公開日 2025/06/25
【医師解説】出産前に知っておきたい!産婦人科・助産院など産院の違いと里帰り出産のポイント

目次

久保田産婦人科病院
西野 枝里菜 先生
妊娠がわかった瞬間から、出産する病院やクリニック選びに悩む方は多いのではないでしょうか。「産婦人科」「産院」「助産院」といった様々な名称があり、それぞれどんな違いがあるのか、どこで出産するのが自分に合っているのか、特に初めての出産では迷ってしまいますよね。
また、実家に帰って出産する「里帰り出産」を検討している方にとっては、手続きや準備のタイミングも気になるところです。この記事では、産婦人科医の視点から、産院の種類や選び方、里帰り出産のポイントをわかりやすく解説します。安心してお産に臨むための第一歩として、ぜひ参考にしてください。
産婦人科病院・総合病院・助産院の違いとは?
妊婦さんが出産できる場所は大きく分けて「産婦人科病院」「総合病院」「助産院」の3種類があります。それぞれの特徴を理解して、自分に合った出産場所を選びましょう。

産婦人科病院の特徴
産婦人科病院は、産婦人科医が中心となって妊婦健診から分娩までを担当する医療機関です。
産婦人科病院は比較的規模が小さく、医師と患者の距離が近いため、きめ細かなケアを受けられることが多いでしょう。設備面では基本的な分娩設備が整っており、緊急帝王切開にも対応できる施設が多いです。
複数の医師や看護師が在籍しているため、24時間体制で対応できる体制が整っています。
総合病院と大学病院の特徴
総合病院や大学病院は、産婦人科以外にも様々な診療科があり、万が一の合併症や緊急事態に対応できる体制が整っています。特にハイリスク妊娠(高齢出産、持病がある、多胎妊娠など)の場合は、総合病院での出産が推奨されることが多いです。
NICU(新生児集中治療室)が完備されている病院では、早産や低出生体重児にも対応できます。また、他科との連携がスムーズなため、妊娠中に別の病気が見つかった場合でも、同じ病院内で治療を受けられるメリットがあります。
一方で、大規模な病院では混雑していることが多く、待ち時間が長くなったり、担当医が毎回変わったりする可能性があります。また、医療介入(陣痛促進剤の使用など)が積極的に行われる傾向にあります。
助産院の特徴
助産院は、助産師が中心となって出産をサポートする施設です。自然分娩にこだわりたい方や、家庭的な雰囲気の中でリラックスして出産したい方に向いています。
医療介入を最小限にし、自然な出産を大切にする方針が特徴で、和室での畳分娩や水中分娩など、多様な出産スタイルを選べる助産院も多いです。また、産後のケアも手厚く、母乳育児のサポートや産後の体調管理などをきめ細かく行ってくれます。
ただし、助産院では緊急時の対応に限界があるため、リスクの高い妊婦さんは受け入れていないことが多いです。また、何か異常が起きた場合は、連携している医療機関へ搬送される仕組みになっています。

産院選びで重視すべきポイントとは?
産院選びは出産体験を左右する重要な決断です。後悔しないために、以下のポイントをチェックしましょう。
通いやすさ
まず考えるべきは、通院のしやすさです。妊娠後期になると体が重くなり、長時間の移動が辛くなります。自宅や職場から通いやすい場所にあるか、公共交通機関でアクセスしやすいか、駐車場は十分にあるかなどをチェックしましょう。
特に陣痛が始まってからの移動を考えると、あまりに遠い産院は避けた方が無難です。目安としては、自宅から30分以内で到着できる場所が理想的です。
また、産後の1ヶ月健診や予防接種なども同じ医療機関で受けることが多いため、産後も通いやすい場所かどうかも考慮しましょう。
医師・看護師の対応と相性
出産は長い時間をかけて医師やスタッフと関わるプロセスです。そのため、医師やスタッフとの相性は非常に重要です。初診時の対応や説明の丁寧さ、質問にきちんと答えてくれるかどうかなどをチェックしましょう。
担当医制か当番医制かも確認しておくと良いでしょう。担当医制なら同じ医師に継続して診てもらえる安心感がありますが、出産時に担当医が不在の可能性もあります。当番医制なら24時間体制で医師が常駐していますが、毎回違う医師に診てもらうことになります。
また、助産師や看護師の対応も重要です。出産時には医師よりも助産師と過ごす時間の方が長いため、親身になってサポートしてくれる雰囲気かどうかをチェックしましょう。
設備や出産方針のチェック
産院によって設備や出産方針は大きく異なります。自分が希望する出産スタイルに対応しているかどうかを確認することが大切です。
例えば、無痛分娩を希望する場合は、それに対応している施設かどうか。フリースタイル分娩(様々な姿勢での出産)や立ち会い出産を希望するなら、それが可能かどうか。入院中の個室の有無や、母子同室・母子別室の方針なども確認しておきましょう。
また、緊急時の対応体制も重要です。24時間体制で医師が常駐しているか、NICUがあるか、緊急帝王切開に対応できるかなどを確認しておくと安心です。
出産費用と保険内容
出産費用は産院によって大きく異なります。基本的な分娩料金に加え、個室料金、各種オプション料金などを事前に確認しておきましょう。
健康保険では出産育児一時金として50万円(2025年現在)が支給されますが、実際の出産費用がこれを上回ることも少なくありません。特に個室を利用する場合や無痛分娩を選択する場合は追加費用がかかることが多いです。
また、直接支払制度(出産育児一時金を病院が代理受領してくれる制度)を採用しているかどうかも確認しておくと良いでしょう。この制度を利用すれば、窓口での支払いは出産費用から出産育児一時金を差し引いた金額だけで済みます。

里帰り出産のポイントとスケジュール
実家の近くで出産する「里帰り出産」を検討している方も多いでしょう。里帰り出産には事前の準備や手続きが必要です。ここでは、スムーズな里帰り出産のためのポイントをご紹介します。

里帰り出産のメリットとデメリット
里帰り出産の最大のメリットは、家族のサポートを受けられることです。特に第一子の場合、慣れない育児に不安を感じるママにとって、実家の親のサポートは心強い味方になります。
また、実家が地方の場合、都会より出産費用が安い傾向にあることや、自然豊かな環境でリラックスして過ごせることもメリットです。
一方、デメリットとしては、パートナーと離れて過ごす期間が長くなることや、妊婦健診の途中で医療機関を変更する手続きの煩雑さ、帰省のための移動の負担などが挙げられます。
また、実家の親との関係性によっては、かえってストレスを感じてしまうケースもあります。事前にパートナーや実家の親とよく話し合い、お互いの期待値を調整しておくことが大切です。
里帰り出産のスケジュール
里帰り出産を成功させるためには、計画的な準備が欠かせません。以下に妊娠期間ごとの準備スケジュールをご紹介します。
妊娠初期(〜13週頃)では、まず里帰り出産をするかどうかを決定し、実家の親や家族と相談しましょう。同時に、現在通院している産婦人科医に里帰り出産の意向を伝え、紹介状の準備についても相談しておきます。里帰り先の産院を探し始めるのもこの時期がおすすめです。
妊娠中期(14〜27週頃)になったら、里帰り先の産院を予約しましょう。この時期は比較的体調が安定しているので必要な場合は、里帰り先への事前訪問や初診を済ませておくと良いでしょう。また、里帰りの交通手段や時期も具体的に決めておきます。
妊娠後期(28週以降)では、いよいよ里帰りの実行です。この時期に里帰りする場合は、長時間の移動は体に負担がかかるため、新幹線なら指定席、飛行機なら事前に妊婦であることを伝えておくなど、快適に移動できるよう配慮しましょう。
妊娠後期はいつから始まる?妊娠後期に避けた方がいいこととは?
里帰り出産に必要な手続きと持ち物
里帰り出産をスムーズに行うためには、いくつかの手続きが必要です。まず、現在通院している産婦人科から紹介状をもらうことが重要です。紹介状には、これまでの妊婦健診の結果や注意点などが記載されており、里帰り先の産院での診療がスムーズに進みます。
また、母子健康手帳や健康保険証、妊婦健診の受診票なども忘れずに持参しましょう。特に妊婦健診の受診票は自治体によって使用方法が異なるため、事前に確認が必要です。
里帰り先に持っていく持ち物としては、妊娠中から使う衣類や日用品はもちろん、赤ちゃんのための衣類や用品も準備しておくと良いでしょう。ただし、すべてを持参するのは大変なので、里帰り先で購入できるものは現地調達も検討してください。
里帰り出産後の手続きと注意点
出産後は、様々な行政手続きが必要になります。特に里帰り出産の場合は、住民票のある自治体と出産した自治体が異なるため、手続きが複雑になることがあります。
まず、出生届は出産した地域か父母の本籍地、または住所地のいずれかの市区町村役場に、生まれてから14日以内に提出する必要があります。次に、健康保険の加入手続きや児童手当の申請なども忘れずに行いましょう。
また、里帰り先から自宅に戻る時期も重要なポイントです。一般的には産後1〜2ヶ月程度里帰りすることが多いようですが、パートナーの仕事や実家の状況、自分自身の回復具合などを考慮して決めましょう。
帰宅後は環境の変化による赤ちゃんの不調やママの育児ストレスに注意が必要です。実家では手伝ってもらえていたことも、自宅では一人でこなさなければならないため、事前にパートナーと家事・育児の分担について話し合っておくことが大切です。
産婦人科・産院選びに関するよくある質問と回答
産婦人科・産院選びについて、多くのママが疑問に思うことをQ&A形式でまとめました。これから産院を探す方は、ぜひ参考にしてください。
Q.里帰り出産の場合、いつから産婦人科を探し始めればいいですか?
A.里帰り出産を考えている場合は、できるだけ早く(妊娠が判明したらすぐに)産婦人科を探し始めるべきです。人気の病院はすぐに予約が埋まってしまうため、希望の場所で出産できない可能性があります。妊娠初期から、健診で通う自宅近くの産院と、分娩する帰省先の産院の両方を探して、双方にその旨を早めに伝えておくことが重要です。
里帰り出産を決める時期は妊娠初期が理想的です。特に出産予定日が年末年始やゴールデンウィークなどの繁忙期に重なる場合は、より早めの行動が必要です。
Q.産婦人科・産院の費用相場はどのくらいで保険適用される項目はありますか?
A.出産費用の相場は施設や地域によって異なりますが、一般的に総額で40〜60万円程度です。内訳としては、分娩料(基本料金)、入院料、検査料、処置料などが含まれます。個室を利用する場合は追加料金(1日あたり5,000〜20,000円程度)がかかることが多いです。
出産自体は保険適用外ですが、健康保険から出産育児一時金として50万円(2025年現在)が支給されます。また、妊娠中の合併症や異常分娩(帝王切開など)については保険が適用されます。さらに、自治体によっては妊婦健診の助成券が発行され、健診費用の一部が補助されることがあります。出産前に加入している健康保険や自治体の窓口に確認しておくと安心です。
Q.産婦人科初診の際に必要なものはありますか?
A.産婦人科の初診時には、以下のものを持参すると良いでしょう。まず、健康保険証は必ず必要です。また、市区町村から交付される母子健康手帳と妊婦健診受診票も重要です(まだ受け取っていない場合は、初診後に取得できます)。
その他、お薬手帳(服用中の薬があれば)、診察料の支払い用の現金やクレジットカード、問診票記入用のボールペンなども用意しておくと便利です。初診時に尿検査を行うことが多いので、なるべく排尿を我慢して行くか、採尿のタイミングを医院に確認しておくと良いでしょう。また、過去に妊娠・出産の経験がある方は、前回の母子健康手帳があれば参考になるので持参すると良いでしょう。
自分に合った産院選びで安心の出産を迎えましょう
産婦人科・産院選びは、安心して出産を迎えるための重要なステップです。産婦人科病院、総合病院、助産院それぞれの特徴を理解し、自分のニーズに合った施設を選ぶことが大切です。
産院を選ぶ際は、通いやすさ、医師・スタッフとの相性、設備や出産方針、費用などの観点から総合的に判断しましょう。特に初めての出産では不安も多いため、疑問点はしっかり質問して、納得した上で決めることが重要です。
里帰り出産を検討している方は、早めの準備と計画が重要です。妊娠初期から里帰り先の産院を探し始め、必要な手続きや準備を計画的に進めていきましょう。
どのような形の出産を選ぶにしても、あなたとお腹の赤ちゃんにとって最善の選択ができるよう、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。安心して出産の日を迎えられるよう、心から応援しています。
