論文

公開日 2026/07/15

【論文解説】位置的斜頭症に対する保存的治療の有効性を9件の研究から検討した2023年の系統的レビュー|Blanco-Díaz 2023

書誌情報 Blanco-Diaz M, Marcos-Alvarez M, Escobio-Prieto I, De la Fuente-Costa M, Perez-Dominguez B, Pinero-Pinto E, Rodriguez-Rodriguez AM. Effectiveness of Conservative Treatments in Positional Plagiocephaly in Infants: A Systematic Review. Children. 2023;10(7):1184.

この研究は何について調べたの?──物理療法・徒手療法・ヘルメット等の保存的治療の有効性を整理する

位置的斜頭症(positional plagiocephaly:頭蓋骨縫合早期癒合症ではなく、外力による頭の形のずれ)に対する保存的治療には、寝かせ方の工夫(リポジショニング)、物理療法(pediatric physical therapy)、徒手療法(manual therapy)、頭蓋装具ヘルメット治療など、さまざまな選択肢があります。1992年の米国小児科学会による仰向け寝推奨(Back to Sleep キャンペーン)以降、位置的斜頭症の発生率は約600%増加したと著者らは引用しており、世界的な発生率は46.6%、ヨーロッパでは生後8〜12週で37.8%との報告があります。各治療法の有効性についてはこれまで多くの研究が個別に行われてきましたが、近年の研究を体系的に統合した系統的レビューは限られていました。本研究は、位置的斜頭症の乳児に対する保存的治療の有効性を、最近10年間(2013〜2023年)の研究を統合して評価することを目的とした系統的レビューで、PROSPERO に CRD42022306466 として登録されています。

どうやって調べたの?──4データベースから9件を PRISMA に従って抽出し PEDro で質を評価

PRISMA ガイドラインに従い、Medline(PubMed)、Scopus、Web of Science、Cochrane の4データベースを2022年9月〜2023年1月に検索しました。包含基準は、(1)位置的斜頭症と診断された乳児を対象とした実験研究、(2)保存的治療を介入に含む、(3)英語論文、(4)過去10年以内(2013〜2023)の発表、(5)PEDro スケール(無作為化試験の方法論的質を10点満点で評価する指標)3点以上、です。初回検索で318件が抽出され、重複除去後168件、タイトル・抄録スクリーニングで31件、全文レビュー後の最終採用が9件となりました。9件の研究タイプは無作為化比較試験(RCT)5件と臨床試験(CT)4件で、対象患者数は合計5,051例(24例〜4,378例)でした。評価指標として、CI(cephalic index)、CVAI、ODDI、PCAI、Argenta スケール、Alberta Infant Motor Scale(AIMS)、視覚アナログスケール(VAS)などが用いられていました。方法論的質(PEDro スコア)は、5件のうち2件が9点(Excellent)、1件が7点(Good)、1件が6点(Good)、1件が2点(Poor)でした。

何がわかったの?──物理療法を第一選択とし徒手療法併用が最も有効と結論

9件の研究は介入の中心によって主に2グループに分けられます。(1)徒手療法・物理療法の研究では、Pastor-Pons ら(2021)が徒手療法群で CVAI 減少が3.72%対対照群0.34%(p=0.000)、頸椎右回旋可動域改善が29.7°対6.1°(p=0.001)と報告。Cabrera-Martos ら(2016)は重症例で徒手療法併用群の治療期間が109.84日対対照群148.65日(p<0.001)と短縮。Di Chiara ら(2019)も低月齢ほど・重症例ほど改善が大きいと報告しました。(2)ヘルメット治療の研究では、van Wijk ら(HEADS trial 2014)が中等度〜重度の頭蓋形状変形例でヘルメット群と自然経過観察群の改善度に差なし(mean difference -0.2、95%CI -1.6 to 1.2、p=0.80)と報告した一方、Steinberg ら(2015)は4,378例の大規模観察研究で保存的治療単独で77.1%、ヘルメット治療で95.0%が完全矯正に到達と報告。Seruya ら(2013)は32週以降にヘルメット治療開始の場合に改善速度が低下するが12ヶ月超でも改善は可能と報告しています。Kunz ら(2019)は3Dステレオ写真測量で、ヘルメット群が活動的リポジショニング単独群より長期的な対称性改善で優れたと報告しました。

これはどんな意味があるの?──重症度・年齢別の介入順序を整理した最新レビューの位置づけと限界

本系統的レビューは、保存的治療の中で物理療法(特に徒手療法)を一次選択とし、中等度〜重度の斜頭症や保存的治療で改善しない例にヘルメット治療を二次選択として推奨する、現代の標準的なアプローチをエビデンスベースで再確認した内容です。米国神経外科学会のシステマティックレビュー(Tamber ら 2016)や、van Cruchten ら(2022)の長期追跡もこの方向性を支持しています。ただし、本レビューには重要な限界があります。(1)対象研究の異質性が高く、メタアナリシスは行われていません。(2)英語論文のみを対象としたため言語バイアスが存在します。(3)採用された9件のうち5件は PEDro 9点・7点・6点と質が比較的良好でしたが、Kunz ら(2019)は PEDro 2点と質が低いと評価されました。(4)採用論文間で評価指標(CI、CVAI、ODDI、Argenta、AIMS など)が統一されていないため、定量的な比較が難しい点を著者らも認めています。結論として、(a)リポジショニングは予防の中心、(b)物理療法(特に徒手療法)は介入の第一選択、(c)ヘルメット治療は中等度〜重度または保存的治療無効例で検討、(d)治療開始は早いほど有効、というのが本レビューの推奨です。

書誌情報

著者: Blanco-Diaz M, Marcos-Alvarez M, Escobio-Prieto I, De la Fuente-Costa M, Perez-Dominguez B, Pinero-Pinto E, Rodriguez-Rodriguez AM

所属: Faculty of Medicine and Health Sciences, University of Oviedo; Institute of Health Research of the Principality of Asturias (ISPA), Oviedo; Department of Physical Therapy, University of Seville; Institute of Biomedicine of Seville (IBIS); Department of Physical Therapy, University of Valencia, Spain

ジャーナル: Children. 2023;10(7):1184

発表年: 2023年7月

DOI: 10.3390/children10071184

原論文URL: https://www.mdpi.com/2227-9067/10/7/1184(閲覧には購読またはジャーナルサイトでの検索が必要です)

本記事について

本記事は医学論文の内容を中立的に要約・紹介することを目的としており、特定の医療機器・治療法の効果効能を保証または推奨するものではありません。記載されている治療成績・数値は、当該研究で使用された特定のデバイス・プロトコル・対象集団に関するものであり、他の製品や治療に適用されるものではありません。本記事の内容を医療判断に用いる場合は、必ず医療機関にご相談ください。

翻訳・要約の正確性には努めていますが、原論文の内容を正確に理解するためには原典をご参照ください。

利益相反開示

本サイトを運営する株式会社Berryは頭蓋形状矯正ヘルメットを製造販売していますが、本学術論文カテゴリ(/research/)は製品プロモーションを目的とするものではなく、頭の形に関する科学的知見を中立的に紹介することを目的としています。取り上げる論文の選定は、ヘルメット治療への肯定・否定にかかわらず、医学的・社会的意義に基づいて行っています。

著作権について

原論文の著作権は各著者および掲載ジャーナル(MDPI, Basel, Switzerland)に帰属します。本記事は著作権法上の引用の要件を満たす範囲で原論文の内容を要約・紹介しています。原論文の図表は転載していません。

※本記事は原著論文を当編集部が翻訳・要約したものです。翻訳・要約の過程では生成AIを補助的に利用しており、専門用語の訳出や解釈に誤りが含まれる可能性があります。学術的な引用や臨床判断の際は、必ず原著論文をご参照ください。