公開日 2025/06/25
【医師解説】陣痛の間隔はどれくらい?どんな痛み?前駆陣痛と本陣痛の違いまで詳しく解説

目次

久保田産婦人科病院
西野 枝里菜 先生
妊娠後期から臨月に入ると、いよいよ出産が近づいてきます。特に初産婦のパパ・ママにとって、陣痛がどのような間隔で来るのか、どんな痛みなのかは大きな不安要素の一つでしょう。陣痛の間隔や痛みの特徴を正しく理解することで、適切なタイミングで病院に連絡でき、安心して出産に臨むことができます。
本記事では、陣痛の間隔の測り方から前駆陣痛と本陣痛の違い、病院に連絡するタイミングまで、産婦人科医の視点から詳しく解説します。陣痛から出産までの流れや時間の目安についても具体的にお伝えしますので、出産に向けた心の準備にお役立てください。
陣痛の間隔とは?基本的な測り方を知ろう
陣痛の間隔とは、痛みが始まった時点から次の痛みが始まるまでの時間のことを指します。多くのパパ・ママが間違えやすいポイントですが、痛みが終わってから次の痛みが始まるまでの時間ではありません。正確な測り方を理解することで、病院への連絡タイミングを適切に判断できるようになります。
陣痛には「発作」と「間欠」という2つの要素があります。発作は子宮が収縮して痛みを感じる時間で、間欠は痛みが治まっている時間です。陣痛の間隔は、発作の開始から次の発作の開始までの時間で計算します。

陣痛の持続時間
陣痛の間隔と同様に重要なのが、痛みの持続時間です。陣痛の初期段階では30秒程度の短い痛みが続きますが、お産が進むにつれて60秒から90秒程度まで長くなっていきます。痛みの強さも徐々に増していくのが一般的です。
持続時間も間隔と一緒に記録しておくと、陣痛の進行状況をより詳しく把握できます。病院に連絡する際にも、この情報は医師や助産師にとって重要な判断材料となるでしょう。
陣痛間隔の正しい測定方法
陣痛の間隔を正確に測るには、時計やスマートフォンのタイマー機能を活用しましょう。痛みが始まった瞬間に時間をメモし、次の痛みが始まった時間との差を計算します。厳密にカウントする必要はなく、「だいたい○分くらい」という感覚で十分です。
最近では陣痛専用のアプリも多数リリースされており、ボタンをタップするだけで自動的に間隔を計算してくれます。これらのツールを使うことで、より簡単かつ正確に陣痛の記録を取ることができるでしょう。
記録に便利な陣痛アプリの活用方法
陣痛アプリは痛みが始まったときと終わったときにボタンをタップするだけで、間隔や持続時間を自動計算してくれる便利なツールです。多くのアプリでは記録したデータをグラフで表示したり、病院への連絡タイミングをお知らせしたりする機能も搭載されています。
パートナーと一緒にアプリの使い方を事前に確認しておくと、いざというときにスムーズに記録を取ることができます。陣痛中は痛みで操作が困難になることもあるため、パートナーにも使い方を覚えてもらっておくと安心です。

前駆陣痛と本陣痛の違いとは?
妊娠後期になると、多くの妊婦さんが前駆陣痛を経験します。前駆陣痛は本陣痛の予行演習のようなもので、子宮が出産に向けて準備を始めている証拠です。しかし、前駆陣痛と本陣痛を見分けることは、特に初産婦のパパ・ママにとって難しい場合があります。
前駆陣痛と本陣痛の最も大きな違いは、規則性と痛みの強さです。これらの特徴を理解することで、適切なタイミングで病院に連絡できるようになるでしょう。
前駆陣痛とは
前駆陣痛は不規則な間隔で起こり、痛みの強さもバラバラです。10分間隔を切ることはなく、15分から20分、時には30分以上間隔が開くこともあります。痛みの持続時間も短く、通常は30秒以内で治まります。
また、前駆陣痛は体位を変えたり、歩いたり、お風呂に入ったりすることで軽減することが多いのも特徴です。気がついたら痛みがなくなっていたということもよくあります。このような症状が続いても、慌てる必要はありません。
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本陣痛とは
本陣痛は規則的な間隔で起こり、時間が経つにつれて間隔が短くなっていきます。最初は15分から20分間隔で始まることが多く、徐々に10分、8分、5分と短くなっていくのが特徴です。痛みの強さも次第に増していき、体位を変えても軽減しません。
本陣痛では痛みの持続時間も長くなり、初期は30秒程度だった痛みが、進行するにつれて60秒から90秒程度まで延びていきます。この規則性と強さの増加が、前駆陣痛との最も明確な違いといえるでしょう。
陣痛の始まりのサインと注意点
陣痛の始まりには、おしるしや破水といった他のサインが伴うことがあります。おしるしは子宮口が開き始める際に起こる少量の出血で、陣痛の数日前から当日に見られることが多いです。破水が起こった場合は、陣痛の有無に関わらず速やかに病院に連絡する必要があります。
また、胎動の減少や間欠期のない腹痛、大量の出血などの症状が見られた場合は、陣痛の間隔に関係なく緊急に医療機関を受診することが大切です。普段から胎動をカウントし、いつもと違う症状があれば遠慮なく相談しましょう。

初産婦と経産婦で異なる陣痛の特徴
陣痛の進行スピードや特徴は、初産婦と経産婦で大きく異なります。初産婦は分娩に時間がかかることが多く、陣痛も比較的ゆっくりと進行します。一方、経産婦は分娩の進行が早く、陣痛の間隔も急激に短くなることがあるため、注意が必要です。
これらの違いを理解することで、それぞれの状況に応じた適切な対応ができるようになります。病院への連絡タイミングも、初産婦と経産婦では異なるため、事前に確認しておくことが重要でしょう。
初産婦の陣痛の特徴
初産婦の場合、陣痛開始から出産まで平均12時間から15時間程度かかることが一般的です。陣痛の間隔も比較的ゆっくりと短くなっていき、10分間隔の規則的な陣痛が1時間程度続いてから病院に向かっても十分間に合うことが多いです。
初産婦の陣痛は段階的に進行するため、痛みに慣れる時間もあります。最初は軽い生理痛のような痛みから始まり、徐々に強くなっていくのが特徴です。このため、陣痛の経過を観察しながら、落ち着いて対応することができるでしょう。
経産婦の陣痛の特徴
経産婦の場合、陣痛開始から出産まで平均6時間から8時間程度と、初産婦よりも大幅に短時間で分娩が進行します。陣痛の間隔も急激に短くなることがあり、15分間隔でも強い痛みがある場合は早めに病院に連絡する必要があります。
経産婦では子宮口の開きが早く、陣痛が始まってから一気にお産が進むことも珍しくありません。前回の出産経験や自宅から病院までの距離を考慮して、余裕を持って行動することが大切です。特に3人目以降の出産では、さらに進行が早くなる傾向があります。
病院への連絡タイミングの目安
初産婦の場合、陣痛の間隔が10分で規則的になり、1時間継続したら病院に連絡するのが一般的です。ただし、破水や大量の出血がある場合は、陣痛の間隔に関係なく速やかに連絡する必要があります。また、自宅から病院までの距離が遠い場合は、より早めの連絡を心がけましょう。
経産婦の場合は、15分間隔の陣痛でも痛みが強くなってきているようなら早めに連絡することをおすすめします。前回の分娩時間や陣痛の進行パターンも参考にして、担当医と事前に相談しておくと安心です。夜間や休日の連絡先も確認しておきましょう。
陣痛の痛みの特徴と対処法
陣痛の痛みは多くの妊婦さんが不安に感じる要素の一つです。しかし、痛みの特徴や対処法を理解することで、陣痛をより前向きに受け止めることができるようになります。陣痛は赤ちゃんを迎えるための大切な過程であり、適切な対処法を知ることで痛みを和らげることも可能です。
陣痛の痛みは人それぞれ異なりますが、一般的な特徴や効果的な対処法について詳しく見ていきましょう。パートナーができるサポート方法についても併せてご紹介します。
陣痛の痛みの種類と感じ方
陣痛の痛みは、生理痛のような鈍い痛みから始まることが多く、徐々に腰痛や下腹部痛が強くなっていきます。痛みの場所は人によって異なり、お腹全体に感じる人もいれば、腰や太ももの付け根に強く感じる人もいます。痛みの強さも個人差が大きく、我慢できる程度から非常に強い痛みまで様々です。
陣痛の痛みは波のように押し寄せ、痛みのピークを過ぎると必ず痛みのない時間があります。この間欠期間は体を休める大切な時間であり、陣痛が進行しても必ず痛みのない時間があることを覚えておくと心の支えになるでしょう。
陣痛中の効果的な呼吸法とリラックス方法
陣痛中の呼吸法は痛みを和らげる重要な手段です。深くゆっくりとした腹式呼吸を心がけ、痛みが来たときは息を吐くことに集中しましょう。「ふーっ」と長く息を吐くことで、体の緊張がほぐれ、痛みが軽減されることがあります。
痛みの間欠期には、好きな音楽を聞いたり、アロマの香りを楽しんだりしてリラックスすることも効果的です。体の力を抜いて、次の陣痛に備えて体力を温存することが大切です。マッサージやツボ押しも痛みの緩和に役立つことがあります。
パートナーさんができる妊娠中のママのサポート方法
パートナーは陣痛中の重要なサポート役です。腰をさすったり、手を握ったりするだけでも、妊婦さんにとって大きな心の支えになります。また、水分補給の声かけや陣痛の間隔を記録することもパートナーさんの重要な役割です。妊婦さんが痛みに集中できるよう、環境を整えることも大切でしょう。
陣痛中は妊婦さんの気持ちが不安定になることもあります。優しい言葉をかけ、一緒に呼吸を合わせることで、妊婦さんの不安を和らげることができます。事前に陣痛について学び、どのようなサポートが効果的かを夫婦で話し合っておくことをおすすめします。
分娩の進行段階と陣痛の変化
分娩は第1期から第3期まで段階的に進行し、それぞれの段階で陣痛の特徴が変化します。各段階の陣痛の特徴を理解することで、お産の進行状況を把握し、心の準備を整えることができるでしょう。また、医師や助産師とのコミュニケーションもスムーズになります。
分娩の進行に伴う陣痛の変化を知ることで、それぞれの段階で何が起こっているのかを理解し、より落ち着いて出産に臨むことができるようになるでしょう。
5分娩第1期の陣痛の特徴と所要時間
分娩第1期は陣痛開始から子宮口が全開大(10cm)になるまでの期間で、最も長い時間を要します。初産婦では平均10時間から12時間、経産婦では5時間から6時間程度かかることが一般的です。この期間中に陣痛の間隔は徐々に短くなり、痛みも強くなっていきます。
第1期は潜伏期、活動期の2つに分けられます。潜伏期では陣痛の間隔は10分から20分程度で、比較的軽い痛みが続きます。一方で活動期はさらに、加速期、極期、減速期に分けられます。加速期に入ると間隔は3分から5分になり、痛みも強くなります。極期では2分から3分間隔となり、減速期では1分から2分間隔で最も強い痛みを感じることになるでしょう。
分娩第2期の陣痛といきみのタイミング
分娩第2期は子宮口が全開大してから赤ちゃんが生まれるまでの期間で、初産婦では1時間から2時間、経産婦では30分から1時間程度です。この時期になると、強い陣痛と一緒に「いきみたい」という感覚が生まれます。この感覚は便意に似ており、自然に力を入れたくなる衝動です。
第2期の陣痛は2分間隔で、持続時間は60秒程度になります。医師や助産師の指示に従って適切にいきむことで、分娩がスムーズに進みます。
陣痛から出産までの流れ
陣痛開始から出産まで、初産婦では平均12時間から15時間、経産婦では6時間から8時間程度の時間を要します。ただし、これはあくまでも目安であり、実際の時間には個人差が大きいことを理解しておくことが大切です。中には数時間で生まれる場合もあれば、20時間以上かかる場合もあります。
お産の進行は予測が困難な部分もありますが、定期的な内診により医師が進行状況を確認してくれます。陣痛の強さや間隔、子宮口の開き具合などを総合的に判断して、医師による適切な医療ケアが提供されるので安心してください。
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陣痛に関するよくある質問と回答
出産が近づくと「これは陣痛なのか」「いつ病院に行けばいいのか」など、不安や疑問が多くなるものです。ここでは、陣痛に関してよくある質問とその対応についてわかりやすく解説します。
Q. 陣痛の間隔はどのくらいになったら病院に行くべきですか?
A. 陣痛の間隔が約10分で規則的に繰り返される(1時間に6回)ようになったら病院に連絡しましょう。ただし、経産婦の場合は一気にお産が進むことがあるため、陣痛が15分間隔でも強くなってきているようなら早めに連絡することをおすすめします。自宅から病院までの距離や、妊娠経過によって病院へ行くタイミングは異なるため、事前に担当医に確認しておくとよいでしょう。
また、破水や大量の出血、間欠期のない激しい腹痛などの症状がある場合は、陣痛の間隔に関係なく速やかに病院に連絡する必要があります。胎動の減少や異常を感じた場合も、遠慮せずに医師に相談することが大切です。
Q. 陣痛の間隔が不規則だったり長くなったりするのは大丈夫ですか?
A. 陣痛の初期段階や前駆陣痛では、間隔が不規則だったり長くなったりすることは珍しくありません。前駆陣痛は10分間隔を切ることは少なく、痛みや張りの間隔が15〜20分空くなど、不規則なのが特徴です。また、気づかないうちに治まることもあります。
ただし、本陣痛が始まると次第に間隔が規則的になり、徐々に短くなっていきます。不安がある場合は担当医に相談しましょう。
Q. 陣痛の間隔を正確に測る方法はありますか?
A. 陣痛の間隔は、痛み始めたときから次に痛み始めるまでの時間を測ります。時計やスマートフォンのタイマー機能、専用の陣痛アプリを使うと便利です。陣痛アプリは、ボタンをタップするだけで陣痛の時間や回数をリアルタイムで記録できます。厳密にカウントする必要はなく、「だいたい○分くらい」という感覚で大丈夫です。陣痛が来たら痛み始めた時間をメモし、次の陣痛が来たときに再度時間を確認して間隔を計算します。
記録を取る際は、痛みの持続時間も一緒にメモしておくと、病院に連絡する際の重要な情報となります。パートナーと協力して記録を取ることで、より正確なデータを収集できるでしょう。
陣痛の間隔と痛みを正しく理解して安心出産を迎えよう
陣痛の間隔や痛みの特徴を正しく理解することで、安心して出産に臨むことができます。前駆陣痛と本陣痛の違いを見分け、適切なタイミングで病院に連絡することで、安全な出産を迎えることができるでしょう。
初産婦と経産婦では陣痛の進行スピードが異なるため、それぞれの特徴を理解し、個々の状況に応じた対応をすることが大切です。陣痛アプリなどのツールを活用して正確に記録を取り、パートナーと協力して出産に向けた準備を整えましょう。
何よりも重要なのは、不安や疑問がある場合は遠慮せずに医師や助産師に相談することです。陣痛は赤ちゃんとの対面への大切な過程であり、適切な知識と準備があれば、感動的な出産の瞬間を迎えられるでしょう。
