公開日2025年12月24日

「うちの子は大丈夫?」の不安に応える―地域のニーズに応えて始まった頭のかたち外来と身近な治療

浅間総合病院 小児科
齋藤 暢知先生
浅間総合病院小児科では、赤ちゃんの頭のかたちに関する専門外来を開設しています。今回は、頭のかたち外来を担当する齋藤 暢知(さいとう のぶとも)先生に、外来開設の経緯や診療内容についてお話を伺いました。

先生のご経歴を教えてください

私は日本医科大学を卒業後、埼玉の川口市立医療センターで初期研修を行いました。小児科医になると決めてからは、多様な環境で学びたいと考え、順天堂大学を選びました。

順天堂大学では、浦安病院で約1年、その後本院、そして静岡病院と経験を積みました。特に静岡では約6年間、主にNICU(新生児集中治療室)で勤務しました。

その後、埼玉の済生会川口総合病院、埼玉県立小児医療センター(当時は蓮田市)を経て、大学院へ。再び静岡に戻り、2023年3月に順天堂大学を退職して、現在の浅間総合病院に着任しました。

医師を目指したきっかけや小児科を選んだ理由は何だったんでしょうか

父が医師だったことが大きな影響でした。父は群馬県の山間部で総合病院に勤務しており、当時は「総合診療科」という概念もない時代でしたが、地域医療の現場では「この病気は専門外」と言っていては何もできません。全ての患者さんを診る姿勢で医療に取り組んでいました。その姿を見て育ったことが、私が医師を志すきっかけとなりました。

当初、私は父のように、特定の疾患に限定せず、患者さんの訴えに幅広く対応できる「何でも診る」医師になりたいと強く志していました。

しかし、実際に初期研修で成人科を回ってみると、その現実は私の理想とは大きくかけ離れていました。成人医療の分野では、消化器内科、循環器内科、呼吸器内科といった具合に専門が細分化されており、それぞれの専門医が、自分の専門領域外の患者さんを診ることはないという状況を目の当たりにしました。

一方、初期研修のローテーションで小児科を回った時の状況は、成人科とは全く異なっていました。小児科では、生後0日の新生児から15歳頃までの幅広い年齢層の子どもたちを診ます。性別も問わず、治療対象となる疾患も多岐にわたります。高熱を出して重い肺炎になっている子もいれば、突然の痙攣で運び込まれる子もいる。また、大人のように専門外科の領域になりがちな急性虫垂炎(盲腸)も、小児科医が総合的に初期対応し、診断を下すことが求められます。

まさに、小児科の現場には、私が当初目指していた「何でも診る」医療、つまり、目の前にいる一人の人間を、症状や臓器に線引きすることなく、総合的に診るという理想の医療が確かに存在していたのです。この経験が、私の進路を決定づける決定的な要因となりました。

診療時に心がけていることを教えてください

小児科診療で最も大切にしているのは、「次に来た時に、この先生には診てもらいたくない」と思われないようにすることです。

例えば、喉を診る時。舌圧子という木のヘラでグイッと舌を押し下げて診察する先生もいますが、子どもにとってはとても苦痛です。「あー」と言ってもらえば十分見えることも多いのです。同様に、耳を診る時も、耳鏡に力をなるべく入れないよう心掛けています。

こうした痛い経験をさせてしまうと、次に本当に具合が悪い時に診察させてくれなくなります。実際、診察器具を見ただけで泣き出してしまう子どももいます。

3歳〜5歳ほどになれば、やり方次第で十分に協力してもらえます。なるべく嫌な思いをさせない、それが私の診察の基本姿勢です。

病院の特徴を教えていただけますか

佐久地域において、小児科の入院病床を持つ病院が複数あるというのは、患者さんにとって選択肢があるという点で心強いことだと思います。

また、当院は産科も充実しており、ここで生まれた赤ちゃんをそのまま継続して診ることができます。出産から成長まで、一貫してサポートできる体制を整えています。

特に力を入れているのが発達外来です。落ち着きがない、学習に困難がある、授業中に座っていられないなど、発達に関する相談は近年非常に増えています。都内の専門施設では予約が1年待ちという状況も珍しくありません。

当院には発達の専門家が在籍しており、さらに心理士も常駐しています。様々な検査にも対応でき、この東信地域では発達に関する相談の多くが当院に寄せられています。

このように発達の専門家が複数在籍しているのは、非常に恵まれた環境だと言えます。

頭のかたちに興味を持ったきっかけや外来を開設したきっかけを教えてください

実は、私自身が頭のかたちに興味を持ったのは静岡の病院に勤務していた時でした。NICU(新生児集中治療室)では多くの赤ちゃんの頭が長頭(前後に長い形)になる傾向があります。最初は気にしていなかったのですが、フォローを任されるようになると「みんな頭が長くなってしまうんだな」と気になり始めました。

保育器の中でずっと横をむいていると、前後に伸びるのは当然の物理現象です。そのメカニズムへの興味が、今の頭のかたち外来につながる始まりだったかもしれません。

ヘルメット治療を導入したきっかけは、当院の事務長のお孫さんが片道1時間半かけて他院で治療を受けていたことです。「当院でも始めてみては」という提案を受け、実現に向けて動き出しました。

私自身、以前からNICU(新生児集中治療室)で赤ちゃんの頭のかたちが変わっていく様子を見てきており、何か対策を講じたいという思いがありました。

小児学会でヘルメット治療を行う複数の会社が出展しているのを見て、導入の可能性を確信しました。実際に外来でも相談が多く、地域のニーズも感じていました。

複数の会社を比較検討した結果、導入のしやすさと医療安全面を考慮したシステムを選定し、「頭のかたち外来」を開設することになりました。

実際に頭のかたち外来を始めてみていかがですか

実際に来院される方の主なニーズは、「ヘルメット治療」を希望することよりも、「うちの子の頭のかたちは、このままで本当に大丈夫だろうか?」という不安の解消です。具体的には、どの程度の歪みがあるのか、病的なものではないか、自然に治る見込みがあるのかといった疑問に答えることが、まず求められます。

しかし、3D計測の結果をお見せすると、多くの方が「思ったほど歪んでいないんですね」と安心されます。実際、重症例は少なく、ほとんどが軽症から中等症です。「もっと歪んでいると感じていたけれど、そうでもなかった」という反応が一般的です。

初診の流れを教えてください

初診では、まず頭の歪みについて説明します。ごく一部に頭蓋骨早期癒合症などの病気が隠れている可能性がありますが、確率は非常に低いです。大半は向き癖によるもので、その中でも歪みの程度には個人差があります。

病気でないことを確認するため、レントゲン撮影を行った後、3D計測で赤ちゃんの頭を専用機器でスキャンします。簡単な撮影で十分なデータが取れます。初診は30〜40分程度で終わります。

ヘルメット治療は自由診療となっており、費用は40万円(税込)です。治療期間中は、装着後1ヶ月ごとにフォローを行います。月1回、約4回のフォローの予定です。

治療効果については、当院ではまだ開始して間もないため、長期的な評価はこれからです。ただ、1ヶ月目のフォローに来られた方からは「良くなった気がします」という声をいただいています。

読者の方へのメッセージをお願いします

頭のかたちが少しでも気になったら、早めにご相談ください。治療に適した時期は生後4~6ヶ月頃です。

「気になる程度」でも、まずは受診していただいて構いません。実際に計測してみないと、どの程度の歪みなのか判断できません。多くの方は「思ったより歪んでいませんね」という結果になりますし、それで安心していただけるなら、それも大切な診療だと考えています。

ただし、長頭(前後に長い頭のかたち)については、現時点では対応が難しいことをご了承ください。それ以外の頭のかたちについては、お気軽にご相談ください。

ヘルメット治療について

治療の流れ

初診では、まず頭の歪みについて説明します。病気でないことを確認するため、レントゲン撮影を行った後、3D計測で赤ちゃんの頭を専用機器でスキャンします。

費用

40万円(税込)

診察日時

毎週火曜日 完全予約制 【初診(各日2名)】 14時~、15時~ 【ヘルメット装着・フォローアップ】 16時~

予約

お電話で小児科外来までご連絡ください。【お問い合わせ時間】 15:00~16:30

相談窓口

0267-67-2295

アクセス

電車・バスでお越しの方: 長野新幹線佐久平駅 下車 徒歩15分 小海線 岩村田駅 下車 徒歩10分

お車でお越しの方: 中部横断自動車道 佐久中佐都ICから車で7分

公開日2025年12月24日

「うちの子は大丈夫?」の不安に応える―地域のニーズに応えて始まった頭のかたち外来と身近な治療

浅間総合病院 小児科
齋藤 暢知先生
浅間総合病院小児科では、赤ちゃんの頭のかたちに関する専門外来を開設しています。今回は、頭のかたち外来を担当する齋藤 暢知(さいとう のぶとも)先生に、外来開設の経緯や診療内容についてお話を伺いました。

先生のご経歴を教えてください

私は日本医科大学を卒業後、埼玉の川口市立医療センターで初期研修を行いました。小児科医になると決めてからは、多様な環境で学びたいと考え、順天堂大学を選びました。

順天堂大学では、浦安病院で約1年、その後本院、そして静岡病院と経験を積みました。特に静岡では約6年間、主にNICU(新生児集中治療室)で勤務しました。

その後、埼玉の済生会川口総合病院、埼玉県立小児医療センター(当時は蓮田市)を経て、大学院へ。再び静岡に戻り、2023年3月に順天堂大学を退職して、現在の浅間総合病院に着任しました。

医師を目指したきっかけや小児科を選んだ理由は何だったんでしょうか

父が医師だったことが大きな影響でした。父は群馬県の山間部で総合病院に勤務しており、当時は「総合診療科」という概念もない時代でしたが、地域医療の現場では「この病気は専門外」と言っていては何もできません。全ての患者さんを診る姿勢で医療に取り組んでいました。その姿を見て育ったことが、私が医師を志すきっかけとなりました。

当初、私は父のように、特定の疾患に限定せず、患者さんの訴えに幅広く対応できる「何でも診る」医師になりたいと強く志していました。

しかし、実際に初期研修で成人科を回ってみると、その現実は私の理想とは大きくかけ離れていました。成人医療の分野では、消化器内科、循環器内科、呼吸器内科といった具合に専門が細分化されており、それぞれの専門医が、自分の専門領域外の患者さんを診ることはないという状況を目の当たりにしました。

一方、初期研修のローテーションで小児科を回った時の状況は、成人科とは全く異なっていました。小児科では、生後0日の新生児から15歳頃までの幅広い年齢層の子どもたちを診ます。性別も問わず、治療対象となる疾患も多岐にわたります。高熱を出して重い肺炎になっている子もいれば、突然の痙攣で運び込まれる子もいる。また、大人のように専門外科の領域になりがちな急性虫垂炎(盲腸)も、小児科医が総合的に初期対応し、診断を下すことが求められます。

まさに、小児科の現場には、私が当初目指していた「何でも診る」医療、つまり、目の前にいる一人の人間を、症状や臓器に線引きすることなく、総合的に診るという理想の医療が確かに存在していたのです。この経験が、私の進路を決定づける決定的な要因となりました。

診療時に心がけていることを教えてください

小児科診療で最も大切にしているのは、「次に来た時に、この先生には診てもらいたくない」と思われないようにすることです。

例えば、喉を診る時。舌圧子という木のヘラでグイッと舌を押し下げて診察する先生もいますが、子どもにとってはとても苦痛です。「あー」と言ってもらえば十分見えることも多いのです。同様に、耳を診る時も、耳鏡に力をなるべく入れないよう心掛けています。

こうした痛い経験をさせてしまうと、次に本当に具合が悪い時に診察させてくれなくなります。実際、診察器具を見ただけで泣き出してしまう子どももいます。

3歳〜5歳ほどになれば、やり方次第で十分に協力してもらえます。なるべく嫌な思いをさせない、それが私の診察の基本姿勢です。

病院の特徴を教えていただけますか

佐久地域において、小児科の入院病床を持つ病院が複数あるというのは、患者さんにとって選択肢があるという点で心強いことだと思います。

また、当院は産科も充実しており、ここで生まれた赤ちゃんをそのまま継続して診ることができます。出産から成長まで、一貫してサポートできる体制を整えています。

特に力を入れているのが発達外来です。落ち着きがない、学習に困難がある、授業中に座っていられないなど、発達に関する相談は近年非常に増えています。都内の専門施設では予約が1年待ちという状況も珍しくありません。

当院には発達の専門家が在籍しており、さらに心理士も常駐しています。様々な検査にも対応でき、この東信地域では発達に関する相談の多くが当院に寄せられています。

このように発達の専門家が複数在籍しているのは、非常に恵まれた環境だと言えます。

頭のかたちに興味を持ったきっかけや外来を開設したきっかけを教えてください

実は、私自身が頭のかたちに興味を持ったのは静岡の病院に勤務していた時でした。NICU(新生児集中治療室)では多くの赤ちゃんの頭が長頭(前後に長い形)になる傾向があります。最初は気にしていなかったのですが、フォローを任されるようになると「みんな頭が長くなってしまうんだな」と気になり始めました。

保育器の中でずっと横をむいていると、前後に伸びるのは当然の物理現象です。そのメカニズムへの興味が、今の頭のかたち外来につながる始まりだったかもしれません。

ヘルメット治療を導入したきっかけは、当院の事務長のお孫さんが片道1時間半かけて他院で治療を受けていたことです。「当院でも始めてみては」という提案を受け、実現に向けて動き出しました。

私自身、以前からNICU(新生児集中治療室)で赤ちゃんの頭のかたちが変わっていく様子を見てきており、何か対策を講じたいという思いがありました。

小児学会でヘルメット治療を行う複数の会社が出展しているのを見て、導入の可能性を確信しました。実際に外来でも相談が多く、地域のニーズも感じていました。

複数の会社を比較検討した結果、導入のしやすさと医療安全面を考慮したシステムを選定し、「頭のかたち外来」を開設することになりました。

実際に頭のかたち外来を始めてみていかがですか

実際に来院される方の主なニーズは、「ヘルメット治療」を希望することよりも、「うちの子の頭のかたちは、このままで本当に大丈夫だろうか?」という不安の解消です。具体的には、どの程度の歪みがあるのか、病的なものではないか、自然に治る見込みがあるのかといった疑問に答えることが、まず求められます。

しかし、3D計測の結果をお見せすると、多くの方が「思ったほど歪んでいないんですね」と安心されます。実際、重症例は少なく、ほとんどが軽症から中等症です。「もっと歪んでいると感じていたけれど、そうでもなかった」という反応が一般的です。

初診の流れを教えてください

初診では、まず頭の歪みについて説明します。ごく一部に頭蓋骨早期癒合症などの病気が隠れている可能性がありますが、確率は非常に低いです。大半は向き癖によるもので、その中でも歪みの程度には個人差があります。

病気でないことを確認するため、レントゲン撮影を行った後、3D計測で赤ちゃんの頭を専用機器でスキャンします。簡単な撮影で十分なデータが取れます。初診は30〜40分程度で終わります。

ヘルメット治療は自由診療となっており、費用は40万円(税込)です。治療期間中は、装着後1ヶ月ごとにフォローを行います。月1回、約4回のフォローの予定です。

治療効果については、当院ではまだ開始して間もないため、長期的な評価はこれからです。ただ、1ヶ月目のフォローに来られた方からは「良くなった気がします」という声をいただいています。

読者の方へのメッセージをお願いします

頭のかたちが少しでも気になったら、早めにご相談ください。治療に適した時期は生後4~6ヶ月頃です。

「気になる程度」でも、まずは受診していただいて構いません。実際に計測してみないと、どの程度の歪みなのか判断できません。多くの方は「思ったより歪んでいませんね」という結果になりますし、それで安心していただけるなら、それも大切な診療だと考えています。

ただし、長頭(前後に長い頭のかたち)については、現時点では対応が難しいことをご了承ください。それ以外の頭のかたちについては、お気軽にご相談ください。

ヘルメット治療について

治療の流れ

初診では、まず頭の歪みについて説明します。病気でないことを確認するため、レントゲン撮影を行った後、3D計測で赤ちゃんの頭を専用機器でスキャンします。

費用

40万円(税込)

診察日時

毎週火曜日 完全予約制 【初診(各日2名)】 14時~、15時~ 【ヘルメット装着・フォローアップ】 16時~

予約

お電話で小児科外来までご連絡ください。【お問い合わせ時間】 15:00~16:30

相談窓口

0267-67-2295

アクセス

電車・バスでお越しの方: 長野新幹線佐久平駅 下車 徒歩15分 小海線 岩村田駅 下車 徒歩10分

お車でお越しの方: 中部横断自動車道 佐久中佐都ICから車で7分

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