公開日 2026/06/25
【医師解説】ヘルメット治療は必要? 始めるか、様子を見るかの見分け方

目次
この記事の監修者

日本大学医学部小児科 准教授
長野 伸彦 先生
日本大学医学部小児科学系小児科学分野入局。日本大学医学部附属板橋病院、駿河台日本大学病院にて後期臨床研修、都立墨東病院、国立甲府病院、埼玉医科大学総合医療センターなどを経て、現在、日本大学医学部附属板橋病院にて勤務。
<資格>
医学博士。日本小児科学会専門医、指導医。日本周産期・新生児医学会周産期(新生児)専門医、指導医。臨床研修指導医。
日本大学医学部医学科卒。
日本大学医学部附属板橋病院にて初期臨床研修。
赤ちゃんの頭のゆがみを整える「ヘルメット治療」について調べてみると、「うちの子は本当に治療が必要なのかな?」「健診では様子見と言われたけれど、本当に自然と形は整ってくるの?」といった疑問が次々とわいてくるかと思います。
当記事では、ヘルメット治療が必要なケースと様子見でよいケースを見分ける判断軸について、監修医師にまとめて聞いてみました。
治療が必要なのは「中等度以上のゆがみ」
Q. まず聞かせてください。頭のゆがみがある赤ちゃんは、みんなヘルメット治療をしたほうがよいのでしょうか?
A. すべての赤ちゃんに必要なわけではありません。頭のゆがみがあっても、治療をせずに様子を見られるお子さんも多くいます。
Q. では、ヘルメット治療が必要なのはどんな赤ちゃんですか?
A. おもに中等度以上のゆがみ(頭頂から見たときに後頭部の左右差や前後の長さの差がはっきりと確認できる状態)がある赤ちゃんです。
ただし、中等度以上かどうかは家庭での目視ではなく、医療機関でしっかりと計測してもらうことが前提とされています。最終的にヘルメット治療を行うかどうかは、計測結果と医師の説明をふまえて、ご家族で判断する流れとなります。
Q. ということは、条件にあてはまったら必ず治療、というわけではないのですね?
A. はい、ヘルメット治療を受けるかどうかは保護者の自由意志で決められます。必ず受けなければならない治療ではありません。
大切なのは、医療機関で相談してゆがみの程度と治療に関する情報を正しく理解したうえで、判断することです。
軽度・3か月未満はおうちケアが多い
Q. 反対に、様子見でOKなのはどんな場合でしょうか?
A. 軽度のゆがみや生後3か月未満であれば、おうちでのケアを続けながら様子を見ていく場合が多いでしょう。
特に生後3か月くらいまでは、タミータイムや体位変換を積極的に行うことで、ゆがみが整っていく傾向があると考えられています。
Q. 様子を見る場合、頭の形はどのくらいで整っていくものなのでしょうか?
A. 生後1か月から6か月にかけて調べた研究では、生後3か月頃に頭のゆがみのピークを迎え、生後6か月頃には生後1か月頃と同じくらいまで整うことが示されています[*1]。
ただし、これはあくまで全体の傾向です。ゆがみの程度によっては自然に整いにくい場合もあるため、気になるときは一度医療機関の評価を受けておくと安心です。
ヘルメット治療を検討するタイミング
Q. 様子を見ても整わなかった場合は、どうすればよいでしょうか?
A. 生後3か月以降も中等度以上のゆがみがあり、体位変換などでは整いにくい場合は、ヘルメット治療を検討するケースがあります。
軽度であれば整いやすい一方、重度のゆがみは自然には整いにくいことが研究データから示されています[*1]。
Q. もしゆがみが残った場合は、どんなことが起こりうるのでしょうか?
A. 主に整容面(見た目)に影響する可能性があります。
大きくなったときに、顔の左右差、帽子が脱げやすい、ヘッドフォンの位置が合わない、似合わない髪型がある、といったことが起こりえます。耳の位置のずれや歯並びとの関連があげられることもあります。
なお、発達への影響については、大部分の乳幼児では問題がないと報告されています。
Q. ちなみに、ヘルメット治療を始めるなら効果が出やすい時期はあるのでしょうか?
A. 生後3か月から6か月頃が適しているとされています。
この時期は頭の成長スピードが最も速く、ヘルメットの効果も出やすいと考えられています。生後6か月を過ぎると頭の成長が緩やかになるため、整っていくペースも緩やかになる傾向があります。

ゆがみの判断は専門の医療機関へ
Q. 自宅でゆがみの程度を判断することはできますか?
A. 家庭で正確に判断するのは難しく、専門の医療機関での評価がすすめられています。
頭のゆがみの程度は、複数の方法を組み合わせて総合的に判断されます。おもな測定方法は次の3つです。
- 目視による視覚的評価
- 人体測定用ノギスによる計測
- 3Dスキャンによる計測
どれか一つが優れているというわけではなく、医師はこれらを組み合わせて判断します。
世界的に統一された基準はなく、測定方法や人種によって異なるとされているため、一般の方が家庭で正確に測定するのは難しいと考えられています。数値の上では軽症でも、視覚的には重度と判断される場合もあります。
Q. では、実際に医療機関を受診すると、どのような流れになるのでしょうか?
A. 一般的には、まず視診・触診で頭の形状を確認するところから始まります。
その後3D撮影による重症度評価を行い、体位変換やヘルメット治療などの対応方法について説明します。
なお、頭のゆがみの多くは外からの力による「位置的頭蓋変形症」ですが、まれに骨の病気である「頭蓋骨縫合早期癒合症」(発生率は約10,000人に5〜10人[*2])が原因の場合があります。疑わしい場合は、レントゲンやCTで縫合の癒合を確認します。
迷ったときは、早めに最寄りの医療機関へ相談を
ヘルメット治療が必要かどうかは主に「ゆがみの程度」と「月齢」で決まりますが、家庭で正確に線引きするのは難しいもの。「治療をする」「様子を見る」どちらを選んでも納得できるよう、専門の医療機関に相談しておくと安心です。
「いつも同じ向きを向く」「後頭部の片側が平らに見える」といったサインが気になるときも、はっきりした症状がなく「念のため聞いておきたい」くらいの気持ちでも構いません。
健診の機会なども使いながら、早めに医療機関で相談してみてください。

よくある質問(Q&A)
Q. 何科を受診すればよいですか?
頭のゆがみは、小児科・小児脳神経外科・形成外科などで相談できます。頭のかたち外来を設けている医療機関もあります。迷うときは、まずかかりつけの小児科で相談してみましょう。
Q. 1か月健診や3か月健診で相談してもよいですか?
相談して構いません。1か月健診・3か月健診はどちらも相談の機会になります。多くの医師は生後3〜4か月頃をすすめていますが、気になることがあれば早めに伝えておくと、選べる選択肢が広がります。
Q. 早産で生まれた場合、判断の時期は変わりますか?
推奨されている月齢は、正期産で生まれた赤ちゃんを基準にしたものです。早産の場合は修正月齢をもとに考えるため、判断の時期が変わることがあります。専門の医師に相談して確かめましょう。
参考文献
[*1]: Miyabayashi H, Nagano N, Kato R, Noto T, Hashimoto S, Saito K, Morioka I. Cranial Shape in Infants Aged One Month Can Predict the Severity of Deformational Plagiocephaly at the Age of Six Months. Journal of Clinical Medicine. 2022; 11(7):1797. DOI: 10.3390/jcm11071797
[*2]: Cornelissen M, Ottelander BD, Rizopoulos D, et al. Increase of prevalence of craniosynostosis. Journal of Cranio-Maxillofacial Surgery. 2016; 44(9):1273-1279. PubMed



