公開日 2025/08/12
【医師解説】妊娠中に食べたほうが良いもの・食べられないものは?気持ち悪いつわり中でも食べられる食べ物は?

目次

久保田産婦人科病院
西野 枝里菜 先生
妊娠中の食べ物選びに悩んでいるパパ・ママは多いのではないでしょうか。赤ちゃんの健康を考えると、何を食べて良いのか、避けるべきものは何なのか不安になりますよね。さらに、つわりで気持ち悪い時には、何を口にすれば良いのか分からず困ってしまうこともあります。
この記事では、妊娠中に安心して食べられるOK食材と、注意が必要なNG食材について、産婦人科医の視点から詳しく解説します。また、つわり中でも比較的食べやすい食べ物もご紹介しますので、妊娠期間を通じて安心して食事を楽しめるようになるでしょう。正しい知識を身につけて、赤ちゃんとママの健康を守りながら、毎日の食事を充実させていきましょう。
妊娠中に積極的に摂りたい食材
妊娠中の食事は、赤ちゃんの成長と発達に直接関わる重要な要素です。特定の栄養素を意識的に摂ることで、健康な妊娠期間を過ごすことができます。ここでは、妊娠中に特におすすめの食材を栄養素別に詳しくご紹介します。

葉酸
葉酸は、赤ちゃんの神経管閉鎖障害を予防する重要な栄養素です。妊娠初期は特に重要ですが、妊娠期間全体を通じて必要量を摂取することが大切です。
ほうれん草や小松菜などの緑黄色野菜は、葉酸の宝庫です。茹でてお浸しにしたり、炒め物に加えたりして日常的に摂取しましょう。また、ブロッコリーやアスパラガスも葉酸が豊富で、蒸したり茹でたりして食べやすく調理できます。
豆類も葉酸が豊富な食材です。納豆や豆腐、大豆製品を積極的に取り入れることで、植物性タンパク質も同時に摂取できます。枝豆も手軽に食べられる葉酸源として重宝します。
鉄分
妊娠中は血液量が増加するため、鉄分の需要も高まります。鉄分不足による貧血を防ぐためにも、意識的に摂取することが重要です。
赤身の肉類や魚類は、体に吸収されやすいヘム鉄を多く含んでいます。牛肉の赤身部分や鶏肉、カツオやマグロなどの魚を週に数回は食事に取り入れましょう。ただし、魚については後述する注意点も参考にしてください。
植物性食品では、ひじきや海苔などの海藻類、切り干し大根、プルーンなどが鉄分を豊富に含んでいます。これらの食材は、ビタミンCを含む食品と一緒に摂ることで、鉄分の吸収率を高めることができます。
カルシウム
カルシウムは、赤ちゃんの骨や歯の形成に欠かせない栄養素です。ママの骨密度維持のためにも、十分な摂取が必要です。
牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品は、カルシウムの優良な供給源です。ただし、ソフトチーズや生乳(非加熱)チーズはリステリア菌による感染リスクがあるため、妊娠中は避けましょう。どうしても食べたい場合は、中心温度が75~80℃になるまで加熱してからご使用ください。一方で、加熱処理されたプロセスチーズやハードチーズは安全とされています。
小魚類もカルシウムが豊富です。しらすやちりめんじゃこ、いわしの缶詰などを活用しましょう。また、小松菜や大根の葉、ごまなどの植物性食品からもカルシウムを摂取できます。
ビタミンC
ビタミンCは、鉄分の吸収を促進し、免疫力を高める効果があります。また、コラーゲンの生成にも関わる重要な栄養素です。
柑橘類やキウイフルーツ、いちごなどの果物は、ビタミンCを豊富に含んでいます。つわり中でも食べやすく、水分補給にもなります。また、パプリカやトマトなどの野菜からもビタミンCを摂取できます。
果物は糖分も含むため、適量を心がけることが大切です。1日200g程度を目安に、様々な種類の果物を楽しみましょう。
発酵食品
発酵食品は、腸内環境を整える善玉菌を増やし、便秘の予防や免疫力向上に役立ちます。妊娠中は特に便秘になりやすいため、積極的に摂取したい食品です。
納豆やヨーグルト、味噌、キムチなどの発酵食品を日常的に取り入れましょう。これらの食品は、プロバイオティクスと呼ばれる有益な菌を含んでおり、腸内フローラのバランスを改善します。
ただし、キムチなどの辛い発酵食品は、つわり中には避けた方が良い場合もあります。自分の体調に合わせて選択することが大切です。

妊娠中に注意が必要なNG食材
妊娠中は、赤ちゃんの健康を守るために避けるべき食材があります。完全に禁止というわけではないものもありますが、摂取量や摂取方法に注意が必要です。正しい知識を持って、安全な食事を心がけましょう。

カフェイン
カフェインは胎盤を通過して赤ちゃんに影響を与える可能性があるため、妊娠中は摂取量を制限する必要があります。1日200mg以下に抑えることが推奨されています。
コーヒー1杯には約95mgのカフェインが含まれているため、1日1-2杯程度であれば問題ありません。紅茶や緑茶にもカフェインが含まれているので、これらを含めた総摂取量を意識しましょう。
カフェインレスコーヒーやハーブティー、麦茶などの代替飲料を活用することで、飲み物のバリエーションを楽しみながらカフェイン摂取量をコントロールできます。
チーズ
チーズは種類によって安全性が異なります。リステリア菌による感染症のリスクがあるため、注意深く選択する必要があります。
ナチュラルチーズの中でも、カマンベールチーズやブルーチーズなどの軟質チーズは、リステリア菌が繁殖しやすいため避けることをおすすめします。一方、プロセスチーズやハードチーズは加熱処理されているため、安全に摂取できます。
チーズを食べる際は、パッケージの表示を確認し、加熱処理済みのものを選ぶようにしましょう。また、妊娠中でも加熱調理したチーズ料理であれば、安心して楽しめます。
刺身や生魚
生魚や刺身は、細菌やウイルス、寄生虫による感染症のリスクがあるため、妊娠中は注意が必要です。食中毒は母体だけでなく、胎児にも影響を与える可能性があるため、不安な場合は避けた方が安心です。
焼き魚や煮魚、魚の煮込み料理などは、栄養価が高く安全に摂取できます。また、魚缶詰も加熱処理されているため、手軽に利用できます。
アルコール
アルコールは胎盤を通過して胎児に直接影響を与えるため、妊娠中は完全に避ける必要があります。胎児性アルコール症候群のリスクがあり、少量でも安全な量は存在しません。
料理酒やみりんなどの調味料も、アルコール分が含まれているため注意が必要です。ただし、これらは加熱調理によってアルコール分が飛ぶため、通常の料理で使用する分には問題ありません。
ノンアルコールビールやノンアルコールワインなどの代替品を利用することで、お酒の雰囲気を楽しみながら安全に過ごせます。
魚介類
魚介類は良質なタンパク質やDHAを含む重要な食材ですが、水銀の蓄積量に注意が必要です。大型の魚ほど水銀濃度が高い傾向があります。
マグロ、サメ、メカジキなどの大型魚は、週に1-2回程度に制限しましょう。一方、サンマやイワシ、アジなどの小型魚は、水銀濃度が低いため頻繁に摂取しても問題ありません。
魚介類を食べる際は、種類を変えながらバランス良く摂取することが大切です。加熱調理を心がけ、新鮮なものを選ぶようにしましょう。
気持ち悪いつわり中でも食べやすい食べ物
つわりで気持ち悪い時期は、食事を摂ることが困難になります。しかし、赤ちゃんの成長のためにも、できるだけ栄養を摂取することが大切です。つわり中でも比較的食べやすい食べ物をご紹介します。
冷たい果物
つわり中は、冷たい食べ物の方が受け入れやすい場合が多いです。冷やした果物は、水分とビタミンを同時に摂取でき、さっぱりとした味わいが気持ち悪さを和らげます。
3-2. 冷たいデザート
ゼリーやプリンなどの冷たいデザートも、つわり中の栄養補給に役立ちます。できるだけ果物が入ったものや、カルシウムが含まれたものを選ぶと良いでしょう。

お粥
胃腸の調子が悪い時は、消化の良い食べ物を選ぶことが大切です。お粥や雑炊は、水分も多く含まれているため、脱水予防にも効果的です。
白米のお粥に梅干しや昆布を加えると、塩分とミネラルを補給できます。また、卵粥にすることで、良質なタンパク質も摂取できます。
麵類
麺類では、うどんやそうめんが消化しやすくおすすめです。少量ずつ、頻繁に摂取することで、胃腸への負担を軽減しながら必要な栄養を確保できます。
炭酸飲料
つわり中は、炭酸飲料や酸味のある食品が気持ち悪さを和らげることがあります。ただし、糖分やカフェインの摂取量には注意が必要です。
炭酸水にレモンやライムを加えた飲み物は、さっぱりとして飲みやすく、ビタミンCも摂取できます。
つわり中の食事の工夫ポイント
つわりがつらいときは、食べ物の種類だけでなく、食べ方の工夫もとても大切です。少しの工夫で、気持ち悪さを和らげたり、必要な栄養や水分を無理なく摂取しやすくなります。自分に合った方法を見つけながら、無理なく続けてみましょう。
少しずつこまめに
つわり中は、一度に大量の食事を摂ることが困難です。少量ずつ、1日に何度も食事を摂る方法を試してみましょう。
クラッカーやビスケットなどの軽食を枕元に置いておき、起床時に少し食べることで、空腹による吐き気を防ぐことができます。また、ナッツ類やドライフルーツも、手軽に栄養を摂取できる食品です。
無理をして食べる必要はありませんが、可能な範囲で栄養バランスを考えながら、食べられるものを見つけていきましょう。
脱水を防ぐこまめな水分補給
つわりで嘔吐が続くと、脱水症状を起こす可能性があります。水分補給を最優先に考え、こまめに水分を摂取することが大切です。
常温の水やお茶が飲みにくい場合は、冷たい水や氷を口に含むことから始めましょう。また、経口補水液やスポーツドリンクも、電解質を補給できるためおすすめです。
水分摂取が困難な場合は、医師に相談し、点滴による補液が必要な場合もあります。脱水症状が続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
妊娠時期別の食事のポイント
妊娠期間は初期、中期、後期に分けられ、それぞれの時期で赤ちゃんの成長に必要な栄養素が異なります。時期に応じた食事のポイントを理解し、効果的な栄養管理を行いましょう。
妊娠初期(0-13週)
妊娠初期は、赤ちゃんの重要な器官が形成される時期です。特に葉酸の摂取が重要で、神経管閉鎖障害の予防に効果があります。
この時期は、つわりで食事が困難になることが多いため、食べられるものを食べられる時に摂取することが大切です。サプリメントも活用しながら、必要な栄養素を確保しましょう。
また、この時期から禁酒・禁煙を徹底し、薬の服用についても医師と相談することが重要です。
妊娠中期(14-27週)
妊娠中期は、つわりが落ち着き、食欲が回復する時期です。この時期からは、バランスの良い食事を心がけ、体重管理にも注意を払いましょう。
鉄分の需要が高まる時期でもあるため、鉄分豊富な食材を意識的に摂取することが大切です。また、カルシウムやタンパク質も十分に摂取しましょう。
食べすぎによる急激な体重増加を避けるため、適度な運動も取り入れることをおすすめします。
妊娠後期(28週以降)
妊娠後期は、赤ちゃんの成長が著しい時期です。特に鉄分とカルシウムの需要が高まるため、これらの栄養素を重点的に摂取しましょう。
お腹が大きくなることで胃が圧迫され、一度に多くの食事を摂ることが困難になります。少量ずつ、頻繁に食事を摂る方法を実践しましょう。
また、便秘や浮腫みが起こりやすい時期でもあるため、食物繊維や水分を十分に摂取することが大切です。
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全期間共通の注意点
妊娠期間を通じて、アルコールは赤ちゃんに悪影響を及ぼす可能性があるため、摂取しないようにしましょう。また、カフェインの量も1日200mg程度に抑えるなど、適度な制限が必要です。また、未加熱食品の摂取も控えましょう。
塩分の摂りすぎは、妊娠高血圧症候群のリスクを高めるため、薄味を心がけることが大切です。加工食品や外食の頻度を減らし、手作りの食事を中心にしましょう。定期的に体重を測り、主治医と相談しながら適切な栄養管理を行うことが重要です。
妊娠中の食事に関するよくある質問と回答
妊娠中の食事について、多くのママが疑問に思うことがあります。ここでは、よくある質問とその回答を産婦人科医の視点からお答えします。正しい知識を身につけて、安心して妊娠期間を過ごしましょう。
Q.食べてはいけない食材を知らずに食べてしまった場合、胎児への影響はありますか?
A.一度少量口にした程度であれば、過度な心配をする必要はありません。人間の体には、ある程度の有害物質を処理する能力が備わっており、少量の摂取であれば胎児への直接的な影響はほとんどありません。例えば、カフェインを制限量より多く摂取してしまったといった場合でも、それだけで胎児に異常が起こるわけではありません。
ただし、継続的な摂取や大量摂取は注意が必要です。アルコールのように完全に避けるべきものを摂取してしまった場合や、不安が強い場合は、主治医に相談することをおすすめします。医師は個々の状況に応じて適切なアドバイスを提供してくれます。
今後は正しい知識を身につけて、安全な食材を選ぶよう心がけましょう。完璧を求めすぎず、基本的な注意点を守りながら、ストレスのない食生活を送ることが大切です。
Q.コンビニ弁当や冷凍食品の添加物は大丈夫ですか?
A.日本国内で流通しているコンビニ弁当や冷凍食品の添加物は、食品衛生法に基づいて安全性が確認されており、通常の摂取量であれば基本的に問題ありません。添加物の使用基準は、妊娠中の女性も含めて安全性が考慮されて設定されています。
ただし、これらの食品は塩分や脂質が高めに設定されていることが多く、頻繁に摂取すると栄養バランスが偏る可能性があります。また、野菜不足や食物繊維不足になりやすいため、週に数回程度の利用に留めることをおすすめします。
コンビニ弁当を選ぶ際は、野菜が多く含まれているものや、魚料理が入っているものを選ぶようにしましょう。また、冷凍食品を利用する場合は、冷凍野菜や冷凍魚なども活用して、手作り料理と組み合わせることで栄養バランスを整えることができます。忙しい時の便利な選択肢として、上手に活用していきましょう。
Q.妊娠初期と後期で食べてはいけないものは変わりますか?
基本的な「未加熱食品」「アルコール」などの主要なNG食材については、妊娠期間全体を通じて大きな変化はありません。これらの食材は、妊娠のどの時期においても避けるべきものです。例えば、生肉や未殺菌の乳製品、アルコール類は、妊娠初期から後期まで一貫して注意が必要です。
一方で、推奨される栄養素については時期による違いがあります。妊娠初期は葉酸の摂取が特に重要で、神経管閉鎖障害の予防に効果があります。妊娠中期から後期にかけては、鉄分が不足しがちであるため、貧血予防のために鉄分豊富な食材を意識的に摂取することが大切です。
また、妊娠後期は便秘になりやすいため、食物繊維を多く含む食材を積極的に摂取することが推奨されます。基本的な食事の安全性は変わりませんが、赤ちゃんの成長に応じて必要な栄養素を意識することで、より効果的な栄養管理ができます。
必要な栄養を確保しながら安全な食事を心がけよう
妊娠中の食事は、赤ちゃんの健康な成長と発達に直接関わる重要な要素です。葉酸、鉄分、カルシウムなどの必要な栄養素を含む食材を積極的に摂取し、同時に未加熱食品、アルコール、過度なカフェインなどの注意が必要な食材を避けることが大切です。
つわりで食事が困難な時期でも、冷たい果物や消化の良いお粥、少量ずつの頻回摂取を心がけることで、必要な栄養を確保できます。完璧を求めすぎず、基本的な注意点を守りながら、ストレスのない食生活を送ることが何より重要です。
不安や疑問がある場合は、遠慮なく主治医に相談しましょう。正しい知識と適切な指導のもと、安心して妊娠期間を過ごし、赤ちゃんと自身の健康を守っていきましょう。
