公開日 2025/05/19

【医師解説】妊娠中期(安定期)っていつから始まる?ママと赤ちゃんの変化

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久保田産婦人科病院

西野 枝里菜 先生

妊娠開始から数ヶ月、つわりや体調不良と戦ってきたママたちにとって、妊娠中期(安定期)の訪れは待ち望んでいた瞬間かもしれません。

妊娠中期は一般的に「安定期」と呼ばれ、多くのママは体調が安定し、妊娠生活を比較的落ち着いて過ごせる時期です。

この記事では、妊娠中期がいつからいつまでなのか、この時期の胎児の成長や母体の変化、気をつけるべきポイントについて詳しく解説します。出産に向けた準備を始める重要な時期でもあるので、パートナーと一緒に読んで理解を深めましょう。

ついに安定期!妊娠中期はどんな時期?つわりが落ち着くタイミングと体の変化

妊娠中期は、妊娠14週から27週(約4ヶ月目から7ヶ月目)の期間を指します。妊娠初期に比べるとママの体調が安定することから「安定期」とも呼ばれているこの時期は多くのママにとって比較的快適に過ごせる期間となります。

妊娠中期になると、つわりの症状が落ち着いてくる方が多く、食事も摂りやすくなります。また、流産のリスクも初期に比べて低くなるため、心理的にも安心感が増す時期です。胎盤の基本的な構造が完成し、ホルモンバランスも安定してきます。

さらに嬉しいことに、この時期には赤ちゃんの動き(胎動)を感じ始めることができます。初めての胎動は、多くの場合、妊娠18週から20週頃に感じるようになり、お腹の中の赤ちゃんの存在をより実感できる特別な瞬間です。

妊娠中期では赤ちゃんはどれぐらい育つ?

妊娠中期は、赤ちゃんが驚くほど成長する時期です。個人差はありますが、妊娠14週頃の約10cmぐらいの大きさから、27週末には約35cmほどにまで成長します。体重も60g程度から約1,000gへと劇的に増加します。それではこの時期の発育について詳しく見ていきましょう。

内臓器官の発達

妊娠中期に入ると、赤ちゃんの内臓器官のほとんどが形成されています。心臓や肺、腎臓などの基本的な構造が完成し、機能し始めます。特に肺は羊水を吸って「呼吸運動」の練習を始めており、将来の呼吸に備えています。

消化器官も発達が進み、腸は蠕動運動を始めます。また、肝臓や膵臓も機能し始め、胎便(赤ちゃんの最初のうんち)が腸内に蓄積されていきます。胎便は通常、出産後に排出されますが、これは消化器官が正常に機能している証拠です。


感覚と脳の発達

妊娠中期は赤ちゃんの感覚器官が急速に発達する時期です。特に聴覚の発達は顕著で、妊娠18週頃には外部の音に反応するようになります。ママの声や音楽、パパの声などを聞き分けることができるようになってきます。

また、視覚も発達し、まぶたは閉じていますが、明るさを感じることができるようになります。味覚も発達し始め、羊水の味の変化を感じ取ることができるようになります。ママが食べた食事の味が羊水に影響するため、赤ちゃんは様々な味を経験しています。

脳の発達も著しく、特に前頭葉の発達により、より複雑な動きが可能になります。指を吸ったり、へその緒をつかんだりといった意図的な動きもできるようになってきます。


外見の変化

妊娠中期になると、赤ちゃんの見た目も大きく変わります。皮膚は薄く透明に近いですが、次第に厚みを増していきます。全身を覆う産毛(胎毛)が生え、皮膚を保護する胎脂(白っぽいクリーム状の物質)も作られ始めます。

髪の毛や爪、まつげ、眉毛なども形成され、より人間らしい姿になっていきます。また、指紋も妊娠中期に形成され、赤ちゃん独自の特徴が作られていきます。

骨格も発達し、超音波検査では骨がはっきりと見えるようになります。筋肉も発達し、より力強い動きが可能になるため、ママは胎動をより明確に感じられるようになります。

赤ちゃん 頭の形 測定


ママの体はどう変わるの?妊娠中期の不思議な体験

妊娠中期に入ると、ママの体にも様々な変化が起こります。これらの変化は赤ちゃんの成長を支えるために必要なものですが、時に不快感を伴うこともあります。ママの体がどのように変化していくのか見ていきましょう。


体の変化

妊娠中期の最も顕著な変化は、お腹の大きさです。子宮は妊娠16週頃には幼児の頭ほどの大きさになり、次第にお腹が目立ち始めます。妊娠20週頃になると、妊婦と分かるようなお腹になってきます。

体重も増加し始めます。妊娠全期間を通じて、標準体重の方で10〜13kg、やせ気味の方で12〜15kgの体重増加が目安とされています。妊娠中期は特に体重が増加しやすい時期なので、バランスの良い食事と適度な運動を心がけましょう。

血液量も増加し、妊娠前より約40〜50%も多くなります。増えた血液量に対応するためにママの心臓が約40%増しで働くため、動悸や息切れを感じることがあります。また、赤血球の増加が血液量の増加に追いつかないため、貧血になりやすくなります。


ホルモンバランスの変化

妊娠中期になってもホルモンバランスの変化は続きます。エストロゲンの増加により、皮膚の血管が拡張し、顔や首、胸などが赤みを帯びることがあります。また、色素沈着が起こりやすくなり、乳輪や乳首、脇の下、お腹の正中線(妊娠線)などが黒ずむことがあります。

プロゲステロンの影響により、腸の動きが鈍くなり、便秘になりやすくなります。


安定期でも気になる?妊娠中期のよくあるお悩み解決法

妊娠中期は比較的安定した時期ですが、体の変化によって様々な症状が現れることがあります。これらは多くの場合、赤ちゃんの成長やホルモンバランスの変化によるもので、正常な妊娠経過の一部です。主なトラブルとその対処法について解説します。


イライラ・気分の変化

ホルモンバランスの変化により、気分の浮き沈みが激しくなることがあります。些細なことでイライラしたり、突然涙もろくなったりすることも珍しくありません。また、妊娠による生活の制約からくるストレスによる影響もあります。

対策としては、軽い運動や趣味の時間を作るなど、ストレス発散の方法を見つけることが大切です。パートナーや家族に気持ちを打ち明けることも効果的です。あまりにも気分の落ち込みがひどい場合は、産科医に相談してみることをお勧めします。


倦怠感・眠気

妊娠中期になっても、倦怠感や眠気が続くことがあります。これは鉄欠乏性貧血やホルモンバランスの変化、姿勢の変化による筋肉疲労などが原因です。特に貧血は妊婦さんに多いトラブルの一つです。

対策としては、鉄分を多く含む食品(レバー、ほうれん草、小松菜など)を積極的に摂取することが重要です。ビタミンCと一緒に摂ると鉄分の吸収が良くなります。また、規則正しい食事と適度な休息を心がけ、無理をしないようにしましょう。


便秘

プロゲステロンの影響で腸の動きが鈍くなることや子宮が大きくなって腸を圧迫することから、便秘に悩まされるママは少なくありません。便秘は痔や腹部の不快感の原因になるだけでなく、お腹の張りを誘発することもあります。

対策としては、水分を十分に摂ること、食物繊維の多い食品(野菜、果物、全粒穀物など)を積極的に食べること、適度な運動を心がけることが効果的です。それでも改善しない場合は、産科医に相談して妊婦に安全な便秘薬を処方してもらうことも検討しましょう。


腰痛

お腹が大きくなるにつれて、姿勢が変化し、腰に負担がかかるようになります。妊娠中期から後期にかけて、多くのママが腰痛に悩まされます。

対策としては、負担のかからない姿勢を心がけ、骨盤ベルトや腹帯を着用すること、適度なストレッチや運動を行うことが効果的です。また、長時間同じ姿勢でいることを避け、定期的に体勢を変えるようにしましょう。妊婦帯(腹帯)の使用も検討してください。

妊娠中期に注意すべき症状と病気

妊娠中期は比較的安定した時期ですが、いくつかの注意すべき症状や病気があります。これらの症状に気づいたら、すぐに医療機関を受診することが大切です。主な注意すべき症状と病気について解説します。

切迫早産

切迫早産とは、妊娠22週から37週未満で早産になる危険性が高い状態を指します。主な症状は、下腹部の張りや痛み、出血などです。特に規則的な子宮収縮(10分以内に1回など)がある場合は注意が必要です。

切迫早産と診断された場合、安静にして子宮の収縮を抑えることが基本的な対処法です。症状によっては入院が必要になることもあります。医師の指示に従い、十分な休息をとることが大切です。

予防のためには、過労を避け、適度な休息をとること、喫煙や飲酒を避けることなどが重要です。


子宮頸管無力症

子宮頸管無力症は、子宮口が開きやすい体質により、胎児の重さで子宮口が徐々に開いていく状態です。多くの場合、痛みなどの自覚症状がないまま進行するため、定期的な検診で発見されることが多いです。

子宮頸管無力症と診断された場合、安静にすることが基本ですが、妊娠週数によっては子宮頸管縫縮術(子宮口を糸で縛って閉じる手術)を行うこともあります。医師の指示に従い、適切な管理を受けることが重要です。


妊娠高血圧症候群

妊娠高血圧症候群は、妊娠中に高血圧がみられ、タンパク尿を伴うこともある病気です。軽度のものから重度のものまであり、重症化すると母子ともに危険な状態になることがあります。

症状としては、高血圧の他に、むくみ、頭痛、目のちらつき、上腹部痛などがあります。初産婦、多胎妊娠、以前に妊娠高血圧症候群の既往がある方、高齢出産、肥満などがリスク因子となります。

予防や管理のためには、塩分制限、適切な体重管理、十分な休息が重要です。診断された場合は、医師の指示に従い、場合によっては入院や薬物療法が必要になることもあります。


妊娠糖尿病

妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて発見または発症した糖代謝異常を指します。ホルモンの影響で妊娠中はインスリンの効きが悪くなるため、糖尿病の家族歴がある方や肥満の方などはリスクが高まります。

多くの場合は自覚症状がなく、妊娠中期に行われる血糖検査(ブドウ糖負荷試験)で発見されることが多いです。妊娠糖尿病と診断された場合、食事療法が基本ですが、状態によってはインスリン注射が必要になることもあります。

妊娠糖尿病が適切に管理されないと、赤ちゃんの出生後の低血糖、黄疸などのリスクが高まります。妊婦自身も将来的に糖尿病を発症するリスクが高まるため、出産後も健康管理が重要です。


前置胎盤

前置胎盤は、胎盤が正常より低い位置につき、子宮の出口(内子宮口)にかかってしまう状態です。多くの場合、超音波検査で発見されます。妊娠中期で前置胎盤と診断されても、妊娠の経過とともに胎盤の位置が上がり、問題が解消されることも多いです。

しかし、妊娠後期まで改善しない場合は、無痛で突然の出血が起こる可能性があり、出産時には帝王切開が必要になります。前置胎盤と診断された場合は、激しい運動や性交渉を避け、出血があればすぐに受診することが重要です。

前置胎盤のリスク因子としては、帝王切開の既往、高齢出産、喫煙などがあります。

Q&A:みんなが気になる!妊娠中期のよくある質問と回答

妊娠中期(安定期)に入ると、体調の変化やお腹の張り、体重管理など新たな疑問が出てくるものです。ここでは、多くのプレママさんから寄せられる質問とその回答をまとめました。安心して妊娠中期を過ごすための参考にしてください。


Q.妊娠中期に入るとつわりは落ち着きますか?体調の変化について知りたいです。

A. 多くの方は妊娠中期(14週頃)に入るとつわりが落ち着いてきます。これはhCGの分泌量が8〜10週にピークを迎え、その後漸減していくことと関係していると考えられています。しかし、人によっては妊娠中期に入っても軽度のつわりが続くこともあります。

もし妊娠中期に入っても激しいつわりが続く場合や、急な体調不良があれば、医師に相談してください。他の健康上の問題が隠れていることもあります。


Q.妊娠中期のお腹の張りは大丈夫?受診の目安を教えてください。

A. 妊娠中期には、子宮が大きくなることで時々お腹が張ることがあります。これは通常、一時的なもので、休息をとると自然に治まります。しかし、以下のような場合は早めに医療機関を受診してください。

(1)規則的なお腹の張り(10分間隔など一定の間隔で繰り返す)がある

(2)張りと同時に痛みや出血がある

(3)いつもより強い張りが長時間続く

(4)水っぽいおりものが増える。

これらは切迫早産や前期破水の兆候かもしれません。

予防策としては、過労を避ける、長時間同じ姿勢を避ける、などが有効です。不安な場合、まずは担当医に相談することをお勧めします。


Q.妊娠中期に体重が増えすぎないようにするにはどうすればよいでしょうか?

A. 妊娠中期は赤ちゃんの急速な成長に伴い、自然と体重が増加する時期です。急激な体重増加を避けるためには、バランスの良い食事と適度な運動が基本になります。1日の摂取カロリーは妊娠前より約250kcal増やす程度が目安です。

食事面では、タンパク質(肉、魚、大豆製品など)、野菜、果物をバランスよく摂り、甘いお菓子や脂肪の多い食品、塩分の多い食品を控えめにしましょう。また、「食べる量」より「何を食べるか」を意識し、栄養密度の高い食品を選ぶことが大切です。


まとめ

妊娠中期(14週〜27週)は、多くのママにとってつわりが落ち着き、比較的快適に過ごせる「安定期」です。この時期は赤ちゃんの成長も著しく、内臓器官の発達や感覚機能の発達が進み、胎動を感じることで赤ちゃんの存在をより実感できるようになります。

この時期を大切に過ごし、赤ちゃんとの絆を深めながら、健やかな妊娠生活をお過ごしください。

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公開日 2025/05/19

【医師解説】妊娠中期(安定期)っていつから始まる?ママと赤ちゃんの変化

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久保田産婦人科病院

西野 枝里菜 先生

妊娠開始から数ヶ月、つわりや体調不良と戦ってきたママたちにとって、妊娠中期(安定期)の訪れは待ち望んでいた瞬間かもしれません。

妊娠中期は一般的に「安定期」と呼ばれ、多くのママは体調が安定し、妊娠生活を比較的落ち着いて過ごせる時期です。

この記事では、妊娠中期がいつからいつまでなのか、この時期の胎児の成長や母体の変化、気をつけるべきポイントについて詳しく解説します。出産に向けた準備を始める重要な時期でもあるので、パートナーと一緒に読んで理解を深めましょう。

ついに安定期!妊娠中期はどんな時期?つわりが落ち着くタイミングと体の変化

妊娠中期は、妊娠14週から27週(約4ヶ月目から7ヶ月目)の期間を指します。妊娠初期に比べるとママの体調が安定することから「安定期」とも呼ばれているこの時期は多くのママにとって比較的快適に過ごせる期間となります。

妊娠中期になると、つわりの症状が落ち着いてくる方が多く、食事も摂りやすくなります。また、流産のリスクも初期に比べて低くなるため、心理的にも安心感が増す時期です。胎盤の基本的な構造が完成し、ホルモンバランスも安定してきます。

さらに嬉しいことに、この時期には赤ちゃんの動き(胎動)を感じ始めることができます。初めての胎動は、多くの場合、妊娠18週から20週頃に感じるようになり、お腹の中の赤ちゃんの存在をより実感できる特別な瞬間です。

妊娠中期では赤ちゃんはどれぐらい育つ?

妊娠中期は、赤ちゃんが驚くほど成長する時期です。個人差はありますが、妊娠14週頃の約10cmぐらいの大きさから、27週末には約35cmほどにまで成長します。体重も60g程度から約1,000gへと劇的に増加します。それではこの時期の発育について詳しく見ていきましょう。

内臓器官の発達

妊娠中期に入ると、赤ちゃんの内臓器官のほとんどが形成されています。心臓や肺、腎臓などの基本的な構造が完成し、機能し始めます。特に肺は羊水を吸って「呼吸運動」の練習を始めており、将来の呼吸に備えています。

消化器官も発達が進み、腸は蠕動運動を始めます。また、肝臓や膵臓も機能し始め、胎便(赤ちゃんの最初のうんち)が腸内に蓄積されていきます。胎便は通常、出産後に排出されますが、これは消化器官が正常に機能している証拠です。


感覚と脳の発達

妊娠中期は赤ちゃんの感覚器官が急速に発達する時期です。特に聴覚の発達は顕著で、妊娠18週頃には外部の音に反応するようになります。ママの声や音楽、パパの声などを聞き分けることができるようになってきます。

また、視覚も発達し、まぶたは閉じていますが、明るさを感じることができるようになります。味覚も発達し始め、羊水の味の変化を感じ取ることができるようになります。ママが食べた食事の味が羊水に影響するため、赤ちゃんは様々な味を経験しています。

脳の発達も著しく、特に前頭葉の発達により、より複雑な動きが可能になります。指を吸ったり、へその緒をつかんだりといった意図的な動きもできるようになってきます。


外見の変化

妊娠中期になると、赤ちゃんの見た目も大きく変わります。皮膚は薄く透明に近いですが、次第に厚みを増していきます。全身を覆う産毛(胎毛)が生え、皮膚を保護する胎脂(白っぽいクリーム状の物質)も作られ始めます。

髪の毛や爪、まつげ、眉毛なども形成され、より人間らしい姿になっていきます。また、指紋も妊娠中期に形成され、赤ちゃん独自の特徴が作られていきます。

骨格も発達し、超音波検査では骨がはっきりと見えるようになります。筋肉も発達し、より力強い動きが可能になるため、ママは胎動をより明確に感じられるようになります。

赤ちゃん 頭の形 測定


ママの体はどう変わるの?妊娠中期の不思議な体験

妊娠中期に入ると、ママの体にも様々な変化が起こります。これらの変化は赤ちゃんの成長を支えるために必要なものですが、時に不快感を伴うこともあります。ママの体がどのように変化していくのか見ていきましょう。


体の変化

妊娠中期の最も顕著な変化は、お腹の大きさです。子宮は妊娠16週頃には幼児の頭ほどの大きさになり、次第にお腹が目立ち始めます。妊娠20週頃になると、妊婦と分かるようなお腹になってきます。

体重も増加し始めます。妊娠全期間を通じて、標準体重の方で10〜13kg、やせ気味の方で12〜15kgの体重増加が目安とされています。妊娠中期は特に体重が増加しやすい時期なので、バランスの良い食事と適度な運動を心がけましょう。

血液量も増加し、妊娠前より約40〜50%も多くなります。増えた血液量に対応するためにママの心臓が約40%増しで働くため、動悸や息切れを感じることがあります。また、赤血球の増加が血液量の増加に追いつかないため、貧血になりやすくなります。


ホルモンバランスの変化

妊娠中期になってもホルモンバランスの変化は続きます。エストロゲンの増加により、皮膚の血管が拡張し、顔や首、胸などが赤みを帯びることがあります。また、色素沈着が起こりやすくなり、乳輪や乳首、脇の下、お腹の正中線(妊娠線)などが黒ずむことがあります。

プロゲステロンの影響により、腸の動きが鈍くなり、便秘になりやすくなります。


安定期でも気になる?妊娠中期のよくあるお悩み解決法

妊娠中期は比較的安定した時期ですが、体の変化によって様々な症状が現れることがあります。これらは多くの場合、赤ちゃんの成長やホルモンバランスの変化によるもので、正常な妊娠経過の一部です。主なトラブルとその対処法について解説します。


イライラ・気分の変化

ホルモンバランスの変化により、気分の浮き沈みが激しくなることがあります。些細なことでイライラしたり、突然涙もろくなったりすることも珍しくありません。また、妊娠による生活の制約からくるストレスによる影響もあります。

対策としては、軽い運動や趣味の時間を作るなど、ストレス発散の方法を見つけることが大切です。パートナーや家族に気持ちを打ち明けることも効果的です。あまりにも気分の落ち込みがひどい場合は、産科医に相談してみることをお勧めします。


倦怠感・眠気

妊娠中期になっても、倦怠感や眠気が続くことがあります。これは鉄欠乏性貧血やホルモンバランスの変化、姿勢の変化による筋肉疲労などが原因です。特に貧血は妊婦さんに多いトラブルの一つです。

対策としては、鉄分を多く含む食品(レバー、ほうれん草、小松菜など)を積極的に摂取することが重要です。ビタミンCと一緒に摂ると鉄分の吸収が良くなります。また、規則正しい食事と適度な休息を心がけ、無理をしないようにしましょう。


便秘

プロゲステロンの影響で腸の動きが鈍くなることや子宮が大きくなって腸を圧迫することから、便秘に悩まされるママは少なくありません。便秘は痔や腹部の不快感の原因になるだけでなく、お腹の張りを誘発することもあります。

対策としては、水分を十分に摂ること、食物繊維の多い食品(野菜、果物、全粒穀物など)を積極的に食べること、適度な運動を心がけることが効果的です。それでも改善しない場合は、産科医に相談して妊婦に安全な便秘薬を処方してもらうことも検討しましょう。


腰痛

お腹が大きくなるにつれて、姿勢が変化し、腰に負担がかかるようになります。妊娠中期から後期にかけて、多くのママが腰痛に悩まされます。

対策としては、負担のかからない姿勢を心がけ、骨盤ベルトや腹帯を着用すること、適度なストレッチや運動を行うことが効果的です。また、長時間同じ姿勢でいることを避け、定期的に体勢を変えるようにしましょう。妊婦帯(腹帯)の使用も検討してください。

妊娠中期に注意すべき症状と病気

妊娠中期は比較的安定した時期ですが、いくつかの注意すべき症状や病気があります。これらの症状に気づいたら、すぐに医療機関を受診することが大切です。主な注意すべき症状と病気について解説します。

切迫早産

切迫早産とは、妊娠22週から37週未満で早産になる危険性が高い状態を指します。主な症状は、下腹部の張りや痛み、出血などです。特に規則的な子宮収縮(10分以内に1回など)がある場合は注意が必要です。

切迫早産と診断された場合、安静にして子宮の収縮を抑えることが基本的な対処法です。症状によっては入院が必要になることもあります。医師の指示に従い、十分な休息をとることが大切です。

予防のためには、過労を避け、適度な休息をとること、喫煙や飲酒を避けることなどが重要です。


子宮頸管無力症

子宮頸管無力症は、子宮口が開きやすい体質により、胎児の重さで子宮口が徐々に開いていく状態です。多くの場合、痛みなどの自覚症状がないまま進行するため、定期的な検診で発見されることが多いです。

子宮頸管無力症と診断された場合、安静にすることが基本ですが、妊娠週数によっては子宮頸管縫縮術(子宮口を糸で縛って閉じる手術)を行うこともあります。医師の指示に従い、適切な管理を受けることが重要です。


妊娠高血圧症候群

妊娠高血圧症候群は、妊娠中に高血圧がみられ、タンパク尿を伴うこともある病気です。軽度のものから重度のものまであり、重症化すると母子ともに危険な状態になることがあります。

症状としては、高血圧の他に、むくみ、頭痛、目のちらつき、上腹部痛などがあります。初産婦、多胎妊娠、以前に妊娠高血圧症候群の既往がある方、高齢出産、肥満などがリスク因子となります。

予防や管理のためには、塩分制限、適切な体重管理、十分な休息が重要です。診断された場合は、医師の指示に従い、場合によっては入院や薬物療法が必要になることもあります。


妊娠糖尿病

妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて発見または発症した糖代謝異常を指します。ホルモンの影響で妊娠中はインスリンの効きが悪くなるため、糖尿病の家族歴がある方や肥満の方などはリスクが高まります。

多くの場合は自覚症状がなく、妊娠中期に行われる血糖検査(ブドウ糖負荷試験)で発見されることが多いです。妊娠糖尿病と診断された場合、食事療法が基本ですが、状態によってはインスリン注射が必要になることもあります。

妊娠糖尿病が適切に管理されないと、赤ちゃんの出生後の低血糖、黄疸などのリスクが高まります。妊婦自身も将来的に糖尿病を発症するリスクが高まるため、出産後も健康管理が重要です。


前置胎盤

前置胎盤は、胎盤が正常より低い位置につき、子宮の出口(内子宮口)にかかってしまう状態です。多くの場合、超音波検査で発見されます。妊娠中期で前置胎盤と診断されても、妊娠の経過とともに胎盤の位置が上がり、問題が解消されることも多いです。

しかし、妊娠後期まで改善しない場合は、無痛で突然の出血が起こる可能性があり、出産時には帝王切開が必要になります。前置胎盤と診断された場合は、激しい運動や性交渉を避け、出血があればすぐに受診することが重要です。

前置胎盤のリスク因子としては、帝王切開の既往、高齢出産、喫煙などがあります。

Q&A:みんなが気になる!妊娠中期のよくある質問と回答

妊娠中期(安定期)に入ると、体調の変化やお腹の張り、体重管理など新たな疑問が出てくるものです。ここでは、多くのプレママさんから寄せられる質問とその回答をまとめました。安心して妊娠中期を過ごすための参考にしてください。


Q.妊娠中期に入るとつわりは落ち着きますか?体調の変化について知りたいです。

A. 多くの方は妊娠中期(14週頃)に入るとつわりが落ち着いてきます。これはhCGの分泌量が8〜10週にピークを迎え、その後漸減していくことと関係していると考えられています。しかし、人によっては妊娠中期に入っても軽度のつわりが続くこともあります。

もし妊娠中期に入っても激しいつわりが続く場合や、急な体調不良があれば、医師に相談してください。他の健康上の問題が隠れていることもあります。


Q.妊娠中期のお腹の張りは大丈夫?受診の目安を教えてください。

A. 妊娠中期には、子宮が大きくなることで時々お腹が張ることがあります。これは通常、一時的なもので、休息をとると自然に治まります。しかし、以下のような場合は早めに医療機関を受診してください。

(1)規則的なお腹の張り(10分間隔など一定の間隔で繰り返す)がある

(2)張りと同時に痛みや出血がある

(3)いつもより強い張りが長時間続く

(4)水っぽいおりものが増える。

これらは切迫早産や前期破水の兆候かもしれません。

予防策としては、過労を避ける、長時間同じ姿勢を避ける、などが有効です。不安な場合、まずは担当医に相談することをお勧めします。


Q.妊娠中期に体重が増えすぎないようにするにはどうすればよいでしょうか?

A. 妊娠中期は赤ちゃんの急速な成長に伴い、自然と体重が増加する時期です。急激な体重増加を避けるためには、バランスの良い食事と適度な運動が基本になります。1日の摂取カロリーは妊娠前より約250kcal増やす程度が目安です。

食事面では、タンパク質(肉、魚、大豆製品など)、野菜、果物をバランスよく摂り、甘いお菓子や脂肪の多い食品、塩分の多い食品を控えめにしましょう。また、「食べる量」より「何を食べるか」を意識し、栄養密度の高い食品を選ぶことが大切です。


まとめ

妊娠中期(14週〜27週)は、多くのママにとってつわりが落ち着き、比較的快適に過ごせる「安定期」です。この時期は赤ちゃんの成長も著しく、内臓器官の発達や感覚機能の発達が進み、胎動を感じることで赤ちゃんの存在をより実感できるようになります。

この時期を大切に過ごし、赤ちゃんとの絆を深めながら、健やかな妊娠生活をお過ごしください。

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