公開日 2025/04/11
【医師解説】赤ちゃんのほくろはいつできる?知っておきたい肌の変化とケアのポイント

目次

久保田産婦人科病院
西野 枝里菜 先生
赤ちゃんのお肌に、小さなほくろを見つけたことはありませんか?「生まれたときからあったのかな?」「これって大丈夫なのかな?」と心配になるパパ・ママも多いのではないでしょうか。赤ちゃんのほくろは、生まれつき持っているものもあれば、成長とともに現れてくるものもあります。今回は医師の立場から、赤ちゃんのほくろについての基礎知識から気をつけるべきポイントまで、詳しく解説していきます。お子さまの肌の変化に気づいたとき、どう対応すればよいのか参考にしていただければ幸いです。
赤ちゃんのほくろとは?成長とともに変化するお肌のサイン
そもそも「ほくろ」って何?赤ちゃんの肌にできる理由とは?
まず、ほくろの正体についてお話しします。医学的には「色素性母斑(しきそせいぼはん)」と呼ばれるほくろは、メラノサイトという色素を作る細胞が集まったものです。赤ちゃんの肌は大人と比べて薄く、メラニンも少ないため、生まれたての赤ちゃんにはほくろがあまり目立たないことが多いです。
赤ちゃんの肌は生後数ヶ月経つにつれて、色や質感が変わっていきます。そのため、最初は気づかなかったほくろが、徐々に目立つようになることもあります。赤ちゃんの肌は非常にデリケートで、外部刺激を受けやすいこともあり、パパ・ママがほくろの変化に気づくことは、お子さまの健康を守る上でとても大切なことです。
赤ちゃんのほくろはいつからできる?先天性と後天性の違い
「赤ちゃんのほくろはいつからできるの?」というご質問をよくいただきます。実は、ほくろは胎児の段階からできることもあれば、生後数ヶ月、あるいは数年経ってから現れることもあるのです。
生まれたときからあるほくろを「先天性色素性母斑」と呼びます。一方、生後に現れるほくろは「後天性色素性母斑」と呼ばれます。多くの場合、赤ちゃんの肌に現れるほくろは幼少期から徐々に増えていき、10代から20代頃にかけて特に増加する傾向があります。
赤ちゃんのころにほとんどほくろがなくても、成長するにつれて増えていくのは自然なことですので、あまり心配する必要はありません。ただし、急激な変化や特異な形状のものは、医師に相談するほうが安心です。
成長とともに変わる赤ちゃんの肌|ほくろの変化を見逃さないために
赤ちゃんの肌は、成長とともに様々な変化を遂げます。生まれたばかりのときは薄く、血管が透けて見えるほど繊細ですが、徐々に厚みを増していきます。この過程で、最初は目立たなかったほくろが、だんだんと目立つようになることもあります。
生後数ヶ月で見られる一般的な肌の変化としては、「新生児ざ瘡(にゅうじあざ)」や「乳児湿疹」などがあります。これらは一時的なものが多く、適切なケアで改善することが多いですが、ほくろは通常、長期間にわたって存在し続けます。
お子さまの肌の変化を定期的に観察することで、新しくできたほくろや、既存のほくろの変化に気づきやすくなります。月齢が低いうちからお子さまの肌の特徴を把握しておくことは、将来的な健康管理においても大変重要です。
乳児湿疹ができる原因は?アトピー性皮膚炎との違いや対策について
ほくろは遺伝する?
「パパやママにほくろが多いから、赤ちゃんにもほくろが多いのかな?」と思われるかもしれません。実際、ほくろの数や大きさ、出現パターンには遺伝的要素が関わっていることが知られています。
ご両親のどちらかにほくろが多い場合、お子さまにもほくろが多くなる傾向があります。また、ほくろができやすい肌質も遺伝することがあります。ただし、これはあくまで傾向であり、必ずしもご両親と同じパターンになるわけではありません。
遺伝的要素に加えて、紫外線にさらされる度合いなどの環境要因もほくろの形成に影響します。
赤ちゃんのほくろの種類を解説!|良いほくろと悪いほくろの違いは?

生まれつきある「先天性ほくろ」の特徴と注意点
赤ちゃんが生まれたときから持っているほくろ「先天性色素性母斑」は、その大きさや形状はさまざまで、小さな点状のものから、やや大きめのものまであります。小さな先天性のほくろは、通常は心配する必要がありません。これらは多くの場合、成長とともに目立たなくなることもあれば、変化せずにそのまま残ることもあります。一方、大きなサイズの先天性ほくろ(先天性巨大色素性母斑)は、専門医による定期的な観察が推奨されます。これは将来的に皮膚がんのリスクが若干高まる可能性があるためです。ただし、小児期に悪性化することは非常にまれですので、過度な心配は不要です。定期的な経過観察を行いながら、適切な時期に適切な対応を検討していくことが大切です。
成長とともにできる「後天性ほくろ」はいつから現れる?
赤ちゃんが生まれた後に現れるほくろ「後天性色素性母斑」は、生後数ヶ月から数年かけて徐々に現れてくることが多く、幼児期から思春期にかけて増加する傾向があります。
後天性のほくろは、通常は小さく、平らで、色も均一であることが多いです。こうした特徴を持つほくろは、一般的には心配する必要はありません。
ただし、紫外線への過度な曝露は、将来的なほくろの増加や色素沈着の原因となる可能性があります。そのため、赤ちゃんのお肌を紫外線から守ることは重要です。特に生後6ヶ月以降は、ベビー用の日焼け止めを適切に使用することも検討しましょう。
注意が必要なほくろの見分け方|色・形・大きさでチェック
ほくろのほとんどは良性で、健康上の問題を引き起こすことはありません。しかし、中には注意が必要なものもあります。良性のほくろと注意が必要なほくろを見分けるポイントをいくつか紹介します。
良性のほくろは通常、以下のような特徴を持っています。
- 形が対称的で境界がはっきりしている
- 色が均一(通常は茶色や黒色)
- 大きさが6mm未満
- 時間とともに急激に変化しない
一方、以下のような特徴がある場合は、医師に相談することをお勧めします。
- 非対称的な形状
- 境界が不規則または不明瞭
- 色にむらがある、または複数の色が混在している
- 直径が6mm以上
- 短期間で大きさや色、形が変化する
- 出血や痛み、かゆみがある
これらの特徴は、必ずしも悪性を意味するわけではありませんが、念のため専門医に確認してもらうことが大切です。赤ちゃんの場合、悪性の可能性は非常に低いですが、早期発見・早期対応が最も重要です。
赤ちゃんによく見られるほくろの特徴
赤ちゃんに見られるほくろには、いくつかの特徴的なタイプがあります。それぞれの特徴を知っておくことで、不必要な心配を減らすことができるでしょう。まず、「カフェオレ斑」と呼ばれる淡い茶色の平らなシミのような斑点があります。これはほくろの一種ではありませんが、しばしばほくろと混同されることがあります。通常は無害ですが、数が多い場合は神経線維腫症(遺伝性疾患の一種)などの可能性を考慮して医師に相談することがあります。また、「蒙古斑(もうこはん)」と呼ばれる青灰色の斑点も、アジア人の赤ちゃんに多く見られます。これは主に背中やお尻に現れ、数年で自然に薄くなることが多いです。赤ちゃんに見られる典型的なほくろは、通常小さく、色も均一で、平らなものが多いです。これらは成長とともに少しずつ変化することがありますが、急激な変化がなければ心配する必要はありません。定期的な健診の際に、気になるほくろについて小児科医に相談するとよいでしょう。
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赤ちゃんのほくろのケア
赤ちゃんの肌は非常にデリケートですので、ほくろを含めた全体的なスキンケアが重要です。基本的には、刺激の少ない優しいケアを心がけましょう。

日常的なスキンケアを徹底しよう!
入浴時は、ほくろを強くこすらないようにしましょう。必要以上に力を入れてこすると、ほくろが傷ついたり炎症を起こしたりする可能性があります。赤ちゃん用の刺激の少ないボディソープを使い、やさしく洗うことをお勧めします。
また、肌の乾燥はかゆみを引き起こし、無意識に掻いてしまうことでほくろを傷つける可能性があります。適切な保湿ケアを行い、肌の乾燥を防ぐことも大切です。赤ちゃん用の低刺激性保湿剤を使用し、特に乾燥しやすい季節は丁寧なケアを心がけましょう。
ほくろ自体に特別なケアは必要ありませんが、清潔に保ち、不必要な刺激を与えないことが基本です。
紫外線対策は大切!赤ちゃんのお肌を守る工夫とは
紫外線はメラニンの生成を促進するため、将来的なほくろの増加や色素沈着に影響を与える可能性があります。そのため、赤ちゃんの肌を紫外線から守ることは非常に重要です。
生後6ヶ月未満の赤ちゃんの場合は、直射日光を避け、日陰で過ごすことを基本としましょう。外出時は、つばの広い帽子や日よけ付きのベビーカー、UVカット機能のある衣服などを活用するとよいでしょう。
生後6ヶ月以降であれば、赤ちゃん用の低刺激性日焼け止め(SPF15-30程度のもの)を使用することもできます。ただし、顔や手など露出部分にのみ使用し、使用後はしっかり洗い流すことが大切です。
また、紫外線の強い時間帯(10時から14時頃)の外出は避けるか、短時間にするよう心がけましょう。日常的な紫外線対策を行うことで、将来的なほくろの増加や肌トラブルのリスクを減らすことができます。
変化に気づいたらどうする?家庭でできる観察&記録のコツ
お子さまのほくろに変化を感じたら、まずは落ち着いて状況を確認しましょう。変化の内容(大きさ、色、形状など)をメモしたり、可能であれば写真を撮っておくと、経過観察や医師への相談時に役立ちます。
ほくろの変化が緩やかで、色が均一、形も整っている場合は、次の定期健診で小児科医に相談するとよいでしょう。
一方、急激な変化(急に大きくなる、色が不均一になる、出血するなど)があった場合は、できるだけ早く皮膚科または小児科を受診することをお勧めします。特に、ほくろが傷ついて出血したり、痛みやかゆみを伴う場合は、早めの受診が大切です。
受診の際は、変化に気づいた時期やその後の経過など、できるだけ詳しい情報を医師に伝えるようにしましょう。
悪いほくろを早く見つける方法|早期発見が大事!
お子さまのほくろを定期的に観察することで、異常な変化に早く気づくことができます。経過観察のポイントをいくつか紹介します。
まず、入浴後など、お子さまの全身を見る機会に、既存のほくろの状態や新しいほくろの有無を確認するとよいでしょう。特に、日光に当たりやすい部位(顔、首、腕、脚など)は注意深く観察します。
観察の際は、「ABCDE」と呼ばれる基準が参考になります。
- A(Asymmetry):左右非対称になっていないか
- B(Border):境界が不規則になっていないか
- C(Color):色にむらがないか、または変化していないか
- D(Diameter):直径が6mm以上ないか、または大きくなっていないか
- E(Evolving):短期間で変化していないか
これらの変化が見られた場合は、医師に相談することをお勧めします。また、定期的に写真を撮っておくと、微妙な変化も捉えやすくなります。
赤ちゃんの成長に伴い、ほくろも少しずつ変化することがありますが、急激な変化でなければ過度に心配する必要はありません。普段からお子さまの肌の状態を知っておくことが、異常の早期発見につながります。
赤ちゃんのほくろ治療は必要?受診・手術・除去の判断ポイント

受診前に知っておきたい|皮膚科・小児科での診察方法とは
ほくろの診断は、まず視診(見て診る検査)から始まります。小児科医や皮膚科医は、ほくろの色、大きさ、形状などを注意深く観察します。
より詳しい検査が必要な場合は、「ダーモスコピー」と呼ばれる特殊な拡大鏡を使用することがあります。これは皮膚表面の細かい構造を10倍程度に拡大して観察する体を傷つけない検査方法で、肉眼では見えない特徴を確認することができます。
さらに詳しい検査が必要な場合や、悪性が疑われる場合には、生検(組織の一部を採取して顕微鏡で調べる検査)を行うこともあります。ただし、赤ちゃんや小さなお子さまの場合、必要性が高い場合にのみ行われることが多いです。
専門医を受診する際は、ほくろの変化に気づいた時期や経過などの情報を詳しく伝えることで、より正確な診断につながります。
赤ちゃんのほくろ治療法とは?切除やレーザーの選択肢と注意点
ほくろの治療は、その性質や状態によって異なります。多くの場合、良性のほくろであれば特別な治療は必要なく、定期的な経過観察のみで対応します。
治療が必要と判断された場合、主な方法としては以下のようなものがあります。
- 外科的切除:局所麻酔を用いてほくろを切除する方法です。組織検査が必要な場合や、比較的大きなほくろに対して行われることが多いです。
- レーザー治療:特定の種類のほくろに対して効果的な場合があります。ただし、小さなお子さまの場合は、必要性と安全性を十分に考慮した上で実施されます。
いずれの治療も、専門医による適切な診断と説明を受けた上で選択することが重要です。特に赤ちゃんや小さなお子さまの場合は、治療の必要性、リスク、メリットを十分に検討し、慎重に判断することが大切です。
また、美容目的でのほくろ除去は、成長してからお子さま自身が判断できる年齢になってから検討するのが一般的です。
よくあるQ&A|赤ちゃんのほくろに関する疑問を解決!
赤ちゃんのほくろに気づくと、「これって普通?」「病院に行ったほうがいい?」と心配になることもありますよね。ここでは、パパ・ママからよく寄せられる質問に、わかりやすくお答えします。
Q. 赤ちゃんのほくろはすべて生まれつきのものですか?
A. いいえ、すべてのほくろが生まれつきのものではありません。生まれたときからあるものを先天性、生後にできるものを後天性と呼びます。多くのほくろは幼少期から徐々に現れ、10代から20代にかけて増えていくことが一般的です。
Q. 赤ちゃんのほくろが気になりますが、除去した方がよいでしょうか?
A. 基本的に良性のほくろであれば、美容的な理由だけで幼少期に除去することはあまり推奨されていません。成長とともに目立たなくなることもありますし、除去による傷跡が残ることもあります。ただし、医学的に必要と判断された場合や、擦れやすい場所にあって頻繁に傷つく場合などは、医師と相談の上で対応を検討するとよいでしょう。
Q. 赤ちゃんのほくろが最近大きくなってきたように感じますが、心配すべきですか?
A. 赤ちゃんの成長に伴い、ほくろも徐々に大きくなることはあります。急激な変化でなければ、過度に心配する必要はありません。ただし、短期間で明らかに大きくなった、色や形が変わった、出血するなどの変化がある場合は、医師に相談することをお勧めします。
Q. ほくろができやすい体質は遺伝しますか?
A. はい、ほくろのできやすさには遺伝的要素が関わっています。ご両親のどちらかにほくろが多い場合、お子さまにもほくろが多くなる傾向があります。ただし、紫外線などの環境要因も影響するため、日焼け対策をしっかり行うことで、将来的なほくろの増加を抑えることも可能です。
赤ちゃんのほくろは成長の一部。気になるときは専門医に相談を
赤ちゃんのほくろには生まれつきのものと後からできるものがあり、多くは良性で健康上の問題はありません。成長とともに増えることが一般的で、特に10代から20代で増加する傾向があります。
お子さまのほくろは普段から観察し、急な変化(大きさ・色・形の変化や出血、痛み)があれば専門医に相談しましょう。また、紫外線対策を行うことで、ほくろの増加や肌トラブルのリスクを減らせます。
過度な心配は不要ですが、お子さまの肌の状態を知っておくことが大切です。気になることがあれば、小児科や皮膚科で専門家の意見を聞きましょう。赤ちゃんの肌には個人差があるため、適切なケアをしながら健やかな成長を見守っていきましょう。
