公開日 2026/06/15

【医師解説】ヘルメット治療とは?仕組みや必要性、対象月齢や治療の流れを解説

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この記事の監修者

日本大学医学部小児科 准教授

長野 伸彦 先生

日本大学医学部小児科学系小児科学分野入局。日本大学医学部附属板橋病院、駿河台日本大学病院にて後期臨床研修、都立墨東病院、国立甲府病院、埼玉医科大学総合医療センターなどを経て、現在、日本大学医学部附属板橋病院にて勤務。

<資格>
医学博士。日本小児科学会専門医、指導医。日本周産期・新生児医学会周産期(新生児)専門医、指導医。臨床研修指導医。
日本大学医学部医学科卒。
日本大学医学部附属板橋病院にて初期臨床研修。

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赤ちゃんの頭のゆがみが気になり始めたとき、「ヘルメット治療」という選択肢を耳にした方も多いのではないでしょうか。どんな治療なのか、いつ頃から始めるのか、費用はどれくらいかかるのか。気になることはたくさんあっても、まとまった情報がなかなか見つからないことも多いものです。

ヘルメット治療の仕組みや種類、開始時期、費用、治療の流れまで、監修医師にまとめて聞いてみました。

ヘルメット治療の仕組みについて

Q. そもそも、ヘルメット治療というのはどんな治療なのでしょうか?

A. 向き癖などの外力によって頭の形が変形した赤ちゃんに、専用のヘルメットを装着して頭の形を整える治療法です。自宅での向き癖矯正などが困難な場合や、変形が進んでしまった場合に用いられます。

Q. ヘルメットを装着するとのことですが、実際にどのような仕組みで頭の形を整えていくのですか?

A. 頭の平らな部分にヘルメットで空間をつくり、赤ちゃん自身の成長を原動力に、その方向へ頭が育つよう誘導します。「押して形を変える」のではなく、「成長できる余地をつくる」イメージです。

ヘルメット治療を上から見た図

強い締め付けや外圧をかけるものではないため、頭の成長が阻害されたり、脳に影響が出ることはありません。 1998年にアメリカFDAで医療機器として承認されており、日本でも2018年に厚生労働省に承認されました。安全性と有効性が確認されています。

Q. なるほど、「成長できる方向」をつくってあげるんですね。国内ではどんな種類のヘルメットが使われているのでしょうか?

A. 現在、日本で承認されているヘルメットは複数種類あります(ベビーバンド、スターバンド、ミシガン頭蓋形状矯正ヘルメット、リモベビー、クルムフィットなど)。デザイン、素材、費用、製造国がそれぞれ異なります。

医療機関によって取り扱いが異なるため、希望がある場合は事前に確認しておくとよいでしょう。

Q. いろんな種類があるんですね。どのヘルメットを使うかはどうやって決まるのでしょうか?

A. 各ヘルメットは形状や素材、治療の考え方などそれぞれ特徴があります。毎日長時間装着するものなので、清潔に保ちやすいかどうかも大切な観点のひとつです。 

どれが合うかは、受診した医療機関の先生と相談しながら決めていくことになります。

ヘルメット治療はすべての赤ちゃんに必要?

Q. ちなみに、ヘルメット治療はすべての赤ちゃんが受けるべき治療なのでしょうか?

A. 全員が受けるべき治療ではありません。治療するかどうかはご両親の意思で決めるものです。 

ゆがみの原因や程度によって判断が変わるため、まずはヘルメット治療をおこなっている医療機関で診断を受けることが大切です。

Q. 様子を見るという選択もあるということですね。実際に、何もしなくても自然に整っていくことはあるのでしょうか?

A. 軽度のゆがみであれば、月齢が進むにつれて目立たなくなることがあります。

ただ、重度のゆがみになると自然には治りにくくなってしまいます。実際に、生後4〜8か月頃に重度のゆがみがあった赤ちゃんを調べた研究では、3か月後も約7割が重度のままだったというデータがあります[*1]。 

生後3か月を過ぎてもゆがみが気になるようなら、早めに専門医を受診することをおすすめします。

頭のかたち測定会

治療を始めるベストタイミング

Q. 次に、治療を始めるタイミングについて聞かせてください。何ヶ月頃から始めるのが理想なのでしょうか?

A. おおむね首がすわったころから始められます。6か月未満での開始が望ましく、それより遅くなると頭の成長スピードが落ちてきて、効果が得られにくくなってしまいます。 

また、4か月になっても改善が見られない場合は、治療を検討するタイミングといえます。首がすわる前に重度のゆがみが進んでしまった場合は、大人になっても変形が残る可能性があるため、早めに相談することをおすすめしています。

Q. 6か月未満での開始が望ましいとのことですが、それより遅れてしまった場合、7か月以降でも治療を始めることはできますか?

A. 目安として、月齢3〜12か月が対象です。

7か月を過ぎると頭の成長が緩やかになるため、治療期間が長くなったり目標に届かない場合もあります。ただし、7か月以降でも一定の効果は報告されており、国内の多施設研究でも、CVAI(頭の左右非対称を示す指標)が約4%改善されたというデータがあります[*2]。

7か月を超えているからといって諦める必要はありません。まずは小児科や脳外科など、お近くの医療機関で相談してみることをおすすめします。

ヘルメット治療の費用について

Q. 続いて、費用についてお聞きします。ヘルメット治療にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか?

A. 自費診療のため、医療機関によって異なります。診察や検査を含め約30〜60万円が目安です。

Q. 自費診療とのことで、費用の負担が気になる方も多いと思います。健康保険や医療費控除は利用できますか?

A. 健康保険は使えず、自費診療となります。

ただ、医師が常に関わる治療なので医療費控除の対象になります[*3]。確定申告(翌年2〜3月)で申請でき、領収書は治療中から保管しておくとスムーズです。

民間の医療保険によっては給付対象になる場合もあるため、保険会社への確認もおすすめします。

ヘルメット治療の流れについて

Q. 実際に治療を始める場合の流れを教えてください。受診から治療終了まで、どのようなステップになりますか?

A. 次のような流れで進みます。

ヘルメット治療の流れ

①受診 (小児科、脳外科など)
②ゆがみの原因・程度を診断し、治療するか決める〜3D撮影・ヘルメット作成
③装着開始、月1回の経過観察
④卒業(治療終了)

通院は月1回ほどなので、ご自宅から通いやすい医療機関を選ぶのが大切です。

3D撮影からが完成するまでは約1〜2週間。ヘルメットの装着は1日23時間が目標になります。

Q. 治療全体の期間と、通院の頻度はどれくらいになりますか?

A. 治療期間は月齢や重症度によって変わってきます。平均3〜4か月で終了することが多いですが、2〜6か月の幅があります[*2]。装着時間が短いと効果が鈍くなるため、毎日続けることが大切です。 

治療が終わる6か月以降は寝返りやハイハイが始まり、頭も次第に硬くなっていきます。そのため、治療後にゆがみが悪化する可能性は低いと考えています。

気になったら、まずは最寄りの専門医療機関で相談・診断を

ヘルメット治療は、向き癖などによる頭のゆがみに対して、赤ちゃん自身の頭の成長を原動力として形を整えていく治療法です。1998年にアメリカで、2018年には日本でも医療機器として承認されており、安全性と有効性が確認されています。

最適な開始時期は6か月未満とされていますが、治療するかどうかの決定はご両親に委ねられています。

特に、目に見えて左右差や平らな部分がはっきりしている場合や、生後4か月以降になっても改善が見られない場合は、「様子を見る」のではなく、医療機関で一度評価を受けることが大切です。

早い段階で相談しておくことで、軽症であれば安心につながりますし、治療が必要な場合は最適な時期に始められます。気になることがあれば、一人で抱え込まず、まずは最寄りの専門医療機関にご相談ください。

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よくあるご質問(Q&A)

Q. 治療中、保育園や帰省・外出はそのまま続けて大丈夫ですか?

装着は1日23時間が目標であり、保育園も外出もそのまま続けて問題ありません。保育園には治療の目的・取り扱い・汗対策をあらかじめ共有しておくと安心です。

Q. 夏場の汗や蒸れ、おうちでの入浴はどうしているのですか?

入浴はヘルメットを外すタイミングで、1日1時間の休息をここに充てます。汗をかきやすい夏場は内側のクッションを毎日洗って清潔に保つご家庭が多いです。あせもや湿疹が気になったら担当医師にご相談ください。

Q. 治療をしない選択をした場合、おうちでできるケアはありますか?

体位変換とタミータイムが代表的です。授乳の抱き方や寝かせる向きを左右で変える、起きている時間にうつぶせで遊ぶ時間をつくる、といった工夫で頭の同じ部分に圧力がかかり続けないようにします。なお、寝かせるときは必ず仰向けにしてください。


参考文献

[*1]: Miyabayashi H, Nagano N, Kato R, Noto T, Hashimoto S, Saito K, Morioka I. Cranial Shape in Infants Aged One Month Can Predict the Severity of Deformational Plagiocephaly at the Age of Six Months. Journal of Clinical Medicine. 2022; 11(7):1797. DOI: 10.3390/jcm11071797

[*2]: Nagano N, et al. Therapeutic Effectiveness of a Novel Cranial Remolding Helmet (baby band2) for Positional Plagiocephaly: A Multicenter Clinical Observational Study. Journal of Clinical Medicine. 2024; 13(19):5952. DOI: 10.3390/jcm13195952