公開日2025年10月16日

小児科医が始めた赤ちゃんの頭の形外来への想いと子育ての不安に寄り添う診療

都立広尾病院
小川 えりか先生
「都立広尾病院」は創立130周年を迎える歴史ある病院で、「チーム医療で地域に寄り添った医療を提供する」ことを理念としています。一般小児科診療、アレルギー疾患、こころの診療に加え、赤ちゃんの頭の形についても診療を実施。日々、親御さんの不安に寄り添う診療を心がけています。今回は小川先生に、診療への思いや赤ちゃんの頭の形の診療について詳しくお話を伺いました。

先生のご経歴を教えていただけますか

群馬大学を卒業し、初期臨床研修は東京都立豊島病院で行いました。その後、小児科にすすむことにきめ日本大学の小児科に入局しました。入局後は、日本大学医学部附属板橋病院、駿河台日本大学病院、練馬光が丘病院の3病院を2年間で回り、小児科医としての基礎を学びました。その後は都立広尾病院、都立墨東病院などに勤務したのち、2013年から9年間日本大学病院に勤務しました。大学では先天代謝異常症という分野を学び、新生児マススクリーニングで精密検査となった赤ちゃんの診断や治療を行ってきました。先天代謝異常症は生涯治療が必要な疾患が多いため、新生児から成人まで幅広い年代の患者さんと関わっていました。2022年からは現在の勤務先である都立広尾病院に医長として就任し、一般小児科診療のほか、アレルギー疾患や子どものこころの診療を行っています。赤ちゃんの頭の形の診療は、ニーズの高まりを受け、開設いたしました。

医師を目指したきっかけを教えてください

わたしはもともと別の仕事を12年間したあと、医学部に入りなおして医師になりました。医師を目指した動機はいろいろありますが、もともと人の体の仕組みを勉強するのが好きだったことと、当時仕事で関わることがあった医師の方々が何歳になっても楽しそうに仕事をされている方が多かったことがあります。

小児科を目指したきっかけを教えてください

小児科医は、この国の未来がどうなっていくのか、子どもたちを通して見届けることができる仕事だと思っています。子どもたちの未来、社会の未来に関わる、大きな責任とやりがいのある仕事です。また、わたしは医師になる前に子どもがいたので、他の若い先生方にはわかりにくい親、特に母親の気持ちが他の人より少しは分かるかなとも思いました。子どもの代弁者であると同時に、母親の味方である小児科医がいてもいいかなと思ったこともあります。

診療時に心掛けていることはなんですか

保護者に信頼してもらえるように気をつけています。なぜなら子どもは親が信頼していない医師を信頼しないと思うからです。いろいろな親御さんがいて、一人一人に理由や背景があるのだろうと想像するようにしています。真向から否定することなく、とりあえずは話を聞き、相手を少しでも理解しようと思っています。また、こちらから見立てやアドバイスをするときは、その前に言いたいことを吐き出してもらえるよう、しゃべっていただきます。まずは聞いてほしい不安を吐き出さないと、こちらのいうことを受け入れる余裕はないと思うからです。

この病院の強みを教えていただけますか

都立広尾病院は、都立病院の中で最も古い病院で、今年創立130周年を迎えました。歴史と伝統のある病院で、近年は、救急医療や災害医療、東京都の島しょ部の医療に力を入れています。コロナ禍はコロナ専門病院として多くの患者さんを受け入れましたが、今はコロナ禍を経て、病院の建て替えも決まっており、新しい病院に生まれ変わろうとしているところです。

頭の形の診療を始めたきっかけは何ですか

近年ニーズが高まっているのは知っていましたが、一部の経済的に余裕のある家庭のものだと認識していました。その中で知り合いの先生が、親御さんの子どもを思う気持ちに寄り添った丁寧な診療をされているのを見て、これは時代にマッチした子育て支援のひとつのきっかけだなと感じました。元気に生まれてきてくれたことにただただ感動していた新生児期を過ぎ、まだお座りできない時期の子育てはかなり孤独なものです。それこそ頭の形ひとつも気になってしまうと、心配や不安に飲み込まれそうになります。核家族で夫婦以外に相談するあてもなく、育児休業を取っていて職場にもいかない、そういう状況で頭の形が気になりだして、それが子育ての気持ちを折ることもあるでしょう。たかが頭の形かもしれませんが、その不安を話せるところがあることは大事です。わたしたちは都立病院なので、治療の必要がない方には治療適応はありませんということをお伝えしますし、頭蓋変形があっても軽症の方にはその旨をお伝えしています。親御さんは頭の形についての不安を聞いてもらえた、真剣に取り合ってもらえたということだけで、実際に治療を開始しなくても、だいぶ安心されます。さらに、治療したほうがよい変形であれば、数ヶ月かけて一緒に治療していくことになります。子育ての順調な滑り出しに貢献ができるかなと思っています。

赤ちゃんの頭の形についての相談はありますか

よくご相談を頂きます。県外からHPなどをみてお越しになるかたもいらっしゃいます。都内ではかなりヘルメット治療を提供する施設が増えてきましたが、近県を含め、全国的にはまだまだ普及していません。その一方で、赤ちゃんの頭の形に関する情報はSNSなどでもかなり流れていますので、不安になってしまう親御さんも多く、ニーズを満たしていると言えない状況だと思います。

診療を始めてみていかがですか

お話を聞いて、診察して、計測するだけで安心されて、最終的に治療はしなくても大丈夫、となる方もいらっしゃいます。そういう方は、これまで周りに大丈夫と言われて、それでもご自身の心配をなくせず外来にいらしていることが多いかなと思います。治療の選択肢を持っている施設が、治療の要否をきちんと評価してあげることは重要だと思います。

ヘルメット治療はいかがですか

みなさん頭の形の変化を実感される方が多いようです。頭蓋変形は、自然経過でもある程度よくなりますが、一定程度歪みが強いと大きな自然軽快は期待しにくいです。お座りやハイハイができるようになって、床面に頭がついている時間が短くなれば自然に治ることもあると思われるかもしれませんが、乳児期の後半になると頭の成長速度はだいぶゆっくりになるので、そこから大きく頭の形が変わることはあまり期待できません。もちろん髪の毛が伸びますので、それほど気にならなくなることも多いです。結局、頭の形をどう感じるかは、かなり主観が入ってきます。また、首がまだしっかり座っていない赤ちゃんにヘルメットをかぶせるのは安全の面からもお勧めできません。首がしっかり座るまでは、理学療法(枕を入れて向き癖を修正する、タミータイムを設ける)などにより歪みが大きくならないように気を配りましょう。

初診の流れを教えてください

問診ののち、3Dスキャンで頭の形を評価します。頭蓋骨早期癒合の鑑別のため、レントゲン撮影を行っています。当院ではご説明のあと、治療するかどうか必ず一回は持ち帰って考えて来ていただきます。特にご両親がそろっていらしていない場合は、しっかりご両親で話し合うようにお伝えします。費用もそうですが、数ヶ月かかる治療ですので、少なくともママとパパは治療に対して同じスタンスでいていただきたいと思っています。

予約の取り方を教えてください

現在は毎週火曜日の午後に専門外来を設けています。紹介状の有無にかかわらず初診の予約は取っていただけますが、紹介状がない場合は、選定療養費として7000円かかります。初回の診療は保険診療で行いますので、必ず健康保険証と医療証をお持ちください。フォローの外来は、来院時に次回の予約を取る形になります。

読者の方へメッセージをお願いします

お子さんがお生まれになって、分からないことがいっぱいあって大変な毎日だと思います。赤ちゃんの頭の形に関しては病的なものでなければ基本的には大丈夫だよ、気にしなくて良いと言われることが多いと思いますが、気になってしまった場合はその不安は解消した方がいいと思うので、心配な時はご遠慮なく来院いただき、些細なことでもご相談いただければと思います。

ヘルメット治療について

治療の流れ

問診ののち、3Dスキャンで頭の形を評価します 頭蓋骨早期癒合の鑑別のため、レントゲン撮影を行っています 当院ではご説明のあと、治療するかどうか必ず一回は持ち帰って考えて来ていただきます

費用

初診:保険診療   ヘルメット治療:自費診療   最初に初期の費用(ヘルメット代金など)をお支払い頂き、 その後、フォローの外来毎に再診費用を追加でお支払い頂きます  例)治療期間が5ヶ月前後の場合でトータルで凡そ33~35万円程度

診察日時

毎週火曜日の午後

予約

電話にて予約を受け付けております ※紹介状の有無にかかわらず初診の予約は取っていただけますが、紹介状がない場合は、選定療養費として7000円かかります

相談窓口

03-3446-8331

アクセス

電車・バスでお越しの方: 東京メトロ日比谷線広尾駅 1・2番出口から徒歩7分

お車でお越しの方: 恵比寿駅西口から約5~10分

公開日2025年10月16日

小児科医が始めた赤ちゃんの頭の形外来への想いと子育ての不安に寄り添う診療

都立広尾病院
小川 えりか先生
「都立広尾病院」は創立130周年を迎える歴史ある病院で、「チーム医療で地域に寄り添った医療を提供する」ことを理念としています。一般小児科診療、アレルギー疾患、こころの診療に加え、赤ちゃんの頭の形についても診療を実施。日々、親御さんの不安に寄り添う診療を心がけています。今回は小川先生に、診療への思いや赤ちゃんの頭の形の診療について詳しくお話を伺いました。

先生のご経歴を教えていただけますか

群馬大学を卒業し、初期臨床研修は東京都立豊島病院で行いました。その後、小児科にすすむことにきめ日本大学の小児科に入局しました。入局後は、日本大学医学部附属板橋病院、駿河台日本大学病院、練馬光が丘病院の3病院を2年間で回り、小児科医としての基礎を学びました。その後は都立広尾病院、都立墨東病院などに勤務したのち、2013年から9年間日本大学病院に勤務しました。大学では先天代謝異常症という分野を学び、新生児マススクリーニングで精密検査となった赤ちゃんの診断や治療を行ってきました。先天代謝異常症は生涯治療が必要な疾患が多いため、新生児から成人まで幅広い年代の患者さんと関わっていました。2022年からは現在の勤務先である都立広尾病院に医長として就任し、一般小児科診療のほか、アレルギー疾患や子どものこころの診療を行っています。赤ちゃんの頭の形の診療は、ニーズの高まりを受け、開設いたしました。

医師を目指したきっかけを教えてください

わたしはもともと別の仕事を12年間したあと、医学部に入りなおして医師になりました。医師を目指した動機はいろいろありますが、もともと人の体の仕組みを勉強するのが好きだったことと、当時仕事で関わることがあった医師の方々が何歳になっても楽しそうに仕事をされている方が多かったことがあります。

小児科を目指したきっかけを教えてください

小児科医は、この国の未来がどうなっていくのか、子どもたちを通して見届けることができる仕事だと思っています。子どもたちの未来、社会の未来に関わる、大きな責任とやりがいのある仕事です。また、わたしは医師になる前に子どもがいたので、他の若い先生方にはわかりにくい親、特に母親の気持ちが他の人より少しは分かるかなとも思いました。子どもの代弁者であると同時に、母親の味方である小児科医がいてもいいかなと思ったこともあります。

診療時に心掛けていることはなんですか

保護者に信頼してもらえるように気をつけています。なぜなら子どもは親が信頼していない医師を信頼しないと思うからです。いろいろな親御さんがいて、一人一人に理由や背景があるのだろうと想像するようにしています。真向から否定することなく、とりあえずは話を聞き、相手を少しでも理解しようと思っています。また、こちらから見立てやアドバイスをするときは、その前に言いたいことを吐き出してもらえるよう、しゃべっていただきます。まずは聞いてほしい不安を吐き出さないと、こちらのいうことを受け入れる余裕はないと思うからです。

この病院の強みを教えていただけますか

都立広尾病院は、都立病院の中で最も古い病院で、今年創立130周年を迎えました。歴史と伝統のある病院で、近年は、救急医療や災害医療、東京都の島しょ部の医療に力を入れています。コロナ禍はコロナ専門病院として多くの患者さんを受け入れましたが、今はコロナ禍を経て、病院の建て替えも決まっており、新しい病院に生まれ変わろうとしているところです。

頭の形の診療を始めたきっかけは何ですか

近年ニーズが高まっているのは知っていましたが、一部の経済的に余裕のある家庭のものだと認識していました。その中で知り合いの先生が、親御さんの子どもを思う気持ちに寄り添った丁寧な診療をされているのを見て、これは時代にマッチした子育て支援のひとつのきっかけだなと感じました。元気に生まれてきてくれたことにただただ感動していた新生児期を過ぎ、まだお座りできない時期の子育てはかなり孤独なものです。それこそ頭の形ひとつも気になってしまうと、心配や不安に飲み込まれそうになります。核家族で夫婦以外に相談するあてもなく、育児休業を取っていて職場にもいかない、そういう状況で頭の形が気になりだして、それが子育ての気持ちを折ることもあるでしょう。たかが頭の形かもしれませんが、その不安を話せるところがあることは大事です。わたしたちは都立病院なので、治療の必要がない方には治療適応はありませんということをお伝えしますし、頭蓋変形があっても軽症の方にはその旨をお伝えしています。親御さんは頭の形についての不安を聞いてもらえた、真剣に取り合ってもらえたということだけで、実際に治療を開始しなくても、だいぶ安心されます。さらに、治療したほうがよい変形であれば、数ヶ月かけて一緒に治療していくことになります。子育ての順調な滑り出しに貢献ができるかなと思っています。

赤ちゃんの頭の形についての相談はありますか

よくご相談を頂きます。県外からHPなどをみてお越しになるかたもいらっしゃいます。都内ではかなりヘルメット治療を提供する施設が増えてきましたが、近県を含め、全国的にはまだまだ普及していません。その一方で、赤ちゃんの頭の形に関する情報はSNSなどでもかなり流れていますので、不安になってしまう親御さんも多く、ニーズを満たしていると言えない状況だと思います。

診療を始めてみていかがですか

お話を聞いて、診察して、計測するだけで安心されて、最終的に治療はしなくても大丈夫、となる方もいらっしゃいます。そういう方は、これまで周りに大丈夫と言われて、それでもご自身の心配をなくせず外来にいらしていることが多いかなと思います。治療の選択肢を持っている施設が、治療の要否をきちんと評価してあげることは重要だと思います。

ヘルメット治療はいかがですか

みなさん頭の形の変化を実感される方が多いようです。頭蓋変形は、自然経過でもある程度よくなりますが、一定程度歪みが強いと大きな自然軽快は期待しにくいです。お座りやハイハイができるようになって、床面に頭がついている時間が短くなれば自然に治ることもあると思われるかもしれませんが、乳児期の後半になると頭の成長速度はだいぶゆっくりになるので、そこから大きく頭の形が変わることはあまり期待できません。もちろん髪の毛が伸びますので、それほど気にならなくなることも多いです。結局、頭の形をどう感じるかは、かなり主観が入ってきます。また、首がまだしっかり座っていない赤ちゃんにヘルメットをかぶせるのは安全の面からもお勧めできません。首がしっかり座るまでは、理学療法(枕を入れて向き癖を修正する、タミータイムを設ける)などにより歪みが大きくならないように気を配りましょう。

初診の流れを教えてください

問診ののち、3Dスキャンで頭の形を評価します。頭蓋骨早期癒合の鑑別のため、レントゲン撮影を行っています。当院ではご説明のあと、治療するかどうか必ず一回は持ち帰って考えて来ていただきます。特にご両親がそろっていらしていない場合は、しっかりご両親で話し合うようにお伝えします。費用もそうですが、数ヶ月かかる治療ですので、少なくともママとパパは治療に対して同じスタンスでいていただきたいと思っています。

予約の取り方を教えてください

現在は毎週火曜日の午後に専門外来を設けています。紹介状の有無にかかわらず初診の予約は取っていただけますが、紹介状がない場合は、選定療養費として7000円かかります。初回の診療は保険診療で行いますので、必ず健康保険証と医療証をお持ちください。フォローの外来は、来院時に次回の予約を取る形になります。

読者の方へメッセージをお願いします

お子さんがお生まれになって、分からないことがいっぱいあって大変な毎日だと思います。赤ちゃんの頭の形に関しては病的なものでなければ基本的には大丈夫だよ、気にしなくて良いと言われることが多いと思いますが、気になってしまった場合はその不安は解消した方がいいと思うので、心配な時はご遠慮なく来院いただき、些細なことでもご相談いただければと思います。

ヘルメット治療について

治療の流れ

問診ののち、3Dスキャンで頭の形を評価します 頭蓋骨早期癒合の鑑別のため、レントゲン撮影を行っています 当院ではご説明のあと、治療するかどうか必ず一回は持ち帰って考えて来ていただきます

費用

初診:保険診療   ヘルメット治療:自費診療   最初に初期の費用(ヘルメット代金など)をお支払い頂き、 その後、フォローの外来毎に再診費用を追加でお支払い頂きます  例)治療期間が5ヶ月前後の場合でトータルで凡そ33~35万円程度

診察日時

毎週火曜日の午後

予約

電話にて予約を受け付けております ※紹介状の有無にかかわらず初診の予約は取っていただけますが、紹介状がない場合は、選定療養費として7000円かかります

相談窓口

03-3446-8331

アクセス

電車・バスでお越しの方: 東京メトロ日比谷線広尾駅 1・2番出口から徒歩7分

お車でお越しの方: 恵比寿駅西口から約5~10分