公開日 2025/06/25

【医師解説】臨月はいつから?妊娠36週からの過ごし方と注意点とは?

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久保田産婦人科病院

西野 枝里菜 先生

妊娠後期に入ると、多くのママが「臨月っていつから始まるの?」と疑問に思うのではないでしょうか。お腹も大きくなり、赤ちゃんとの対面が近づいてくると、出産への準備や心構えについても気になってきますよね。

臨月は妊娠36週0日から39週6日までの妊娠10ヶ月目の期間を指しますが、この時期の過ごし方や注意点を正しく理解しておくことで、安心して出産を迎えることができます。今回は産婦人科医の視点から、臨月の定義や時期、体の変化、適切な過ごし方について詳しく解説していきます。


臨月とはいつからいつまで?

臨月について正しく理解するために、まずは医学的な定義から確認しましょう。一般的に使われている「臨月」という言葉と、医療現場で使われる「正期産」という用語には、実は微妙な違いがあります。ここでは、それぞれの意味と時期について詳しく説明します。


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臨月の医学的定義とは

臨月は、妊娠36週0日から39週6日までの期間、つまり妊娠10ヶ月目全体を指します。この時期は出産が間近に迫った大切な期間で、赤ちゃんの体の機能が急速に発達し、外界での生活に向けた最終的な準備が整う時期でもあります。

妊娠週数の数え方は最終月経開始日を0週0日として計算するため、実際の受精からは約2週間のずれがあることも覚えておきましょう。


正期産と臨月は何が違う?

正期産は医学用語で、妊娠37週0日から41週6日までの期間に起こる出産を指します。臨月よりも少し広い期間を含んでおり、赤ちゃんが外界で生きていくのに十分な機能を備えた時期として定義されています。

つまり、臨月の期間と正期産の期間は完全に一致するわけではなく、臨月に入ってから1週間後が正期産の開始となります。この違いを理解しておくことで、出産のタイミングについてより正確な知識を持つことができます。


週数の計算方法

妊娠週数は7日間を1週として計算され、月数は4週間を1ヶ月として数えます。例えば、妊娠36週0日は妊娠10ヶ月の始まりであり、臨月のスタートです。妊娠39週6日が臨月の終わりとなり、妊娠40週0日からは妊娠11ヶ月目に入ります。

この計算方法を理解しておくと、医師との会話や母子手帳の記録を見る際にも混乱することなく、自分の妊娠経過を正確に把握できるでしょう。


臨月に起こる体の変化と赤ちゃんの状態

臨月に入ると、ママの体と赤ちゃんの状態に大きな変化が現れます。この時期の変化を理解しておくことで、出産への心の準備もしやすくなるでしょう。また、正常な変化と注意が必要な症状を見分けることも大切です。


ママの体に現れる変化

臨月に入ると最も顕著に現れる変化の一つが、お腹が下がる感覚です。これは赤ちゃんが骨盤の中に下降してくるために起こる現象です。お腹が下がることで、今まで圧迫されていた胃や肺への圧迫が軽減され、胃もたれや胸やけの症状が改善されることが多くあります。

その一方で、膀胱への圧迫が強くなるため、頻尿の症状が増加する傾向にあります。さらに、子宮口が徐々に開き始めることで、下腹部に圧迫感や重い感覚を覚えることもあるでしょう。


赤ちゃんの成長と機能の発達

妊娠37週以降になると、赤ちゃんの体の機能や皮下脂肪が十分に発達し、外界で生きていける状態になります。肺の機能が完全に成熟し、自力で呼吸ができるようになるのもこの時期です。体重は通常2,500グラム以上になり、体温調節機能も整います。

また、免疫システムも発達し、ママから受け取った抗体と合わせて、生後しばらくの間は感染症から身を守ることができるようになります。脳の発達も続いており、外界の刺激に対する反応もより明確になってきます。


ホルモンバランスの変化

臨月に入ると、出産に向けてホルモンバランスが大きく変化します。プロスタグランジンというホルモンの分泌が増加し、子宮収縮を促進する働きをします。

また、リラキシンというホルモンの影響で骨盤周りの靭帯が緩み、赤ちゃんが通りやすくなるように体が準備を始めます。これらのホルモン変化により、腰痛や恥骨痛が強くなることもありますが、これは出産に向けた正常な変化です。エストロゲンとプロゲステロンのバランスも変化し、情緒的な変化を感じるママも多くいらっしゃいます。


臨月の適切な過ごし方

臨月は出産に向けた最終準備の時期でもあります。適切な過ごし方を心がけることで、体調を整え、安心して出産を迎えることができるでしょう。ここでは、日常生活で心がけたいポイントや、おすすめの活動について具体的に説明します。


適度な運動と体力維持

臨月に入っても適度な運動は大切です。ウォーキングは特におすすめで、1日30分程度の散歩は血行を促進し、むくみの予防にも効果的です。階段の昇降も子宮口の開きを促進する効果があるとされていますが、無理は禁物です。マタニティヨガやマタニティスイミングも、医師の許可があれば継続して構いません。

ただし、激しい運動や転倒のリスクがある活動は避け、体調に合わせて調整することが重要です。運動中に異常を感じたら、すぐに中止して休憩を取りましょう。


出産準備と環境づくり

臨月に入ったら、出産に向けた具体的な準備を進めていきましょう。入院時に必要な荷物をまとめた「陣痛バッグ」を準備し、いつでも持ち出せる場所に置いておきます。陣痛バッグの中身の具体的なリスト例は次の通りです。

・書類関係:母子手帳、保険証、診察券、入院手続きに必要な書類等

・貴重品:財布、スマートフォン(充電器含む)、カード類等

・衣類:前開きのパジャマ 1着、下着 2~3枚、産褥ショーツ 2枚、退院時の衣類 1セット

・小物類:タオル類(フェイスタオル、バスタオル)各1枚、洗面用具、リップクリーム等

・赤ちゃん用品(退院時に使用):ベビー服(カバーオール)1枚、おくるみ等

新生児を迎える環境づくりも大切で、ベビーベッドの設置や肌着・おむつなどの必需品を揃えておきましょう。

また、家族との連絡体制を確認し、陣痛が始まった際の対応について話し合っておくことも重要です。バースプランがある場合は、パートナーと共有し、医師にも伝えておきましょう。


栄養管理と体重コントロール

臨月でも栄養バランスの取れた食事を心がけることが大切です。鉄分、カルシウム、葉酸などの栄養素を意識的に摂取し、体力の維持と赤ちゃんの健康な発育をサポートしましょう。

ただし、急激な体重増加は避け、医師から指示された体重管理を守ることが重要です。塩分の摂りすぎはむくみや妊娠高血圧症候群のリスクを高めるため、薄味を心がけましょう。水分補給も十分に行い、便秘の予防にも努めることが大切です。

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臨月の間に注意すべきことと避けるべき行動

臨月は赤ちゃんがいつ生まれてもおかしくない時期のため、日常生活でも特に注意が必要です。安全に過ごすために避けるべき行動や、注意すべきポイントについて詳しく説明します。


重労働と身体的負担を避ける

臨月に入ったら、重いものを持つ作業は極力避けましょう。5kg以上のものを持ち上げることは、お腹に圧迫を与え、早産のリスクを高める可能性があります。高い場所での作業や、バランスを崩しやすい体勢での家事も危険です。

掃除機をかける際も、前かがみの姿勢を長時間続けることは避け、モップなどを使用して楽な姿勢で行いましょう。家族の協力を得て、無理のない範囲で日常生活を送ることが大切です。


長距離移動と外出時の注意点

臨月での長距離旅行は原則として避けるべきです。車での移動も長時間は控え、どうしても必要な場合は、こまめに休憩を取り、シートベルトを正しく着用しましょう。自転車の運転はバランスを崩しやすく転倒のリスクが高いため、この時期は控えることをおすすめします。

公共交通機関を利用する際は、混雑時を避け、座席を確保できるよう配慮しましょう。外出時は母子手帳と保険証を必ず持参し、緊急時に備えることが重要です。


感染症予防と体調管理

臨月は免疫力が低下しやすい時期のため、感染症予防により一層注意を払いましょう。人混みの多い場所への外出は最小限に留め、マスクの着用と手洗いうがいを徹底します。風邪やインフルエンザにかかると出産時に影響する可能性があるため、体調管理には特に気をつけましょう。

十分な睡眠と休息を取り、ストレスを溜めないよう心がけることも大切です。体調に異変を感じたら、自己判断せずに医師に相談することを忘れずに。


臨月における健診の変化と医療サポートの活用方法

臨月に入ると、健診の頻度や内容にも変化が現れます。この時期の医療サポートについて理解しておくことで、より安心して過ごすことができるでしょう。また、緊急時の対応についても事前に知っておくことが大切です。


健診頻度の増加と内容の変化

臨月に入ると、健診の頻度が1〜2週間に1回程度に増えます。これは赤ちゃんとママの状態をより詳細に把握し、安全な出産に向けて準備するためです。健診では通常の体重測定や血圧測定に加えて、内診による子宮口の開き具合の確認、胎児の位置や大きさの確認が行われます。

胎児心拍数モニタリング(NST)も実施され、赤ちゃんの元気さを評価します。これらの検査により、出産のタイミングや方法について医師と相談していくことができます。


出産の兆候と前兆の見極め

臨月に入ると、出産の兆候や前兆が現れることがあります。おしるしと呼ばれる少量の出血を伴うおりものの変化は、子宮口が開き始めるサインの一つです。また、規則的な子宮収縮(陣痛)が始まったり、破水が起こったりすることもあります。

ただし、これらの兆候が現れるタイミングには個人差があり、必ずしも出産が直前というわけではありません。医師から指示された「いつ病院に連絡すべきか」の基準を明確に理解し、判断に迷った際は遠慮なく医療機関に相談しましょう。


緊急時の対応と連絡体制

臨月は24時間いつでも出産が始まる可能性があるため、緊急時の対応を事前に確認しておくことが重要です。かかりつけの病院の連絡先や、夜間・休日の対応について把握しておきましょう。陣痛が始まった際の交通手段や、家族への連絡方法についても家族全員で共有しておくことが大切です。

また、上のお子さんがいる場合は、お世話を頼む人の手配も事前に済ませておきましょう。緊急時に慌てることがないよう、シミュレーションをしておくことをおすすめします。


臨月に知っておきたい出産に向けた心構えは?

臨月は身体の準備だけでなく、心の準備も大切な時期です。出産への不安や期待、育児への心構えなど、様々な感情が交錯する時期でもあります。この時期の心の在り方について考えてみましょう。


出産への不安と向き合う方法

多くのママが出産に対して不安を感じるのは自然なことです。痛みへの恐怖や、お産がうまくいくかどうかの心配など、様々な不安があるでしょう。これらの不安と向き合うためには、まず正しい知識を身につけることが大切です。出産の流れや痛みの軽減方法について学び、医師や助産師に積極的に質問しましょう。

また、パートナーや家族、友人など信頼できる人と気持ちを共有することで、心の負担を軽減することができます。リラクゼーション法や呼吸法の練習も、不安の軽減に効果的です。


パートナーとの協力体制づくり

出産は夫婦にとって大きな出来事であり、パートナーとの協力が不可欠です。臨月に入ったら、出産時の立ち会いや産後のサポートについて具体的に話し合いましょう。パートナーにも出産について理解を深めてもらい、一緒に両親学級に参加することをおすすめします。

また、産後の育児分担や、ママの体調回復期間中のサポート体制についても事前に相談しておくことが大切です。お互いの気持ちを理解し合い、協力し合える関係を築いていきましょう。

夫婦

新生児を迎える心の準備

赤ちゃんとの生活が始まることへの期待と同時に、育児への不安を感じることも多いでしょう。完璧な親である必要はなく、赤ちゃんと一緒に成長していけば良いということを覚えておきましょう。産後は体調の変化やホルモンバランスの影響で、感情的になりやすい時期でもあります。

周囲のサポートを受けることを恥ずかしがらず、必要に応じて専門家の助けを求めることも大切です。赤ちゃんとの時間を楽しみ、新しい生活へのワクワクする気持ちを大切にしていきましょう。

臨月に関するよくある質問

臨月に入ると、出産がいよいよ近づいている実感が湧き、不安や疑問も増えてきます。「臨月と正期産の違いは?」「おしるしっていつ現れるの?」など、安心して出産を迎えるためのポイントをご紹介します。


Q. 臨月と正期産の違いは何ですか?

A. 臨月は一般的に使われている言葉で、妊娠36週0日~39週6日(妊娠10カ月)を指します。一方、正期産は医学用語で、妊娠37週0日~41週6日の出産を指します。臨月はおおよその目安として使われる言葉であるのに対し、正期産は赤ちゃんの体の機能が整い、外界で生きていける時期として医学的に定義されています。

つまり、臨月の期間と正期産の期間は完全に一致するわけではなく、臨月に入ってから1週間後が正期産の開始となります。この違いを理解しておくことで、出産のタイミングについてより正確な知識を持つことができるでしょう。


Q. おしるしや破水などの出産の前兆はいつ頃現れますか?

A. 出産の前兆は一般的には臨月に入ってから(妊娠36週以降)現れることが多いですが、個人差が非常に大きいのが特徴です。おしるしは子宮口が開き始める際に起こる少量の出血を伴うおりもので、出産の数日前から数週間前に現れることがあります。破水は陣痛の前に起こることもあれば、陣痛中に起こることもあります。

赤ちゃんがお腹の中で下がってくる現象は妊娠36週目以降に感じることが多く、これも出産が近づいているサインの一つです。ただし、これらの兆候が現れても必ずしもすぐに出産が始まるわけではないため、医師からの指示に従って適切に対応することが大切です。


Q. 健診の頻度や内容に変化はありますか?

A. 臨月に入ると健診の頻度が増え、通常1~2週間に1回程度になります。これは赤ちゃんとママの状態をより詳細に把握し、安全な出産に向けて準備するためです。

健診内容も変化し、通常の体重測定や血圧測定に加えて、内診による子宮口の開き具合の確認、胎児の位置や大きさの確認が重要な項目となります。胎児心拍数モニタリング(NST)も定期的に実施され、赤ちゃんの元気さを評価します。血液検査では感染症の有無や貧血の状態もチェックされます。

これらの詳細な検査により、医師は出産のタイミングや方法について適切な判断を行い、ママと赤ちゃんの安全を確保しています。健診時には遠慮なく質問や相談をして、不安を解消していきましょう。


臨月を正しく理解して安心の出産準備を整えよう

臨月は妊娠36週0日から39週6日までの期間で、出産に向けた大切な準備期間です。この時期にはお腹が下がる感覚や胃もたれの軽減など、様々な体の変化が現れますが、これらは出産に向けた正常な変化です。

適切な過ごし方として、適度な運動と栄養管理を心がけ、出産準備を進めていくことが重要です。一方で、重労働や長距離移動は避け、感染症予防にも十分注意しましょう。健診の頻度も増え、出産の兆候についても理解を深めておくことが大切です。

何より大切なのは、心の準備を整えることです。パートナーや家族との協力体制を築き、不安があれば医師や助産師に相談して、安心して赤ちゃんを迎える準備をしていきましょう。


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