公開日 2025/05/29
【医師解説】妊娠8ヶ月(28〜31週)|早産に注意!体調管理と出産準備リスト

目次

久保田産婦人科病院
西野 枝里菜 先生
妊娠8ヶ月(28〜31週)に入ると、いよいよ妊娠後期のスタートです。この時期は赤ちゃんの体の基本的な機能がほぼ完成し、出産に向けての準備が始まります。ママのおなかはますます大きくなり、体調の変化も感じやすくなるでしょう。妊娠8ヶ月は早産のリスクにも注意が必要な時期です。この記事では、妊娠8ヶ月の赤ちゃんの発育状況やママの体の変化、そして出産に向けた準備について詳しくご紹介します。この時期を快適に過ごし、安全な出産を迎えるためのポイントをしっかり押さえていきましょう。

妊娠8ヶ月の赤ちゃんの成長|体重1600g・身長40cmに到達
妊娠8ヶ月に入ると、赤ちゃんの成長はさらに加速します。この時期の赤ちゃんは、身長約40cm、体重約1,600〜1,700gほどに成長しています。新生児の平均体重が約3,000gですので、出産までにあと倍近く体重が増えることになります。週ごとにどんな変化が起きるのか見ていきましょう。
妊娠28週目の赤ちゃんの変化
28週目になると、赤ちゃんの骨格がほぼ完成し、筋肉も発達してきます。神経系の発達も進み、脳の動きが活発になってきます。
このため、胎動もより力強く感じるようになるでしょう。この週では、赤ちゃんは約1,1 000gの体重があり、長さは約37cmほどになっています。
妊娠29週目の赤ちゃんの変化
29週目には、赤ちゃんの感覚器官の発達がさらに進みます。まぶたが発達し、光を感じるようになり、周囲の音にも反応するようになります。
また指を自由に動かせるようになり、自分の顔を触ったり、指をしゃぶったりする動きも見られるようになります。体重は約1,300gまで増えています。
妊娠30週目の赤ちゃんの変化
30週目になると、内臓の形と機能がさらに発達します。特に肺の発達が進み、呼吸の準備が整ってきます。
体重は約1,500gとなり、子宮内での動きもより活発になります。赤ちゃんが器用に体を動かし、しゃっくりをしたり、おなかを蹴ったりする様子も感じられます。
妊娠31週目の赤ちゃんの変化
31週目には、赤ちゃんの体重が約1,300〜2,000g(平均1,650g)に達します。この頃になると脳の溝も増え、より複雑な機能が発達していきます。
皮下脂肪も少しずつ増えてきて、生まれた後の体温調節の準備も進んでいます。
妊娠後期はいつから始まる?妊娠後期に避けた方がいいこととは?

妊娠8ヶ月の症状とは?|息切れ・頻尿・お腹の張りの原因と対処法
妊娠8ヶ月に入ると、ママの体にもさまざまな変化が現れます。赤ちゃんの成長が進むにつれて、ママのおなかはさらに大きくなり、体調の変化や症状を感じやすい時期です。この時期には、どのような変化が起こるのか見ていきましょう。
妊娠8ヶ月のおなかと子宮の変化
おなかはみぞおちから突き出すように大きくなり、表面が張って硬く感じることも増えてきます。また、おなかや太もも、胸などに妊娠線ができ始める方も多いでしょう。
子宮の大きさは、31週には胸骨の下部と臍の中間まで成長します。おなかが大きくなるにつれて、さまざまな不快症状も現れやすくなります。子宮が肺を圧迫することで動悸や息切れを感じたり、血液量の増加と子宮による圧迫で痔になりやすくなったりします。
また、足の静脈瘤や夜間のこむら返り、疲れやすさの増加なども一般的な症状です。赤ちゃんが骨盤に下がってくることで頻尿や尿漏れが起こることもあります。おなかが時々硬くなる感覚も始まるでしょう。
妊娠8ヶ月の精神面の変化
身体面だけでなく、精神面でも変化が現れる時期です。出産が近づくにつれて不安やストレスを感じることが増えるかもしれません。「出産がうまくいくだろうか」「赤ちゃんは健康に生まれてくるだろうか」といった心配が頭をよぎることもあるでしょう。 また、出産後の生活の変化への心配も出てきます。仕事と育児の両立、家族関係の変化、経済的な問題など、さまざまな不安が生じることがあります。一方で、もうすぐ赤ちゃんに会えるという喜びも大きくなる時期です。 このような喜びと不安が混在する感情は、妊娠中のホルモンバランスの変化も影響しており、多くのママが経験することです。パートナーや家族、友人と不安を共有したり、医師や助産師に相談したりすることで、心の負担を軽減することができます。
妊娠8ヶ月の過ごし方のポイント|腰痛・むくみ・静脈瘤を楽にする方法
妊娠8ヶ月は体調の変化が大きい時期ですので、無理をせず、体調管理に気を配ることが大切です。陣痛予防のための体のケアのポイントや食事の取り方など、この時期にしておきたいことをご紹介します。
妊娠8ヶ月目の体のケアのポイント
姿勢に気をつけ、背中を真っすぐにして立ったり座ったりすることで、腰痛を予防しましょう。痔の対策には、食物繊維が豊富な食事や十分な水分摂取、温浴などが効果的です。
静脈瘤対策としては、横になるときは足を高くしたり、医師に相談の上で弾性ストッキングを使用したりするとよいでしょう。こむら返りに悩まされる場合は、寝る前にふくらはぎのストレッチやマッサージを行うことで症状が緩和することがあります。
また、尿漏れ対策やその後の産後ケアにも有効なケーゲル体操を行うことをおすすめします。これは骨盤底筋を鍛える運動で、おしっこを我慢するような感覚で骨盤底の筋肉を締めて緩めるを繰り返す簡単な運動です。

栄養素の種類と生活習慣のポイント
妊娠8ヶ月は赤ちゃんの成長が加速する時期ですので、バランスの良い食事を心がけましょう。野菜、果物、乳製品、穀物、タンパク質をバランスよく摂取することが大切です。特にカルシウムは赤ちゃんの骨や歯の発達に重要ですので、牛乳やヨーグルト、小魚などから積極的に摂りましょう。
また、DHAはこの時期の赤ちゃんの脳や神経の発達に重要な栄養素です。イワシやサバなどの青魚に多く含まれていますので、週に1〜2回は摂取するとよいでしょう。ただし、水銀含有量の多い大型魚(マグロやカジキなど)の摂取は控えめにすることをおすすめします。
適度な運動の継続も大切です。無理のない範囲でウォーキングやマタニティヨガなどを行うことで、血行が促進され、むくみの軽減や気分転換にもなります。また、十分な休息と睡眠を取ることも忘れないようにしましょう。横向きに寝る姿勢が楽で、血行も良くなります。
早産が心配なママへ。早産のサインと危険な症状の見分け方とその予防法
妊娠8ヶ月は早産のリスクに注意が必要な時期です。ここでは早産のサインと対処法、妊娠8ヶ月目の健診と検査について説明します。
妊娠8ヶ月目の早産のサインと対処法
早産とは妊娠37週未満での出産を指し、赤ちゃんの臓器がまだ十分に発達していないため、様々なリスクがあります。早産のサインを知り、異常を感じたらすぐに医療機関に相談することが大切です。
早産の主なサインとしては、出血、下腹部の痛み、さらさらとした液体が腟から流れる(破水の可能性)などがあります。また、強い腹部の張りが規則的に起こる場合も注意が必要です。これらの症状が現れたら、すぐに医師に連絡しましょう。 早産を予防するためには、過度な運動や重い物の持ち上げを避け、十分な休息を取ることが大切です。また、感染症予防のために手洗いうがいを徹底し、バランスの良い食事と十分な水分摂取を心がけましょう。医師から安静にするように指示された場合は、必ず従うようにしてください。
妊娠8ヶ月目の健診と検査
妊娠8ヶ月の健診では、赤ちゃんの発育状態やママの健康状態をチェックします。この時期の健診の頻度は、通常2週間に1回程度です。
健診では、体重測定、血圧測定、尿検査、赤ちゃんの心拍数チェックなどが行われます。 また、エコー検査では赤ちゃんの大きさや向き、羊水量、胎盤の状態などが確認されます。
この時期には逆子(骨盤位)かどうかも確認され、逆子の場合は自然に戻るか、戻らない場合の対応について説明を受けることもあります。 血液検査では貧血の有無や感染症のチェックが行われることもあります。また、妊娠糖尿病の検査がまだ行われていない場合は、この時期に行われることもあります。健診では、不安なことや気になる症状があれば、遠慮なく医師や助産師に相談しましょう。
妊娠8ヶ月のママの出産準備|入院バッグとベビー用品の準備リスト
妊娠8ヶ月になると、いよいよ出産の準備を本格的に始める時期です。ここでは、入院の準備、かかりつけ医の選定、ベビー用品の準備について具体的に見ていきましょう。
出産に向けた入院の準備
妊娠8ヶ月目では出産施設の最終確認を行いましょう。病院見学や出産方法、入院中の過ごし方、産後のフォローアップや母乳育児のサポート体制についても確認しておくと安心です。
入院準備も始める時期です。いつ産まれても対応できるよう、入院に必要なものをリストアップし、少しずつ揃えていきましょう。
入院時に必要なものとしては、母子手帳、保険証、入院費用、産褥ショーツ、授乳ブラ、ナイトウェア、洗面用具、タオル、スマートフォンの充電器などがあります。また、退院時に赤ちゃんが着る服や、赤ちゃんを包むおくるみなども忘れないようにしましょう。
かかりつけとなる小児科医探し
赤ちゃんのかかりつけとなる小児科医の選定も始めましょう。自宅から通いやすい場所にあるか、夜間や休日の対応はどうかなど、事前に調べておくとよいでしょう。
万が一の時に備え、緊急連絡先や病院までの経路も確認しておくと安心です。また、出産予定の病院や産婦人科医に相談して、紹介してもらうのも良いでしょう。
赤ちゃんのベビー用品の準備
赤ちゃんを迎える準備として、ベビー用品も少しずつ揃えていきましょう。 赤ちゃんを迎えるために必要な基本的なベビー用品には、ベビー服(肌着、外着)、おむつ、おしりふき、バスタオル、ガーゼハンカチ、ベビーバス、哺乳瓶(母乳育児の場合も念のため)などがあります。
また、ベビーベッドやベビーカー、チャイルドシートなどの大型用品も検討する時期です。 これらのアイテムは一度にすべて揃える必要はなく、優先順位をつけて少しずつ準備していくとよいでしょう。
Q&A:妊娠8ヶ月に関するよくある質問と回答
妊娠8ヶ月に入り、出産への期待が高まる一方で、体調の変化や赤ちゃんの成長に関する疑問も増えてくることでしょう。ここでは、多くのママが抱える疑問に答え、安心して出産準備を進められるよう、よくある質問とその回答をご紹介します。
Q.妊娠8ヶ月で早産のリスクが高まると聞きますが、予防できる方法はありますか?
A.早産予防には、まず過労を避け、十分な休息をとることが大切です。特に立ち仕事が多い方は、こまめに休憩を取り、可能であれば座って行える作業に変更することをおすすめします。重い荷物の持ち上げや激しい運動も避けましょう。
また、感染症の予防も重要です。手洗いうがいを徹底し、人混みや感染症の流行している場所への外出は控えめにしましょう。
ストレスも早産のリスク要因となりますので、リラックスする時間を意識的に作りましょう。また、禁煙・禁酒を行い、、カフェインの過剰摂取は避け、規則正しい生活リズムを保つことも大切です。何か気になる症状があれば、早めに医師に相談することをおすすめします。
Q.妊娠8ヶ月の胎動が激しい・少ないときは大丈夫でしょうか?
A.妊娠8ヶ月の時期は、赤ちゃんの活動が最も活発になる時期です。そのため、胎動が激しく感じられることは一般的です。特に夜間や食後、ママがリラックスしているときに活発に動くことが多いです。赤ちゃんが元気に動いているサインですので、基本的には心配ありません。
一方、胎動が急に少なくなったと感じる場合は注意が必要です。赤ちゃんの活動時間と休息時間があるため、一時的に動きが少なくなることはありますが、長時間まったく胎動を感じない場合や、いつもと明らかに違うと感じる場合は、すぐに医療機関に相談しましょう。
Q.妊娠8ヶ月にしておきたい出産準備にはどんなものがありますか?
A.妊娠8ヶ月になったら、まず入院準備を始めましょう。入院グッズ(産褥ショーツ、授乳ブラ、母子手帳、保険証など)を準備し、すぐに持ち出せるようにバッグにまとめておくとよいでしょう。また、入院中や産後に必要な衣類や洗面用具なども準備しておきます。
赤ちゃんを迎えるための準備も重要です。最低限必要なベビー用品(肌着、おむつ、おしりふき、バスタオルなど)を揃え、赤ちゃんを寝かせる場所(ベビーベッドなど)も考えておきましょう。また、退院時に赤ちゃんが着る服やおくるみ、チャイルドシートなども事前に準備しておくとよいです。
もうすぐ赤ちゃんに会える!妊娠8ヶ月を乗り切るために
妊娠8ヶ月(28〜31週)は、いよいよ妊娠後期に入り、出産に向けた準備が本格化する時期です。赤ちゃんの基本的な機能がほぼ完成し、体重も急速に増加していきます。ママの体も大きく変化し、様々な症状が現れることがありますが、適切なケアと十分な休息で乗り切りましょう。
この時期は早産のリスクにも注意が必要です。異常を感じたらすぐに医療機関に相談し、無理をせず体調管理を優先することが大切です。また、出産に向けた準備も計画的に進めていきましょう。入院準備や赤ちゃんを迎える準備を少しずつ進めておくことで、安心して出産を迎えることができます。
妊娠8ヶ月は不安と期待が入り混じる時期かもしれませんが、パートナーや家族、医療スタッフと不安を共有しながら、赤ちゃんとの対面に向けて心と体の準備を整えていきましょう。あと少しで赤ちゃんに会えます。残りの妊娠期間も大切に過ごしてくださいね。
