公開日 2026/06/16
【医師解説】新生児の向き癖の直し方|原因と頭の形への影響

目次
この記事の監修者

さの赤ちゃんこどもクリニック 院長
佐野 博之 先生
<経歴>
大阪大学医学部卒。大阪大学医学部附属病院入局。りんくう総合医療センター、大阪大学医学部附属病院、大阪母子医療センター、愛染橋病院、淀川キリスト教病院 小児科 主任部長/母子センター長を経て、2020年より現職。
<資格>
日本小児科学会小児科専門医・指導医
日本周産期・新生児医学会周産期(新生児)専門医・指導医
地域総合小児医療認定医、子どもの心の相談医
新生児の向き癖は、体位変換(頭・体の向きを定期的に変える)とタミータイム(うつぶせ遊び)を生後3〜4ヶ月頃までに始めることで、軽度なら自然に改善する傾向があります。
放置すると向いている側の後頭部が平らになり、斜頭症につながる可能性があるため、早めの対策が推奨されます。本記事では、向き癖の原因・具体的な直し方・頭の形への影響を解説します。

新生児の向き癖とは
Q. 赤ちゃんがいつも同じ方向ばかり向いています。そもそも「向き癖」とは、どのような状態を指すのでしょうか?
A. 向き癖とは、赤ちゃんが横になったときに、常に同じ方向へ頭を向けてしまう状態のことをいいます。
左右どちらかに向きが固定されると、自然に首の向きが変わりにくくなっていきます。
寝ているときだけでなく、抱っこやお昼寝のときにも同じ向きが続きやすくなります。
Q. 向き癖がある赤ちゃんは、珍しいのでしょうか?うちの子だけかもしれないと不安です。
A. 向き癖は、決して珍しいことではありません。
向き癖の結果として表れやすい「頭のゆがみ」の割合からも、その傾向がうかがえます。
たとえばカナダの研究では、生後3か月頃の新生児の約47%[*1]、日本の研究では生後3か月で56.8%、生後6か月でも43.2%に頭のゆがみがあると報告されています[*2]。
これには、多くの赤ちゃんが生後早期に同じ向きで長時間寝ていることが影響していると考えられています。
同じ向きばかり向くことに気づいても、それ自体は多くの赤ちゃんに見られる状態だと知っておくと、過度に心配せずに対応を考えやすくなります。

新生児の向き癖の原因
Q. なぜ向き癖は起きるのでしょうか。生まれる前や出産時の影響はありますか?
A. 胎内での姿勢が引き継がれることがあります。
子宮の中で長時間同じ姿勢をとっていると、生後もその向きの癖が残ってしまうためです。
ただし、産後に同じ向きで寝続けることが主な原因になることが多く、生まれてからの寝かせ方やケアによって変わっていく部分も大きいといえます。
Q. 首の筋肉も関係すると聞きました。どういうことでしょうか?
A. 首の筋肉が未熟で左右差があると、同じ向きにしか頭が向きにくくなることがあります。
こうした背景のひとつに、首の筋肉(胸鎖乳突筋)がこわばる「筋性斜頸」と呼ばれる状態がある場合もあります。
筋性斜頸は、1歳半頃までに自然に整っていくことが多いとされています。
ただし、首の動きに気になる点がある場合は、自己判断せず医師に相談すると安心です。
Q. 毎日の育児環境も関係しますか?
A. はい、ベッドの置き方や授乳において、光や音といった刺激が一方向に偏ると向き癖が強化されやすいとされています。
赤ちゃんは明るい方や音のする方へ自然と顔を向けるため、いつも同じ方向に興味を引くものがあると、その向きが定着しやすくなります。
向き癖による頭の形への影響
Q. 同じ向きが続くと、頭の形にはどう影響するのでしょうか?
A. 同じ向きが続いて、向いている側の後頭部に圧力がかかり続けると、その部分が平らになり、左右非対称の頭の形(斜頭症)につながることがあります。
こうした頭のゆがみは、まだ自分で動くことができない生後3か月未満の時期に見られることが多いとされています。
Q. ゆがみは自然と治るのでしょうか?
A. 軽度のゆがみは、月齢が早いうちであれば、向き癖への対策で改善することもあります。
頭の形が変わりやすい生後3〜4か月頃までは、寝かせる向きや授乳の左右を変える体位変換や、起きている時間のタミータイムを続けながら、左右差が小さくなっていくかを見ていきます。
一方で、重度のゆがみは自然には改善しにくいことがわかっています。生後4〜8か月頃に重度のゆがみがあった赤ちゃんを調べた研究では、約3か月後も約7割が重度のままだったと報告されています[*2]。
月齢が進むと頭の成長はゆるやかになり、家庭でのケアで整う余地も小さくなります。ヘルメット治療も対象となる月齢が限られるため、ケアを続けても左右差が気になる場合は、様子を見続けるより早めに医療機関で程度を計測してもらうと、その後の対応を考えやすくなります。
Q. 頭の形のゆがみは、発達に影響するのでしょうか?
A. 大部分の乳幼児では、発達に問題がないと報告されています[*3]。
ただし、頭の形のゆがみと運動・神経発達の因果関係は現時点で明確に証明されているわけではありません。
重度のゆがみがある場合には、継続的な経過観察がすすめられています。

赤ちゃんの向き癖を直すために自宅でできる対策
Q. 新生児の向き癖を直すために、自宅では何から取り組めばよいですか?
A. 赤ちゃんの頭や体の向きを定期的に変えてあげる、体位変換から始めましょう。
向き癖の方向と反対側に頭が向くよう、ベッドの向き・授乳の左右・光の方向を工夫します。
赤ちゃんが向いている方と反対側から話しかけたり、おもちゃを見せたりすることで、意識を反対方向に向けることもできます。
仰向けの姿勢が続くと頭の同じ部分に圧力がかかり続けますが、向きを変えることで圧力が分散され、偏りを防ぐことが期待できます。
Q. タミータイム(うつぶせ遊び)も役立つと聞きました。月齢別の目安はありますか?
A. はい、起きている時間に取り入れるタミータイム(うつぶせ遊び)も有効です。
仰向けで同じ向きに固定される時間が減るため、向き癖の強化を和らげるとともに、頭の同じ部分に圧力がかかり続けるのを防ぐ効果も期待できます。
月齢別の目安としては、0〜3ヶ月は合計10分程度(数分×複数回)、3〜6ヶ月は1日数分×2〜3回程度。最初は保護者のお腹や膝の上から始めて、慣れてきたら床やマットの上でも試していくとよいでしょう。
行うときは必ず付き添い、眠ってしまったら仰向けに戻してください。
Q. 丸めたタオルを使って向きを変える方法もあると聞きました。どのように使えばよいですか?
A. 向きやすい側に丸めたバスタオルを入れて、顔や体が反対側を向くように促す方法があります。
ただし、タオルが顔を覆わないように注意し、寝入ったらタオルは外してください。
やわらかいクッションやぬいぐるみを周囲に置かないなど、窒息事故の防止にも気を配りましょう。
Q. ドーナツ枕や向き癖防止枕は使ってもよいですか?
A. ドーナツ枕や向き癖防止枕の使用は避けてください。
米国小児科学会(AAP)の2022年ガイドラインでも、枕やふとんなどの柔らかいものは赤ちゃんが寝る場所に置かないよう推奨されています[*4]。
睡眠中の使用は仰向け寝の安全ガイドラインと矛盾し、有効性・安全性を示す科学的根拠も現時点では確立されていません。
向き癖は自然に治る?医療機関に相談する目安
Q. このまま様子を見ていれば、向き癖は自然に整っていくのでしょうか?
A. 向き癖そのものは、寝かせ方や声かけを工夫することで少しずつ整いやすくなります。
ただし、生後0〜3か月は向き癖が固定化しやすい時期とされており、生後3〜4か月頃までのできるだけ早い時期からこうしたケアに取り組むことが、整っていく見込みを高めるとされています。
向き癖によってできた頭のゆがみについても、軽度であれば自然に整いやすい傾向があります。
生後1か月から6か月にかけての研究では、生後3か月頃にピークを迎え、生後6か月頃には生後1か月頃と同程度まで整っていくことが明らかになっています[*2]。
気づいた時期が少し遅かったと感じても、まずはできるケアから始めてみることが大切です。
Q. 向き癖が治らないときは医者に相談したほうがよいですか?
A. 向き癖が著しい場合や首の動きに明らかな制限がある場合は、小児科・小児脳神経外科・形成外科などで相談するのが望ましいとされています。
生後3〜4か月頃を目安に様子を見て、気になる状態が続くようなら早めに相談してください。
また、1か月健診や3〜4か月健診のタイミングで相談することもできます。
気になったら、まずはお近くの医療機関でご相談を
向き癖は家庭でのケアで整っていくことが多い一方、「普通の範囲か、相談したほうがよいか」は見ただけでは判断しにくいものです。迷ったときは、健診の機会なども使いながら早めに医療機関で相談してみてください。

よくある質問(Q&A)
Q. 向き癖があると、なぜ赤ちゃんの頭の形がゆがむのですか?
赤ちゃんの頭の骨はまだ完全につながっておらず、脳の成長に合わせて広がるやわらかい状態です。そのため、同じ方向を向いて寝続けて頭の後ろ側の同じ場所に圧力がかかり続けると、その部分が平らになり、左右非対称の頭の形(斜頭症)につながることがあります。
なお向き癖そのものは、胎内での姿勢がそのまま残ること、首の筋肉が未熟で左右の動かしやすさに差があること、寝かせる向きや授乳の向きが毎回同じになること、ベッドの位置によって光や音の刺激が一方向に偏ること、などが背景にあります。
Q. 抱っこやおんぶのときも、いつも同じ向きで顔が偏ってしまいます。気をつけたほうがよいですか。
抱っこやおんぶの向きも、顔の偏りに関わることがあります。
寝かせる向きや授乳と同じで、時々左右を入れ替えると偏りにくくなります。
気になる偏りが続く場合は医療機関で相談してみてください。
Q. 上の子も同じ向き癖がありました。きょうだいで同じだと体質なのでしょうか。
向き癖は胎内での姿勢・首の左右差・寝る向き・授乳側などさまざまな要因が重なって起こり、体質と決めつけることはできません。
上の子の経過と同じとも限らないため、お子さんごとの様子を見てケアしてください。
Q. チャイルドシートやベビーカーでも同じ向きを向きます。外出時はどうすればよいですか。
チャイルドシートやベビーカーでも顔が同じ向きに偏ることがあります。
安全を最優先にしつつ、座らせる向き・声かけの位置・興味を引くものの場所を時々変えると、同じ方向に偏りにくくなります。
参考文献
[*1]: Mawji A, Vollman AR, Hatfield J, McNeil DA, Sauvé R. The incidence of positional plagiocephaly: a cohort study. Pediatrics. 2013; 132(2):298-304. PubMed
[*2]: Miyabayashi H, Nagano N, Kato R, Noto T, Hashimoto S, Saito K, Morioka I. Cranial Shape in Infants Aged One Month Can Predict the Severity of Deformational Plagiocephaly at the Age of Six Months. Journal of Clinical Medicine. 2022; 11(7):1797. DOI: 10.3390/jcm11071797
[*3]: Hutchison BL, Stewart AW, Mitchell EA. Deformational plagiocephaly: a follow-up of head shape, parental concern and neurodevelopment at ages 3 and 4 years. Archives of Disease in Childhood. 2011; 96(1):85-90. PubMed
[*4]: Moon RY, Carlin RF, Hand I; Task Force on Sudden Infant Death Syndrome; Committee on Fetus and Newborn. Sleep-Related Infant Deaths: Updated 2022 Recommendations for Reducing Infant Deaths in the Sleep Environment. Pediatrics. 2022; 150(1):e2022057990. DOI: 10.1542/peds.2022-057990





