公開日 2025/05/29
【医師解説】着床はいつ起こるの?受精から着床までの変化

目次

久保田産婦人科病院
西野 枝里菜 先生
赤ちゃんを待ち望んでいるパパとママにとって、「妊娠したかも」と感じる瞬間はとてもドキドキするものです。受精卵が子宮内膜に定着する「着床」は妊娠成立の重要なステップ。しかし、この着床のタイミングや症状については、多くの不安や疑問を抱えている方も多いでしょう。
この記事では、着床のメカニズムから、よくある症状、確認方法まで詳しく解説します。「これって着床かな?」と思ったときに参考になる情報をお届けします。
着床って何?赤ちゃんができる大切なステップ
着床とは、受精卵が子宮内膜に埋め込まれる現象です。これは妊娠が成立するために欠かせない重要なプロセスで、一般的には排卵から約6〜12日後に起こります。受精卵が無事に着床することで、妊娠が正式に始まると言えるでしょう。
赤ちゃんを望んでいるママにとって、この着床のタイミングは非常に大切な意味を持ちます。実際に、多くのママが「妊娠検査薬が陽性を示す前に何か感じるものがあるのでは?」と期待して、体の変化に敏感になっています。

受精してから着床するまで|お腹の中で何が起こってるの?
着床までの過程は、実に精密なステップで進んでいきます。まず卵子と精子が出会い、受精が成立します。これは通常、卵管の中で起こります。受精した瞬間から卵子と精子の遺伝情報が結合し、新しい生命の設計図が完成します。
受精卵はその後、分裂を繰り返しながら卵管を通って子宮へと移動します。この移動には約3〜4日かかります。子宮に到達した受精卵は、さらに分裂を続け、胚盤胞と呼ばれる段階に発達します。
胚盤胞になった受精卵は、子宮内膜に接触し、徐々にそこに潜り込んでいきます。これが着床です。着床の際、受精卵は子宮内膜を溶かしながら進入し、豊富な血液供給を受けられる環境を整えていきます。
着床はいつ?
着床は一般的に排卵日から約6〜12日後、多くの場合は8〜10日後に起こります。この時期は、次の生理予定日の約5〜7日前に当たることが多いでしょう。28日周期の方であれば、月経開始から約20〜24日目頃になります。
ただし、これはあくまで平均的な目安であり、個人差があることをお忘れなく。排卵日の特定が難しい場合や、不規則な生理周期の方は、着床のタイミングを正確に予測するのは容易ではありません。
また興味深いことに、着床自体は一瞬で終わるわけではなく、約24〜48時間かけて完了するプロセスなのです。この間に、様々な身体的変化や症状が現れる可能性があります。

「もしかして妊娠?」着床時の主な症状とは?
着床が起こるとき、体はさまざまな反応を示すことがあります。ここからは、着床時によく報告される症状や兆候について詳しく見ていきましょう。ただし、これらの症状があるからといって必ずしも着床しているとは限らず、反対にこれらの症状がなくても着床している可能性はあります。
着床出血 普通の生理との違い
着床出血は、着床の際に最も知られている症状の一つです。受精卵が子宮内膜に潜り込む過程で、内膜の毛細血管が破れて少量の出血が起こることがあります。この出血は通常、ピンク色または薄い茶色の軽いおりものや少量のスポッティングとして現れます。
着床出血の特徴は、量が少なく、通常の生理よりもはるかに軽いことです。多くの場合、1〜2日程度で自然に収まります。タイミング的には、次の生理予定日の約1週間前に起こることが多いでしょう。
また、軽い出血は他の原因(ホルモンバランスの変化、性交後の出血など)でも起こり得るため、着床出血だけで妊娠を判断するのは難しいでしょう。
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下腹部の痛みやけいれん これって着床痛?
着床の際に、軽い下腹部の痛みやけいれんを感じることがあります。これは受精卵が子宮内膜に埋め込まれる際の物理的な刺激や、それに伴う子宮の軽い収縮によるものと考えられています。
この痛みは、軽い生理痛や排卵痛に似ていることが多いですが、通常はそれほど強くなく、短時間で収まります。片側に偏った痛みを感じることもあれば、下腹部全体に鈍い痛みを感じることもあるでしょう。
ただし、強い痛みや持続する痛みは着床の症状としては一般的ではありません。もし激しい腹痛がある場合は、他の原因(子宮外妊娠など)の可能性も考えられるため、医師に相談することをおすすめします。
基礎体温の変化 着床した時の変化とは
基礎体温をつけている方は、着床時に微妙な変化を観察できることがあります。排卵後、プロゲステロンの影響で体温は高温期に入りますが、着床が起こると、さらに微妙な上昇や「着床ディップ(インプランテーションディップ)」と呼ばれる一時的な低下が見られることがあります。
着床ディップは、高温期に入ってから約7〜10日目頃に、体温が一時的に少し下がってから再び上昇するパターンです。
基礎体温の最も明確な妊娠サインは、高温期が通常の生理予定日を過ぎても18日以上続くことです。もしこの状態が続くようであれば、妊娠の可能性が高いと言えるでしょう。

頭痛やめまい
着床後、ホルモンバランスの急激な変化により、頭痛やめまいを感じることがあります。特にプロゲステロンの増加は、血管を拡張させ、頭痛の原因となることがあります。
また、血液量の増加や血圧の変化も、軽いめまいや立ちくらみの原因となることがあるでしょう。これらの症状は、午前中や空腹時、急に立ち上がったときなどに特に感じやすいかもしれません。
胸の張りや痛み
着床後、hCGやプロゲステロンなどのホルモン分泌が増加すると、乳房の張りや痛み、触ると痛いといった症状が現れることがあります。乳首が敏感になったり、色が濃くなったりすることもあるでしょう。
この胸の変化は、多くの女性が生理前にも経験するPMS(月経前症候群)の症状に似ていますが、妊娠初期の場合は通常より強く感じられたり、持続期間が長かったりする傾向があります。
ただし、ホルモンバランスの変化は個人差が大きく、これらの症状の強さも人によって異なります。全く感じない方もいれば、とても不快に感じる方もいるでしょう。
生理前の症状?それとも妊娠の兆候?迷った時の見分け方
着床の症状と生理前の症状は非常に似ているため、区別するのが難しいことが多いです。PMSの症状と早期妊娠の症状は、どちらもホルモンの変化によって引き起こされるため、多くの共通点があります。しかし、いくつかの微妙な違いもあります。
ここでは、着床の症状と生理前の症状を比較し、その違いについて詳しく見ていきましょう。
出血で判断するポイント|色・量・続く日数をチェック
着床出血と生理の出血は、量やタイミング、持続期間などに違いがあります。着床出血は通常、次の生理予定日の約1週間前に起こり、量は非常に少なく、ピンク色や薄い茶色のスポッティング程度です。また、1〜2日で収まることが多いでしょう。
一方、生理の出血は通常、予定日通りに始まり、量も多く、鮮やかな赤色から暗い赤色へと変化していきます。また、通常3〜7日間続くことが一般的です。
ただし、中には不規則な生理や軽い生理がある方もいるため、出血の特徴だけで判断するのは難しいこともあります。他の症状と合わせて総合的に考えることが大切です。
症状がいつまで続くかが重要!時期による違い
PMSの症状は通常、生理の約1〜2週間前から始まり、生理が始まると徐々に軽減していきます。一方、着床後の症状は生理予定日を過ぎても続き、むしろ強くなっていく傾向があります。
例えば、胸の張りや疲労感は、PMSであれば生理が始まると改善しますが、妊娠の場合は生理予定日を過ぎても続き、さらに強くなることもあるでしょう。
このような症状の持続期間の違いは、妊娠の可能性を考える上での重要な手がかりとなります。生理予定日を過ぎても症状が続く場合は、妊娠検査薬でのチェックを検討してみてください。
着床(妊娠)しているか確認したい時|検査のタイミングと方法
着床が起こったかどうかを確実に知るためには、いくつかの方法があります。ただし、着床直後はホルモン量がまだ少ないため、すぐに確認できるわけではありません。ここでは、着床を確認するための方法とそのタイミングについて詳しく解説します。
妊娠を心待ちにしているママやパパにとって、この待ち時間は長く感じられるかもしれませんが、確実な結果を得るためには適切なタイミングで検査することが大切です。
妊娠検査薬はいつから使える?正しい使い方とコツ
妊娠検査薬は、尿中のhCGホルモンを検出することで妊娠を判定します。このhCGは着床が完了してから分泌され始めるため、着床直後はまだ検出できないレベルです。
一般的に、市販の妊娠検査薬で陽性反応が出るのは、着床から約4〜5日後、つまり排卵から約10〜14日後(生理予定日頃)と言われています。最近の高感度タイプの検査薬では、生理予定日の2〜3日前から検出できる場合もありますが、確実性は低くなります。
最も信頼性の高い結果を得るためには、生理予定日を1週間過ぎてから検査することをおすすめします。朝一番の濃い尿で検査すると、より正確な結果が得られるでしょう。
超音波検査で見えるようになるのはいつ?
病院での超音波検査では、妊娠5〜6週目頃(最終生理開始日から数えて)から妊娠嚢が見えるようになります。これは着床から約3週間後に相当します。
その後、妊娠6〜7週目頃には胎芽(赤ちゃんの元になるもの)が見え始め、妊娠7〜8週目頃には心拍も確認できるようになることが多いです。ただし、これらの時期は個人差があり、また超音波機器の性能によっても変わってきます。
妊娠検査薬で陽性反応が出た場合は、その後の経過観察のためにも産婦人科を受診することをおすすめします。医師による適切な診断と指導を受けることで、安心して妊娠初期を過ごすことができるでしょう。
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血液検査による確認方法は?
病院で行う血液検査は、尿検査よりも高感度でhCGを検出することができます。一般的に、着床から2〜3日後(排卵から約8〜10日後)には血液検査で妊娠を確認できる可能性があります。
また、血液検査では単にhCGの有無だけでなく、その数値も測定できるため、妊娠の進行状況や、場合によっては多胎妊娠の可能性なども推測することができます。hCGの数値は正常な妊娠では約2〜3日ごとに倍増していくため、数日間隔で複数回検査することで、妊娠の順調な進行を確認することもあります。
ただし、血液検査は基本的に医療機関でのみ行われるため、自己判断で行うことはできません。妊娠の可能性があり、早期に確認したい場合は、産婦人科に相談してみましょう。
Q&A:着床に関するよくある質問と回答
ここでは、着床にまつわる3つの疑問についてQ&A形式でわかりやすく解説します。ぜひ、妊活や妊娠の初期サインにお悩みの方は参考にしてみてください。
Q.着床の成功率はどのくらいですか?
A.自然妊娠の成功率は、健康な男女のカップルでも1周期あたり約20〜30%程度と比較的低いものです。これは受精卵が子宮内膜に着床するまでの複雑なプロセスが必要なためです。多くの受精卵は染色体異常などで発育が停止し、着床前に自然淘汰されることもあります。
年齢によって妊娠率は変化し、女性の年齢が35歳を超えると徐々に低下し、40歳以上では5%程度になります。体外受精では良好な胚盤胞を移植した場合の妊娠率は約30~40%とやや高くなりますが、こちらも年齢や個人の状態で異なります。妊活を始めたばかりのカップルの場合、1周期での自然妊娠の確率は約20~30%、半年以内で約80%、1年以内で約90%とされています。
Q.着床痛はありますか?
A.着床痛は一部の女性(約30%程度)が経験する現象で、受精卵が子宮内膜に埋め込まれる際に起こる軽い痛みや違和感です。多くの場合、生理痛よりも軽度で、チクッとした鋭い痛みや引きつるような感覚、鈍い腹部の不快感として表れます。通常は数分から数時間で消失し、強い痛みや長時間続く場合は別の原因が考えられます。
着床痛と共に少量の出血(着床出血)が見られることもありますが、これも全ての女性に起こるわけではありません。着床出血は通常、ピンク色や茶色の薄いもので、生理よりも少量です。着床のタイミングは排卵から約6~12日後(次の生理予定日の約1週間前)で、この時期に軽い腹痛や出血があれば着床の兆候かもしれません。ただし、これらの症状がなくても正常に着床していることも多いため、症状の有無で妊娠を判断はできません。
Q.着床しやすくするためにできることはありますか?
A.着床しやすくするためにできることはいくつかありますが、完全にコントロールすることは難しいです。基本的な健康管理として、バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレス管理が重要です。特に葉酸、鉄分、ビタミンDなどの栄養素を意識的に摂取することが推奨されます。一方、喫煙やアルコールの過剰摂取、カフェインの大量摂取は控えるべきでしょう。
排卵日の把握も重要で、基礎体温測定や排卵検査薬を利用して適切なタイミングで性交渉を持つことで受精の可能性を高められます。排卵日前後2~3日間が最も妊娠しやすい時期です。子宮内膜の状態を整えるために冷えを防ぐ工夫も効果的かもしれません。着床期(排卵後約7日目頃)の安静や過度な運動の回避が着床率を高める可能性がありますが、普段通りの生活も大切です。
妊娠を1年以上試みても成功しない場合は専門医に相談しましょう。不妊治療では子宮内膜の状態を改善する薬剤やホルモンバランスの調整などが行われることもあります。ただし、過度に意識しすぎるとストレスが増加し、かえって妊娠の妨げになることもあるため、リラックスした状態を保つことも大切です。
着床について理解し、リラックスして妊活を続けていきましょう
着床は妊娠成立の鍵となる重要なステップです。排卵から約6〜12日後に起こり、一部の方には特徴的な症状が現れることがあります。
着床の主な症状としては、少量のピンク色や茶色の出血、軽い下腹部痛、疲労感、基礎体温の変化、胸の張りなどが挙げられます。これらは生理前の症状と似ていますが、持続期間や強さに違いがあることがあります。
着床を確認する最も確実な方法は、適切なタイミングでの妊娠検査です。市販の検査薬では生理予定日頃から、血液検査ではそれより少し早く結果が分かる可能性があります。
赤ちゃんを待ち望むパパとママにとって、この時期は期待と不安が入り混じる特別な時間です。心配なことがあれば、ためらわずに医師に相談しましょう。専門家のサポートを受けながら、リラックスして妊活に取り組むことが大切です。
