公開日 2024/09/06

【医師解説】絶壁とは?3つの原因と予防策、治療方法について解説

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清益 功浩 先生

「赤ちゃんはどうして絶壁になるの?」「予防方法はある?」「治療方法は?」そんなお悩みを抱えてはいませんか。

絶壁とは、後頭部に丸みがなく平らになっている状態のことです。頭の柔らかい赤ちゃんは、出産時の圧力や向き癖によって絶壁になりやすい傾向にあります。

ただし、頭蓋骨が変形している病気の可能性もあるので、頭のゆがみを感じる場合は医師に相談しましょう。

この記事では、絶壁の原因や予防法、治療方法について解説します。

赤ちゃんの絶壁について悩んでいるママやパパは、ぜひこの記事を参考に、予防策や治療法を参考にしてみてください。

絶壁とは

絶壁

絶壁は、後頭部に丸みがなく平らになっている頭の形のことです。専門的には「後頭部扁平」ともいわれ、頭蓋変形の一種とされています。

主な特徴は以下のとおりです。

  • 頭の幅が広がり、上から見ると奥行きが短い
  • 横から見ると、後頭部が直線的で丸みがなく、下の方が平坦で斜め後方に伸びている
  • 後頭部の後ろが高く角張っていて、前頭部も平坦になっている

絶壁頭は日本人の方が欧米よりは多いと言われ、大人になってもコンプレックスとして悩む人が少なくありません。

しかし、頭の柔らかい赤ちゃんであれば、絶壁頭の予防・改善も期待ができます。不安に感じる場合は、かかりつけの小児科医に相談しましょう。

頭のゆがみの種類

頭のゆがみ

赤ちゃんの頭のゆがみは、ゆがみ方によって以下のように分類されます。

  1. 斜頭症
  2. 短頭症
  3. 長頭症

それぞれ詳しく解説していきます。

1.斜頭症

斜頭症は、片側が斜めに平たくなり、左右非対称になっている頭の形のことです。

左右どちらかの向き癖が強い場合、斜頭症になりやすいとされています。

さらに、後頭部のゆがみが進行すると、顔面にも以下のような影響がでる可能性があるので注意が必要です。

  • 耳の位置が左右で非対称になる
  • 頭の前の方が斜めになることで頬部が出っ張る

顔の左右対称性や耳の位置にずれがあると日常生活に支障をきたす恐れもあるため、日頃から観察しておきましょう

▶︎【医師解説】絶壁頭や斜頭症など、赤ちゃんの頭の形のゆがみは放っておいてもいい?

2.短頭症

短頭症は、横幅に対して前後が短く見える頭の形のことです。絶壁も短頭症に含まれ、両側性頭位性斜頭ともいわれます。

両側の後頭部への圧迫が主な原因となっており、向き癖のない赤ちゃんが長時間仰向けに寝ることによって、後頭部の中央に平坦な部分ができやすくなるとされています。

また、以下のような要因があると、短頭症のリスクが高くなるといわれています。

  • 未熟児や第2子以降の新生児で受動的に頭を動かさない
  • 4ヶ月を過ぎても能動的に頭を動かさない
  • 筋緊張が低い

適切な寝かせ方や姿勢を工夫することで、予防・改善ができるため早めにかかりつけ医に相談するのがおすすめです。

▶︎【医師解説】斜頭症や短頭症などの重症度を診断する方法とは?

3.長頭症

長頭症は、横幅に対して前後が長く見える頭の形のことです。

乳幼児期に真横に寝ることが多いと発生しやすいとされています。

特に、横向き寝が原因の場合、側頭部への圧迫により後頭部が大きく突き出した形状になりやすい傾向にあります。

一方で長頭症は、頭蓋骨縫合早期癒合症の一種である矢状縫合早期癒合症の頭蓋骨の変形と似ているので注意が必要です。

矢状縫合早期癒合症は、頭蓋骨が部分的にくっついてしまう病気で、脳の成長に合わせて頭蓋骨が正常に拡大できなくなってしまいます。

脳の発達が阻害される恐れがあるため、なるべく早く医師の診断を受けましょう。


▶︎【医師解説】長頭症とは?赤ちゃんの頭のゆがみにはどんな種類があるか医師に解説いただきました。

頭の形を測定

絶壁の3つの原因

絶壁の原因

絶壁の主な原因は以下の3つです。

  1. 頭蓋骨が変形する病気
  2. 向き癖
  3. 出産時の圧力

早期に治療が必要になる原因もあるので、赤ちゃんの頭の形に不安を感じる場合はすぐにかかりつけの小児科医に相談しましょう。

1.頭蓋骨が変形する病気

頭蓋骨縫合早期癒合症といわれる頭蓋骨が変形する病気によって絶壁頭になる場合があります。

頭蓋骨縫合早期癒合症は、通常2年ほどかけて閉じていくはずの赤ちゃんの頭蓋骨のつなぎ目が、早い時期にくっついてしまう病気です。

頭蓋骨のつなぎ目が早い時期に閉じてしまうと、脳の成長に合わせて正常に拡大できないため、絶壁頭になることがあります。

また、頭蓋骨の変形だけでなく、脳の成長が圧迫され脳の発達を阻害する可能性もあります。

▶︎【医師解説】位置的頭蓋変形症と頭蓋骨縫合早期癒合症の見分け方とは?

2.向き癖

絶壁の主な原因は、向き癖です。向き癖は、子宮内での姿勢や出産時の頭の変形・仰向け寝が関係しているとされています。

特に、仰向け寝は乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスク低減のために推奨されていますが、柔らかい赤ちゃんの頭蓋骨は、長時間同じ姿勢で寝ると頭の重さで後頭部が平らになりやすいので注意が必要です。

また、赤ちゃんの首が左右どちらか一方に傾いてしまっている斜頚も向き癖の要因となる可能性があります。

胸鎖乳突筋のこわばりでしこりを触れ、筋肉が動かずに首が傾く、先天性筋性斜頚が多い傾向にありますが、多くは1歳半までに自然治癒するため過度に心配する必要はありません。

適度に寝返りを促し、頭への圧力が一定方向に偏らないようにしましょう。

▶︎【医師解説】赤ちゃんの向き癖は自然に治る?原因や対策について医師に聞いてみました。

3.出産時の圧力

逆子や吸引分娩で生まれた赤ちゃんは、出産時により強い圧力を受けやすいため、絶壁頭になる可能性があります。

狭い産道を通過し、生後の脳の成長に対応できるよう柔らかく作られている赤ちゃんの頭は、出産時での圧迫は問題ない場合がほとんどです。

しかし、強すぎる圧力がかかると頭の形がゆがむ原因となってしまうこともあります。

強いゆがみがあると、赤ちゃんは自然と頭の収まりの良い方向を向いて寝るようになるので、頭のゆがみを助長してしまう可能性もあります。

ただし、適切なケアや対策によって、改善を促すことは可能です。

▶︎【医師解説】吸引分娩や遺伝は赤ちゃんの頭の形に影響する?頭がゆがむ原因について聞いてみました。

絶壁を予防・改善する3つの方法

絶壁の予防・改善

絶壁を予防・改善するには、以下の3つの方法がおすすめです。

  1. 赤ちゃんの寝る姿勢を適度に変える
  2. タミータイム(うつぶせで遊ばせる時間)を設ける
  3. 矯正ヘルメットを活用する

赤ちゃんの頭は柔らかく変形しやすいため、適切なケアや対策を行い、絶壁頭を予防・改善しましょう。

1.赤ちゃんの寝る体位を適度に調整する

赤ちゃんは仰向けで寝たままだと、頭の自重で後頭部に圧力がかかり続けてしまうため、意識的に姿勢を変える必要があります。

赤ちゃんには、胎内で身につけた向き癖があるので、体の向きに偏りがないよう体位変換をしましょう。

バスタオルを活用して、以下のように体位変換するのも効果的です。

  1. バスタオルを4つ折りにしてぐるぐる巻きにする
  2. 向かせたい方向と反対側の体半分に、赤ちゃんの首から背中の下に巻いたバスタオルを入れ込む

バスタオルを入れることによって、自然と向かせたい方向に体が傾きます。ただし、赤ちゃんに負担がかからないよう、優しく慎重にするのが重要です。

▶︎【医師解説】赤ちゃんは横向きで寝てもいい?リスクや横向き寝を直す方法を解説

2.タミータイムを設ける

タミータイムとは、赤ちゃんをうつ伏せにして過ごす時間のことで、頭の形の改善や運動発達に良いとされています。

タミータイムを実践する際は、赤ちゃんの機嫌の良い時間帯を選び、1日1〜3回・3〜5分程度の短時間から始めましょう。

少しずつ時間を延ばし、最終的には1日合計30〜60分程度を目指します。赤ちゃんが嫌がる場合は無理をせず、パパやママのお腹の上でうつ伏せに慣れさせるのもおすすめです。

特に、生後すぐから首がすわるまでの期間に実施することで、絶壁頭予防の効果が期待できます。

ただし、うつ伏せ寝は乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクがあるため、睡眠時は必ず仰向けにし、タミータイム中は目を離さないようにしましょう。

▶︎タミータイム(うつ伏せあそび)に関する詳しい解説はこちら

3.矯正ヘルメットを活用する

赤ちゃんの頭の形のゆがみを自然な骨の成長に合わせて改善するには、ヘルメット治療も効果的です。

ヘルメット治療は赤ちゃんの頭の変形に対して、医師の指導のもとオーダーメイドのヘルメットを約6ヶ月間装着し、頭のゆがみを改善させていく治療です。生後3ヶ月から6ヶ月の間に開始することで、高い効果を得やすい傾向にあります。

一方で、生後6ヶ月以降に治療を開始すると頭の成長スピードが落ち、改善効果が緩やかになります。頭のゆがみが気になる場合は、早めに医療機関に相談しましょう。

ヘルメットの製作には約2週間かかるため、計画的な受診スケジュールを立てるのをおすすめします。赤ちゃんの成長に合わせた自然な矯正方法なので、安心して取り組めるのがメリットです。


▶︎【医師解説】ヘルメット矯正治療とは?治療の費用や流れ、危険性について詳しく解説。

頭の形を測定

絶壁と赤ちゃんの発達の関係

絶壁と発達の関係

一般的に、絶壁は赤ちゃんの発達に影響しないとされています。

斜頭症の場合、2歳くらいまでは運動発達や言語発達に遅れが見られ、徐々に追いつく場合が大半であるという報告がありますが、一般的には問題ないとされています。

しかし、赤ちゃんの発達には個人差があるため、首すわりやおすわり・歩行の時期が多少遅れても、必ずしも発達の遅れを意味するとは限りません。

一般的な目安は以下のとおりです。

首すわり

生後3〜4ヶ月頃

おすわり

生後7〜8ヶ月頃

歩行

1歳以降

言語発達においては、2歳を過ぎても意味のある言葉を話さない、あやしても反応しないなどの場合は注意が必要です。

頭のゆがみに加えて発達の遅れが気になる場合は、早めに医師に相談しましょう。

▶︎赤ちゃんの成長・発達に関する詳しい解説はこちら

▶︎赤ちゃんの首すわりに関する詳しい解説はこちら

絶壁に関するよくある質問絶壁頭に関するよくある質問は以下のとおりです。

  1. 赤ちゃんの絶壁は自然に治る?
  2. 赤ちゃんの絶壁は枕で改善できる?
  3. 赤ちゃんの絶壁は何ヶ月くらいまで治せる?

絶壁に関する疑問点や不安を解消して、赤ちゃんの成長を見守りましょう。

1.赤ちゃんの絶壁は自然に治る?

頭のゆがみが軽度の場合、生活習慣の改善や成長に伴い、目立たなくなる可能性はあります。

一方で、ゆがみが重度の場合は絶壁が自然に改善されることは難しいとされています。

首振りや寝返りができるようになる前にゆがみが進行するケースがあるため注意しましょう。

また、重度のゆがみは自然治癒が難しい傾向にあるため、赤ちゃんの頭蓋骨が柔らかい生後6ヶ月までに適切な対策を講じる必要があります。頭の形が気になる場合は、早めに医療機関へ受診しましょう。

2.赤ちゃんの絶壁は枕で改善できる?

赤ちゃんの絶壁頭を、ドーナツ枕やベビー枕が頭のゆがみ予防に効果があるかどうかについては、科学的に十分なエビデンスはありません。

また、枕によって窒息のリスクも上がることから、使用は推奨されていません。

▶︎【医師解説】ドーナツ枕やベビー枕で赤ちゃんの頭のゆがみは予防できますか?効果や危険性について聞いてみました。

3.赤ちゃんの絶壁頭は何ヶ月くらいまで治せる?

絶壁を治すためのヘルメット療法は、赤ちゃんの頭が柔らかく成長が活発な生後3ヶ月から6ヶ月の間に開始するのが最適です。

生後6ヶ月を過ぎると頭蓋骨が硬くなり始め、頭の成長スピードも落ちるため、改善効果が緩やかになる可能性があります。

ゆがみが気になる場合は、なるべく早めに医療機関に相談しましょう。

絶壁が気になる場合は早めに受診しましょう

赤ちゃんは頭が柔らかいため、出産時の圧力や向き癖によって絶壁になりやすい傾向にあります。

バスタオルを使って体位を変えたりタミータイムを設けたりして、一方向から圧力がかからないようにしましょう。

赤ちゃんの頭のゆがみが気になったら、なるべく早めに一度受診するのがおすすめです。

頭蓋骨が変形する病気であった場合は、早期治療が欠かせません。

絶壁頭が必ずしも発達に影響を及ぼすわけではありませんが、頭のゆがみと発達の遅れが気になるママやパパは、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

頭の形測定アプリ