公開日 2026/06/08

位置的斜頭症の赤ちゃんは3〜4歳までにどう変化するかを追跡した2011年の研究|Hutchison 2011

書誌情報 Hutchison BL, Stewart AW, Mitchell EA. Deformational plagiocephaly: a follow-up of head shape, parental concern and neurodevelopment at ages 3 and 4 years. Archives of Disease in Childhood. 2011;96(1):85-90.

この研究は何について調べたの?──幼児期までに頭の形・親の心配・発達はどう変化するか

位置的斜頭症(または短頭症)は、乳児期の早い時期に頭が片側または前後に押される圧力で生じる頭の形のずれで、仰向け寝推奨以降に各国で増加しています。乳児期の自然経過については複数の報告がありますが、3〜5歳といった幼児期に頭の形がどう変化するか、また当時親が心配していたことが解消されるか、神経発達上の遅れがどう変化するかについては、長期データが乏しい状況でした。本研究は、ニュージーランドのオークランド地域に唯一あった斜頭症外来を受診し、ヘルメット治療を一切受けずにリポジショニングと(必要に応じた)理学療法のみで管理された乳児を、3〜4歳になった時点で家庭訪問で再評価する縦断コホート研究です。頭の形(CI と OCLR)、親の心配の程度、発達上の遅れ(Ages and Stages Questionnaire:ASQ)の3つを乳児期と幼児期で比較することを目的としています。

どうやって調べたの?──ニュージーランドの斜頭症外来コホート129例を3〜4歳で家庭訪問追跡

対象は、2005年5月〜2007年8月にニュージーランド・オークランドの Starship Children's Hospital の斜頭症外来で位置的斜頭症または短頭症と診断された乳児220例のうち、3歳3ヶ月以上に達した時点で適格な161例。そのうち129例(80%)が家庭訪問による再評価に応じ、追跡時の平均年齢は4歳(3歳3ヶ月〜4歳9ヶ月)でした。外来初診時、ヘルメット治療を受けた児はおらず、全例にリポジショニングについての指導が行われ、首の機能不全がある場合は理学療法に紹介されていました。頭の形は HeadsUp という方法で、伸縮性のバンドを頭蓋外周にあて、頭頂視で撮影したデジタル写真からカスタム開発のソフトで CI と OCLR を算出する仕組みです。CI≥93を短頭症、OCLR≥106 を斜頭症の異常範囲としました。発達評価は ASQ で、コミュニケーション、粗大運動、微細運動、対人・社会、問題解決の5領域について、ASQ 第2版で取得した回答に、より大規模な検証データに基づく第3版のカットオフを当てて評価しました。頭の形の改善は、初回より悪化している、重症域のままにとどまる、または重症度カテゴリが1段階以上下がっていない場合を「改善不良(poor improvement)」と分類しました。

何がわかったの?──61%が頭の形の正常域に戻り、発達遅滞の頻度も母集団並みに低下

初診時には47%が重症、31%が中等症、22%が軽症でした。3〜4歳の追跡時には、計測児127例中77例(61%)が頭の形の正常範囲に達し、重症域にとどまったのは5例(4%)のみでした。短頭症だった児では平均 CI が98.5(SD 4.2)から90.4(SD 3.4)へ低下し、斜頭症だった児では平均 OCLR が110.0(SD 2.4)から106.1(SD 2.3)へ低下しました。前頭部や顔面の非対称は初診時にそれぞれ44%、29%認められたものが、追跡時には2%、3%まで減少しました。初診時に62%にみられた首の機能不全は、追跡時には全例で問題なしになっていました。改善不良は17例(13%)で、主に斜頭症と組み合わせ型の児に偏り、初診時の OCLR が改善良好群(109.2、SD 1.8)より高かったこと(110.2、SD 2.4、p=0.02)が関連していました。親の心配は、初診時に「とても」または「やや」心配と答えた割合が85%だったのに対し、追跡時には13%まで低下しました。ASQ で1領域以上の遅れがあった児の割合は、初診時の41%から追跡時の11%に低下し、ASQ 第3版の検証データから期待される一般人口での頻度(約15%)と差がなくなりました(追跡時 p=0.26)。ただし、改善不良群では追跡時にコミュニケーション領域での遅れが18%(改善良好群3%、p=0.02)と相対的に高かった点には注意が必要です。

これはどんな意味があるの?──位置的斜頭症の長期予後をリポジショニング管理下で記述した重要データ

本研究は、ヘルメット治療を受けずにリポジショニング中心の管理を受けた乳児コホートを3〜4歳まで追跡し、頭の形・親の心配・発達遅滞のいずれも幼児期までに大きく改善することを示した、位置的斜頭症の長期予後に関する数少ない縦断研究のひとつとして位置づけられます。とくに、初診時には ASQ で1領域以上の遅れがあった児が41%もいたのに対し、追跡時には11%まで低下し一般人口と差がなくなったこと、また初診時に重症だった児の多くが正常範囲まで戻ったことは、装具治療を行わなくても多くの位置的斜頭症が時間とともに大きく改善することを支持する所見です。ただし、本研究は無作為化試験ではなく、ヘルメット治療群との直接比較は行われていません。また、ヘルメット治療の対象になりうるような最重症例は、本研究の方針として装具治療を受けていない集団であるため、最重症例での装具 vs 自然経過の比較を直接示すデータではありません。後年に行われた van Wijk らの HEADS trial(BMJ 2014)は、中等度〜重度の位置的斜頭症をもつ乳児を対象とした無作為化試験で、ヘルメット治療群と自然経過観察群の24ヶ月時点の頭蓋形状指標に有意差を認めませんでした。現在のガイドライン(CNS 2016 など)は、ヘルメット治療を重症例や保存的治療が無効な例に限定する立場をとっており、本研究はそうした立場を支持する長期データのひとつになっています。

書誌情報

著者: Hutchison BL, Stewart AW, Mitchell EA

所属: Department of Paediatrics: Child and Youth Health, and Department of Population Health, The University of Auckland, Auckland, New Zealand

ジャーナル: Archives of Disease in Childhood. 2011;96(1):85-90

発表年: 2011年1月

DOI: 10.1136/adc.2010.190934

原論文URL: https://adc.bmj.com/(閲覧には購読またはジャーナルサイトでの検索が必要です)

本記事について

本記事は医学論文の内容を中立的に要約・紹介することを目的としており、特定の医療機器・治療法の効果効能を保証または推奨するものではありません。記載されている治療成績・数値は、当該研究で使用された特定のデバイス・プロトコル・対象集団に関するものであり、他の製品や治療に適用されるものではありません。本記事の内容を医療判断に用いる場合は、必ず医療機関にご相談ください。

翻訳・要約の正確性には努めていますが、原論文の内容を正確に理解するためには原典をご参照ください。

利益相反開示

本サイトを運営する株式会社Berryは頭蓋形状矯正ヘルメットを製造販売していますが、本学術論文カテゴリ(/research/)は製品プロモーションを目的とするものではなく、頭の形に関する科学的知見を中立的に紹介することを目的としています。取り上げる論文の選定は、ヘルメット治療への肯定・否定にかかわらず、医学的・社会的意義に基づいて行っています。

著作権について

原論文の著作権は各著者および掲載ジャーナル(BMJ Publishing Group)に帰属します。本記事は著作権法上の引用の要件を満たす範囲で原論文の内容を要約・紹介しています。原論文の図表は転載していません。

※本記事は原著論文を当編集部が翻訳・要約したものです。翻訳・要約の過程では生成AIを補助的に利用しており、専門用語の訳出や解釈に誤りが含まれる可能性があります。学術的な引用や臨床判断の際は、必ず原著論文をご参照ください。