公開日 2025/05/29

【医師解説】妊娠9ヶ月(32〜35週)|出産が近い?前駆陣痛のサインと出産準備まとめ

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久保田産婦人科病院

西野 枝里菜 先生

妊娠9ヶ月に入ると、いよいよ出産が現実的に感じられる時期になります。赤ちゃんの成長は著しく、肺機能がほぼ完成してきます。この時期は身体的な変化も大きく、前駆陣痛を感じ始めるママも多いでしょう。出産準備を本格的に始める重要な時期でもあります。妊娠32週から35週までの胎児の成長と母体の変化、気をつけるべき症状について詳しく見ていきましょう。

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妊娠9ヶ月の赤ちゃんはどのくらい?|体重2800g・もうすぐ会える大きさに

妊娠9ヶ月(32〜35週)は、赤ちゃんが母体外での生活に向けて急速に準備を整える時期です。この時期の赤ちゃんの成長は目覚ましく、特に肺の機能が発達して自力で呼吸できる能力を獲得していきます。この時期の赤ちゃんの週ごとの様子を見ていきましょう。


妊娠32週の赤ちゃんの様子

妊娠32週になると、赤ちゃんの体重は約1,400g〜2,200gほどになります。内臓がほぼ完成し、皮膚にも張りが出てきて爪も完成します。この時期は羊水量がピーク(約800ml)に達し、この状態は妊娠36週頃まで続きます。

羊水は胎児の成長を支える重要な役割を持っています。胎児の成熟を助ける成分を含み、赤ちゃんの体や臍帯を保護し、外部からの圧迫から守る働きがあります。また、赤ちゃんが自由に動ける環境を提供しています。


妊娠33週の赤ちゃんの様子

妊娠33週になると、赤ちゃんの体重は約1,500g〜2,400gに成長します。この頃になると、赤ちゃんの顔に表情が見られるようになり、超音波検査で笑っているように見えることもあります。

この時期の赤ちゃんは約40〜90分の周期でレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返すようになります。この睡眠サイクルは脳の発達と密接に関係しており、生物時計(概日リズム)の土台がこの時期に形成されるのです。


妊娠34週の赤ちゃんの様子

妊娠34週になると、赤ちゃんの体重は約1,700g〜2,600gに成長します。この時期はさらに全体的にふっくらとしてきて、身体つきや大きさに個人差が出始める時期です。

特に重要なのは肺の成熟で、肺サーファクタントと呼ばれる物質が十分に作られるようになり、自力で呼吸することがより可能になります。また自律神経の発達も進み、心拍や呼吸の働きも充実してきます。


妊娠35週の赤ちゃんの様子

妊娠35週になると、赤ちゃんの体重は約1,800g〜2,800g、身長は約45cmまで成長します。頭の幅は約8.5cmになり、発育の個人差がさらに大きくなる時期です。

この時期の赤ちゃんは、出産後の生活に備えて免疫システムも発達してきています。また、脳の発達も著しく、学習する能力の基礎が形成されます。

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ママの体はどう変わる?息苦しい・頻尿・腰痛を和らげるコツ

妊娠9ヶ月に入ると、ママの体にもさまざまな変化が現れます。赤ちゃんの成長に伴い、体の負担も大きくなる時期です。この時期特有の症状について詳しく見ていきましょう。


呼吸器系と消化器系の変化

妊娠9ヶ月になると、大きくなった子宮がみぞおちまで上がり、肺や心臓を圧迫するため、動悸や息切れを感じやすくなります。特に階段の上り下りや少し早めに歩いただけでも息切れを感じることがあります。

また、子宮による胃の圧迫で胃のもたれを感じることも増えてきます。1回に食べられる量が減少するため、少量ずつ回数を分けて食べるとよいでしょう。消化不良や胸やけを感じる場合は、就寝前の食事を控えることも大切です。


骨格・筋肉系の変化

大きくなった子宮を支えるために腰に負担がかかり、腰痛を感じるママが増えてきます。また、足のつけ根に負担がかかって足がつる感覚が出ることもあります。

赤ちゃんが大きくなることで体の重心が移動し、背中の痛みを感じることもあります。正しい姿勢を意識し、長時間同じ姿勢を続けないよう心がけましょう。必要に応じてマタニティベルトなどの補助具を使用するのも効果的です。


泌尿器系の変化

子宮が膀胱を圧迫して容量が少なくなるため、頻尿の症状が強くなります。完全に排尿できていないような残尿感を感じることもあるでしょう。

また、くしゃみや咳など下腹部に力が入った際に尿もれ(腹圧性尿失禁)が起こりやすくなります。トイレはこまめに行き、骨盤底筋を鍛える体操を取り入れるとよいでしょう。


皮膚の変化

顔や乳輪、脇の下、腹部正中線などに色素沈着が目立つようになります。また、お腹や太ももなどの皮膚が伸びることによって妊娠線が発生することもあります。

妊娠線はかゆみを伴うこともあるため、保湿ケアをしっかり行いましょう。ただし、これらの変化のほとんどは出産後に徐々に薄くなっていきますので、過度に心配する必要はありません。


妊娠9ヶ月でやっておきたいことは?出産準備と入院バッグのチェックリスト

出産が近づくにつれて、出産に向けた準備をしっかりと整えておくことが大切です。身体の準備から入院グッズの準備まで、チェックリストを参考に準備を進めましょう。

この時期は突然の早産の可能性もゼロではないため、早めの準備が安心につながります。計画的に少しずつ準備を進めることで、精神的な余裕も生まれます。


身体の準備

出産に向けて体力をつけるために、適度な運動を継続することが大切です。ウォーキングなどの軽い運動は、出産時の体力維持に役立ちます。ただし、無理をせず自分のペースで行いましょう。

鉄分の摂取で貧血対策を行うことも重要です。妊娠後期は特に鉄分の需要が高まるため、意識的に鉄分を含む食品を摂るようにしましょう。また、無理な姿勢や長時間同じ姿勢を避け、体への負担を減らすことも心がけてください。


里帰り出産の準備

里帰り出産を予定している場合は、遅くとも妊娠34週までに帰省することが推奨されています。それ以降は移動によるリスクが高まるためです。実家に戻る前に、里帰り先の病院で妊婦健診を受ける体制を整えておきましょう。

また、現在かかっている病院から里帰り先の病院への情報提供も大切です。母子手帳やこれまでの検査結果などをしっかりと持参し、スムーズな引き継ぎができるようにしましょう。


入院準備

出産に備えて、入院バッグの準備も重要です。入院時に必要なものとしては、スリッパ、洗面用具、授乳用パジャマ、携帯電話の充電器、コンタクトレンズの替えなどがあります。また赤ちゃん用のものとして、赤ちゃんの洋服や毛布なども準備しておきましょう。

病院によって必要なものは異なりますので、事前に確認することをお勧めします。また、緊急時にすぐ持ち出せるよう、入院バッグは一か所にまとめておくと安心です。

入院準備 妊婦 出産準備

出産後の準備

出産後は思うように動けない期間があります。入院中の家事や退院後の役割分担を事前に計画しておくと安心です。特にパートナーとの間で、誰がどの家事を担当するかをあらかじめ話し合っておくとよいでしょう。

食事の冷凍保存や、家族や友人への協力依頼も出産前に済ませておくと良いでしょう。出産後は思ったよりも体力が回復するのに時間がかかることがありますので、できるだけサポートを確保しておくことが大切です。


こんな症状は要注意!妊娠9ヶ月で病院に連絡すべきサインと対処法

妊娠9ヶ月に入ると、様々な身体の変化がありますが、中には医師に相談すべき症状もあります。異常を早期に発見することで、適切な対応が可能になります。

体調の変化には敏感になり、気になる症状があればためらわずに医療機関に連絡することが大切です。特に以下のような症状には注意が必要です。


医師に相談すべき症状

おりものの量が増えたり、黄色みを帯びたりした場合は感染症の可能性がありますので医師に相談しましょう。また、胎動が少なくなった(1時間以上感じられない)場合や、今までにない激しい胎動を感じた場合も医師に相談すべき症状です。

破水の可能性がある場合はすぐに連絡が必要です。ただのおりものなのか破水なのか判断に迷うこともありますが、少しでも疑わしい場合は医師に相談しましょう。その他、強い頭痛や目のかすみ、急激な手足のむくみなどの症状も要注意です。


妊娠後期の重要な検査

妊娠後期には、胎児の健康状態を確認するためにノンストレステスト(NST)が行われることがあります。これは胎児の心拍数を測り、元気度を評価する検査です。また、B群溶連菌感染症(GBS)検査も行われます。


Q&A:妊娠9ヶ月に関するよくある質問と回答

妊娠9ヶ月にもなると、出産に向けてさまざまな疑問や不安が出てくることでしょう。ここでは、この時期によく寄せられる質問とその回答をまとめました。安心して出産準備を進めるための参考にしてください。



Q.妊娠9ヶ月でお腹が下がったと感じたら出産が近いのでしょうか?

A.お腹が下がる(胎児が下降する)現象は、出産が近づいているサインの一つです。これは赤ちゃんの頭が骨盤内に入り込むことで起こります。初産婦の場合は出産の2〜4週間前から、経産婦の場合は出産直前や陣痛開始後に起こることが多いです。

お腹が下がると、呼吸が楽になったり、胃の圧迫感が減少したりする一方で、膀胱への圧迫が増すため頻尿が強くなることがあります。また、足のしびれや痛みを感じることもあります。お腹が下がったと感じたら、出産に備えての準備を整えておくとよいでしょう。


Q.妊娠9ヶ月の赤ちゃんの体重や大きさはどれくらいでしょうか?

A.妊娠9ヶ月(32〜35週)の赤ちゃんの体重は、週数によって異なりますが、概ね1,400g〜2,800gほどです。具体的には、32週で約1,400g〜2,200g、33週で約1,500g〜2,400g、34週で約1,700g〜2,600g、35週で約1,800g〜2,800gとなります。

身長については、32週から35週にかけて約40cm〜45cmほどになります。この時期は個人差が大きくなる時期で、超音波検査などで計測される赤ちゃんの推定体重は、あくまで目安であることを理解しておくとよいでしょう。健診で体重が標準より大きい、または小さいと言われても、必ずしも問題があるわけではありません。


Q.妊娠9ヶ月の胎動チェックはどのくらいの頻度で行い、どのように測ればいいでしょうか?

A.妊娠9ヶ月になると、赤ちゃんの胎動チェックがより重要になってきます。特に妊娠32週からは毎日の胎動チェックが推奨されています。また、子宮収縮を感じる時期と重なるため、胎動と陣痛の違いを把握するためにも、胎動チェックは大切です。

胎動の測り方は、まず大きな胎動を1回と数えます。静かに横になってリラックスした状態で測定すると良いでしょう。赤ちゃんが10回動くのにかかる時間をチェックし、それが40分以上かかる場合は医師に相談した方が安心です。

ただし、時間帯によって胎動の活発さは変わります。赤ちゃんも眠る時間があるので、いつも活発に動いているわけではありません。あなたの赤ちゃんの普段の動きのパターンを知っておくことが大切です。


妊娠9ヶ月の体の変化は自然なこと-安心して出産を迎えましょう

妊娠9ヶ月(32〜35週)は、出産に向けて赤ちゃんの成長がさらに進み、母体もさまざまな変化を経験する重要な時期です。赤ちゃんの肺機能がほぼ完成し、自力で呼吸できる能力を獲得するこの時期は、早産のリスクはあるものの赤ちゃんの生存率が大幅に高まります。

母体には呼吸困難、腰痛、頻尿などのさまざまな症状が現れますが、これらは出産に向けて体が準備している自然な変化です。

最後の数週間は体調の変化も大きいため、無理はせずに過ごしましょう。赤ちゃんとの対面が近づいてきています。体調管理を第一に考え、穏やかな気持ちで出産の日を迎えられるよう心がけてください。

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