公開日2025年12月24日
赤ちゃんの頭のかたち、後悔させない選択肢を身近な場所で―皮膚科併設の強みを活かしたヘルメット治療

先生のご経歴を教えてください
子ども時代は非常に活発で、目立ちたがりな元気な子でした。地元の高校に進んだものの、1年余りで通信高校に編入。その後、通信制の高校に通いながら、当時は音楽関係の仕事に強い関心を持っていました。特にレコーディングエンジニアという職業に憧れ、名古屋の音楽専門学校に進学。卒業とともに上京して、そこから音楽制作の業務に携わりました。
医師を志すきっかけは、開業医だった祖母の存在が大きく、専門学校時代にその医院でアルバイトをするなど、医療が身近な環境で育ちました。
友人の死、祖母と父親が相次いで倒れたことが、本格的に医師の道を志す決定的な出来事となりました。この時、「人生の転機は今しかない」という強い思いが湧き上がり、以前から関心があった医師への道を本気で目指す決意を固めました。
こうした経緯から、23歳で一念発起し、藤田医科大学(当時の名称は藤田保健衛生大学)に入学しました。
小児科を選んだ理由は何だったんでしょうか
小児科医を志した原点には、祖母の医院でのアルバイト経験にあります。地域に密着した「街医者」として、住民の相談に親身に寄り添う祖母の姿から、当初は家庭医療に惹かれていました。
中でも印象的だったのは、予約システムのない昔ながらの診療所が、いつも多くの子どもたちで賑わっていた光景です。病気の子どもたちを励まし、直接「治してくれてありがとう」と感謝の言葉をかけてもらえるこの仕事に、強い魅力を感じました。
そして、小児科医を志す決定的なきっかけとなったのは、大学6年生の時に藤田医科大学の制度を利用して、元々興味があった発展途上国の地域医療を学ぶため、ザンビアに留学した経験です。
そこで出会ったザンビアの子どもたちは、本当に元気いっぱいで勢いがありました。一方で、当時の日本は少子高齢化が進み、「子どもが元気がない」といった議論が多く聞かれていたため、医師になったからには、ザンビアの子どもたちのような勢いを日本の社会や子どもたちにも取り戻してもらいたいと考えるようになりました。
この思いから、「小児科医になり、子育てしやすい街づくりに貢献できれば、地域全体を活性化できるのではないか」という結論に至り、小児科医になることを決意しました。この思いは、「昭和の頃はこうだったのではないか」という、かつての日本の活気への郷愁とも重なっています。
診療の時に心がけていることを教えてください
病院での勤務を経て開業し、現在は地域の皆さまに支えられながら診療の幅を広げています。
クリニック名を「Dsこどもとみんなのクリニック」としているのは、家族を大切に考えているからです。来院された患者さんの主治医はもちろん私ですが、家に帰れば保護者の方が主治医となります。
そのため、ご家族一人ひとりが無理なく取り組めるような、診療や治療の提案をオーダーメイドで行うよう心がけています。
特に子育てをする方が元気でないと、お子さんも体調を崩しがちです。ですから、ご家庭全体、ご家族が健康でなければ、お子さんも元気でいられないと考えています。
「これしかダメ」というような治療に固執せず、ご家族の状況に合わせた幅広い視点での治療を提案することを大切にしています。
Dは患者さん達のために、SはDsに関わる方々に大切にしてほしい思いが込められています。スタッフはもちろん、当院にかかわる全ての方々、働く人々全体への思いです。
スタッフが明るく楽しく働けてこそ、患者さんも明るく元気になれるという考えから、スタッフが元気に働ける環境づくりを最も大切にしています。
クリニックの特徴を教えてください
当クリニックは、感染患者と非感染患者の動線を完全に分けています。感染症のお子様については、入り口から診察室までを分離し、院内で完結できる体制を整えています。
これにより、非感染で来院されるあたまの形外来や予防接種のお子様は、感染症状のある方と一切交わることなく診察を受けていただけます。
また、小児科と皮膚科を併設しているため、皮膚トラブルが発生した際には、来院している皮膚科の医師にすぐに相談できる点も大きな強みです。
さらに、お子様の心の発達外来にも力を入れています。心理士が在籍しており、発達に関するご相談はもちろん、不登校や原因不明の体調不良(不定愁訴に近いもの)など、保護者の方が悩まれる前に気軽に相談できる窓口として、現在この分野を積極的に拡充しています。
あたまの形外来を始めたきっかけは何だったんでしょうか
治療法が普及し、選択肢が広がることは良いことだと考えています。私が目指しているのは、普段から来てくださっている方が、身近な場所で治療を受けられる環境を作ることです。遠方に行かないと治療できないとなると、子育て中の方などにとっては大きな負担となります。
以前、この地域では、ヘルメット治療を受けられる場所が少なく、私自身、あたまの形の歪みを気にしていた友人の存在もありました。治療の機会があるにもかかわらず、それを逃したことで将来親御さんが後悔したり、責められたりする状況をつくってはならないと考えていました。だからこそ、地域の方々から寄せられた相談にしっかり応えたいと思ったことが、私の最初の動機です。
予防接種が始まる生後2ヶ月頃から、3ヶ月、4ヶ月と成長するにつれて、向き癖が強いお子さんはあたまの形が変形してしまうことがあります。こうしたお子さんを持つ親御さんからのご相談を多く受けているのが現状です。
勤務医時代は対応が難しかったのですが、開院した今は、私を頼ってきてくださる方々のご期待に応えたいという強い思いがあります。当院でも多くのご相談があったため、できるだけ早く対応を始めたいと考えていました。クリニックのサービスを拡充していくタイミングであたまの形外来を開始することができました。
受診後の親御さんの様子は、大きく分けて2つのタイプがいらっしゃいます。ひとつは、検査結果をご覧になって「やはりそうか。すぐに始めたい」と、前向きな気持ちで、説明もしっかりとお聞きになり、すぐにスタートを決められる方です。もう一方は、色々お調べになったものの、まだ迷いがあり、検査結果を見てから最終的に決めたいという方です。
特に後者のタイプの方には、重症度が「最重症」と判定されるケースが多く、その場合は丁寧に説明させていただき、ご家族ともご相談いただくことになりますが、「やってみよう」とスタートされる方が多い傾向にあります。中には、一度検査を受けて「今回は見送ろう」とされた方でも、1ヶ月後に「やはり」とご連絡があり、治療を開始された例もあります。
診療体制や診療時に工夫していることを教えてください
当院のスタッフの中に、この新しい治療に強い関心を持って熱心に取り組んでくれる担当者がいます。マニュアル作成から治療の進め方、患者さんへの説明マニュアルまで全てを自発的に用意してくれました。本当に一生懸命頑張ってくれているので、心から頼りにしています。積極的に業務を遂行してくれるおかげで、治療を円滑に進めることができています。
一緒に取り組むスタッフは、当院の理念に共感して入社してくれたスタッフばかりなので、私が「こうしたい」「これをやってほしい」と思ったことは、細かく説明しなくても、皆がその目標に向かって自発的に考え、行動し、結果を報告してくれる、というサイクルができています。そのおかげで、私は非常に助けられていますし、結果的に患者さんへのサービス向上にもスタッフが貢献してくれています。
赤ちゃんはじっとしていられないので、3D撮影には工夫が必要です。スタッフ一人では対応しきれないため、看護師を含めた複数人で担当しています。個人差が大きく、時間帯によっても影響を受けます。例えば、お腹が空いていると機嫌が悪くなるなど、赤ちゃんの状態にも配慮が必要です。
撮影場所についても試行錯誤中です。診察室が良いのか、あるいは準備室のような狭い空間の方がやりやすいのか、色々な場所で試しています。
3D画像を用いた緻密な解析により、患者さんへの説明が非常に分かりやすくなりました。これにより、「これなら大丈夫」といった良好なケースの説明はもちろん、「治りが遅くなる可能性」についても、視覚的に納得感を持って理解してもらえます。
また、アプリ連携機能も非常に有用です。この機能を通じて、患者さんが撮影した写真などを確認できます。
まだ数例ですが、特に赤みが出て苦労した患者さんがいました。私たちはその状況をリアルタイムで把握し、本当に困った際には電話で都度、対応策を相談しました。その結果、その患者さんに合った適切な対応ができ、順調に経過しています。
診療を受ける月齢の目安はいかがでしょうか
対象となるのは、首が座る生後4ヶ月頃からです。治療効果を高めるためには、できるだけ早い時期に開始することが重要です。
大きくなってしまうと、頭の成長が進み、寝返りなどを始めることで、自然なあたまの形の矯正が難しくなってしまいます。早期に治療を始めることで、治りが良くなり、治療期間も短く完了できるという利点があります。
ヘルメット治療中にまれに起こる皮膚トラブルには、特に気をつけたいです。赤みが出てしまった場合、その後どのように対応するか、例えば何時間再装着するかといった対応は、患者さんによって若干異なるため、一人ひとりの状況に応じた対応が必要になります。当院は皮膚科も併設していますので、連携もスムーズで安心です。
診療時の流れについて教えていただけますか
初診時の流れとしては、まず詳しくお話を伺います。その後、診察で頭蓋骨の早期癒合(骨がくっつき病的な変形をしている状態)がないかを確認します。早期癒合があるお子さんは治療の適用外となるため、除外診断をしっかりと行います。診察後、早期癒合が疑われる場合は、レントゲン検査を行います。この時点では保険診療となります。
ご家族が治療を希望され、「頑張ってみたい」と判断された場合は、後日、ヘルメット作成のための撮影を行います。ヘルメット治療は、検査から概ね1週間以内に開始しないと、あたまの形が変わってしまう可能性があるため、初診時に即決で治療開始を決められる方もいれば、一度持ち帰って検討される方もいらっしゃいます(その場合も2〜3日後には回答をお願いしています)。
費用については、初診は通常、予約制で保険診療となり、撮影まで保険適用です。もし初診のその日に治療開始を決定された場合、初診料は頂かず、その日から自費診療として治療をスタートする形になります。費用は35万円(税込)、メンテナンスと再診費用も含みます。
読者の方へのメッセージをお願いします
当院の基本的な考え方は「子育て世代を全力サポート」です。
お子さんのあたまの形の歪みについて、病気ではないかと悩む方もいらっしゃると思いますが、これは子育て中の親御さんにとって非常に気になる部分だと承知しています。だからこそ、まずはお気軽に相談していただきたいと思っています。
あたまの形に変形が見られる場合、頭蓋骨早期癒合症のような疾患が隠れている可能性も考えられます。病気の早期発見・除外という点からも、積極的に確認することをお勧めします。
幸い、当院では3D撮影までは保険診療で対応できるため、問題なく診察が可能です。まずは一人で悩まずに来院し、お話をお聞かせください。
あたまの形の相談だけでなく、その他の子育てに関するご相談にも応じています。私たちは、地域の子育て相談所のような存在でありたいと考えていますので、どんなことでも遠慮なく相談にお越しください。
ヘルメット治療について
治療の流れ
初診時はまず詳しくお話を伺います。その後、診察で頭蓋骨の早期癒合がないかを確認します。 ご家族が治療を希望された場合は、後日、ヘルメット作成のための撮影を行います。
費用
35万円(税込)
診察日時
【初回受診(医師の診察・説明)】水・木・金・土 10:00〜11:00、14:00〜16:00 【撮影(評価・支払い・発注を同日の場合も含む)】木・金 11:00〜、14:00〜15:00
予約
電話にて予約を受け付けております。
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