公開日2025年6月4日
一人ひとりにじっくり向き合うヘルメット治療|高橋先生が開業に込めた想いと診療への取り組み

先生のこれまでのご経歴について、簡単にお聞かせいただけますか?
1997年に産業医科大学を卒業し、2年間の初期研修を行いました。いくつかの病院勤務を経て脳神経外科専門医を取得しています。その後、小児神経外科に興味があり、フランスのパリとマルセイユの小児病院に2年間留学しました。
帰国後は大学に戻り、教育にも携わる一方で、産業医としての業務も経験しました。専門としては小児神経外科を中心に、てんかん外科や内分泌疾患、特に下垂体腫瘍、またその他脳神経外科疾患全般も扱ってきました。私は京都府出身ということもあり、2018年に地元に戻り、京都田辺中央病院に勤務するようになりました。ちょうど頭蓋形状矯正ヘルメットがクラスIIの医療機器として認可されたタイミングでもあり、2019年1月から本格的にヘルメット治療を開始しました。
先生が医師を志されたきっかけはなんですか?
もともとは薬学に興味があったのですが、医師を目指そうと思ったのは、高校の国語の先生ががんで亡くなったことがきっかけでした。
もっと早く発見されていれば助かったのではないかと感じたことが、強い動機になりました。働く人の健康を守るという意味で産業医に関心を持ち、産業医科大学に進学を決めました。結果として産業医の道には進みませんでしたが、大学で予防医学の大切さについて学んだことが現在の私の基礎となっていることは間違いありません。
脳神経外科に進もうと思われたのは、いつ頃でしたか?
臨床実習で各科を回っていたとき脳神経外科の手術に立ち会い、開頭して脳を扱う手術の現場を見て強い衝撃を受けました。そこから「自分もこの手術をやってみたい」と強く思うようになりました。
しかし同時に小児科にも興味があり、当時はどちらに進むか非常に悩みました。ただ、ちょうどその頃の脳神経外科教授が小児専門であったため、両方の分野に関わることができると思い脳神経外科を選ぶことにしました。
開業に至った経緯や、どんなクリニックにしたいという思いがあったかを教えてください。
様々な病院で外来診療をしてきましたが、手術や病棟の業務もありなかなかじっくりと診察できない事にもどかしさを感じていました。そして、もっと一人ひとりにしっかり向き合いたいという気持ちがだんだん強くなっていきました。そこで、診療の質やスタッフとの関わり、患者さんとの接し方すべてを自分の裁量で決められる環境を作るために、開業を決意しました。
クリニックの中で、こだわった場所やお気に入りの空間について教えてください。
クリニックには頭痛を訴えて来院される患者さんが多くいます。特に片頭痛は特定の色や明るさで症状が悪化しますが、緑は痛みを和らげる効果があるということがわかっています。ですから、患者さんにできるだけ負担のないよう院内は落ち着いた緑を基調にデザインしました。また、赤ちゃん連れの方にも配慮して、多目的に使える授乳スペースやおむつ替えシートを確保しました。自由診療の時間帯には、赤ちゃんや小さな子供が好む音楽を院内全体に聞こえるようにして楽しい雰囲気になるようにしています。
ヘルメット治療を始められたきっかけについて教えていただけますか?
大学勤務の頃から、頭蓋縫合早期癒合症などの先天性疾患の診療に携わっていました。日本国内でヘルメット治療が行われていて、ニーズがあることも知っていましたが、日々の診療で手一杯だったため導入することができませんでした。
その後一般病院に移ったタイミングでヘルメットがクラスIIの医療機器として認可されたため、病院の許可を得て導入する流れとなりました。
ベビーバンドを取り扱うようになったきっかけは何だったのでしょうか?
最初に携わっていたのは、ミシガン式頭蓋形状矯正ヘルメットでした。このヘルメットはそれぞれの赤ちゃんに合わせて私自身がヘルメットを設計できることと柔軟に調整できるのが利点です。ベビーバンドのように制作・装着が簡便で管理がしやすいヘルメットも出てきたため、選択肢を増やしてなるべくご家族の意向に沿えるよう現在はベビーバンドを含む4種類のヘルメットを取り扱うことにしました。その他日本国内で取り扱われている主要なヘルメットについて概ね説明できるようにしています。
外来を通じて、感じていらっしゃることがあればお聞かせください。
一番強く感じているのは、ご両親が非常に悩んでいらっしゃるケースが多いということです。最近ではヘルメット治療について徐々に認知が広がってきているとは思いますが、それでも「そのうち自然に治るだろう」と言われて、受診のタイミングが遅れてしまうケースがいまだに見受けられます。このあたりは、もっと啓発活動が必要だと感じている部分です。
また、相談内容も頭の形だけにとどまらず、発達のこと、顔や耳の左右差、さらには足や股関節のことまで、多岐にわたります。こういったさまざまな不安を総合的に診ることのできる医師は限られており、その点に課題を感じています。総合的に診られる施設がもっと増えることが、今後の医療には必要だと思っています。
ヘルメット治療を行う中で、大変だと感じることはありますか?
やはり重症度が高く、なおかつ治療開始が遅れたケースは治療が特に難しいです。さらに装着時間が十分に確保できないと、なかなか効果が現れません。
予測は難しいのですが、どこがどのように改善が期待できるのか、重症度や月齢を考慮したうえでできるだけ詳しく説明し、装着にモチベーションを持ってもらえるように説明するようこころがけています。
頭の形外来での診療の流れを教えていただけますか?
初診時に保険診療時間にお越しいただき、頭蓋骨の異常がないかどうかを見極めた後、頭位性斜頭あるいは短頭の診断を行います。計測値で重症度を決定し、ヘルメット治療の適応があるかどうかを判定します。ヘルメット治療を希望した場合、次回以降は自由診療に切り替えていただくという流れをとっています。
平均的な治療期間はどのくらいですか?
現在のところ、平均して約半年間の治療が多いです。ベビーバンドについては比較的短期間で、3ヶ月程度で終了される方もいますが、全体的には4〜6ヶ月の治療が標準的だと思います。
予約方法について教えてください。
予約は基本的にインターネットで受け付けていますが、電話予約にも対応しています。
最後に、読者の皆さまへのメッセージをお願いいたします。
赤ちゃんの頭の形に違和感を覚えたり、「少し歪んでいるかな」と感じたりしたら、ぜひ気軽にご相談いただければと思います。気になったら、まずは受診していただくことが何より大切です。
頭の形に関する疑問や不安だけでなく、その他のさまざまな質問にもお答えできるよう努めています。お子さまの健康に関することであれば、どんな小さなことでもご相談いただければと思います。
私は、小児の頭蓋骨疾患を含め、脳神経外科手術を多数経験してきた医師の一人です。同時に、現在はヘルメット治療を専門的に行っており、外科医の視点から小児の頭蓋変形に対応できる数少ない医師の一人だと自負しています。その経験から、より踏み込んだ専門的な説明やアドバイスを行うことができるのは、当院の強みのひとつです。治療の選択肢を広く持ちたいとお考えのご家族にとっても、納得のいく判断材料をご提供できるよう努めてまいります。
ヘルメット治療について
治療の流れ
重症度が高く、ヘルメット治療を検討されているようであれば、 初診での病気の除外が済んだ後、次回以降は自由診療となります。
費用
33 万円(税込)※2025年5月現在。詳細はクリニックHPをご確認ください。
診察日時
月~土曜日
予約
Webにて予約を受け付けております。 電話でのご予約も可能です。
相談窓口

アクセス
電車・バスでお越しの方: 近鉄丹波橋駅・京阪丹波橋駅より徒歩5分
お車でお越しの方: 国道24号線沿い 京都教育大学附属桃山中学校向かい