公開日2025年1月9日

地域密着型の医療を目指して|下呂温泉病院の頭の形外来と治療の実績

岐阜県立下呂温泉病院
矢嶋 茂裕先生
「岐阜県立下呂温泉病院」は飛騨南部地域の中核病院として、この地でしか医療が受けられない人や、生活している場所でしか受けられない医療を追求している。小児科の矢嶋茂裕先生は、遠方まで通わずに治療が受けられるようになればという思いから、頭の形外来を始めた。そんな矢嶋先生に病院の特徴や頭の形外来についていろいろと教えていただきました。(取材日2024年7月30日)

先生のこれまでのご経歴を教えてください。

1982年に岐阜大学を卒業した後、すぐに小児科に入って、2年目には沖縄の県立病院で1年間勤務しました。その後、岐阜に戻り、大垣市民病院で1年勤務し、東京女子医大に行き、2年間の研修を経て、再び岐阜に戻りました。その後は、国立療養所長良病院、岐阜市民病院を経て、高山赤十字病院に勤務し、その後開業しました。

医師を目指したきっかけは何だったのでしょうか?

元々は、特に「これだ!」という明確な動機はなかったんです。もともと工学志望で、工学部を受験していたんですが、工学部は落ちてしまい、その次に受けていたのが地元の岐阜大学の医学部だったんです。医学部を受験したのは、周りからの勧めがあったからでした。最初はそのような動機でしたが、今になってみると、職業としてやりがいは確かにあると感じています。

小児循環器に携わられている理由や、選ばれたきっかけは何だったのでしょうか?

小児科に入ったのは、当時としては学内では珍しく全員に国内留学を2年間認めてくれる医局だったからです。そこで実際に会った患者さんとの関わりの中で、循環器は一定のレベルまでできた方がいいなと感じるようになったので、勉強していこうと決めました。

診察時に特に心がけていることがあればお聞かせください。

やはり、患者さんをしっかり見ることを大切にしています。コロナ以降、検査に依存する診療も増えていますが、私は聴診器を使って心臓の音を聞くなど、直接の診察を大事にしています。また、昔は薬を処方することが普通だったのですが、最近では、薬を出すことも非常に少なくなりました。実際に患者さんを目の前にして症状を見て、必要最低限の処方にするよう心がけています。

病院の特徴や背景などを教えていただけますか?

下呂温泉病院は県立病院ですが人口減少が進む地域にあるため、小児科を含む多くの診療科で過疎地ならではの問題が出てきています。地域の出生数が減少していることもあり、病院機能をどう維持していくかが課題となっています。

地域医療では、病気の予防や健康管理に重点を置くことが必要であり、病気の治療だけではなく、より健康な状態を維持するための支援が重要です。この支援を通じて、少しでも地域に貢献できればと考えています。

頭の形外来を始めようと思ったきっかけは何ですか?

以前から矢嶋小児科小児循環器クリニックで頭の形外来を行っており、下呂温泉病院でも頭の形外来を行いたいと考えました。地域的に、主要な医療機関まで距離があるため、ニーズが多くはないものの、必要とする方に対応できないかと考えました。地域の規模が小さいため多くの患者さんが受診されるわけではありませんが、遠方まで通わずに治療が受けられることは重要です。病院側も協力してくださったことで、この外来が実現しました。

ヘルメット治療を行う上で、大変なことは何でしょうか。

変形が強い場合は、肌が赤くなることがあります。赤みが出た際には柔らかいクッションを入れてヘルメットとの当たりを緩和します。これで改善することが多いですね。来院回数を減らすためにあらかじめ軟膏を渡すこともあります。

頭の形外来における初診の流れについて簡単に教えていただけますか。

最初に写真撮影を行います。相談を受けた際に、軽度の変形であれば写真撮影までは勧めませんが、多くの場合、ある程度の変形が見られるため、保護者が希望すればその場で写真を撮影します。

変形が強い場合、ご夫婦で来院されていない時には基本的な説明をして「帰ってからよく相談してください」という形を取ることが多いです。写真を見せてデータを確認し、次回にヘルメット治療を行うかどうか決める、という流れですね。一週間以上経ってしまうと写真の再撮影が必要になることもあるので、なるべく一週間以内にお返事をいただくようにしています。ご夫婦でいらっしゃっている場合、その場で治療を決める方が多いです。

再診では1ヶ月に1回くらいのペースで4~6回くらい撮影をします。それ以外のフォローはLINEでも行っています。

予約の取り方や、受診のタイミングについて教えていただけますか。

頭の形外来は一般外来として電話での予約になります。

受診のタイミングはだいたい3ヶ月頃が良いですね。遅くとも6ヶ月くらいまでには治療を始める方が多いです。11ヶ月から治療を始めたケースもありましたが、その場合、治療の改善率はゆるやかになりました。

読者の皆様へのメッセージをお願いいたします。

医学的には、頭の形の治療は見た目に関わるものであり、機能的な改善を期待するものではありません。あくまで形の問題として捉えるべきですが、私自身の娘も非常に強い斜頭で、現在は大学生です。もし今の時代に彼女が生まれていたら、治療を行っていたと思います。

形だけの問題と割り切る方もいらっしゃると思いますが、私のように少し後悔することもあるかもしれませんので、今悩まれている親御さんには、しっかりと情報を集めて、後悔のない選択をしていただけたらと思います。

また、医療は常に進歩しており、昨日の常識が今日には通用しなくなることも多いです。ネットで簡単に情報を得られる時代ですが、医療者側も常に知識をアップデートし続けなければなりません。子供の回復力は強いですが、それでも医師の知識が時代遅れになっていては、本当に良い治療ができなくなってしまいます。

学会や医療関係者との交流を通じて最新の情報を得ることを心がけ、患者さんにとって最良の治療を提供できるよう努めています。皆様も、様々な情報に触れつつ、時代の変化に合わせて柔軟に対応していくことが大切です。

どうぞ、ご自身やお子さんのために最善の選択をしてください。

ヘルメット治療について

治療の流れ

初診では3Dデータ作成のための撮影を行います。測定結果を説明し、ヘルメット治療希望の場合は作成に進みます。

費用

スタッフまでお尋ねください。

診察日時

第1・3水曜日

予約

お電話にてご予約ください。

相談窓口

0576-23-2222

アクセス

電車・バスでお越しの方: 電車でお越しの方 名古屋駅→東海道本線・高山本線→下呂駅 約1時間40分(特急ひだ) 富山駅→高山本線→下呂駅 約2時間15分(特急ひだ) バスでお越しの方 下呂駅前→濃飛バス合掌村線→下呂温泉病院 約7分

お車でお越しの方: 病院敷地内に約200台分の駐車場を用意しております。

公開日2025年1月9日

地域密着型の医療を目指して|下呂温泉病院の頭の形外来と治療の実績

岐阜県立下呂温泉病院
矢嶋 茂裕先生
「岐阜県立下呂温泉病院」は飛騨南部地域の中核病院として、この地でしか医療が受けられない人や、生活している場所でしか受けられない医療を追求している。小児科の矢嶋茂裕先生は、遠方まで通わずに治療が受けられるようになればという思いから、頭の形外来を始めた。そんな矢嶋先生に病院の特徴や頭の形外来についていろいろと教えていただきました。(取材日2024年7月30日)

先生のこれまでのご経歴を教えてください。

1982年に岐阜大学を卒業した後、すぐに小児科に入って、2年目には沖縄の県立病院で1年間勤務しました。その後、岐阜に戻り、大垣市民病院で1年勤務し、東京女子医大に行き、2年間の研修を経て、再び岐阜に戻りました。その後は、国立療養所長良病院、岐阜市民病院を経て、高山赤十字病院に勤務し、その後開業しました。

医師を目指したきっかけは何だったのでしょうか?

元々は、特に「これだ!」という明確な動機はなかったんです。もともと工学志望で、工学部を受験していたんですが、工学部は落ちてしまい、その次に受けていたのが地元の岐阜大学の医学部だったんです。医学部を受験したのは、周りからの勧めがあったからでした。最初はそのような動機でしたが、今になってみると、職業としてやりがいは確かにあると感じています。

小児循環器に携わられている理由や、選ばれたきっかけは何だったのでしょうか?

小児科に入ったのは、当時としては学内では珍しく全員に国内留学を2年間認めてくれる医局だったからです。そこで実際に会った患者さんとの関わりの中で、循環器は一定のレベルまでできた方がいいなと感じるようになったので、勉強していこうと決めました。

診察時に特に心がけていることがあればお聞かせください。

やはり、患者さんをしっかり見ることを大切にしています。コロナ以降、検査に依存する診療も増えていますが、私は聴診器を使って心臓の音を聞くなど、直接の診察を大事にしています。また、昔は薬を処方することが普通だったのですが、最近では、薬を出すことも非常に少なくなりました。実際に患者さんを目の前にして症状を見て、必要最低限の処方にするよう心がけています。

病院の特徴や背景などを教えていただけますか?

下呂温泉病院は県立病院ですが人口減少が進む地域にあるため、小児科を含む多くの診療科で過疎地ならではの問題が出てきています。地域の出生数が減少していることもあり、病院機能をどう維持していくかが課題となっています。

地域医療では、病気の予防や健康管理に重点を置くことが必要であり、病気の治療だけではなく、より健康な状態を維持するための支援が重要です。この支援を通じて、少しでも地域に貢献できればと考えています。

頭の形外来を始めようと思ったきっかけは何ですか?

以前から矢嶋小児科小児循環器クリニックで頭の形外来を行っており、下呂温泉病院でも頭の形外来を行いたいと考えました。地域的に、主要な医療機関まで距離があるため、ニーズが多くはないものの、必要とする方に対応できないかと考えました。地域の規模が小さいため多くの患者さんが受診されるわけではありませんが、遠方まで通わずに治療が受けられることは重要です。病院側も協力してくださったことで、この外来が実現しました。

ヘルメット治療を行う上で、大変なことは何でしょうか。

変形が強い場合は、肌が赤くなることがあります。赤みが出た際には柔らかいクッションを入れてヘルメットとの当たりを緩和します。これで改善することが多いですね。来院回数を減らすためにあらかじめ軟膏を渡すこともあります。

頭の形外来における初診の流れについて簡単に教えていただけますか。

最初に写真撮影を行います。相談を受けた際に、軽度の変形であれば写真撮影までは勧めませんが、多くの場合、ある程度の変形が見られるため、保護者が希望すればその場で写真を撮影します。

変形が強い場合、ご夫婦で来院されていない時には基本的な説明をして「帰ってからよく相談してください」という形を取ることが多いです。写真を見せてデータを確認し、次回にヘルメット治療を行うかどうか決める、という流れですね。一週間以上経ってしまうと写真の再撮影が必要になることもあるので、なるべく一週間以内にお返事をいただくようにしています。ご夫婦でいらっしゃっている場合、その場で治療を決める方が多いです。

再診では1ヶ月に1回くらいのペースで4~6回くらい撮影をします。それ以外のフォローはLINEでも行っています。

予約の取り方や、受診のタイミングについて教えていただけますか。

頭の形外来は一般外来として電話での予約になります。

受診のタイミングはだいたい3ヶ月頃が良いですね。遅くとも6ヶ月くらいまでには治療を始める方が多いです。11ヶ月から治療を始めたケースもありましたが、その場合、治療の改善率はゆるやかになりました。

読者の皆様へのメッセージをお願いいたします。

医学的には、頭の形の治療は見た目に関わるものであり、機能的な改善を期待するものではありません。あくまで形の問題として捉えるべきですが、私自身の娘も非常に強い斜頭で、現在は大学生です。もし今の時代に彼女が生まれていたら、治療を行っていたと思います。

形だけの問題と割り切る方もいらっしゃると思いますが、私のように少し後悔することもあるかもしれませんので、今悩まれている親御さんには、しっかりと情報を集めて、後悔のない選択をしていただけたらと思います。

また、医療は常に進歩しており、昨日の常識が今日には通用しなくなることも多いです。ネットで簡単に情報を得られる時代ですが、医療者側も常に知識をアップデートし続けなければなりません。子供の回復力は強いですが、それでも医師の知識が時代遅れになっていては、本当に良い治療ができなくなってしまいます。

学会や医療関係者との交流を通じて最新の情報を得ることを心がけ、患者さんにとって最良の治療を提供できるよう努めています。皆様も、様々な情報に触れつつ、時代の変化に合わせて柔軟に対応していくことが大切です。

どうぞ、ご自身やお子さんのために最善の選択をしてください。

ヘルメット治療について

治療の流れ

初診では3Dデータ作成のための撮影を行います。測定結果を説明し、ヘルメット治療希望の場合は作成に進みます。

費用

スタッフまでお尋ねください。

診察日時

第1・3水曜日

予約

お電話にてご予約ください。

相談窓口

0576-23-2222

アクセス

電車・バスでお越しの方: 電車でお越しの方 名古屋駅→東海道本線・高山本線→下呂駅 約1時間40分(特急ひだ) 富山駅→高山本線→下呂駅 約2時間15分(特急ひだ) バスでお越しの方 下呂駅前→濃飛バス合掌村線→下呂温泉病院 約7分

お車でお越しの方: 病院敷地内に約200台分の駐車場を用意しております。