen E., and Starr, Jacqueline R. "Factors Predictive of Outcome in Infants with Deformational Plagiocephaly or Brachycephaly." The Journal of Pediatrics, vol. 163, no. 1, (2013):109-113.

Miller, Robert I., Clarren, Sterling K., and Long, Theodore E. "A New Look at Deformational Plagiocephaly: Prevention, Diagnosis, and Treatment." The Journal of Pediatrics, vol. 136, no. 3, (2000):258-262.

自宅ケアで改善しない場合の医療機関への相談方法

A.まずは、かかりつけの医師に相談することがおすすめです。最近では、頭の形外来を設置している医療機関も増えてきていますので、そこに相談するのも良いでしょう。頭の形外来は形成外科・脳神経外科や小児科などで開設されている、赤ちゃんの頭の形に問題がある場合に専門的に診断や治療を行うための外来です。

赤ちゃんの頭は成長期にあり、向き癖や寝方などが原因で頭の形が変形することがあります。これが重度になると、顔の歪みや左右の耳介のずれなどの問題が起こる場合があります。頭の形外来では、まずは赤ちゃんの頭部の詳しい検査を行い、向き癖や頭の形の変形の原因を特定します。必要に応じて、レントゲンやCT検査、エコー検査などを実施しを行うこともあります。

その後、赤ちゃんの月齢や症状に合わせて、理学療法やヘルメット療法などの治療法が提案されます。治療の期間は、症状の程度によって異なりますが、早期の治療が効果的とされています。

医師に聞く、診療現場で起きていること

向き癖による頭のゆがみについて、実際の医療現場ではどのような判断が行われ、どのタイミングで相談すればよいのでしょうか。医師インタビューから得られた知見をもとに、診療現場での実際の対応について解説します。

診療現場での判断

診療現場では、向き癖による頭のゆがみに対して、重症度と月齢に応じた判断が行われています。診察時には視診やノギス(計測器)を用いて頭の形を評価し、軽度・中等度・重度といった重症度を診断します。重要なのは、「治療ありき」ではなく、お子さまの状態に応じて最適な方法を提案するという姿勢です。

軽度の場合は体位変換やタミータイムなどの理学療法を中心に指導が行われ、中等度以上の場合にヘルメット治療が選択肢として提示されることがあります。

ただし、最終的な判断はご家族の意思を尊重し、納得していただくことを大切にされています。また、頭の形の変形自体が機能的な問題を引き起こすことは少ないものの、将来的な生活の質への影響(帽子の着用や整容面)も考慮されます。

「重症度が低い場合は体位変換の指導を行って自然矯正を期待すること、重症度が高くなると自然矯正は難しくなること、その場合はヘルメット治療という方法もあること、それらを短時間でお伝えするのは大変でした」(伊藤先生 香里園いとう小児科)


相談のタイミング

実際の診療現場で推奨されている相談タイミングは、生後3〜4か月頃です。現在受診されている方の多くは生後2〜6か月頃の方が中心で、この時期は頭のかたち外来の受診タイミングとして最も多い月齢帯となっています。

月齢別の相談傾向と対応は以下のようになります。

月齢

主な対応方法

ポイント

生後1〜2か月

体位変換・タミータイム指導

早期相談で、自然改善する可能性

生後3〜4か月

診察・評価、必要に応じて治療開始

頭の形の変化が最も大きい時期

生後10〜11か月

診察・説明・経過観察

頭の形の変化が緩やかになる時期


早期相談のメリットとして、生後1〜2か月頃の向き癖がつきかけた段階での相談であれば、体位変換やタミータイムなどの理学療法で改善が期待できる可能性があります。


一方、生後10〜11か月頃に「ずっと気になっていたけどこのタイミングになってしまった」と受診される方もいらっしゃいますが、この時期からのヘルメット治療は効果が限られるため、「もっと早く来ればよかった」とおっしゃる方が多いのが実情です。


「早い段階での受診をお勧めしています。現在の患者さんは生後2~6か月くらいの方が多いです。早期であればヘルメット治療以外の方法も含めて選択肢が多くなります。12か月以降では治療効果が低減してしまうため、気になる場合は早めの相談をお勧めしています」(山田先生 天王寺だい脳神経外科)

診療の流れ

頭のかたち外来では、小児科、形成外科、脳神経外科などで診療が行われています。初診の流れは医療機関によって若干異なりますが、一般的には以下のステップで進みます。


  1. 問診・診察:いつ頃から気になり始めたか、どのような症状かなどを詳しくお伺いし、頭蓋骨縫合早期癒合症などの疾患の有無を確認します。


  2. 3D撮影・計測:3D撮影装置やノギスを用いて頭の形を客観的に評価します。3D画像で立体的に頭の形を確認できるため、ご家族にも状態を視覚的に理解していただきやすくなります。


  3. 結果説明・治療方針の相談:撮影結果をもとに現在の頭の形の状態を説明し、必要に応じて治療方法についてご説明します。重要なのは、ご家族と一緒に最適な方法を考えることで、治療の決定を急ぐことはありません。

初診は30〜40分程度かかることが多く、ご家族がリラックスして相談できる雰囲気づくりが心がけられています。また、必ずしもすべてのお子さんに治療が必要というわけではなく、診察の結果「問題がなければそれで良い」というスタンスで対応されています。

「まずは電話で予約をしていただくところから始まります。実際に来ていただいたら、いつ頃から気になり始めたのかとか、どんなところが心配なのかとか、じっくりお話を聞かせていただきます。それから診察をして、頭の骨の様子を確認した後で、3D撮影という特殊な写真撮影をするという流れになります」(秋山先生 伊勢原協同病院)

向き癖が気になったら、まずは相談を

向き癖による頭のゆがみは、早期に相談することで選択肢が広がります。「こんなことで相談してもいいのかな」と迷われる必要はありません。実際の診療現場では、「気になったらまずは相談してください」というメッセージが共通しています。

診察の結果、治療が必要でない場合もありますし、必要な場合でもご家族で十分に検討する時間が設けられます。受診が遅れて何もできなくなってしまうよりも、まずは気軽に相談していただくことが大切です。

よくあるご質問(Q&A)

Q. いつも同じ向きで寝ていても大丈夫ですか?

A. 向き癖があると斜頭症など位置的頭蓋変形症を生じることがあります。また、首や背中の筋肉が偏って発達してしまうことがあり、長期的には姿勢や運動能力に影響を及ぼす場合があるため、早めに対処する必要があります。

Q. 向き癖の原因は何ですか?

A. 出産時や胎児期の姿勢、身体的な問題(首の筋肉が弱い、首を支えるための筋肉が十分に発達していないなど)が考えられます。赤ちゃんの頭はやわらかいため、ちょっとした外部の圧力で簡単に頭の形が変形してしまいます。

Q. 向き癖は遺伝が原因になることもありますか?

A. 遺伝的要因が関与することが報告されていますが、現時点では具体的な遺伝子や遺伝的メカニズムについてはまだ十分に解明されていません。遺伝が原因となることはまれで、多くの場合は遺伝以外の影響が大きいとされています。

Q. 向き癖をそのままにすると将来どうなりますか?

A. 軽度な向き癖であれば自然と改善されていくこともありますが、深刻な場合は、首の発達への影響、絶壁や長頭症などの頭の形への影響、運動能力への影響が起こる可能性があります。

Q. 向き癖を治す方法はありますか?

A. 頭部の位置を変える方法(物を目の前に置いたり、音や声で注意を引くなど)やタミータイム(うつ伏せ運動)が効果的です。生後3ヶ月以降で頭の形に変形をきたしている場合は、ヘルメット治療も選択肢として考えられます。

Q. タミータイムなどを試しても改善しない場合はどうすればいいですか?

A. かかりつけの医師や頭の形外来に相談することがおすすめです。頭の形外来では詳しい検査を行い、赤ちゃんの月齢や症状に合わせて理学療法やヘルメット療法などの治療法が提案されます。