公開日 2024/05/31
【医師解説】赤ちゃんの下痢を見分ける4つのポイント|対処法や受診目安も
目次
清益 功浩 先生
赤ちゃんのうんちがいつもより水っぽく、白あるいは赤、赤黒い場合は病気による下痢が疑われます。症状によっては病院の受診が必要ですが、下痢かどうか見分けられずに受診を迷うケースもあるのではないでしょうか。
本記事では、赤ちゃんが下痢をしたときの受診目安と見分け方、対処法を解説します。迷ったときに相談できる方法も紹介しているので、赤ちゃんの下痢で病院の受診を迷っている方は参考にしてください。
赤ちゃんが下痢かどうか見分ける際のチェックポイント4つ
赤ちゃんが下痢をしているかどうかを見極めるポイントは以下の4つです。
- 普段よりも回数が多いか
- 水っぽいうんちか
- 腐ったようなにおい・鼻をつくすっぱいにおいがするか
- 白っぽい・赤い・赤黒いうんちではないか
赤ちゃんのうんちはペースト状であるため、下痢をしているかどうかわからないことがあります。そのため、なんとなくいつもと違うような気はするものの、下痢かどうか判断できないこともあるでしょう。
下痢かどうかを判断する際のポイントは「いつもと違うかどうか」です。普段のうんちの状態を思い浮かべて違いを比べてみましょう。
病院を受診する際により正確な診断結果を得るためには、うんちの色や状態を確認できる使用済みのおむつの持参がおすすめです。
1.回数|普段よりも回数が多い
赤ちゃんのうんちが普段よりも回数が多いと下痢をしている可能性が高いです。赤ちゃんの排便回数は個人差が大きいため、以下の月齢別の排泄回数を参考にするとよいでしょう。
月齢 | 排泄回数の目安 |
生後1ヶ月 | 5回以上/日 |
生後2ヶ月 | 2~5回/日 |
生後3ヶ月 |
普段の排便回数は下痢かどうかの基準のひとつになります。
いつもよりうんちが柔らかくて回数が多い場合、下痢をしている可能性があると言えるでしょう。
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2.状態|水っぽい
赤ちゃんのうんちが以下の通りに水っぽいときは、下痢の可能性が高いです。
- 水分が多い便(水様便)
- どろどろの便
赤ちゃんは母乳やミルクなどの液体のみを口にしているため、離乳食をはじめる前のうんちはゆるいです。しかし、普段よりも水っぽいうんちは下痢が疑われます。
下痢によって水分量が増えると、おむつからうんちが漏れることがあります。下痢かどうかの判断基準のひとつになるでしょう。
3.におい|腐ったようなにおい・鼻をつくすっぱいにおい
下痢の影響で、うんちから腐ったようなにおい、鼻をつくすっぱいにおいがしている可能性があります。しかし、うんちのにおいは腸内細菌の影響を受けるため、下痢でなくてもすっぱいにおいがするケースもあるでしょう。
成長して離乳食をはじめると大腸菌が増え、大人と同じうんちのにおいに近づきますが、赤ちゃんのうんちではすっぱいにおいがすることがあります。これは、母乳やミルクに含まれるビフィズス菌によるものです。
離乳食をはじめる前の赤ちゃんなのに大人のうんちと同じようなにおいがする場合や、離乳食をはじめているのにすっぱいにおいがする場合は、下痢をしている可能性があります。食事の内容や普段のにおいとの違いで判断するとよいでしょう。
4.色|白っぽい・赤い・赤黒い
赤ちゃんのうんちが以下の色をしている場合、下痢をしている可能性があります。
- 白っぽい
- 赤い、赤黒い(血便)
- いつもより色が薄くなっている
うんちが白っぽい、あるいは赤かったり赤黒かったりすると、早急に病院を受診する必要のある病気が隠れている恐れがあります。皮膚やしろめが黄色くなる「黄疸(おうだん)」が強く、うんちが白っぽいときには肝臓の病気のこともあります。
赤ちゃんの正常なうんちの色は茶色や淡黄緑色、緑色をしていますが、母乳とミルクの配分によって色は異なります。たとえば、母乳のみの赤ちゃんはミルクを飲んでいる赤ちゃんと比べると、黄色みが強いうんちがみられるでしょう。
下痢かどうかの判断が難しい場合、便色カードを使うのもおすすめです。便色カードとは、赤ちゃんのうんちの色と便色カードのうんちの色とを照らし合わせて、病院への受診が必要かどうか判断できるカードです。
便色カードは母子手帳への記載が義務づけられているため、母子手帳で確認できます。いざとなったときに判断がしやすいよう、日頃から正常な状態を確認しておくと安心ですよ。
病院へ受診する際にうんちを持参したくても、うんちをしてから時間が経過した場合や、おむつを持っていけない場合もあるでしょう。その際は、「〇番のうんちの色をしていた」のように、カードに記載されている番号を伝えると、医師の診断がスムーズです。
赤ちゃんが下痢になったら?病院の受診目安【症状別】
赤ちゃんが下痢になったときの病院の受診目安は、以下の通りです。
- 意識や呼吸状態がおかしい|救急車を呼ぶ
- 下痢のほかに症状がある|すぐに病院へ行ったほうがよい
- 下痢以外に症状はなく、元気がある|様子を見てから判断する
下痢症状の中には病気が隠れているケースもあるため、心配な場合は病院受診をおすすめします。ここからはそれぞれの症状の詳細や、知っておくと役立つポイントをお伝えします。
意識や呼吸状態がおかしい|救急車を呼ぶ
下痢のほかに以下の症状がある場合は、迷わずにすぐに救急車を呼びましょう。
- 意識が朦朧(もうろう)としている
- 意識がない、呼んでも反応しない
- 呼吸が弱い、ふだんの呼吸と異なる
- 皮膚や唇の色が紫色になっている
- 大量の吐血・下血(血便)
- おなかがパンパンに張って、意識がおかしい
- 41℃を超える発熱がある
ママやパパがいつもと明らかに様子が違うと感じた場合は、急な治療を要する病気が隠れている恐れがあります。一緒に暮らしているママやパパの感覚が何より大切です。意識や呼吸状態がおかしい場合は、すぐに救急車を要請しましょう。
救急車を呼ぶときの手順は以下の通りです。
- 救急車の要請(救急であることを伝える)
- お子さまの年齢(月齢)・名前・住所・電話番号・場所の目印を伝える
- 症状を伝える
救急車が到着したらすぐに搬送できるよう、以下のものを準備しておきましょう。
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病院へ持っていく持ち物を準備したあとは、救急車の到着までに火元を確認し、玄関の鍵を開けておくとすぐに出かけられます。
場合によっては担架の使用が考えられるため、玄関から赤ちゃんがいる場所までスムーズに搬送できるよう、荷物があれば移動してスペースを空けておきましょう。
救急車が到着して家を出る際は、玄関の戸締りを忘れないように注意し、冷静に救急車に対応するように心がけましょう。
下痢のほかに症状がある|すぐに病院へ行ったほうがよい
下痢のほかに以下のような症状がある場合、夜間でも病院を受診したほうがよいでしょう。
- おなかが張っている
- 繰り返し嘔吐がみられる
- 便に血が混じる
- 元気がない
- 12時間以上下痢が何度も続いている
- くちびるが乾いている
- 12時間以上おしっこが出ない
- 発熱(38℃以上)がある
こどもの発熱のほとんどはウイルス感染症が原因ですが、生後3ヵ月未満の赤ちゃんの発熱の約1割は、敗血症や細菌性髄膜炎などの深刻な感染症にかかっている恐れがあります。
また、免疫機能が発達過程にある生後3ヵ月までの赤ちゃんは重症化したり、脱水になりやすいため、下痢だけではなく38℃を超える発熱がある場合は、早めに病院を受診しましょう。
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下痢以外に症状はなく、元気がある|様子を見てから判断する
下痢のほかに症状がなく、赤ちゃんに元気があれば、早急な受診は必要ありません。以下の項目に当てはまる状態であれば、様子を見ながら受診の判断をしましょう。
- 元気がある
- 水分がとれている
- おしっこが出ている
様子を見るときには、食欲があったとしても消化不良をおこす恐れがあるため、普段と同じ量のミルクよりも1回あたりの量を減らしましょう。ほかには、濃い果汁を避けるほか、離乳食をはじめている赤ちゃんであれば一時的に離乳食をストップしたり、消化の良いお粥のみにしたりと食べ物を調節します。
下痢のほかに症状が出ていないか、お腹を痛がったりぐったりしていないかをこまめにチェックしましょう。うんちの回数が増えておらず、発熱もない場合は様子を見ても大丈夫です。ただし、下痢が1週間以上と長引いている場合は病院を受診したほうがよいでしょう。
赤ちゃんの下痢で病院受診の判断に迷ったときは?
赤ちゃんの下痢で病院を受診するかどうか判断に迷った場合には、以下の通りに行政などがおこなう各種サービスを活用するとよいでしょう。
名称 | 特徴 | |
Webサイト | こどもの救急(日本小児科学会) |
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救急お役立ちポータルサイト(総務省消防庁) |
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アプリ | Q助(総務省消防庁) |
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電話 | #8000(厚生労働省) ※こどものみ、自治体によって利用時間が異なる |
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#7119(総務省消防庁) ※実施されていない自治体もある |
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Webサイトで簡単にアクセスできるものから、医師や看護師からアドバイスがもらえる電話相談などあるため、状況に応じて使用しましょう。病院を受診するかどうかで迷ったときは自己判断せず、上記サービスを有効的に活用するのもひとつです。
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赤ちゃんが下痢のときの対処法
赤ちゃんが下痢をしたときは、以下の対処法があります。
- こまめに水分補給する
- おむつを頻繁に替える
- 家庭内感染を予防する
下痢の場合、赤ちゃんにおこなうケアのほかにも、家族に移さないために気を配るのも重要です。ここからは、それぞれどのような対処法であるのかを解説します。
こまめに水分補給する
赤ちゃんは下痢によって脱水になる恐れがあるため、こまめな水分補給が必要です。とくに、おむつからあふれるような水様便の下痢が、1日5回以上続く場合は注意しましょう。下痢の場合、こまめな水分補給を意識することが大切です。
また、胃腸を休める必要があるため、ミルクしか飲めない乳幼児は、普段飲んでいるミルクを2/3程度に量を減らし様子を見ましょう。ただし、母乳で育てている場合は量を制限する必要はありません。
離乳食期の赤ちゃんの場合は、固形物を避けた食事をとり、薄い番茶や湯冷ましなどをこまめに飲ませましょう。経口補水液は風邪などが原因の下痢に伴う脱水症に有効です。
しかし、生後6ヵ月未満の赤ちゃんまたは体重8kg未満の乳児が急な下痢をした場合、医師への診察が推奨されています。使用する際には医師に確認してから与えるようにしましょう。
おむつを頻繁に替える
赤ちゃんが下痢をしたときには、おむつを頻繁に替えてお肌を清潔な状態に保つことを意識しましょう。水分を多く含んだ下痢のうんちは刺激性が強く、肌荒れの原因になります。
少量の下痢を回数多くするケースもあるため、普段よりもこまめにチェックしてうんちが肌につく時間を短くしてあげましょう。おしりを拭きすぎて赤くなっていたら、シャワーで流すようにするとデリケートなお肌を守れます。
洗ったあとはよく水分を拭き取り、新しいおむつに取り替えましょう。
家庭内感染を予防する
細菌やウイルスによる胃腸炎で下痢になっていた場合、ほかの家族にうつらないよう、家庭内感染を予防するために適切な対処をする必要があります。
とくにウイルス性の胃腸炎は大人にもうつるため、以下の通りに適切に行動しましょう。
- おむつを処理する際は、なるべく使い捨て手袋やマスクを着用する
- 下痢が漏れ、家具に付着した場合は次亜塩素酸ナトリウムで消毒する
- おむつの処理後や調理、食事の前は、石けんで手を十分に洗う
- 食べ残しは処分する
アルコールを使用しても、ノロウイルス・ロタウイルスにはあまり効果がありません。消毒には次亜塩素酸ナトリウムを使い、次亜塩素酸ナトリウムが使えない素材の場合は熱湯消毒しましょう。
赤ちゃんの下痢が続くときに疑われる病気
赤ちゃんの下痢が続くときには、以下の病気が疑われます。
病名 | 症状 |
胃腸炎(嘔吐下痢症) |
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乳糖不耐症 |
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食物アレルギー |
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胃腸炎(嘔吐下痢症)は細菌やウイルス(ノロウイルス・ロタウイルスなど)による感染症であり、下痢や嘔吐などの症状があらわれます。乳糖不耐症とは遺伝子異常により、母乳やミルクに含まれる乳糖の分解酵素の働きが悪く、消化吸収できずに下痢がおきたり、体重が思うように増加しなかったりする病気です。
生後28日未満の赤ちゃんに発症する病気で、摂取後数時間から数日で下痢を引き起こします。一時的な乳糖不耐症もあり、胃腸炎の後になることもあります。食物アレルギーでは、摂取した食べ物によって身体を守るシステムである免疫の誤動作が起こり、さまざまな症状があらわれます。蕁麻疹や湿疹に加えて、嘔吐、下痢、咳、喘鳴などの症状が見られます。
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赤ちゃんの下痢が続く場合は病院を受診しよう
普段よりもうんちの回数が多かったり水っぽかったり、においや色が異なる場合は下痢をしている恐れがあります。下痢症状のほか、元気がなく発熱や嘔吐がある場合は、症状に応じてしかるべきタイミングで病院を受診しましょう。
病院を受診するべきか悩んだときは、行政のWebサイトや電話相談などを活用し、専門家に相談するのもひとつの方法です。また、下痢をしているときは、こまめな水分補給や家庭内感染の予防につとめましょう。