公開日 2026/05/27
【医師解説】赤ちゃんの向き癖の原因と直し方|そのままにすると頭の形はどう変わる?

この記事の監修者

さの赤ちゃんこどもクリニック 院長
佐野 博之 先生
<経歴>
大阪大学医学部卒。大阪大学医学部附属病院入局。りんくう総合医療センター、大阪大学医学部附属病院、大阪母子医療センター、愛染橋病院、淀川キリスト教病院 小児科 主任部長/母子センター長を経て、2020年より現職。
<資格>
日本小児科学会小児科専門医・指導医
日本周産期・新生児医学会周産期(新生児)専門医・指導医
地域総合小児医療認定医、子どもの心の相談医
向き癖とはどんな状態?なぜ起きるのか

向き癖とは、赤ちゃんが横になったときに常に同じ方向へ頭を向けてしまう状態のことです。左右どちらかに固定されると、自然に首の向きが変わりにくくなります。
特に自分で頭を動かせない生後1〜2ヶ月の時期は、向き癖が最も固定しやすいとされています。一度習慣化すると、頭が向きやすい側に引き寄せられやすくなります。
向き癖の原因の一つに「筋性斜頸(きんせいしゃけい)」があります。これは首の胸鎖乳突筋のこわばりが原因で特定方向にしか向けなくなる状態です。
多くは1歳半頃までに自然改善しますが、向き癖が著しい場合や首の動きに明らかな制限がある場合は、早めに医師に確認することが望ましいとされています。
向き癖の主な原因
原因は一つではなく、胎児期からの姿勢、首の筋肉の発達状況、日常の育児環境など複数の要因が重なって起きることが多いとされています。以下で代表的な3つのケースを解説します。
胎児期・出産時の姿勢が影響するケース
赤ちゃんが子宮内で長時間同じ姿勢をとり続けている場合、その向きの癖が生後も引き継がれることがあります。たとえば、胎内で頭を右に寄せた状態が長く続くと、生まれた後も右を向く習慣がつきやすくなります。
また、吸引分娩や鉗子分娩では頭部に外力が加わるため、出産時の影響が向き癖の一因になる場合もあります。ただし、産前・出生時の影響は相対的に小さく、産後に同じ向きで寝続けることが主な原因になることが多いとされています。
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首の筋肉の発達が未熟なケース
赤ちゃんは首の筋肉がまだ十分に発達していないため、特定の向きに頭が傾きやすい状態にあります。首を支える筋肉の左右差が大きい場合、いつも同じ向きにしか頭が向かなくなることがあります。
筋性斜頸(きんせいしゃけい)と呼ばれる、首の胸鎖乳突筋のこわばりが原因となるケースもあります。筋性斜頸は多くの場合1歳半頃までに自然に改善しますが、向き癖が著しい場合や首の動きに明らかな制限がある場合は、早めに医師に相談することが望ましいとされています。
光・音・授乳の方向が固定されているケース
育児環境が向き癖を強めることもあります。ベッドをどちらかの壁側に寄せて置いている場合、部屋の光源や音の出る方向が常に一定の場合、授乳をいつも同じ側でしか行っていない場合などがこれにあたります。
赤ちゃんは光や音、親の声のする方向に自然と顔を向けようとします。そのため、刺激が一方向に偏っている環境では、同じ方向にしか向かない習慣が強化されやすくなります。「右(左)ばかり向く」という場合は、まず周囲の環境を確認してみましょう。
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そのままにした場合のリスク
向き癖の程度が軽く月齢が早ければ、自然に改善していくことも多いとされています。ただし、そのまま放置すると影響が出る可能性があります。
「深刻になる前に動くこと」の意味を知るために、3つの影響を確認しておきましょう。
首の筋肉が偏って発達する可能性
常に同じ方向に頭を向け続けると、その側の首の筋肉ばかりが使われ、逆側の筋肉が発達しにくくなることがあります。
この筋肉の左右差が固定化されると、首の動きに偏りが生じ、長期的には姿勢や運動能力に影響を及ぼす可能性があります。
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頭の形(斜頭症など)に影響する可能性
頭の柔らかい乳児期に同じ向きで長時間過ごすと、向いている側の後頭部が平らになり、左右非対称の頭の形になることがあります。これが斜頭症(しゃとうしょう)と呼ばれる状態です。
重症化すると、耳の位置のずれや顔の非対称につながる場合もあるとされています。向き癖の方向によって、頭の形への影響が出やすい箇所が変わります。
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運動能力への影響
身体に偏りが生じることで、バランス感覚や運動能力に影響を与える可能性があります。
近年、頭のゆがみと運動・神経発達との関連が研究されていますが、現時点では明確な因果関係は証明されていません。大部分のケースでは発達への問題は報告されていないとされていますが、重度の場合は経過観察が推奨されています。
向き癖の直し方
向き癖への対処は、特別な道具なしに始められます。生後3〜4ヶ月頃までのできるだけ早い時期から体位変換やタミータイムに取り組むことで、予防や改善につながる可能性があります。

体位変換は、向き癖と反対側に頭が向くよう、寝かせる向きを変える方法です。ベッドの向きを定期的に変えたり、向き癖と反対側におもちゃを置いて誘導したりすることが有効です。
タミータイム(うつぶせ遊び)は、後頭部への圧力を軽減しながら首・背中の筋力を鍛えます。1日20分を目安に、最初は10〜30秒の短時間から始めます。必ず赤ちゃんが起きている時間に大人が見守って行います。
授乳方向の交互変更は、授乳のたびに左右の腕を交互に使い、頭が向く方向を均等にする方法です。部屋の光や音源の位置を変えることでも向き癖の改善が期待できます。
参考:

頭の形が気になったら、医療機関でご相談を。測定だけでも可能です
向き癖への対応は、生後1〜2ヶ月頃までのできるだけ早い時期に始めることが理想的とされています。続くと頭の形のゆがみにつながることがあるため、早めのケアが望まれます。
原因は一つではなく、胎内での姿勢、授乳・抱っこ方向の固定、光や音など環境刺激の偏りが複数重なって起こります。対策としては、体位変換・タミータイム・授乳方向の見直しなどを日常生活に取り入れることが有効とされています。
ただし、首の動きに明らかな制限がある場合は筋性斜頸の可能性があり、重度の頭の形のゆがみは自然改善しにくいとされています。
自然に改善するケースもありますが、すべてがそうとは限らないため、頭の形や首の動きが気になる場合は早めに医師へ相談しましょう。
よくあるご質問(Q&A)
赤ちゃんの向き癖について、保護者からよく寄せられるご質問に回答します。
Q. 向き癖は自然に治りますか?
A. 軽度の向き癖であれば、成長に合わせて自然に改善していくことがあります。ただし、「自然に治る」と一概にいうことはできません。生後4〜8か月頃に重度のゆがみがある場合、約3か月後も約7割が重度のまま残るというデータもあります。
気になる場合は生後3〜4か月頃を目安に医師に相談することが望ましいとされています。
Q. 向き癖の原因は何ですか?
A. 胎児期・出産時の姿勢(子宮内での姿勢、吸引分娩・鉗子分娩の影響)、首の筋肉の発達の未熟さ、そして光・音・授乳の方向が一定に固定されている育児環境の3つが主な原因として考えられています。産後に同じ向きで寝続けることが最も多い原因とされています。
Q. 遺伝が原因になることもありますか?
A. 遺伝的要因が関与する可能性は報告されていますが、遺伝が原因となることはまれとされています。
多くの場合は産後の向き癖など環境要因が大きいとされています。遺伝によるゆがみが疑われる場合は、頭蓋骨縫合早期癒合症などの疾患の可能性もあるため、医療機関を受診することが推奨されます。
参考:Arnold, Laura T., et al. "The genetics of plagiocephaly: a review and introduction of a new hypothesis." Journal of Neurosurgery: Pediatrics, vol. 9, no. 1, (2012):1-8.
Q. 向き癖をそのままにすると将来どうなりますか?
A. 軽度であれば自然に改善することも多いとされていますが、放置した場合、首の筋肉が偏って発達する可能性、斜頭症など頭の形への影響、長期的には姿勢や運動能力に影響が出る可能性があります。
深刻な場合は早めに対処することが推奨されます。
Q. 直し方を試しても改善しない場合はどうすればいいですか?
A. 体位変換やタミータイムを試しても改善が見られない場合は、かかりつけ医や頭のかたち外来への相談が推奨されます。
生後3か月以降で頭の形に変形が見られる場合は、専門的な評価と、必要に応じた治療方針の提案を受けることができます。
Q. ドーナツ枕を使えば向き癖を防げますか?
A. ドーナツ枕は、頭の形のゆがみを予防・改善する効果について十分な科学的根拠が確認されていない育児グッズです。米国FDAは、SIDS(乳幼児突然死症候群)や窒息のリスクを高める可能性があるとして、使用しないよう注意喚起を発出しています。
向き癖の対策としては、体位変換・タミータイム・授乳方向の見直しといった日常的なケアが基本となります。
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Q. 向き癖は健診で診てもらえますか?
A. 乳児健診では、頭の形や首の動きを確認することがあります。向き癖が気になる場合は、健診の際に医師へ伝えましょう。健診の時期や確認内容は月齢によって異なるため、事前に相談のタイミングを把握しておくと安心です。詳しくは以下の記事もご覧ください。
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