「アメリカの医療費は日本よりずっと高い」。
そうした印象をお持ちの方は多いのではないでしょうか。盲腸の手術に数百万円、救急車の利用に十数万円といった話を耳にすることもあります。
しかし、赤ちゃんの頭の形を整える「ヘルメット治療」については、この関係が逆転します。むしろ、日本のほうがアメリカより高く、場合によっては2倍近くになることもあります。ここでは、具体的な制度や費用データをもとに、アメリカでのヘルメット治療の費用感を見ていきます。
アメリカでは一般的な「ヘルメット治療」
アメリカでは、赤ちゃんの頭のゆがみを整えるヘルメット治療は、日本よりも医療の中で一般的に扱われています。
医師が治療の必要性を判断し、一定の条件を満たす場合には、州が運営する公的医療保険(メディケイド)の対象になることもあります。
実際に、州の公的医療保険では、この治療を請求するための専用コードが用意されており、赤ちゃん用の頭蓋矯正ヘルメットを請求する際には、このコードを使うよう案内されています。
アメリカでの費用の調べ方
ただし、アメリカの医療費は、州、保険会社、医療機関との契約によって大きく異なります。日本のように「どの医療機関でもおおむね同じ価格」とは限らないため、大手クリニックでも全国一律の価格を公表していないことが多いのです。
そこで参考になるのが、先ほどの医療保険の請求に使われる専用コードです。
これは、病院やクリニックが保険会社に「どの治療を行ったか」を伝えるための、保険請求上の品番のようなものです。このコードには、ヘルメット本体だけでなく、赤ちゃんの頭に合わせて装着する作業や、その後の調整も含まれるものとして扱われます。
アメリカでのヘルメット治療の相場
信頼できる情報源として参考になるのが、査読済みの医療論文によるレビュー研究です。
カナダ・マギル大学の形成外科チームが2022年に発表した、29本の査読論文を集めたシステマティックレビューでは、米国でのヘルメット治療の費用について、次のように報告されています。
「頭蓋矯正具のコストは通常 $1,500〜$3,000 で、ヘルメット本体と必要な調整フォローアップを含む。」
出典:Watt A, Alabdulkarim A, Lee J, Gilardino M. Practical Review of the Cost of Diagnosis and Management of Positional Plagiocephaly. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2022;10(5):e4328. DOI: 10.1097/GOX.0000000000004328
現在の為替(1ドル=約158円、2026年5月時点)で換算すると、約24万〜47万円。中央値はおおよそ35万円前後となります。
つまり米国でのヘルメット治療の相場は、おおむね 24万〜47万円のレンジ、中央値で35万円程度 と捉えるのが、もっとも実態に近い数字といえます。
日本では、自費治療が中心
日本でのヘルメット治療は、保険が適用されない自費診療が中心です。
家庭が支払う金額は、医療機関やメーカーによって おおむね40万〜60万円台 となるのが一般的で、米国相場の上限である$3,000(約47万円)を上回るケースも少なくありません。
米国相場の下限である約24万円と、日本での上限の60万円台を比べると、その差は2倍を超えるケースもあります。
「医療費が高い国」というイメージのアメリカで、ヘルメット治療はむしろ手の届きやすい価格帯に収まっている。一方の日本では自費診療が中心で、価格が高止まりしやすい――これが、ヘルメット治療における日米の関係です。
日本でも、もっと身近な治療に
日本ではまだ、ヘルメット治療に対して「一部の先進的な医療機関で行われる新しい治療」という印象が残っています。
費用も高額になりやすく、必要性を感じていても、価格を理由に治療をあきらめざるを得ないご家庭も少なくありません。
私たちは、ヘルメット治療を特別なものではなく、必要な赤ちゃんが必要なタイミングで受けられる、身近な選択肢にすることを目指しています。
参考論文
Watt A, Alabdulkarim A, Lee J, Gilardino M. Practical Review of the Cost of Diagnosis and Management of Positional Plagiocephaly. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2022 May 25;10(5):e4328.
