公開日 2025/08/12
【医師解説】腹部のエコー検査でわかることは?エコー写真の見方や保存方法まで

目次

久保田産婦人科病院
西野 枝里菜 先生
妊娠中の腹部エコー検査について、多くのパパ・ママが「どんなことがわかるのか」「痛みはないのか」「もらった写真はどう見ればいいのか」といった疑問を抱えていることでしょう。腹部エコー検査は、お腹の中の赤ちゃんの成長や健康状態を確認するための重要な検査です。
この記事では、腹部エコー検査で分かることから、エコー写真の見方、さらには大切な記録として保存する方法まで、産婦人科医の視点から詳しく解説します。安心して検査を受けられるよう、検査の流れや費用についても具体的にお伝えしていきます。
腹部エコー検査とは?
まずは腹部エコー検査とは何か、どのような目的で行われるのかについて理解を深めていきましょう。この検査は妊婦健診において欠かせない検査の一つとなっています。
腹部エコー検査は、超音波を使ってお腹の中の様子を画像として映し出す検査です。妊娠中に行われる腹部エコー検査では、主に胎児の発育状況や健康状態、胎盤の位置、羊水量などを確認することができます。
この検査は放射線被曝がまったくないため、妊娠中でも安全に受けることができます。プローブと呼ばれる器具をお腹に当てて、リアルタイムで赤ちゃんの様子を観察できるのが大きな特徴です。

検査の安全性について
腹部エコー検査は放射線を使用しないため、お母さんにも赤ちゃんにも害はありません。超音波は人体に無害な音波の一種で、長時間の検査でも安全性に問題はないとされています。
世界中の医療機関で長年使用されており、妊娠中の女性や小児でも安心して受けられる検査として確立されています。副作用や後遺症の報告もなく、必要に応じて何度でも検査を受けることができます。
検査を受けるタイミング
妊娠中の腹部エコー検査は、通常妊娠初期から出産まで定期的に行われます。妊娠初期には胎嚢や胎芽の確認、妊娠中期には詳細な胎児スクリーニング、妊娠後期には胎児の発育や胎盤の状態確認が主な目的となります。
妊婦健診のスケジュールに合わせて実施されることが多く、自治体の補助券を利用できる場合がほとんどです。医師が必要と判断した場合には、追加で検査を行うこともあります。
腹部エコー検査でわかること
腹部エコー検査では、胎児の様々な情報を得ることができます。ここでは具体的にどのようなことが分かるのかを詳しく見ていきましょう。
胎児の発育状況
腹部エコー検査では胎児の大きさや体重を推定することができます。頭の大きさ、胴回り、太ももの骨の長さなどを測定し、妊娠週数に応じた標準的な発育を遂げているかを確認します。
発育が順調であるかどうかは、妊娠の経過を判断する重要な指標となります。発育が遅れている場合や急激に大きくなっている場合には、その原因を調べて適切な対応を取ることができます。
胎児の健康状態
エコー検査では胎児の心拍数や心臓の動き、四肢の動きなどを観察できます。心拍が正常に刻まれているか、手足を活発に動かしているかなど、胎児の元気さを確認することができます。
また、胎児の姿勢や位置も確認でき、逆子などの異常な体位を早期に発見することも可能です。これにより、分娩方法の検討や必要な処置について事前に計画を立てることができます。
胎盤と羊水の状態
胎盤の位置や厚さ、羊水の量なども腹部エコー検査で確認できます。胎盤が正常な位置にあるか、前置胎盤などの異常がないかを調べることができます。
羊水の量が適切かどうかも重要な確認ポイントです。羊水過多や羊水過少は胎児に影響を与える可能性があるため、早期発見により適切な管理を行うことができます。
エコー写真の見方
エコー写真をもらっても、何が写っているのか分からないという方も多いでしょう。ここでは基本的な見方をお伝えします。

エコー写真の基本構造
エコー写真は白黒で表示され、白い部分は超音波を反射しやすい硬い組織、黒い部分は超音波を通しやすい液体や軟らかい組織を表しています。胎児の骨は白く、羊水は黒く映ります。
写真の上部や下部には検査日時、妊娠週数、胎児の各部位の測定値などの情報が記載されています。これらの数値は胎児の発育を評価するための重要なデータとなります。
胎児の各部位の見分け方
エコー写真で胎児の頭部は丸い形で確認でき、脳の構造も観察できます。顔が見える角度の場合は、目や鼻、口の輪郭を確認することもできます。
心臓は拍動している様子が確認でき、四肢も手足の形として識別できます。妊娠週数が進むにつれて、より詳細な構造を観察できるようになります。
異常所見の見分け方
エコー写真で異常が疑われる場合、医師から詳しい説明があります。正常な発育パターンと異なる場合や、構造的な異常が疑われる場合には、追加の検査が必要になることもあります。
ただし、エコー写真だけで診断が確定するものではなく、医師の総合的な判断が重要です。心配な点があれば、遠慮なく医師に質問することが大切です。
検査の流れと準備
実際に腹部エコー検査を受ける際の流れと、事前の準備について説明します。
検査前の準備
腹部エコー検査では、基本的に特別な準備は必要ありません。ただし、医師から膀胱を充満させるよう指示された場合には、検査前に適量の水分を摂取する必要があります。
服装についてはお腹を出しやすいものを選ぶことをお勧めします。上下が分かれた服装で、お腹周りがゆったりとしたものが理想的です。
検査中の流れ
検査室で検査台に横になり、お腹を出した状態で検査を受けます。医師がプローブにゼリーを塗布し、お腹の上を滑らせながら超音波を当てていきます。プローブとは、超音波を体に送り、反射波を受け取る送受信機のようなものです。
検査中は画面を見ながら、胎児の様子を確認できます。医師から胎児の各部位について説明を受けることもあり、リアルタイムで赤ちゃんの動きを観察できる貴重な時間となります。
検査にかかる時間
一般的な妊婦健診での腹部エコー検査は、5分から10分程度で終了します。詳細な検査が必要な場合には、もう少し時間がかかることもあります。
検査中は医師が様々な角度から胎児を観察するため、プローブの動きに合わせて体位を変えることもあります。リラックスして検査を受けることが大切です。

エコー写真の保存方法
大切な記録となるエコー写真を、長期間きれいに保存する方法について説明します。
物理的な保存方法
エコー写真は感熱紙に印刷されることが多く、時間が経つと色が薄くなってしまいます。直射日光や高温を避け、涼しく乾燥した場所で保管することが重要です。
アルバムに入れる場合は、写真用のアルバムを使用し、写真同士が直接触れないようにフィルムで保護することをお勧めします。定期的に状態を確認し、必要に応じてコピーを作成しておくと安心です。
デジタル化による保存
エコー写真をスキャンしてデジタル化することで、画像データとして保存することができるようになります。高解像度でスキャンし、複数の場所にバックアップを取ることが重要です。
クラウドストレージサービスを利用することで、データの紛失リスクを軽減できます。ただし、医療情報を含む可能性があるため、セキュリティの高いサービスを選ぶことが大切です。
思い出としての活用方法
エコー写真は赤ちゃんの成長記録として、育児日記や母子手帳と一緒に保管することができます。将来お子さんが成長した時に、お腹の中にいた頃の写真として見せてあげることもできます。
フォトブックやアルバムに妊娠中の写真と一緒に収めることで、妊娠期間の思い出として大切に保存できます。デジタル化した画像は、家族や友人と共有することも可能です。
費用について
腹部エコー検査の費用について、具体的な金額や補助制度について説明します。
妊婦健診での費用
妊婦健診で行われる腹部エコー検査は、自治体の補助券を利用できる場合がほとんどです。補助券を使用することで、自己負担はほとんどない、または少額で済むことが多いです。
自治体によって補助内容は異なりますが、定期的な妊婦健診に含まれる検査については、多くの場合で費用負担が軽減されています。
自費での検査費用
医師の判断による追加検査や、希望による検査を自費で受ける場合、数千円から1万円程度の費用がかかることがあります。詳細な金額は医療機関によって異なります。
4D超音波検査など、特殊な検査を希望する場合には、別途費用が必要になることがあります。事前に医療機関に確認することをお勧めします。
保険適用について
妊娠は病気ではないため、通常の妊婦健診は保険適用外となります。ただし、異常が発見された場合の精密検査や治療については、保険が適用される場合があります。
医師が医学的に必要と判断した検査については、保険適用となる可能性があるため、詳細は担当医に確認することが大切です。
腹部エコー検査に関するよくある質問と回答
腹部エコー検査について、多くのパパ・ママが抱える疑問にお答えします。検査前の不安解消にお役立てください。
Q. 検査中の痛みや不快感はどの程度ですか?
A. 腹部エコー検査は通常、痛みはほぼありません。プローブをお腹に当てて軽く押さえる程度の圧迫感はありますが、強い痛みを感じることはほとんどありません。検査に使用するゼリーが冷たく感じることがありますが、すぐに慣れる程度の感覚です。妊娠後期にお腹が大きくなってくると、長時間の仰向けの姿勢が少し辛く感じることもありますが、検査中に体位を変えることも可能です。リラックスして検査を受けることで、より快適に過ごすことができます。
Q. 妊婦健診と病院一般外来で行う場合との費用差は?
A. 妊婦健診で行われる腹部エコー検査は、自治体の補助券を利用できるため、自己負担はほとんどない、もしくは数百円から千円程度の少額で済むことが多いです。一方、医療機関独自の検査や希望による追加検査を自費で受ける場合は、数千円から1万円程度の費用がかかることがあります。4D超音波検査など特殊な検査を希望する場合には、さらに費用が高くなることもあります。詳細な金額は自治体の補助制度や医療機関によって異なるため、事前に確認することをお勧めします。
Q. 妊娠中、この検査前に特別な準備は必要ですか?
A. 基本的には特別な準備は必要ありません。ただし、医師から膀胱を充満させるよう指示された場合には、検査前に適量の水分を摂取する必要があります。食事制限は通常ありませんが、検査前に大量の食事を摂ると胃が膨らんで観察しにくくなることがあります。服装についてはお腹を出しやすいものを選び、上下が分かれた服装で、お腹周りがゆったりとしたものが理想的です。アクセサリーやベルトなど、お腹周りの装身具は事前に外しておくとスムーズです。
腹部エコー検査を安心して受け、大切な記録を残そう
腹部エコー検査は、妊娠中の大切な健康管理の一環として、胎児の発育状況や健康状態を確認するための重要な検査です。放射線被曝がなく安全性が高いため、安心して受けることができます。
エコー写真は赤ちゃんの貴重な記録となるため、適切な保存方法を選んで大切に保管しましょう。デジタル化することで、長期間にわたって美しい状態で保存することが可能になります。
検査費用については自治体の補助制度を活用することで、経済的負担を軽減できます。不安や疑問がある場合は、遠慮なく医師に相談し、安心して妊娠期間を過ごしていただければと思います。
